真・恋姫✝無双 狐来々   作:teymy

4 / 43
どうも、地元の祭りを控えて忙しい作者です。
なんだか瞬く間にお気に入りが50、60件と増えていきました。
皆様には感謝の一言に尽きますね!

今回は皆大好き雌猫ちゃんの登場です。


第二話 狐と雌猫

「良いか、よく聞け。……ここを野営地とする!」

 

「野営って、ここ何の変哲もない唯の道端ではないですか!」

 

白い着物を着た狐の男と眼鏡の少女が吠えていた。

 

現在芙陽たちがいる場所は、稟の言う通り道端である。しかし周囲の環境が良くなかった。

稟たちも旅を続けてきたから野営には慣れている。だが、それにしても野営に適する場所を慎重に選んでやってきた。人間が心理的に落ち着くとされる、大きな岩がある場所や森の中の少し開けた場所。または川の近くなど、夜盗や獣に襲われたとしてもすぐ対応できるように、様々な条件を吟味して夜を過ごしてきたのだ。

今回芙陽が野営地と提案しているこの道端は、見渡す限り荒野の、道のど真ん中であった。こうなると全方位に注意を向けなければならないし、背中を預けるものが無いのは落ち着かない。十分に休むことは望めないだろうと稟は考えていた。

 

「しかし次の街へ進むにはもう暗いし、体力も持つまい。安心せい、儂が一晩くらい番をしてやる。

 なに、今夜は満月じゃ。明りには事欠かないから周りも良く見える」

 

芙陽は暇な時ほどよく昼寝などをしているが、その実睡眠らしい睡眠はとることが少ない。元より夜行性の狐なのだ。

 

「今宵一晩休んだとして、明日には街へ辿り着ける。無理に夜の闇を進んで危険を冒すこともあるまい?

 それに、風もお主も体力は残しておくべきじゃ。いざというとき動けなければ命を落とすことになるぞ」

 

「う、ぐぅ…」

 

全くの正論を述べられて、稟は呻くしかない。

彼女としても、野営地がこんなにも無防備でなければ夜通し歩こうなどと思わないのだ。

その上芙陽が夜あまり寝ることがないと知ってるので、寝ずの番をしてくれるというのも有難い話であった。

 

「はぁ、わかりました…では、申し訳ありませんが私たちは休ませていただきましょう」

 

芙陽が旅に加わって一月ほど。稟にも芙陽の性格はある程度理解できている。

芙陽を一言で表すとすれば『底が見えない』や『何をするか分からない』だろう。

まず出てくるのが『自由』。それも『凄まじいほどの自由』だ。

とにかく気まぐれで行動するので予想は困難であった。

ある日、通り過ぎるだけの村でなんとなく別行動をし、いつの間にか村の子供たちと仲良くなっていたと思ったら村の近くの洞窟に大きな熊が潜んでいるという情報を掴んでいた。

星は討伐すると意気込んでいたが、『先に行って様子を見ている』と芙陽は忽然と姿を消した。星は急いで村人集め、いざ出発しようとした矢先に先行した芙陽が人の三倍はあろうという巨大熊を引き摺って戻ってきたのだ。その日は盛大に熊鍋が振舞われ、結局村に一晩滞在した。

 

このように芙陽は稟の予定を悉く狂わせ、稟としても最初こそ嫌気が差していたものの、夜などに聞くことができる芙陽の語りは軍師を目指す稟や風にはこれ以上ないほど興味深いものであり、考えさせられる話ばかりだった。振り回されるばかりではあったが、結局芙陽を嫌うことが出来ずにここまでやって来たのだ。

最近では芙陽が何を言おうと溜息ひとつで順応できるようになった。流されているだけだということには気付いてはいけない。

 

星や風はむしろ芙陽に嬉々として便乗していた。元々性格が似たような二人、馬が合ったのだろう。芙陽が何か言い出しても、最初は驚きこそするものの次には『面白そうだ』と芙陽と同じくニヤリと笑うのだ。

 

芙陽の性格を語る上で欠かせない要素がある。『悪戯好き』だ。

普段会話をしている中でも必ずと言っていいほど茶々を入れる。主に被害に遭っているのは稟だが。

朝起きると目の前に巨大な蛙がいる。主に稟の目の前にいる。

川で水浴びをしていると水中に引き摺り込まれる。主に引き摺り込まれているのは稟だ。

更に、稟が激しい妄想をすると鼻血を噴き出すという特殊な癖があると知られてからは、扇情的な女性姿で現れたり、男性姿で耳元で囁かれたりした。その度に鼻血を噴き出す稟にも問題はあるが。

流石の稟も一度文句を言ったが、『人をからかったり誘惑するのは狐や狸なら当然じゃ』と言われれば納得してしまう。…理不尽にも程があるが。

 

そんな困った性格の芙陽だが、『子供好き』という一面も見せる。村や街に立ち寄った時、子供たちが遊んでいるところを優しい眼差しで見守っているところを何度も見ることができた。時には子供たちに囲まれていることもあった。そんな時は常に柔らかな顔をしており、狐とは思えぬ母性を感じることができた。

また、普段大雑把な野性味あふれる言動とは裏腹に、雅を解する上品さも持っていた。稟たちも芙陽の知識の多さや智謀は知っていたものの、詩や草花の造詣にも深いことは驚かされた。

 

「荷物はまとめてすぐに動けるようにしておけ。外套も着て体を冷やさぬようにの」

 

懐から煙管を取り出して、妖力で火を付けながらその場に座る芙陽。

この時代に煙管など無い。これは芙陽が持参したもので、刻み煙草も自由に補充できる優れものだ。愛煙家である芙陽は現代的な巻煙草も好んでいるが、時代が時代なのでこちらを用意したのだ。

煙を好んで吸う芙陽に最初は怪訝な顔をした三人だったが、異国の嗜好品であると説明されると一応納得した。

 

芙陽に言われてそれぞれ寝る準備を始めた三人だが、ふと芙陽が立ち上がる。

 

「芙陽殿。どうされた?」

 

「この先で誰か襲われておる……女じゃな。相手は男、6人じゃろ」

 

「!!」

 

遠くを見つめながら報告する芙陽に、星が槍を手に持ち立ち上がる。

 

「芙陽殿!」

 

「先に行く、荷物を纏めて追って来い」

 

「わかりました~」

 

「我々もすぐに行きます」

 

そういった瞬間、目にも留まらぬ速さで駆け出した芙陽。三人も急いで荷物を背負い走り出した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

Side ???

 

「ハァ、ハァ…!」

 

喉が熱い。焼けてしまいそう。もう走りたくない。

元々走るのは苦手だ。体を動かすのは私の役割じゃない。

 

それでも走らなきゃいけない。このまま止まってしまえば…

 

「いい加減諦めろ女ぁ!!」

 

「殺したりはしねぇからよ!」

 

後ろに迫ってくる盗賊たちに捕まってしまう。

冗談じゃない!私は"男"が嫌い。同じ空気を吸うことだって許したくない。

だけど、もしここで捕まってしまえばどんなことをされるか。想像しただけでも鳥肌が立つ。吐き気がする。

だから必死で逃げる。旅の荷物なんてとっくに捨ててしまった。少しでも体を軽くしなければ逃げられなかった。

最初に馬を殺されてしまったから、そうするしかなかった。

 

「ハァ、…あっ!」

 

体力の限界なのだろうか、それとも考え事をしていたせいか。無様に躓いて転んでしまう。

擦りむいた膝から血が流れ出す。でも気にしてる余裕なんてない。獣はすぐそこに迫っている。

 

立ち上がろうとしても崩れ落ちる。既に体力は使い果たしていた。足が震えていう事を聞いてくれない。

ここまでだろうか…そう思いながら懐の刃物を取り出した。

 

「なんだ?それで俺たちに勝てると思ってんのか?」

 

「立ち上がれないくせによぉ…もう諦めちまえよ!」

 

下品に笑いながらゆっくり近づいてくる。周りを見てももう半ば囲まれてしまっていた。

絶体絶命。恐怖で体が震え、涙が溢れ出てきた。このまま取り押さえられ、服は破かれ、犯されるのだろう。

絶望に飲まれながら考える。このまま最悪の末路に飲まれるくらいなら、いっそ死んでしまったほうが良いに決まっている。

 

そう思い、刃物を首に近づけた。

 

 

 

「折角の満月じゃ。無粋なことをするものではないよ」

 

 

 

すぐ後ろから声が聞こえて、思わず手を止める。

振り返ると、月明かりに照らされた美しい金色の髪をした、白い着物の男が立っていた。

 

いつの間にそこにいたのだろうか?さっきは誰もいなかった。正に突然現れた男に、思考が追い付かない。

 

「あ?テメェいつの間に来やがった?」

 

「なに、少し走ってきただけじゃよ。それよりお主等、この美しい月夜に免じてこのまま引き下がらんかね?

 この娘の血で景色を汚すには勿体ない程の満月じゃ」

 

夜空を指さしながら優雅に笑う男に、盗賊たちが笑い出した。

 

「ギャハハハハ!確かにキレーなお月さんだがな、俺たちにゃ関係ねぇ!それよりお前も殺されたいか!?」

 

「その腰の武器は飾りかよ?口だけでこの場を切り抜けようってか?」

 

「お前さん殺して娘犯して、俺たちは良い思いさしてもらうからよ、死ねや!」

 

一人の男が剣を振りかぶって駆け出した。白い着物の男はそれをただ見ているだけだった。

私は何もできず、ただこのまま殺されてしまうのだろうと目をつぶった。

 

「ぐぎゃ!」

 

一つ声がして、恐る恐る目を開ける。

そこには予想と異なり、いつの間にか倒れて呻く盗賊と、盗賊の腕を掴んだまま立つ白い着物の男がいた。

 

「走り方、腕の振り方、剣の持ち方、目線、受け身、顔……全部不合格じゃな」

 

最後の顔は関係無いんじゃ…場違いに呆れてしまう。

着物の男は少し足を上げそのまま盗賊の首に添えると、

 

「うっ」

 

ゴキッ!

 

力を入れて捻る。盗賊の首からは固いものが折れる音がして、そのまま沈黙した。

あまりにも自然に盗賊を死に追いやったことが、残った盗賊たちの恐怖を煽る。

勿論私も恐怖していた。白い男がこちらに近づいてくる。体は依然震えている。

 

「……ひっ」

 

目の前に男が来たことで、小さく声が漏れてしまう。

 

しかし、男は優しく笑うと、柔らかく私の頭を撫でた。

懐から布を取り出すと、私の擦りむいた膝に巻く。

 

「安心せい、お主はただそこにいれば良い。すぐに終わるからの」

 

諭すような声色に、男の顔を見た。何故だろうか、私の身体はもう震えていなかった。

 

男は私の前に立つと、腕を組んで声を出す。

 

「さてお主等、このまま引き下がるも良し、向かってくるも良しじゃ。好きな方を選べ」

 

月明かりに照らされて、男は美しくニヤリと笑った。

 

Side out

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

芙陽は向かってきた盗賊相手に刀を抜こうとはしなかった。

全ての攻撃を避け、すれ違いざまに首を掴み、人間では出すことのできない力で捻り潰す。

それを5回繰り返し、終わった時には芙陽と唖然としている少女しか残されていなかった。

 

「全員不合格じゃな」

 

ケラケラと笑いながら少女を見ると、目を見開いたままこちらを見ていた。

 

「怖がらせてしまったかの?」

 

苦笑いしながら近づけば、慌てて立ち上がろうとするものの、腰が抜けたのか再び崩れ落ちる少女。

かぶっている頭巾は猫のような耳の形をしており、動くたびに愛らしく揺れる。

 

「あぁ、良い良い。しばらく楽にしておれ」

 

「……そうね、そうさせてもらうわ。

 それと、一応感謝しておくわ。あのままだったらもう死ぬしかなかったのだし」

 

諦めてその場にペタンと座り込んだ少女は、未だ芙陽を警戒しながら不機嫌そうに礼を述べた。器用なことをする。

 

「それで?助けてもらった私が言うのもあれだけど、なんで私を助けたのよ?

 私を助けたとしてもあなたに得があるとは思えないわね……」

 

そこまで言うと、ハッと思い出したように自分の体を抱きしめて芙陽を睨む。

 

「私の体が目的なんでしょ!?『助けたんだから抱かせろ』とか言って迫るんでしょう!?

 このままどこかに連れていくんでしょう!そして私にいやらしいことをするんだわ!薄い本みたいに!」

 

「お主が男を嫌うのはわかったが、結論を急ぎすぎじゃの。そして時代に合わない発言はやめよ」

 

やれやれと溜息をつきながら懐から煙管を出す芙陽。そのまま火をつけて咥えると、煙を吐き出す。

 

「何よその煙。……まさか危ない薬?」

 

「これは煙管と言うての、異国の嗜好品じゃよ。多少の害はあるが旨いからの。酒のようなものじゃ」

 

「フーン…外国って変なものを好むのね…。それで?」

 

「うむ?」

 

「結局なんで私を助けたのよ?やっぱり体?体が目的なの?」

 

「お主のような小娘に劣情なぞ催さんわ」

 

呆れながら芙陽が言うと、小娘と言われた少女は憤慨した。どうすれば良いのかわからなかった芙陽は無視して話を続ける。

 

「最初に言ったじゃろ。今宵は満月が美しいからの」

 

「はあ?それがなによ?」

 

「聞いておらなんだのか?この月夜に血は無粋じゃよ」

 

「……それだけ?」

 

「そうじゃ」

 

「じゃあ、もし今夜月が出ていなかったら…」

 

「お主など放っておったかも知れぬのう」

 

ケラケラと笑う男に、冗談かと思った少女だが、周囲を見て考える。

少女を襲おうとしていた盗賊たちが死んでいる。一滴も血を流さずに(・・・・・・・・・)

全員が首の骨を折られて死亡していた。

少女は芙陽の言った言葉を思い返す。

『血は無粋』

その言葉の通りにこの場には血の一滴も流れていない。少女の擦りむいた膝に滲んでいるだけだった。しかしその傷も芙陽の巻いた布に隠されている。

少女は確信する。根拠には乏しいが、芙陽の言っていることは真実だと。

同時に月夜に感謝した。もし月が隠れていたのなら、少女の命はここで果てていた。

 

「……助けてくれたのは感謝するけど、もう少しマシな理由でお願いしたかったわ」

 

「カカカッ。何を言うか、助かったのだからそれで良かろう。それよりお主も月を愛でておけ。

 これほどの満月はそうそう見れるものではないよ」

 

「――まさか野営を言い出したのも月見のためではないでしょうな?」

 

突然掛けられた声に振り返ると、息を乱した三人娘が現れた。

 

「いや、遅かったの。そして星、ほぼ正解じゃの。じゃが先程の理由も嘘ではないよ」

 

そういう芙陽に苦笑いを返す星は、未だ座り込んでいる少女に声を掛けた。

 

「大丈夫か?見たところ大きな怪我はないようだが」

 

「えぇ、あの煙男に助けられたわ。ふざけた理由だったけど、本気なの?」

 

座り込んで動かない少女だが、悪態をつくほどには回復したらしい。

少女の問いに答えたのは息を整え終えた稟だった。

 

「無事で何よりです。そしてあの方の言うことはまず間違いないでしょう。

 冗談を言う事もありますが、人をからかう時にも嘘らしい嘘はつかず、理論武装で翻弄させて来るようなお方です」

 

「人聞きが悪いのう」

 

「事実でしょう。……と言うことで、今回もあの方の気まぐれで人助けをしたのでしょう」

 

「我が道を突き進んでいるわね…」

 

「壁があったらすり抜けるようなお方ですからね~」

 

「意味がわからんぞ」

 

やっとのことで調子を取り戻した風も会話に参加した。

座り込んでいた少女も、腰が回復したのかゆっくりと立ち上がろうとしている。

 

「全く!助けてもらったのは本当に感謝するけど、これだから男は嫌なのよ!いつもいつも自分勝手で、野蛮で!」

 

「おや、そこまで男が嫌いであったか。ならばこっちならどうじゃ?」

 

ニヤニヤと笑う芙陽に、稟が慌てる。

 

「まさか、まっ…!!」

 

ポンッっと音がして煙を出すと、やはり芙陽は女の姿になっていた。

依然ニヤニヤと笑っている。

 

「はぁ…」

 

「なっ、……え!?」

 

頭を抱えて溜息をつく凛と、混乱して再び尻餅をつく少女。

 

「どうじゃ?これならお主も文句はないじゃろ?」

 

妖艶な笑みを浮かべながら近づいてくる美女に、少女は顔を赤くして息をのむ。

月明かりに照らされた芙陽の美しさは、姿を変えたという事実を少女の頭から追い出した。

 

(綺麗……)

 

なにも考えることが出来なくなった少女は、唯々芙陽に見とれるばかりとなっていた。

その間に芙陽は少女の目の前で屈み、愁いを帯びた表情で少女の頬に手を伸ばす。

 

「儂の事が嫌いなどと…寂しいことを言わないでおくれ…」

 

「は、はい…」

 

少女は最早考えることを完全に放棄していた。頬を撫でられて好悦としながら見つめ合う。

 

「芙陽殿。いたいけな少女をからかうのはあまり関心しませんな」

 

「はっ!?」

 

星の言葉に我に返る少女は、ビクリと震えて芙陽から距離を取った。

 

「あっ、アンタ!何物よ!妖怪の類!?」

 

「カカカッ。今更強がっても可愛いものよ。お主は猫の妖かの?」

 

「これは唯の頭巾よ!私は人間なんだから!!」

 

顔を真っ赤にしながら地団太を踏む少女に、稟が溜息をついた。

 

「はぁ。芙陽様も貴女も、その辺にしてください。それで、貴女はこれからどうするのですか?」

 

「何よ。アンタも妖なんじゃないの?」

 

「この場に妖は芙陽殿一人だけですよ。私たちはれっきとした人間です」

 

「なんで妖怪なんかと一緒にいるのよ!」

 

「妖怪なんかとは失礼な小娘じゃな。喰ってしまうぞ?」

 

「ひぃ!?」

 

「芙陽さ~ん、話が進まないのでぇ……」

 

「わかったわかった」

 

煙を吐き出して黙った芙陽を確認してから、稟が話を続ける。

 

「まぁ、確かに妖怪『なんか』とは言いすぎですね。私たちは芙陽殿の深い知識と世を見通す思慮深さに感銘を受けて旅を共にしています」

 

多少話を盛った部分があるものの、少女を説得するために凛は話した。

 

「私は武者修行として旅の共をしている。芙陽殿に稽古を付けて貰いながらな」

 

「なによ、強いのはさっき見たけど、頭もいいの?」

 

「何千年も生きてきた老骨狐さんらしいですからね~」

 

「風、お主から喰ってやろうかの?」

 

「狐?」

 

「うむ?儂は狐の妖じゃよ、ほれ」

 

そう言って狐の姿になる芙陽。

 

「ひっ……おっきいわね…」

 

「おや?この前見た時よりも随分小さいですね?」

 

「これより大きいの!?」

 

芙陽は以前稟たちに見せた本来の大きさではなく、屋敷にいたころの大きさになっていた。

 

「あまり大きいとそこの娘が怖がるからの」

 

「……お気遣い感謝するわよ…」

 

ムッとしながらもそういう少女は、芙陽の存在に順応してきたようだ。大分恐怖心が薄れている。

それを確認した芙陽は再び人間の姿(女)になり、再び煙管を咥えた。

 

「さて、私たちの話は良いとして、貴女はどうしますか?」

 

「どうするって…荷物も全部なくしちゃったし、近くの街に士官でもするわよ」

 

「士官?」

 

「これでも軍師なのよ。以前は袁紹の下にいたわ」

 

「ほう…それで近くの街というと…公孫賛の街か?」

 

「そうなるわね」

 

「ふむ…私もご一緒しよう」

 

「星?急にどうしたのですか?」

 

「いや、そろそろ私の路銀も尽きてしまうのでな。ここらで一稼ぎしようかと」

 

「ふむ。儂もじゃな…星、娘。その士官、儂も付き合おう」

 

「芙陽殿までですか?……風はどうします?」

 

「どうしましょうね~。芙陽さんも星ちゃんもいないとなると、道中の危険が増しますし~」

 

「では取り敢えず明日街に行って、それから決めましょう」

 

「そうじゃの……そういえば娘、お主の名は?」

 

「むぅ、私は荀彧。字は文若よ」

 

(荀彧とな…見殺しにせんで良かったの…)

 

「そういうあなたの名は?」

 

「儂は芙陽という。空孤の妖じゃ」

 

「私は戯志才と言います」

 

「程立と言います~」

 

「私は趙雲、字は子龍だ。よろしく頼む、荀彧よ」

 

 

 

月明かりの下、狐と猫が出会う。

 

この出会いは猫にとって良いものか、はたまた悪いものかは、まだ誰も知らない。




いろんな意味で猫ちゃん狐に食べられちゃいそうですね!
逃げて~。荀彧逃げて~!

取り敢えず調子が良いので恋姫のほう進めました。
マジ恋のほうは今しばらくお待ちください…(涙)
これから赤い髪のあの子の所へ行ってから、もう少し旅を続けます。
稟と風はどうしようか…。星は恐らく白蓮ちゃんの所でしばらく働くと思いますが。
雌猫はなぁ~…。多分曹操のところにそのまま行くんだけど…。
どうしてやろうかなぁ~(ゲス顔)

誤字、脱字報告、感想などお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。