やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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ファンアートいただきました!


実は以前にいただいたものもあったのですが、紹介していなかったので今回、同時に紹介したいと思います。


・モルフモス様


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・ぬるオーラ様


【挿絵表示】



モルフモス様、ぬるオーラ様、ありがとうございました。

作中にも何度か描いていたと思いますが、念のためにサイの容姿について紹介しておきます。

衣装は長袖のワンピース。
異様なほどボリュームがあり、お尻に届くほど長い黒髪。
容姿自体は『ストライク・ザ・ブラッド』のなつきに似ています。


これからも皆様からのファンアート、お待ちしております。
私に直接、メッセを送っていただければご紹介いたしますのでよろしくお願いします。


LEVEL.223 それでも彼女は答えられない

「はっはっは! よくぞ言った! 私は満足だ……ただただ満足である!」

「……」

「あ、安心しろ。ちゃんと易しい問題にする」

 メグちゃんが『ウンコティンティン』の名前を叫ぶとウンコティンティンは骸骨であるにもかかわらず満面の笑みを浮かべてうんうんと頷く。それを見たメグちゃんが恨めしそうに睨むとすぐにウマゴンへと向き直った。どうにか易しい問題になったがウマゴンは言葉を話せないという事実は変わっていない。他の人が答えを教えてウマゴンが『メルメルメ~』で答え、それを私が通訳するしかないだろう。

「ではいくぞ、ウマゴン。第2問!」

 だが、問題はその易しい問題が本当に易しいかどうか。そして、その答えがわかる人がいるか。最後に私が通訳した後、ウンコティンティンが難癖をつけてこないか、だ。それにこの問題が終わった後、私も残っているので油断はできない。さぁ、どんな問題がくる。

「注射の道具にもなり、泳ぐための道具にもなり、逃げる時の生贄にもなる。また、人間は絵を描く時の道具にもしている。ほとんどの動物が持っているこれは何?」

「これは……」

 なぞなぞ、というものなのだろうか。生憎、なぞなぞはあまり知らないため、私はウマゴンに答えを教えてあげることはできない。しかし、これならきっとキヨマロはわかるはず。

「……よし、ウマゴン、その場でウンコティンティンに尻尾(・・)を突き出せ! それが答えだ!」

 てっきり、口頭で答えを教えると思ったがキヨマロはウマゴンに尻尾を突き出すように指示を出す。ウマゴンは『尻尾?』と自分の尻尾を見て首を傾げ、私の方を窺うように見上げる。きっと、この問題の答えは尻尾なのだろう。私はウマゴンに頷いてみせた。

「メル!」

 それを見た彼は指示通り、ウンコティンティンにこれが答えだといわんばかりに尻尾を突き出す。これならウマゴン本人が答えていることになる。私が通訳して難癖付けられるよりもいいはずだ。

「……うむ、正解である。さぁ、掴まるがよい、賢者よ」

「メルメルメ~!」

 妙に素直に正解を認めたウンコティンティンはリールを前に差し出すと『やったー!』と嬉しそうに万歳するウマゴン。そのままリールに掴まり、下がっていくのを見届けてホッと安堵の溜息を吐く。なんとかウマゴンを見送ることができてよかった。これで私が正解すればこの関門を突破することができる。大丈夫、私一人で戦っているわけじゃない。私がわからなくてもみんなが助けてくれる。

「……やはり、貴様が最後に残ったか」

「……え?」

 ウンコティンティンのその低い声に私は思わず目を白黒させてしまう。先ほどと彼の纏う雰囲気がどこか変わっている。真っ直ぐ私を見つめる空虚な瞳は私の何もかもを見通しているようでごくりと生唾を飲み込んでしまう。何か、嫌な予感がする。きっと、ウンコティンティンは私の何かを知っているのだ。

「どういう、こと?」

「わからないとでも思ったか? 貴様がこの部屋に入ってきた時から大体の予想は付いている。だから、貴様にふさわしい問題を出してやろう。さぁ、最後の問題だ」

 私にふさわしい問題? 一体、何を言っているのだろう。そもそも私がこの部屋に入ってきた時点で予想できることなんて高が知れている。それこそ見ただけでわかるような――。

「ッ!? 待っ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――問題。『魔界の3つの脅威』を正式名称で全て答えろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の制止も待たずにウンコティンティンは最終問題を出題した。ああ、なるほど。それは確かに私にふさわしい問題だ。

 『ファウード』は『魔界の脅威』の1つであり、ウンコティンティンもまた『ファウード』の一部。きっと、『魔界の脅威』である私を一目見た時から同類だとわかったのだろう。

 もちろん、答えは知っている。『ファウード』の正式名称も先ほどアリシエから聞いたばかりだ。きっと、アリシエとリーヤ以外のみんなは今、頭の中に『魔界の3つの脅威』を思い浮かべているだろう。だが、3つの内、たった1つだけ正式名称を知らない。私にしかわからない。私しか答えられない。

「……」

 しかし、答えを知っていても答えられるとは限らない。私は奥歯を噛み締め、両手を握りしめる。視界が少しずつ狭くなっていき、ぐにゃりと曲がった。ウンコティンティンはキヨマロだけじゃなく、私のことも気に食わなかったのだ。だから、私が最も苦しむ問題を出した。奴の目論見は見事に成功し、私の額から脂汗が滲んだ。

「どうした? 貴様ならすぐに答えられるであろう? ん? 何か言えない事情でもあるのか?」

「……1つ目、は『バオウ・ザケルガ』」

「正解」

 自分でも情けなくなるほど震えた声で答えるとウンコティンティンは落ち着いた様子で頷いた。

 ガッシュの第4の術、『バオウ・ザケルガ』は他の術に比べ、明らかに異端である。他の術を使えば使うほど力が増す異常な術。どうして、『魔界の脅威』になったのかは知らないが脅威と言われれば納得できなくもない。

「2つ目は……『魔導巨兵ファウード』」

「ああ、正解だ」

 そして、私たちが止めなければならない『魔界の脅威』、『魔導巨兵ファウード』。こんな巨大な魔物が動き出せばたった一歩進むだけでどれほどの被害が出るのだろうか。それに魔物というからには何かしら兵器を備えているはずだ。下手をすれば人間たちは何の抵抗もできずに『ファウード』に滅亡させられてしまうかもしれない。

「……」

「……3つ目は?」

「3つ、目は……」

 最後の脅威は――私だ。それはみんな、知っている。いや、アリシエとリーヤは知らないか。でも、そんなことはどうでもいい。重要なのは『サイ』では不正解であること。『サイ』は正式名称ではないこと。あの名前を――私は、口に出さなければ、ならないのか。私がしでかした罪を聞かされた時に一緒に教えられたあの名を。

「……」

「いいのか? このままでは貴様ら全員、『ファウード』の胃液に落とされ、溶かされてしまうぞ」

 そんなこと、わかっている。でも、いつまで経っても私の口は動いてくれない。喉は震えてくれない。勇気を振り絞れない。ここで答えなければみんな、死んでしまう。だから、答えろ。答えろ。答えろ、答えろ! 答えろ!!

「……耳、塞いでくれるか」

 力強く握りしめすぎたせいで爪が掌を傷つけたのか、ポタポタと両手から血がしたたり落ちる中、静かな声でハチマンがみんなにお願いした。今まで私が口を噤んだ時は決まって私の過去がばれそうになった時だ。だから、今回もそうだとハチマンはすぐに察してくれたのだろう。

「サイ、耳を塞いだぞ……だから、答えていい」

 それから数秒ほど経った後、ハチマンは私に声をかけた。リールに掴まっている状態では私のことは見えない。もちろん、私も崖の下を覗き込んでいないのでハチマンを見ていない。だが、どうしてだろうか。ハチマンの傷ついたように目を伏せる顔が容易に想像できた。

 きっと、メグちゃんの時とは違い、みんなは耳を塞いでくれているのだろう。そうでなければハチマンがゴーサインを出すわけがない。私の過去を一番知りたいのは彼だが、私の嫌がることをさせたくない気持ちが一番強いのも彼だ。

「……」

 しかし、それでも私は答えられない。わかっている、わかっているのだ。みんな、耳を塞いでくれていることぐらい。でも、メグちゃんの時みたいに誰かが耳を塞ぐフリをしていたら? 可能性は低くとも0ではない。その可能性があるだけで私は動けなくなってしまう。

「頼む、サイ……答えてくれ」

 懇願するように言うハチマン。他のみんなからもお願い、という言葉が上がる。それでも私は答えられない。言葉に出すことができない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、私は――。

 


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