真・恋姫✝無双 狐来々   作:teymy

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ケモロリ!

↑の挨拶が感想欄で流行ってるみたいだね!
これから挨拶が思いつかなかった時便利だなとか…思ってないよ!
さて、月ちゃん泣かしてとうとう反董卓連合もこれで終わりです。
仕事ラッシュが来てちょっと駆け足です。よって最後グダったかもしれません。

一応注意しておく!キャラ崩壊ってタグにあるからね!


第二十五話 諸君らの愛した董卓は死んだ!

董卓を城から逃がすための策が、速やかに実行された。

 

芙陽は葵を呼び出し、二人を城から出した。その間に身代わりとなる死体を用意し、侍女なども全て逃がす。

死体は十常侍と一緒になって宝を漁っていた女の物だ。恐らくは彼らに侍って贅沢のおこぼれを貰っていたのだろう。状況が理解できずにいつまでも『宦官の加護を持つ私を殺して唯で済むと思うな』と喚いていた。既に加護を与える十常侍は目の前で物言わぬ肉塊となっている。余りにも哀れに思った芙陽は無視して去ろうと思ったのだが、最後の最後に何を狂ったのか襲い掛かって来たので殺したのだ。

それよりも何故去勢されていた宦官が女を囲っていたのか。切り落としても絶えない欲望に芙陽は呆れ果てた。

 

と言う訳で急造の董卓(仮)を着替えさせて隠し、既に城を出ていた葵たちと合流したのだ。

そして三人を連れて既に洛陽目前まで迫り、一兵たりとも出てこない董卓軍に『最終戦は?』と立ち止まっている連合軍の中にしれっと潜り、劉備陣営に帰還した。

 

「はい。噂の董卓ちゃんと軍師の賈詡ちゃんでーす」

 

『はいぃ!?』

 

突然帰って来た芙陽が連れてきた少女二人。その正体に全員が驚愕する。

 

「ご紹介に預かりました、董卓と申します」

 

ニッコリと笑って挨拶する董卓だが、他の面々は混乱の極みだ。

 

「待って待って!芙陽さん!?」

 

「なんじゃ」

 

「『なんじゃ』じゃないよ!?どういう事!?」

 

桃香が無意味に両手を振り回して叫ぶ。朱里や雛里たちも同様にオロオロとしていた。

愛紗は未だ驚きが治まらないのか完全に固まっているし、鈴々は事態を理解していないのか首を傾げている。

 

冷静だったのは爆笑している星と溜息を吐いている桂花だけであった。

因みに賈詡も芙陽の振る舞いに目を見開いている。

 

そこから混乱が収まるまでに暫くの時間を要した。

董卓の過去とこれまでの経緯を説明し、芙陽が面倒を見ることも伝え終えると、一同はまず盛大な溜息を吐いた。

 

「はぁ~…取り敢えずはわかったよ……じゃぁ、董卓さんは芙陽さんの侍女ってことで良いかな?」

 

「はい。構いません」

 

桃香が董卓の扱いを提案すると、董卓は静かに頭を下げて了承した。

しかし、それに異を唱えたのが賈詡、そして葵であった。

 

「ちょっと!月に侍女なんてやらせるつもり!?」

 

「そうです。芙陽様の侍女なら私がいるではないですか」

 

賈詡は大事な親友である董卓にそのような役職に就かせることに文句があるようだ。今まで太守をしてきた人間なら問題になりかねない。

葵は単純に芙陽に関する仕事を取られたくないのだろう。

 

芙陽は溜息を吐くとまず賈詡に視線を向けた。

 

「賈詡。お主は董卓をどう扱えば文句が出ないと?」

 

「それは…でも、月は元とはいえ太守なのよ!?」

 

「既に名を捨てることは決めたじゃろうに…これはお主の我儘でしかないぞ?董卓は了承しているじゃろ」

 

「ぐっ……月はそれでいいの!?」

 

賈詡はどうしても納得がいかないのか、董卓に問い掛ける。しかし、董卓は微笑むと諭すように返した。

 

「詠ちゃん…私は本来なら殺されてもおかしくないんだよ?下手な仕事をしても身元が露見すれば危ないのは芙陽様や劉備様…私達が我儘を言って良い状況じゃないよ?」

 

「……月…」

 

「それに、侍女のお仕事は楽しそうだよ?元々自分の事は自分でやって来たんだし、それをお仕事に出来るなら素敵だと思うよ?」

 

「…わかったわ…我儘言って、ごめん…」

 

董卓が笑顔で言った事に納得したのか、賈詡は素直に頭を下げた。

芙陽も微笑んでそれに頷くと、今度は葵に声を掛ける。

 

「葵よ…お主は…」

 

「芙陽様のお世話は…私が………グスッ」

 

既に葵は涙目であった。

 

「すみません…わが、ままを……でも…」

 

これが自分の我儘であることは理解しているのだろう。しかし、『芙陽の傍にいる』という仕事が出来なくなると思い不安になったようだ。

芙陽は苦笑いで葵を抱き寄せると、あやす様に背中と頭を撫でた。

 

「葵、お主を見捨てたりはしない。約束したじゃろ?」

 

「はい…」

 

「お主には仕事を任せることもある。その間の仕事を任せるだけじゃ。後は二人で協力してくれれば良い」

 

「分かりました…」

 

「良い子じゃ」

 

涙を拭いて返事をした葵の髪を撫でる。

我儘を言った事が恥ずかしくなったのか、葵は芙陽の腰に顔を埋めて黙ってしまった。

 

好きにさせておきながら、芙陽は董卓を見る。

 

「さて、董卓」

 

「はい」

 

空気が切り替わるのを感じ取った董卓は真直ぐに芙陽を見た。

 

「これが最後の確認じゃ。お主は名を捨てることになる。それで良いのだな?」

 

「はい。覚悟は既に」

 

「良かろう。……新たな名を考えねばならんかの」

 

「いいえ。その必要はありません」

 

意外な董卓の言葉に、芙陽はどういう事かと首を傾げた。

 

「と言うと?」

 

「芙陽様に救われたこの命と共に、私の真名を預けたいのです」

 

「……月…」

 

董卓の提案には予想がついていたのか、賈詡は驚いてはいなかった。

 

「しかし、それでは他の者からも真名を呼ばれることになる。それで良いのか?」

 

「はい。父と母から頂いた名を偽るよりは、と」

 

「……お主が覚悟しての事なら、儂も言う事はない」

 

「有難うございます。我が真名は月……どうかお受け取り下さい」

 

「確かに。では月、これからよろしく頼む」

 

「此方こそ、よろしくお願い致します」

 

微笑みながら真名を預けた董卓…月に、賈詡も口を開いた。

 

「ボクも真名を預けるわ」

 

「ほう?意外じゃの」

 

「ボクも預ける気は無かったわよ。でもね、月がそう決めた以上、ボクもそれに付き合う。それがボクの生き方なの」

 

「成程」

 

「ボクの真名は詠。月を悲しませたら殺すわよ」

 

「覚えておこう、詠よ」

 

賈詡…詠も真名を預けると、月が周囲にも頭を下げた。

 

「皆さんも私を月とお呼びください。これからよろしくお願いしますね」

 

「ボクも詠で良いわ。月の事をお願い…」

 

互いに真名を預け終えると、それを見守っていた桃香が切り出した。

 

「それじゃあ、私の事も桃香で良いよ。

 それで、詠ちゃんはどうしよっか?芙陽さん、詠ちゃんも名前を捨てなきゃダメかな?」

 

「詠には特に不穏な噂もついていないからの。別に隠さんでも良いじゃろ。儂等が捕縛して登用したことにすれば」

 

「じゃあ…どうかな、詠ちゃん。うちで軍師をやってくれないかな?」

 

桃香の申し出に、詠は不振がりながら聞く。

 

「本気?私は貴方達の兵を多く殺した敵の軍師なのよ?」

 

「敵同士だったんだから当然だよ。でも、それももうおしまい。詠ちゃんの力を貸してほしいの。

 それに、敵将を召し抱えるなんて曹操さんもやってるし…ね、朱里ちゃん?」

 

桃香に声を掛けられた朱里も、仲間が増えることが嬉しいのか笑顔で答えた。

 

「はい!曹操さんは虎牢関で張遼さんを捕えてます。その後普通に陣内を歩いているそうなので、恐らく将として仕えることになったのでしょう」

 

「そう…霞は無事なのね…」

 

「へぅ…良かった、霞さん…」

 

一人とはいえ仲間の安否が分かったことで、月と詠が安心していた。

 

「なら、その話受けてあげる。言っておくけど、月がここを離れる時はボクも一緒に行くからね!」

 

「へぅ、それなら私は芙陽様に付いて行きます…!」

 

「月!?」

 

急に頬を赤らめ、両手を赤い頬に添え、いやんいやんと体をくねらせた月に詠が驚愕した。

 

「芙陽様……また…一人…」

 

「芙陽様は…渡しません…」

 

その様子を見てなんだか闘気のような物を醸し出す桂花と葵。そしてそれを見て再び爆笑している星。

その場の空気はすっかりいつも通りの緩い物となった。

 

「芙陽様」

 

「ん、なんじゃ月?」

 

「"ご主人様"って呼んでも良いですか!?」

 

「月!?お願い正気に戻って!!」

 

「ちょっと!そんな羨ましい呼び方許さないわよ!」

 

「桂花ちゃん!?もうちょっと欲望は隠そうか!」

 

「詠ちゃん聞いて!私芙陽様に怒られた時なんだか嬉しくなっちゃって!」

 

「月ぇ!?こんなところでそんな事暴露しないで!?なんで新しい扉開いてるの!?ずっと見てたけど何があったのか全然分からないわよ!?」

 

「怒鳴られた時に素直になれたのがちょっと気持ちよくて…」

 

「詳しい説明は良い!言わないで!」

 

一瞬で混乱に陥る天幕の中、芙陽はすぐさま動き出す。隣に立っていた月の頭をガシッと掴み、力を籠める。

 

「月よ…」

 

「へぅ…」

 

「お主が儂をどう呼ぼうと構わんが…」

 

「へぅ…」

 

「もう少し心内を隠すことも覚えんと…」

 

「へぅ…」

 

「収拾がつかんじゃろうが!」

 

「HEAVEN!!」

 

「月えええ!!?」

 

ギチギチと鳴ってはいけない音を鳴らし、月は悲鳴を上げる。しかしその表情は何故か少し嬉しそうであった。

 

結局月が正気に戻るまで暫くの時間を要した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「いよっす、孟徳いるか?」

 

「ちょっと。貴女は他陣営なんだからもう少し礼を…」

 

「実は董卓保護したんじゃがいいじゃろ?」

 

「誰かコイツの首飛ばしなさいよ!!」

 

劉備陣営で事の成り行きを説明し終えた芙陽は、恐らく問題となるだろう月の存在を秘密裏に合理化してしまおうと曹操の下へ訪れた。

曹操ならば月の存在を割り出すくらい訳ないだろう。隠し続けても必ず露見する。そこで予めこちら側に引き込んでしまおうという芙陽の思惑があった。

 

「月。来い」

 

「はい、ご主人様」

 

「……ご主人様ぁ?」

 

「月、ヤメロ。その呼び方は…」

 

「そんな…!」

 

「あら、別に良いじゃない。その子も望んでいるようだし、好きにさせてあげれば?」

 

「有難うございます、曹操様。私は董卓…芙陽様に命を救われ、その事でお話が合って参りました」

 

曹操と月は静かに挨拶を交わす。月の軽い説明だけで、曹操は殆どを察したようであった。

 

「成程、芙陽はその子たちを助けたわけね。それで、私達にそれを認めろと?」

 

「聡いの」

 

芙陽は流石だとケラケラ笑っているが、曹操は逆に不機嫌になっていった。

ここで月を保護したことを黙認すれば、他陣営が月の存在を嗅ぎ付けた時、巻き添えを喰らう可能性があるのだ。

 

「私がそれを認めると思う?」

 

いくら芙陽の頼みと言えど、その所為で自分の国と民を危険にさらすことは出来ない。曹操には彼らを守る義務があるのだ。

 

「ま、"董卓"を隠しているのであれば、儂もこんな無茶なことは言わん」

 

「……既に影武者がいるのね?」

 

董卓の名を強調して言った芙蓉の言葉に、曹操も芙陽がしようとしていることが見えてきた。

 

「然り。既に"董卓"はある場所で物言わぬ肉塊となっておる。お主にはそのある場所を教えようと思っての」

 

「それを対価に"そこの娘"の身柄をよこせ、と言う事ね?」

 

曹操がニヤリと笑う。芙陽も同じような顔で笑っていた。それはまるで幼い頃から共に悪戯をしてきた旧知の間柄のようにも見えた。

曹操は既にこの計画に乗っている。月を"唯の娘"と表現したのがその証拠だ。

 

「董卓の顔はほぼ誰にも知られておらん。知っているとすればお主と袁紹ぐらいのものじゃろ。西涼の連中はどうか知らんが、奴等は関わってこんじゃろうな。五胡への牽制で忙しいからの」

 

「確かにその通りね」

 

「袁紹は先にお主が董卓を討ち取れば悔しがりはするものの、それ以上は考えもしないじゃろうな。奴の中から董卓は消える」

 

「ま、麗羽ならそうなるでしょうね」

 

「その他は有象無象。なら後はお主ともう一人、注意せねばならん奴がいる」

 

「孫策…そしてその軍師周瑜でしょうね」

 

周瑜などはこの連合が茶番であることは知っているだろう。その上で参加したとなれば、何かしらの利を求めている筈。

 

「ま、そちらにも話は付けに行くつもりじゃがな」

 

「あら、随分と羽振りがいいじゃない?」

 

"話を付けに行く"と言う事は孫策たちにも何かしらの対価を与えることになる。

それを指摘した曹操に、芙陽は軽く溜息を吐きながら答えた。

 

「"面倒を見る"と言ってしまったからの…今更覆そうとも思わん」

 

「……」

 

芙陽の言葉に月の顔が暗くなる。自分の存在が芙陽の負担になっている。それが心苦しくなるが、芙陽は月の頭を撫でた。

 

「儂が生かした命じゃ。そんな顔をするな」

 

「へぅ…」

 

「ちょっと、目の前でイチャイチャするのはやめなさい」

 

不機嫌になる曹操。あまり怒らせても面倒だと思った芙陽は月の頭から手を離し、続きを話す。

 

「こやつは既に名を捨てておる。ついでに賈詡もこの月に着いてきたからの、劉備が軍師として召し抱えた」

 

「あらそう。ま、こっちも霞…張遼を手に入れたし、それには文句ないわ」

 

「あの…霞さんは…」

 

「あぁ、貴方の元部下だったわね。大丈夫よ、彼女は自分で選んで私に仕えてくれたわ」

 

「そうですか…彼女の事、よろしくお願いします…」

 

月は真剣な眼差しで曹操を見ると、頭を下げた。その表情は一瞬だけ"王・董卓"に戻っていた。

 

「約束しましょう」

 

それを感じ取った曹操も、一瞬だけ月を"王"として、そして自身も王として接した。

 

「なら、話は終わりじゃの。次は伯符の下へ行かねばならん。今日はこれで失礼する」

 

「えぇ、また会いましょう」

 

「失礼します」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「伯符ー」

 

「あら?芙陽じゃない。どうしたのよ?というかその女の子は何処で拾って来たの?」

 

「洛陽の城」

 

「ふーん。じゃあ董卓?」

 

「元な」

 

「わかったわ」

 

「あ、ついでに賈詡も」

 

「あらそう。でもその子は連れて来ちゃっていいの?」

 

「途中で玉璽捨ててきた。場所知りたい?」

 

「知りたいなーとっても知りたいなー。教えてくれたら今の話なんて忘れちゃうかもなー」

 

「裏通りの井戸の中にポイ捨てしてきた」

 

「りょうかーい。あ、それでさっき洛陽の良いお酒が手に入ったんだけど…」

 

「ほう、9杯で良い」

 

「謙虚だとは思うけど私まだ何も言ってないからね?」

 

 

「雪蓮!!!」

 

 

それまでの成り行きを唖然と見守っていた周瑜がこれでもかと言わんばかりに叫んだ。因みに月も同じように唖然として固まっている。

 

「あら冥琳」

 

「久しぶりじゃの、周瑜」

 

「お久しぶりです、芙陽殿。しかし今のやり取りには言いたいことが山ほどあるのですが?」

 

芙陽と孫策によるあまりにもいい加減な裏取引は流石に見逃せなかったらしい。

 

「取り敢えず、心臓に悪いので裏取引と酒の話を同じ調子で語るのはやめてください」

 

どうやらそれが一番気に喰わなかったらしい。しかしそうした日常会話的に済ませるほうが安全だとは思う芙陽と孫策だが、そこは常識人と自由人の間を別つ壁でもあるのだろう。

 

「私の精神的安定のためにも詳しい事情をお話し願えますかな?」

 

「フム…月」

 

「はい。ご主人様」

 

「……いや、もう好きに呼べ。周瑜に説明を」

 

「畏まりました」

 

月はそう言って周瑜に近づき、自己紹介をした後に事情と訪問の目的を語り始めた。その間芙陽と孫策はずっと酒の話をしていた。

やがて全てを話し終えた二人が芙陽に近づいて来ると、芙陽は酒の話を切り上げて周瑜に問う。

 

「此方からは玉璽の在処を。そっちは月の存在の秘匿を……悪い話ではないと思うが?」

 

ニヤリと笑う芙陽に、周瑜も苦笑いで頷いた。

 

「此方に相応の対価があり、曹操も既に了承済みとあっては断るつもりは毛頭ありませんよ」

 

「良し、ならこれで話は終わりじゃの。失礼する」

 

「またね、芙陽」

 

「失礼しますね」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

曹操、孫策と会談を終えた芙陽は、月と詠を連れて天幕の中で一息入れることにした。

何処からともなく葵が現れ、全員分の茶を用意する。

 

「さて、座りなさい」

 

先に座った芙陽が促せば、二人も芙陽の体面に並んで座る。葵は気を遣ったのか姿を消した。

 

「これでお主等の身柄は完全に儂が預かることになった。ま、詠は桃香になるが…」

 

「はい。よろしくお願いします、ご主人様」

 

笑顔で答える月に、詠も最早諦めたのか溜息を吐いていた。

 

「平原に帰れば月は女中として働くことになる。主な仕事は儂の身の回りの世話になるが、その辺りは葵と話し合っておけ」

 

「分かりました」

 

「詠は…」

 

「分かってるわよ。明日から早速朱里たちと話し合うわ。平原に帰るまでには軍の状態を把握したいもの」

 

「それで良い。ま、二人とも気楽に行け」

 

そう言ってお茶を口に含む芙陽。空気が穏やかになり、葵も蔭から姿を現して芙陽の隣に座った。

 

「葵ちゃん、これからよろしくお願いしますね」

 

「……こちらこそ、よろしくお願いします」

 

月に声を掛けられたことで少し驚いていた葵だが、少し顔を赤らめながらも返事は確かに返していた。

芙陽が苦笑いで頭を撫でながら言う。

 

「まだ人見知りな所があるのでな、仲良くしてやってくれ」

 

「今更だけど、葵って芙陽の何なの?」

 

「詠ちゃん…ご主人様にそんな態度は…」

 

未だ少し棘のある詠の態度を諌めようとする月だが、芙陽はそれをケラケラと笑って止めた。

 

「良い。皆儂に畏まるばかりで詰まらぬからの。別段気にすることも無い。

 …それで葵だが、儂の娘じゃ」

 

芙陽の返答に驚く二人だが、芙陽はすぐに説明をした。自分の正体や、葵の出生。流石に最後の方になると二人とも驚きすぎたのか戸惑いの方が大きかったが、何とか理解はしたようだ。

 

「狐って……」

 

「へぅ…」

 

「怖いか?」

 

優しく問う芙陽だが、詠は少し悩んだ後に首を横に振った。

 

「別にボクは気にしないわよ。話は通じる相手なんだから」

 

そして、月はなんだか悩んでいるようだ。

 

「月、何もせんから今思っていることを言ってみよ」

 

「へぅ……」

 

俯いてしまうが、やがて意を決したように再び前を向く。

 

「あの、失礼ながら……」

 

その様子に詠も緊張しながら無意識に拳を握った。

 

 

 

 

「寝る時って寝台使うんですか?やっぱり狐の姿で…?」

 

「もう月が分からないわ!!」

 

 

 

 

悪逆非道の限りを尽くしたと言われる逆臣、董卓。

都に籠り、汜水関、虎牢関と言う砦に兵を配置するも、武勇優れる配下を失い反董卓連合の猛攻に追い詰められ、洛陽にて曹操に打ち取られる。

董卓の家臣であった華雄、呂布、陳宮は逃亡。張遼は曹操に、賈詡は劉備に捕縛され軍門に下る。

こうして、反董卓連合は勝利で乱を終え、諸侯はそれぞれの土地へと帰って行った。

 

 

「あの…布団に毛は…お掃除が…」

 

「…寝台には人の姿で寝る」

 

「良かったです」

 

 

噂によると、『天の御使い』に新たな侍女が配属されたらしい。

 




月ちゃんが新たな扉を開きました。タイトルはあれです。キャラ的な意味でも死んだかもしれません。

いや、もう、ほんとすみません…。これプロットに書いてあったんです…。
『董卓(月):ドMに目覚めても良い』って…。なんかもうそのまま言っちゃおうかなって…。
資料を作った時の私は何を考えていたんでしょうか?わかりません。
他の二次作品でも月ちゃんのキャラ崩壊率は凄まじいですな。純粋だから?染まりやすいのか?
詠ちゃんにはまだツンでいてもらいますよ。まぁ嫌ってるわけではないです。

次は閑話か…もしかしたら拠点フェイズ編が始まるかもしれません。
蜀陣営も人数揃って来たし日常書きたい…。
活動報告でも書いてますが更新速度が落ちます。ご了承下さい。


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