ある人の墓標   作:素魔砲.

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幕間

 

 

 

広い空間の狭い一室。

この研究室をクラスメイトである葉加瀬聡美はそう表現した。実際の広さはそれなりにあるのだが縦横無尽に張り巡らされたケーブル束のせいで足の踏み場もない上に、PCデスクと研究機材に挟まれて通路は狭い。実験器具が室内の大部分を占めているため居心地がいいとはとても言えなかった。

 

在籍しているロボット工学研究会や大学にある量子力学研究会の研究室ではなく私的な目的に使用している隠れ家だ。都市開発の黎明期、区画整理によって中心部から追いやられた物件の一つで郊外に位置している。元は自然公園の管理ビルか何かだったようで、周囲に人家もなく多少の騒音を立てても問題はない。秘密裏に事を進めるための前線基地としてはうってつけの場所だった。

 

 

(もっとも、そのせいで気軽にコンビニにも行けないが)

 

 

長時間見続けていたモニターから目を離し、超鈴音はリクライニングチェアの上でゆっくりと伸びをした。頭脳労働後の糖分補給は研究者にとって必須といえる。最近はコンビニスイーツも馬鹿にできない味と品質を持っているため、気軽にとれる甘味として愛用していた。下っ端一号・・・名前を知らないので勝手に命名した少年がいた頃はよく買い出しに行かせたものだ。今は理由も告げずに雲隠れしているため、そういう訳にもいかないが。その事を思い出し、短く嘆息する。

 

ある日突然、何の切っ掛けもなくアレは姿を消した。自らの痕跡を一切残さず消息を絶った。

 

別にアレがいなくなったところで特に痛手があるわけではないし、むしろあんな得体のしれない人間は永久に帰ってこないでくれたほうが都合がいい。元々自分一人でも計画を実行できるように準備を進めていたのだし、偶然拾った少年を当てにしなければならない理由はなかった。

 

ただ・・・。

 

 

(結局、アレが何のために私に近づいてきたのか理由がわからないままカ・・・)

 

 

アレと初めて顔を合わせたのは春先の事だ。とある事情でタイムマシンのエネルギー供給に問題が生じ、頭を抱えていた矢先にフラリと現れた。そして戸惑う自分に向かって彼はこう言った。

 

貴方の正体を知っている。手伝わせてくれないかと。

 

唐突に現れ、そんなことを言った少年を超は当然警戒した。すぐさま身柄を拘束し尋問を行った。少年は何の抵抗もすることなく捕まると、こちらが拍子抜けするくらいにあっさりと質問に答えた。いや、質問に答えたというよりはたった一つの事を勝手に宣言したといったほうがいいか。自分の目的は超鈴音に協力することなのだと。

 

もちろんそんな少年の言い分など超はまったく信用しようとは思わなかった。何しろ素性の一切が不明であり、麻帆良にあるどのデータベースからもそれらしい人物の記録は見つからなかったのだ。そんな身元も定かではないうえに名乗りもしないような不審人物の言葉など信じられるわけがない。

 

少々強引な手段で口を割らせようともした事もある。しかしただの子供にしか見えないその少年には薬物や催眠術の類が通用せず、魔法にまで耐性を持っていた。精神操作系の魔法に対抗する術式を使用しているのかとも思われたが、魔法による防御効果は一切見られない。まるでこちらには理解できない何かが少年を守護しているかのように思われた。

 

結局、最後まで少年からまともな情報を得ることはできなかった。後日、彼の処遇をどうするかが問題になったが、最終的には手元に置いて監視することにした。できることなら放逐してしまいたかったのだがそういう訳にもいかなかった。彼が自分の正体を知っていたためだ。

 

どういう手段を使ったのか、彼は自分が未来から来た人間であることを知っていた。どの時代から来たのか正確な年代を特定していたわけではないし、どうやってこの時代に来たのかも分らなかったらしいが、二年前に大きな時空震が発生したことにだけは気付いていたらしい。いずれにしろ明確な目的が定かではない以上無視するわけにもいかずしばらく様子を見ることになった。

 

だが、ただ監視するためだけに手元に置いていたはずのその少年は、意外なことに本当に超に協力的だった。当時、超の頭を悩ませていたタイムマシンの小型化によるエネルギー供給と制御の問題の解決に一役買ってくれたのだ。一定量の魔力と結合することで時空転移を可能にする素体。未来から超が持ち出してきたあの”剣”は特定の条件下で強力な時空震を発生させる。その反面、発生した時空震の制御にはかなりの精密性を求められた。当初は素体から切り離した欠片を航時機・・・カシオペアに組み込み、バッテリーのように蓄積した魔力と反応させることで時空震を生み出していたのだが、時空震の制御のために内部機構が複雑化したことで携帯性を損なうほど装置自体が肥大化してしまった。戦闘用にと開発していたカシオペアだったがこれではとてもではないが実戦で運用することはできない。

 

このままではナノ秒単位の瞬間的な時空転移をあきらめるか、あるいは魔力を蓄積したバッテリーを縮小させ継戦時間を犠牲にするかを選ばなければならなかった。だが件の少年は全く別の方向から解決策を模索した。少年は”剣”と魔力が結合して時空震が発生する際に、”剣”本体と分断された”欠片”がある特殊な波長によって共振していることに着目した。その共振は通信可能な領域に部分的な制限があるものの、発信元である”剣”と発信先である”欠片”に時空震の規模と転移先の座標をほぼ一瞬で送受信させることができた。つまり研究室に置いてある剣を通して携帯型のタイムマシンであるカシオペアにエネルギーと情報を同時に転送することが可能になったわけだ。

 

これによりカシオペアへのエネルギー供給と制御の問題は解決し、それどころか幾つかの弱点を克服するまでに至った。まずエネルギーを外部から供給することが可能になったため、麻帆良にいる限りバッテリー残量を気にせず、ほぼ無制限に時空転移を行うことができるようになった。そして時空震の制御を”剣”の本体がある研究室で行うことで、カシオペア内部に複雑な制御機構を組み込む必要がなくなったため、より構造が単純化し突発的な故障が起こり難くなった。複雑な内燃機関を搭載する必要もないので重量は軽くなり、その分外部の素材をより強固なものに変えることができた。ざっとあげるだけでもこれだけの利点が生まれたわけだ。

 

もちろん今あげた利点を持ったカシオペアを改造したのは超自身だったが、それでもそのアイデアをもたらしたのは正体不明の少年だ。それだけで彼を信用するほど超も甘くはなかったが、功績は認めなければならなかった。つまるところ信用ならない監視対象から信用ならない協力者へと見方が変わったといえる。

 

 

(まぁ、だからどうなるものでもなかったわけだが・・・)

 

 

嘆息し軽く首を振る。あの少年の正体についてはこれ以上詮索しても無駄になるだけだ。まさか本人が冗談のように言っていた異世界人という答えが真実だとは思わなかったが、それも横島忠夫の反応からそう推察しただけに過ぎない。明確な根拠があるわけではなかった。

 

思考を別の方向へと切り替える。

素体は安定しカシオペアにも問題は起きていない。あの少年が消えたことについて気にならないわけではないが今考えるべきなのはこれから始まる”計画”についてだ。数十年単位で活性化を繰り返す世界樹の魔力を利用した強制認識魔法。その魔法を使って世界中の人間の認識を改変する事が超の最終目的だった。具体的には全世界に魔法が実在することを暴露し、それを認めさせること。そのための下準備もすでに完了している。ネットへの情報拡散や重要拠点を制圧するための兵器の準備等々。そしてある意味最も重要なこと・・・。

 

 

(・・・まほら武道会)

 

 

強制認識魔法・・・その認識改変を誘導するための核となる部分だ。ここ麻帆良に集う超越者たち。武道大会では彼らが持つ超常の技をいかんなく発揮してもらう必要がある。その映像は拡散させた情報群に説得力というアクセントを加えてくれることだろう。大多数の興味を煽るための撒き餌と言い換えることもできるか。

 

 

(いずれにしろすべては順調に進んでいる)

 

 

そこまで考えると超はゆっくりと目を閉じ全身の力を抜いた。深呼吸を繰り返し頭の中を空にする。闇の中で空調とPCの冷却ファンが鈍く響いてくる。人によっては不快に感じるかもしれないその音は超にとっては慣れたものだ。いっそこのまま眠ってしまおうかと考えたその時、部屋の扉を開ける音が聞こえて超は気だるげに瞼を開けた。

 

 

「超さ~ん。いらっしゃいますか~?」

 

 

ドアを半分だけ開き葉加瀬聡美がひょっこりと顔をのぞかせる。いつもと変わらない白衣姿の眼鏡少女だ。ひっつめ髪を三つ編みに縛って後ろに垂らしている。本人曰く一番寝癖が誤魔化せる髪型なのだそうだが、まぁよく似合ってはいた。

 

 

「ここにいるネ~」

 

 

やる気のない声でそう呼びかけると葉加瀬は足元のケーブル束を踏まないようにしながらこちらに近づいてきた。

 

 

「火星ロボの最終調整が終わりました。大型のものは結界が働いている今は大掛かりな試運転も出来ませんけどデータ上では問題なく運用できます」

 

 

「足回りの問題は解消できたカナ?」

 

 

「さすがにあの重量だと完全には・・・。でもバランサーの改良で足首と関節部の負担はかなり軽減できてます」

 

 

その口元にはニコリと笑みが浮かんでいた。己の仕事に満足しているのだろう。ここ数日準備に追われてあまり寝てないはずだがそれでも自信にあふれたいい顔をしている。超は傍らに置いてあるクーラーボックスからミネラルウォーターを取り出すと彼女にそっと手渡した。

 

 

「ハカセの仕事だ。信用してるヨ。整備関連を任せきりにしてしまってすまなかたネ」

 

 

「いえいえ、おかげで実に充実した時間を過ごせました」

 

 

ふんすふんすと鼻息を荒くしながら葉加瀬はそう言った。ある意味嫌味に聞こえるその言葉も彼女に関して言えば混じりっけなしの本音だろう。超は大きな感謝と若干の呆れを含んで苦笑した。

 

 

「超さんのほうも最終確認ですか?例の素体の」

 

 

葉加瀬が声を落として問いかけてきた。この部屋にいる限り盗聴に関しては心配ないので意味がない事なのだがそれでも警戒しているのだろう。なにしろあの素体は超一味のとってのアキレス腱になりうる。そういった慎重さは好ましかった。

 

 

「うん。一通りチェックしたが何の問題もなかたヨ。B.C.T.L(強制時間跳躍弾)の方にもバッチリ転用できる」

 

 

「え?でもあれって時空震の規模が安定しなくて運用が難しかったはずじゃないんですか?下手したらうっかり千年後とかに飛ばしちゃうかもって・・・」

 

 

「それは共振現象が発見される前の話だヨ。一発単位で情報を弾丸に保存して接触後に共振で”剣”に伝達させて時空震発動って手順ネ。もっともそのせいでライフル弾に収めるのが大変だたガ」

 

 

「へ~、でもそういう事なら竜宮さんにとっても切り札になりますね。彼女の狙撃能力と合わせれば戦力がかなり強化されます」

 

 

「うん、そうだネ・・・」

 

 

超は葉加瀬の言葉に頷くと視線を素体が設置されているシリンダーに向けた。あの素体の扱いには散々苦労させられたが、時空震の制御方法さえ確立してしまえば、その利用法は多岐にわたる。利便性においても当初に比べれば天と地ほども違う。超専用の強化スーツに仕込んであるカシオペア壱号機も安定した使用が可能になったし、担任教師に渡すはずのカシオペア弐号機も既に調整が終わり運用試験もクリアしていた。おそらく彼ならばカシオペアを使いこなすこともできるだろう。

 

そんなことを考えていた時、ふとあることに思い至って超の唇は皮肉に歪んだ。一応事情を説明し仲間に勧誘するつもりではあるが、おそらくあの生真面目な少年は自分の誘いを断るだろう。それどころかほぼ間違いなくこちらの計画を妨害してくるはずだ。結局自分は自らの手で計画の進行における最大の障害を作り出す事になる。今更ながらその自己矛盾に超は面白みを感じた。声に出さずに笑っているとこちらの視線を追ってシリンダーを見つめていた葉加瀬が遠慮がちに声を掛けてきた。

 

 

「あの超さん」

 

 

「ん?」

 

 

「一度聞いておきたかったんですけどあの素体っていったい何なんですか?人工物なのは確かみたいですけど機械的じゃないし、まるでどこかの遺跡から発掘された出土品みたいな・・・」

 

 

強化ケースの奥を透視するように葉加瀬が真剣な瞳を向けている。確かに彼女の言う通りあの”剣”は一見するとただのがらくたにしか見えない。歴史の教科書にでも乗っていそうなほど古ぼけた遺物だ。

 

 

「う~ん。実を言えばアレに関しては私もよく分かってないネ。いつどこでだれが作ったのか、研究所で色々調べたが構成要素すら不明だヨ。魔力が発動条件だからアーティファクトの可能性が高いがそれも予想でしかない」

 

 

「超さんでもわからないんですか?」

 

 

「アレはもともと私が持っていたものではないからネ。私のパートナーだった人が持っていたものだヨ」

 

 

「パートナー?」

 

 

「時空転移を一緒に研究していた人ネ。もっともその人に聞いてもはぐらかされるばかりで何も教えてはくれなかたガ」

 

 

元々の持ち主には何度も素体の出所を尋ねたのだが、本人は真面目に答える気がなく、ジャングルの奥地に生息するとある部族が祭っていた聖器物であるだとか、チベットの山奥にある寺院の高僧から譲り受けた寺宝であるだとか、挙句の果てには実家の物置にしまってあったものだとか、聞くたびに由来が変化した。面白がって答えをはぐらかしていたのか、案外本人にもわかっていなかったのかもしれない。超が当時を思い出して渋い顔をしていると葉加瀬が目を輝かせて質問してきた。

 

 

「どんな人だったんですか?超さんのパートナーって」

 

 

そんな瞳を向けられた超はあっけらかんと簡潔に答えた。

 

 

「子供みたいな人ネ」

 

 

「え?」

 

 

「好奇心旺盛で色々なことに手を出す癖に飽きるのも早い。興味があることに一度集中しだすと周りの事なんか二の次ネ。生活能力も皆無だたから一度食事もとらずに研究に没頭しすぎて干からびたこともある」

 

 

「ひ、干からびるって・・・」

 

 

「まぁその辺はハカセも人のこと言えないかもしれないガ」

 

 

「さすがに私でも干からびたことはないですよ!」

 

 

研究に集中しすぎて他がおろそかになるという事には多少の自覚があるのか葉加瀬は唇を尖らせてそっぽを向いた。そんな可愛らしい仕草にほほえましさを感じながら超は言葉を続けた。

 

 

「ただその頭脳は天才的だったネ。なにせ素体を持っていたにせよ時空転移理論を一から組み上げたのだカラ」

 

 

「え・・・時空転移理論って超さんが考えたんじゃないんですか?」

 

 

「まぁね。といっても技術的なサポートは全部私に押し付けてたガ」

 

 

実際タイムマシンを実用可能なレベルにまで完成させたのは超だった。特定の年代と場所に時間跳躍するためには安定した時空震の制御が必要になる。そのための装置を開発しなければならなかったのだが、それがなかなかに難題だった。共同開発者であった彼女はアイデアをいくつも持ってきたものだったが、そのたびに技術開発や実証実験を超が主導しなければならなかった。役割分担ができていいじゃないかというのは本人の弁だったが、今思えば単に面倒くさがっていただけなのかもしれない。

 

 

「まぁ当時は色々と面倒事があったせいで研究だけやっていればそれで済むという状況ではなかったからね」

 

 

時空転移研究の資金調達兼隠れ蓑になっていた魔道兵士の開発には軍閥と政財界の思惑が複雑に絡み合っていたため、開発主任であった彼女は一研究者としての立場を超える役割を求められていた。そういった面倒ごとの矢面に立っていたことを考えれば無理からぬことでもある。そんな風に超が当時の出来事を振り返っていると葉加瀬がしみじみとした口調でぽつりと呟いた。

 

 

「でも、できることなら一度会ってみたいですねぇその人に・・・」

 

 

未来の人だから無理でしょうけどと、葉加瀬が冗談のように言うと、その言葉を聞いた超がゆっくりと首を振った。

 

 

「いや、そう決めつけるものでもないヨ」

 

 

「え?」

 

 

驚きを表情に浮かべて葉加瀬が目を丸くする。

超は口元に苦笑を浮かべて言った。

 

 

「こういう言い方は妙なのだが、あの人は今未来にいないヨ。少なくとも私がいた未来ではいなくなっていたネ」

 

 

「え?え?どういう意味ですか?」

 

 

言葉の意味が分からないのか早口にまくし立ててくる。

 

 

「どういうもなにも言葉通りの意味ネ。ある日突然消えてしまったのだヨ」

 

 

「消えたって・・・」

 

 

葉加瀬が呆然とそれだけを口にする。超は目を閉じるとその時の事を思い返した。あの時・・・タイムマシンが完成し、過去への時間跳躍を数日後に控えたあの時、彼女は忽然と姿を消した。前兆らしきものは一切なく、周囲の人間に失踪をほのめかした様子もない。身辺整理をした形跡もなく、前日まではなんらいつもと変わらずに過ごしていたことは証言が取れている。

 

 

「それって・・・もしかして誰かに誘拐されたとかなんじゃ」

 

 

「そうだね、当然私もそう思ったネ」

 

 

自らの意思で失踪したにしてはあまりに状況が不自然だったし、なにより奇妙だったのは研究者にとってある意味命よりも大切なはずの研究データをそのまま置いていったことだ。その一点だけ見ても第三者の意思が介在していることは容易に想像がつく。当時魔道兵士の開発をめぐって政・官・財界・軍閥と様々な勢力が利権争いを行っていた。その当事者の一人である彼女が何らかの陰謀によって誘拐、あるいは暗殺された可能性も確かに存在していた。

 

しかしそもそも彼女が消えたのは強固なセキュリティを誇る軍研究所の中においても最高レベルの安全性を持っていた彼女自身の研究室だった。仮になんらかの手引きがあって外部から何者かが侵入してきたのだとしても、あの場所から彼女を何の痕跡もなく連れ出すのは不可能に近い。誘拐犯が実在していたとしても、その動機はいくらでも推測できるものの肝心の実行手段がわからなかった。要するに失踪後の状況や証言から判断すると何者かによって誘拐されたとしか思えないのに、失踪時の状況を考えるとそんなことはあり得ないわけだ。

 

 

だが、それでもたった一つ可能性をあげるとすればそれは・・・。

 

 

「たぶんあの人はカシオペアを使ったんだと思う」

 

 

「カシオペア・・・タイムマシンですか?」

 

 

「どの時代に飛んだのか、なんで誰にも告げずにいなくなったのか、自分がなしたことを全部捨てていったのはなぜなのか・・・。結局私には何一つわからないままなのだけどネ・・・」

 

 

その事を寂しく感じないかといわれれば嘘になる。しかし元々突拍子もないことを平然と行う人物であり、そのたびにさんざん苦労させられてきた身としては今更といえば今更なのだ。それに自分と彼女はたった一つの事において今でも確かに繋がっている。それは過去を改変する事で未来をあの地獄から救うという事。彼女と交したあの約束を忘れない限り自分たちは再び巡り合うのではないかと超は思っていた。

 

 

「まぁだからひょっこりこの時代に姿を現してもおかしくないヨ。人を驚かせるのが好きな人だったし」

 

 

「そう・・・なんですか?でもそれって結構悪趣味ですよね」

 

 

「そうね。今度会ったら助走をつけて全力で殴ってやるネ」

 

 

「いえ、えっと・・・ほどほどにしてくださいね」

 

 

強化スーツの出力を上げて拳と手のひらを打ち付けた超に葉加瀬は冷や汗を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・運命の学園祭が幕を上げる・・・。

 

 

 

 


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