「・・・っと、そこでうちがこう言うたんや。『皆、騙されたらあかん!洋ぽんは人狼やで!?』とな。」
「そ、それで、どうなったんですか!?」
「結果は・・・うちの睨んだとおりやった。危うく洋ぽんの騙りに皆が騙されるところを、うちの推理が救ったんや。見事、村の勝利になったで・・・!」
「うわぁ~・・・す、凄いです!」
「・・・全く身に覚えのない話しとるみたいやけど、止めんでええのか?」
「けど、怜も楽しそうやし・・・?」
貸切のマイクロバスの中、少女たちの楽しげな声が響く。
場所は東京のとある場所。
目的地に向かうバスの中で、少女たちは思い思いに寛いでいた。
「わ、私もやってみたいです!『決まりです!人狼は初美ちゃんです!』。」
「ふむふむ。中々さまになっとるようやな。せやけど、もう少しキレがほしいわ。」
「キレ、ですか?」
「そうや。例えばこんな風に・・・」
「あらあら。小蒔ちゃんが楽しそうね。」
「っていうか、いきなり人を人狼扱いしないでほしいのですよ~。」
東京で一緒にゲームしよう。
この案を実行に移したのは園城寺怜。
まず誘ったのは同校の仲間たち。
しかし日程の関係上、誘えたのは親友の清水谷竜華だけであった。
「せやけど、まさか東京で人狼ゲームとは・・・怜やんも考えることが突拍子もないな~?」
「うちもそう思うたんやけど・・・」
「実際、ここまで集まっとるわけですしね。」
次に声をかけたのは姫松高校麻雀部。
しかし先日共に遊んだそこのメンバーも、やはり日程の関係上誘えたのは2人だけ。
それが愛宕洋榎・絹恵の姉妹であった。
「でも、その話がこっちに来るなんてね・・・」
「正直、予想も出来なかったのですよ~。」
「・・・予想できるほうが不思議・・・」
「だけど、話を聞いた姫様がやる気になっちゃいましたし・・・」
さすがに4人では味気ない。
ほかにメンバーはいないかと洋榎に問いかけた怜に、『それならうってつけの奴がおるないか!』といって連絡をしてくれたのは・・・
清澄高校麻雀部部長。
謎の人脈を持つ女、竹井久であった。
「・・・でも、それで永水の名前が出てきたときには驚きましたわ・・・」
「ほんまやな。てっきり長野の関係者とか紹介してくれるん思うてたのに・・・」
彼女によれば、ちょうど向こうの一年生と連絡を取っていたばかりであり、向こうもやりたそうな空気を醸し出していたとのこと。
それを聞いた怜は、すぐさま久越しに永水に連絡。
東京で・・・?とさすがに考え込んでいる石戸霞や狩宿巴ではなく、神代小蒔や薄墨初美にターゲットを絞り、見事口説き落とすことに成功したのであった。
「・・・それにしても残念ね。今回も明星ちゃん達来れなくて・・・」
「仕方ないですよ。まさか、まだ夏休みの宿題の大半が終わってなかったとは思いませんでしたから・・・」
「宿題は計画的にやらなくちゃ駄目なのですよ~。」
「・・・うん・・・」
「・・・一応聞いとくけど、当然2人は大丈夫なのよね・・・?」
「「・・・も、もちろん(ですよ~)・・・」」
「ならいいけど・・・」
「・・・『分かりました!人狼は・・・霞ちゃんです!』。」
「おぉ!まさにその感じやで!」
「あ・・・ありがとうございます!園城寺さん!」
「ふっ・・・苦楽を共にした、うちらの仲やないか。気楽に怜やんって呼んでええで?」
「!・・・は、はい!怜やんさん!」
「・・・今度は、私が人狼にされちゃったみたいね?」
「的を得た推理なのですよ~。」
「つまり何が言いたいのかしら?初美ちゃん?」
「・・・な、何でもないのですよ~・・・」
少女たちの楽しげな声は、いつまでもバスの中に響く。
永水がレンタルしたこのバスの行き先まで、あと少し・・・。
「・・・あ、見えてきました!」
「おぉ、ほんまやな。」
「ほ~?あそこがな~?」
「うちも来るのは初めてやな~。」
「そりゃ練習試合でもないと、来る機会なんてありませんしね。」
長い時間をかけ、ついに集まった少女たち。
東京での遊戯の幕が、ついに開き始める・・・!
「・・・来た・・・。」
「・・・ようやくか。ずいぶんと待たせてくれるものだ。」
「・・・ズズズ・・・」
「うわぁ・・・冗談じゃなかったんですね・・・!」
「ふっふっふ~・・・人狼ゲーム100年生の私の実力、見るがいいさ~!」
決戦の地の名は、白糸台―――!
続く・・・