咲 -saki- 人狼編   作:九尾の狐

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素の文っちゅうのは何とも書きづらいわ・・・


清澄去りし後

 

 

 

『うちはそれほど部費もらってるわけじゃないし、さすがに泊まりはね。そちらのご好意に甘えてばかりもいけないし、予定通り帰らせてもらうわ?』

『できれば観光とかもしたいとこじゃが・・・まぁ、それは後日の楽しみじゃな。』

『それでは帰りますね?穏乃たちも、体調にはじゅうぶんに気をつけてください。』

『今度会ったときには、絶対負けないじぇ~!』

『・・・それじゃあ、また今度ね?末原さんたちも、また会えるのを楽しみにしてます。今日は、本当にありがとうございました・・・!』

 

 

 

「・・・宮永・・・」

 

 夕闇が辺りをつつむこの時間。

 場所は松実館の一室に、1人黄昏る少女の姿があった。

 

「・・・末原先輩、清澄の人らが帰ってから元気無くなっちゃいましたね・・・?」

「仕方ないのよ~。本当は、もうちょっとお喋りしたかったはずなのよ~。」

「全く・・・意地張っとるんからああなるんや。」

「末原先輩・・・」

 

 本来は日帰りの予定で来ていた一同であったが、せっかくのこの機会、もっと親睦を深め合おうと宿泊することが提案された。

 それをすぐさま了承したのは姫松と千里山。

 元々が麻雀の強豪校であり、かなりの額の部費を残しているこの2校にとっては、突然の宿泊も決して不可能ではなかった。

 

「でも夕食食べ終わった後に打った麻雀でも、先輩振り込んでばかりやったし・・・」

「自動卓があったのは嬉しかったのよ~。」

「まぁ松実姉妹の実家やしな。むしろあって当然やろ。」

「末原先輩・・・」

 

 だが、清澄だけはそういうわけにもいかなかった。

 今年こそインターハイに出場し、全国から脚光を浴びるだけの活躍を見せた彼女たちではあるが、去年までは弱小どころか、その存続すらも危ぶまれていたというのがその実態。

 当然部費もわずかなものしか支給されておらず、それさえもインターハイで東京に行った際にかなりの額が消えている。

 今回の練習試合とて、日帰りだからこそ何とか実現できたというのが、その現状だったのだ。

 

「やっぱり心配ですわ。何とか元気出してもらえんでしょうか・・・?」

「こればかりは本人に任せるしかないのよ~。周りがごちゃごちゃ言っても、逆効果になるのよ~。」

「その通りやで、絹。恭子かて子供やないんや。ちゃんと自分で解決するに決まっとる。」

「末原先輩・・・」

 

 姫松の赤坂代行と千里山の愛宕監督は、清澄のそんな現状を憂い、なんなら自分たちのポケットマネーから出してもいいと提案する。

 それが心苦しいなら、貸しでも構わないとさえ言うが・・・清澄の一同はそれを拒否。

 ただ静かに、長野の地へと帰っていったのである。

 

 来年からは部費も増額間違い無しであろうが、今年はまだ切り詰めていかなくてはいけない。

 必要以上の贅沢を、するわけにはいかない。

 所詮は一弱小校というその現実は、一同にその重みをひしひしと感じさせることとなった・・・。

 

「失礼いたします。お布団のほうをご用意しに参りました。」

 

「え?・・・って、松実さんが用意してくれるんですか!?」

「悪いのよ~。それは自分たちでやるからいいのよ~。」

「ううん。お父さんが格安でいいとは言ってくれたけど、それでもお代をいただいちゃってるから・・・」

 

 なお宿泊先として名が挙がったのは松実館で、確か数室の空きがあったはずと松実姉妹が手配してくれた。

 館長である姉妹の父も、そういうことならと格安でのプランを用意。

 ただひたすらに頭を下げる大人2名をよそに、やれ温泉だやれ麻雀だ、しまいにゃ飯は唐揚げやと、生徒たちは存分にこの機を楽しんでいた。

 

「・・・そういえば、さっき高鴨が来とったよな?あいつらはもう家に帰ったんちゃうんか?」

「うん。そのことも伝えに来たの。」

 

 旅館に飯のおかずを要求し、見事それを成功するという快挙をなしとげた洋榎が、頭に出来たたんこぶをさすりながらも首をひねる。

 顔を真っ赤にした母親によって作られたそれは、すでに結構な時間が経つというのにいまだに若干の熱を持っていた。

 

「さっき穏乃ちゃんが、明日も阿智賀で遊ばないか?って言ってくれたの。今度は動画とか無しで、あくまで阿智賀の関係者だけで楽しもうって・・・」

「賛成なのよ~。それなら、私も今度は頑張るのよ~。」

「うちもですわ。今度こそ戦犯にならんよう頑張ります!」

「もちろんうちかて大賛成や!・・・おい恭子、聞こえとったか!?」

「・・・あぁ、聞こえとるで。」

 

 窓際で外を見続けていた少女が、ゆっくりとした動作で皆に振り向く。

 その瞳にあるのは、決して先ほどまでのような力無き光ではなく・・・

 

「・・・ほんなら、またうちが勝たせてもらいましょか。姫松の参謀の力、はっきりと見せ付けてやりますわ・・・!」

 

 ただ勝利のみを求める、貪欲なまでの炎。

 それが、彼女の瞳にははっきりと映し出されていた。

 

「ふっ・・・!普段はすかしとるくせに、勝負事となると途端に別人やな。それでこそ恭子や・・・!」

「なら明日に向けて、たっぷり英気を養うのよ~。」

「もちろんですわ!明日こそうちが大活躍や!」

「末原先輩・・・!」

「なんだか、とってもあったか~い・・・♪」

 

「(・・・見とってや、宮永。たとえお前がおらんでも、うちは負けへんで・・・!)」

 

 少女たちの決意が、阿智賀の夜を照らす。

 

 決戦の火蓋は、明日切られる―――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○その頃の原村邸

 

 

 

「よ~し!これで上がりだじぇ~!?」

「優希、それダウトです。めくって下さい。」

「じぇ~!?」

「やっぱりですか。そんな簡単に上がれるとは思わないでくださいね?」

「じゃあ、私がこれで上がりね。一抜け確定っと・・・」

「部長?すいませんけど、それダウトです。」

「うぐ・・・本当に、もう少し年長者っていうものを・・・!」

「代わりに、私が上がりですね。一抜けです。」

「咲ちゃん!それ絶対ダウトだじぇ~!」

「残念だけど本当だよ?ね?」

「じぇ~~~~~!?」

「・・・いかん。咲が上がってしもうた・・・」

「・・・これ、人数減ると無理ゲーになるわよね・・・」

「やろうって言いだしたのは部長ですからね?ちゃんと勝負がつくまで、最後まで付き合っていただきますよ。」

「絶対終わらないじぇ~・・・」

「じゃあ私、あっちで本読んでよう~っと♪」

 

 それなりに、清澄の面子も楽しんでいたらしい。

 

 

 

                         続く・・・

 

 




ってなわけで投稿しました。
次のゲームまでは書き終わってますが、それはもうちょいお待ちを。
主に修正とか修正とか気分とか。


中学生の頃、卒業記念ということでみんなに海へ行きました。
宿泊施設で羽目を外した結果、友達が女将に飯のおかずの変更を要求。
女将は笑いながら変えてくれましたが、裏でブチ切れていたんじゃないかと恐々していました。

若い頃って、何でも出来たよね・・・(遠い目)

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