真・恋姫✝無双 狐来々   作:teymy

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『チョコを貰わない』という意味での"逆チョコ"(涙)


取り敢えず閑話だけど書けました!
このまま本編も書き進めていきたいですね。展開は決まっているので後は文章をひねり出すだけでございます。

そして感想返しできなくてごめんなさい!
『お帰り』や『待ってた』等のお言葉、本当にうれしかったです!有難うございました!


今回は実験的な書き方。読みにくかったらすみません。


閑話 時には武器を置いて 其の八

桃香たちが芙陽を見送ってから。

 

それぞれの武官、文官は早速仕事を始めた。

まだまだ徐州でやらなければならないことは多い。芙陽と桂花、葵が一時離脱したことは痛いが、そもそもが三人に加えて星、恋、音々音は客将扱いである。更に言えば元々恋が率いていた呂布隊の主は現在芙陽。つまり呂布隊そのものは芙陽個人が所有する戦力であり、謂わば私兵であり、それを"貸与されている"という状況なのだ。

厳密にいえば劉備軍の臣下は武官に関羽(愛紗)張飛(鈴々)公孫賛(白連)。文官に諸葛亮(朱里)鳳統(雛里)賈詡()である。

しかし、現在劉備軍の中で最精鋭の部隊は最強二人が率いる呂布隊。困ったことに借り物の部隊が最高戦力なのだ。

桃香達がしなければならないのはこの状況から最低限抜け出すことだった。遊んでいる暇など微塵もない。

白連が袁紹に攻められ、桃香が袁術に攻められた。乱世は既に始まっているのだ。

 

 

 

そんな劉備軍の中で最高戦力となった呂布隊。

 

劉備軍と合流してから、実は本日初訓練である。

勿論各自で自主的な鍛錬などは暇を見て行ってはいたが、軍としての訓練はこれが初である。

 

今日この日、後に『大陸で最も敵対してはならない部隊』として名を轟かせる新生・呂布隊が誕生した。

 

というのも、まず呂布隊の主が変わった。呂布隊を率いる将軍は変わらず恋だが、その恋の主が董卓から芙陽となったのだ。董卓への忠誠は揺ぎ無いものだったが、自分たちが信じて付いてきた将軍を、自分たちが見守る中で下した芙陽は主として申し分なかった。

自分たちの主が人外であることについては、兵士達は桃香たちが驚くほどに気にしていなかった。そもそもが今まで圧倒的な恋の力に心酔してきた者たちである。その恋を上回る力を示した芙陽に対する敬意は当然であった。

『元々呂布様がバケモンみたいなもんだし、今更っすよ!』

そう爽やかに告げた一人の兵士は、仲間たちから制裁を受けた。

 

最大の変化は呂布隊に副長という役職が出来た事である。今までにも副長らしき者はいたが、言葉少ない恋の指示を実現させるために音々音が声を張り上げ、それを聞いた各部隊の長が動く。しかし、軍全体の副長はいなかった。強いて挙げるならば軍師の音々音がその役割であった。

その副長の座に、新たに星が就いた。芙陽、桃香、朱里、雛里が満場一致で推挙した。

恋がまともに将としての務めが果たせるかと言えばそうではない。恋が率いてきた部隊ではあるが、その実、今まで兵を動かして来たのは音々音である。その音々音は武官ではなく、文官である。ならば文官としての仕事を全うしてもらい、兵を動かすのは将に任せようという流れは至極当然であった。

しかし、呂布隊は劉備軍ではなく、芙陽から貸し出された部隊である。愛紗や鈴々を将に付けても不都合が起きる可能性は高かった。

 

ならば、もう星をそこに放り込んでまとめて『呂布隊』で借りてしまおうという訳である。

 

 

 

 

さて、そんな星が訓練初日に何をしたかと言えば、恋との模擬戦である。

 

星は自分がこの部隊に配属されるであろうことは最初から予想していた。何しろ芙陽から桃香に貸し出されている将は自分しかいないのだ。葵は今でも芙陽直属の隠密であり、桂花は軍師。月はそもそも侍女である。自分に白羽の矢が立つのは自明であった。

だからこそ、星は予めこの部隊の様子を注意深く見ていた。

 

そして、芙陽の従者とはいえ初対面の自分が簡単に受け入れられることは無いと、気付いていた。

兵士達には自負があった。自分たちはあの『天下無双』の部隊なのだと。

董卓軍の中でも精鋭として数々の闘いを制し、反董卓連合と言う地獄の中、劉備軍が見逃したとはいえ死地を脱し、物資を切詰め満足に腹を満たすこともないまま、盗賊に身を落とすことなくここまで生き抜いてきたのだという誇りがあった。

 

だからこそ星は恋相手に模擬戦を行った。ここで実力を示し、自分はお前たちの上に立てる人間なのだと、証明してやるのだ。

勿論恋に勝てるなどとは思っていない。芙陽相手にあれほど戦えるのだ。星はあくまでも人間規格で強いのだ。化物にはまだ遠い。

 

だがこれまで、この世界で最も多く最強(芙陽)相手に戦ってきたのは、紛れも無く一番弟子の星である。

故に身に付いた、"格上との戦い方"。

 

"対化物"という一点において、星はこの世界で誰よりも前を走っていた。

 

芙陽はこの世界に来てから、何回か稽古を付けている。出会ったころの星相手であったり、曹操配下の楽進相手にである。

しかし芙陽の臣下となってから、星の稽古厳しさは増した。信じられないほどに増した。

普段から飄々として、師に似たのか元からなのか、他人を揶揄う事に全力を注ぐ星。

自分の弱い部分など他人に見せたくなかったが故に、芙陽に稽古を付けて貰うたびに『今日も勝てなかった』とニヤリと笑いながら愛紗に言う。

 

しかし内心では、『今日も生き延びた』と感涙にむせぶのだ。

それほどまでに芙陽の稽古は(星にとって)厳しいのだ。(芙陽は遊んでいるが星は)命がけなのだ。誰にも見せられない"秘密特訓"と称される(星の)命のやり取りなのだ。

正直、同じように鍛錬を付けられている葵と言う励まし合う仲間がいなければ心が折れていた。葵が生まれる前は何度か折れた。昇り龍は何度も地に叩き付けられた。

それでも稽古(地獄)を生き抜いてきたのだ。

 

だからこそ、恋相手に臆さず戦うことが出来る。化物相手に、勝てはせずとも戦い抜くことは出来る。

その光景は兵士たちを認めさせるには充分すぎた。

やがてどちらともなく距離を置き模擬戦を終わらせると、既に兵士たちは星を尊敬の眼差しでしか見ていなかった。

この時、星は己の成長を肌で感じ、あの苦労は無駄ではなかったと内心でまた泣いた。今夜はとっておきのメンマを出そうと心に誓った。

 

と、ここでやたらフリフリした服装の侍女が模擬戦を終えた星と恋に水を差し入れに来た。

 

そして兵達は気付く。『おいあれは董卓様ではないのか』と。

 

恋の世話を芙陽(ご主人様)から任された月である。

当然星も気付く。『そういえばこいつら元董卓軍だったな』と。模擬戦で流れた汗が急激に冷えていく。冷たい汗が背中を伝う。

顔を隠していたとはいえ、董卓が最も信頼していた部隊が呂布隊である。当然月の顔も知っていた。兵士達は皆、儚げな董卓を守るために奮起したものだ。

そして死んだはずの元主が差し入れに来たのだ。混乱の極みである。

 

月も考えての行動であった。自分が来ているのは他の侍女とは一線を画す"メイド服"なのだ。非情に目立つ。

そんな目立つ存在が恋の世話をする。兵士たちが気付かない筈がない。

 

だからこそ先手を取りに来たのだ。

 

月は恋と星に水を差しいれると、『侍女の身でありながら失礼します』と断りを入れて兵士たちに語り始めた。

自分が芙陽に命を拾われたこと。恩に報いるため、名を捨てて新たな生を歩んでいること。自分がここに居ることが広まれば、芙陽と桃香の両名に多大な迷惑が掛かること。

真摯に、丁寧に説明し、最後に『どうか私の事は忘れ、唯の侍女として接してほしい』と頭を下げて締め括った。

忠誠は芙陽に移っても、月に対する敬意は忘れなかった兵士達。全員がその場に跪いて月に答えた。

 

月が去った後も、兵士たちの興奮は冷めなかった。

死んだと思い悲しんでいた元主が生きており、今の主の下で幸せそうに過しているのだ。『良かった良かった』とその場で男泣きを見せる者までいた。

そして芙陽に感謝した。月を救ったことで兵士たちの忠誠は鰻登りであった。一歩間違えれば芙陽を祀りかねない程であった。

そしてその一番弟子である星と、一騎打ちで芙陽と渡り合う恋への忠誠度も上がった。

 

こうして『俺たちの上にはスゲェ人たちがいるんだぞ』と盛り上がっていた兵士たちだが、ふと気付いた。

"たった一人の過剰戦力"、芙陽。

"天下無双"、呂布。

"常山の昇り龍"、趙雲。

尊敬し、忠誠を誓った人物たちは、その名を大陸に轟かせている。

 

そんな人物たちが率いる自分たちはどうかと。

個人の実力は折り紙付きである。響き渡るその二つ名が証明している。

だが、『呂布隊』という括りで見られればどうだろうか。

 

精鋭だという誇りはある。これまで生き抜いてきたという自負もある。皆で主を支えようと誓った絆もある。

だが万一にも、そんな自分たちが力及ばず敗走してしまえば。

自分たちが弱かった所為で、主たちの名に傷がついてしまえば。

 

 

結論はすぐに出た。『死んでも死にきれねぇぞ』と。

 

 

この日から、新生呂布隊の練度はメキメキと上がって行った。

士気落ちること無く、慢心も無く、忠誠も高く。夢のような部隊が出来上がって行った。

 

芙陽が帰還し、直接部隊の指導を始めると、その練度もさることながら、兵士一人一人の能力もまた上がった。

 

小隊から更に細かな班編成が成され、指示系統を明確化して混乱を防ぐ。この編成を定期的に再編成することで殆どの兵士が一定の指揮能力を得た。この結果を朱里に伝えたところ『成功するとか頭おかしいんですか?』と絶賛された。

 

乱戦からの部隊編成訓練などは日常的に行われるようになると、乱戦状態に陥っても呂布隊は各々の判断で迅速に陣形を立て直せるようになった。この結果を雛里に伝えたところ『将要らずとか頭おかしいんですか?』と絶賛された。

 

一小隊によるその他全部隊相手の模擬戦、葵による"対隠密実践訓練"、普通の訓練の最中突如芙陽と恋が決闘を始めるなど、かなりの無茶振りに必死になって付いてきた結果、兵士たちは少々の事では動じない精神力を手に入れた。この結果を詠に伝えたところ『目の付け所がおかしい。なにより脱落者がいないとか頭おかしいんじゃないの?』と絶賛された。

 

愛紗と鈴々は同じことをしようと桃香に申し出るが、『あれは数々の奇跡が重なった結果だから決して真似しようとしないように』と厳命された。

 

尚、この部隊がここまでの力を得るにあたり、最も尽力したのは桂花、音々音の軍師二名である。芙陽の無茶振りに星の悪乗り、恋の無責任な『できる、よ?』の言葉により多数決ですら止めることが出来なかった二人は地獄を見た。

この地獄の中めげずに芙陽の無茶振りに応える桂花に感銘を受けた音々音は以後、桂花の補佐として活躍していくことになる。

 

 

 

 

こうして出来上がった新生呂布隊は、乱世を戦い抜く最中に更なる経験を積み、新たに拵えた真紅に金文字の『陽』という旗は、大陸最強の部隊としてその名を知らしめていくことになる。

 

この"真紅の陽旗"。

"常山の昇り龍"が指揮を執る最強の部隊という意味の他に、旗の下には"天下無双"がおり、戦場のどこかに"たった一人の過剰戦力"が現れることを示す証として、『決して相対してはならない』と広く語り継がれていったのだ。

 




部隊名、何かいいの無いですかね…。
最初は『芙陽直属遊撃呂布隊』とか言う波風ミナトでももうちょっと捻るわって名前でした。

今回、メインは個人ではなく部隊という事で直接的な会話シーンを排除してみました。
難しいですな。最初はホントに設定集みたいな書き方になっちゃって消しました。
そしてこの書き方で制限しながらも出来るだけ多く書いてみようと思い立ち、結果ちょっとくどくなった気がします。
まぁ、そこは出来るだけ改行や『』の回想台詞でごまかし、ごまかし…できてるのかコレ?

次は本編書きます!よろしくお願いします!


急に来た友人からのメール
「闇堕ちってどうやったらできるの?」
自分で!?


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