真・恋姫✝無双 狐来々   作:teymy

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アー、ウゥーアー(波の歌:作詞作曲小次郎)

ども!感想でよいしょされて悶え死んだ作者だよ!
感想欄で芙陽と呂布の戦闘のハードルがどんどん上がって行ったから本当に困ったよ。
お蔭で一部威力がボリュームアップして書き直す羽目になったんだぞ!いい加減にしろ!

今回ちょろっとオマージュと言うか…リスペクトと言うか…。
ある漫画のシーンを入れてます。どうしても入れたかった。タイトルで気付く人もいるでしょう。
うん、大好きSA!


第二十三話 抱きしめる代わりに

走り出す幾百、幾千の人間。それは二つに別れていた。

互いが互いを目指し、怒号を上げながら距離を縮めていく。

その途中、それぞれから一人ずつ、二つの影が飛び出した。

二つの影は背後を追って走る大群を先導するように走り、正面から向き合って近づいていく。

全く同じ瞬間にその腕を振り上げ、二つの銀光が煌いた。

そしてその二つの銀が触れ合った瞬間、後ろを走っていた全員が見たような気がした(・・・・・・・)

 

爆発的な何かが、眩く輝いたその光景を。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「…なんなん、アレ。バケモンどころの話とちゃうで」

 

張遼は戦いながら、その内心では唖然としていた。

思い出してみても何があったのかわからない。自分は呂布と共に軍を率いて突撃していたはずだ。

しかし、走っていた呂布が急に突出し、止める間もなく単騎で前に出てしまった。

今までに感じたことも無い気迫を放ち向かう先に、先日その神業を自分に見せつけた金髪の女。男だったような気もするが、果たして自分の勘違いだったのか。

その疑問はすぐに吹き飛ぶことになる。二人の進路は確実にぶつかるだろう。彼女等は互いに呼び合うように一直線に近づいていく。

そして、気付いた時には既に間合いに入ったその瞬間、二人の武器が火花を散らしたと思った刹那の出来事であった。

 

眩い光が辺りを包んだのだ。

 

否、恐らく光ってなどいないのだろう。自分が見た光景は幻想か何かなのだろう。

しかし、周囲の兵の動揺を見れば、あの光景を見たのは自分だけではないと確信できる。

ならば何が起きたのか。

 

目に見えるほど(・・・・・・・)重厚な気迫のぶつかり合いとか、ありえへんやろ…」

 

呆れてしまう。その次元に達するには、どれだけの壁があると言うのか。

しかし、呆然としてはいられない。自分たちは今、戦場に立っているのだから。

動揺した兵を叱咤して、なんとか隊列を保たせたものの、やはり混乱は大きい。相手もどうやら同じ状態となったらしく、ぶつかり合ってすぐに戦場は乱戦となった。

今となっては前線は人で溢れ、呂布と『天の御使い』の姿は飲み込まれてどこにいるかもわからない。

 

しかし、ある方角からは確かに聞こえてくるのだ。

大きく響く高らかな金属音と…

 

「……なんで、爆発音が聞こえてくるん…?」

 

それに混じって聞こえる何か巨大な物が地面に勢いよく落ちたかのような、腹に響く爆発音。

 

「え、アイツら何で戦っとるん?武器やないの?武器とちゃうの?」

 

油壺でも投げているのかと思うが、そんなはずはない。一騎打ちでそんな物を使うとか、意味が分からない。

 

張遼が現実逃避気味に敵兵を倒していると、突然一本の矢が彼女を襲う。

 

「っとお!」

 

それを余裕を持って躱し、矢が飛来した方向を見ると、二人の将が立っていた。髪の短い女は既に次の矢を番え、こちらに矢を向けている。

もう一人、長い黒髪を全て後ろに流した女が話しかけてきた。

 

「張文遠だな?」

 

「せやで。姉ちゃんらはどちらさん?」

 

「私は夏候惇と言う者だ。我が主が貴様に興味を持っていてな、悪いが捕えさせてもらうぞ」

 

言いながら、夏候惇は剣を構える。その気迫は張遼を高揚させるには充分だった。

 

「ハッ!曹操の筆頭将軍なら相手にとって不足無しや!そんじゃこっちも始めますか!そっちの姉ちゃんはどうする?」

 

「夏侯淵と言う。私はお供さ、手は出さん」

 

「そか。なら惇ちゃん、始めよか…とその前に、もうちょっとアレ(・・)から離れへん?段々被害がデカくなってるんよ」

 

「……賛成だ。全く芙陽は…」

 

「それ、『御使い』の名前か?アイツって男なん?女なん?」

 

「ん?あぁ、アイツは狐の妖でな、男女は自由に変わるらしい」

 

「はぁ!?なんやねんそれ!本物のバケモンやないか!」

 

「いや、案外良い奴だぞ?」

 

「淵ちゃん何言っとるん!?」

 

「それより私はその芙陽と互角に戦っている呂布が恐ろしいな」

 

「あれが呂布か…凄まじいな」

 

夏侯淵が言えば、夏候惇も異様な戦闘音が飛んでくる方角を向きながら呟いた。

 

「まぁそれは今関係ない。私はお前を打ち倒し、華琳様の下へ連れて行かなければならないからな!」

 

「やれるモンならやってみぃ!」

 

互いに武器を構え、準備は整った。獰猛に笑い、互いの隙を探る。

 

「いや、その前に移動するのではなかったのか?」

 

「「ですよね」」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「うわあああああ!?」

 

「近づくな!近づくな!」

 

「離れろおお!巻き込まれるぞー!!」

 

「足首を挫きました!」

 

「おい、はやく立て!」

 

「また来るぞ!伏せろおおお!!」

 

「うわあああああ!?」

 

何が起きているのか。愛紗には良く分からなかった。

敵も、味方も、勢力も関係なく、全ての兵が混乱し、悲鳴を上げ、逃げ惑う。

その光景を、愛紗たちは唖然と見ていた。

 

「……地獄だな」

 

「あぁ、地獄だな」

 

「にゃ…」

 

星が呟けば、愛紗と鈴々も頷いて同意を示した。

眩い光を幻視して、戦闘が始まったと思えばある方向から襲い掛かる衝撃波のような物。それは兵を混乱させるには充分な威力であった。

重い鎧を着込んでいる兵を軽々と吹き飛ばすだけの威力。

やっとのことで事態を把握した者が何とか兵を纏めようと奮闘しているのだ。

 

「芙陽様を相手にあれだけやれるとは…流石『無双』と言ったところか」

 

重厚な風切り音が一つと、細く繊細な風切り音が一つ。そして響く金属音に轟く爆音。

しかし、それらを放っている二人の闘いは洗練されており、まるで二人で舞を踊っているかのように美しい。

 

周囲の阿鼻叫喚が無ければの話だが。

 

「とにかく、我等も動こう。芙陽様が言うには奴等は隙を見て撤退を始める筈だ。此方は被害を減らすことに努めよう」

 

「そうだな。迅速に兵を纏めよう」

 

「鈴々はー?」

 

「鈴々は最前線の敵を蹴散らしてくれ。その間に私と愛紗が陣を整えよう」

 

「わかったのだ!」

 

それぞれがするべきことのために動き出す。星はチラリと芙陽を見ると、少しだけ羨ましそうに呟いた。

 

「あれほど楽しそうに……少し羨ましいな、呂布よ」

 

未だ自分が届かない領域。その遠さに少しだけ胸が痛んだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

威力、良し。

速度、良し。

反応、良し。

間合い、良し。

視線、良し。

視野、良し。

踏み込み、良し

足運び、悪し。

予測、良し。

集中力、良し。

技術、良し。

戦術、悪し。

体幹、良し。

武器の握り、良し。

武器の相性、良し。

 

芙陽は、戦いながら、呂布の評価を見定めていた。

結果……

 

「クカカカッ!これほどの人間は見たことが無いぞ!」

 

『人間』としては規格外である、と評した。

最初の一撃は芙陽を驚かせるには充分だった。あれほどの一撃を放つ人間など、芙陽は今までに見たことが無い。

 

「どこぞの神にでも愛されているのか、それとも人間から外れようとしているのか(・・・・・・・・・・)…!

 どちらでも良い!お主と出会えたことに感謝しよう!!」

 

運命か、神か。

神と対峙した経験のある芙陽が、一体何に感謝すると言うのか。しかし芙陽にはそんな事どうでも良い。

今、この好敵手に出会えたことを喜ぶことが出来るなら、相手が何であろうと感謝を伝えたいのだ。

 

「恋も……楽しい…!」

 

いつになく饒舌な芙陽。そしてこれまでになく楽しそうに笑う呂布。

二人はこの闘いを全力で楽しんでいた。

 

二人が持つ得物は最早周囲にいる兵には目で追えない程素早く振られ、命を奪おうとその凶刃を相手に向かわせる。

一方が仕掛ければ、もう一方が命を守る盾となり、火花を散らして音を立てる。

その音と共に生み出されるのは衝撃波。行き場を無くした力が解放されるのか、それともぶつかり合う気迫が現象となって放たれるのか。

 

その衝撃波が周囲に甚大な被害を及ぼすが、二人は気にも留めず次の攻防へ向かう。

気にする余裕がない程、二人は互いに夢中になっているのだ。

 

首を狙い、腹を狙い、腕を狙い、足を狙い、武器を狙う。

時に避け、時に受け止め、時に受け流し、時に無視する。

 

攻撃を防がれるたび、攻撃を防ぐたびに、二人は歓喜する。

 

あぁ、まだこの闘い(遊び)を続けられるのだ、と。

 

「楽しい……『鬼神』」

 

「儂は芙陽!名乗れ『天下無双』!」

 

「呂奉先。真名は……恋!」

 

「カカカッ!この状況で真名を名乗るか!」

 

余りにも異常な自己紹介。二人は喋りながらも相手の命を狙っている。

しかし、二人の間には確かに"絆"が生まれていた。

 

一際大きな金属音が鳴り響き、呂布――恋が武器ごと後ろへ飛ばされる。

特に問題なく地に降り立つと、一息入れる様に落ち着いて芙陽を見た。

 

芙陽は嬉しそうな表情を隠しもせず、刀を持ったまま両手を広げて叫ぶ。

 

「儂に出会えて良かったなぁ恋!!」

 

恋はその言葉に一瞬目を見開くが、すぐに微笑む。

彼女は大声を出すことを苦手とする。ならばどう答えようか。微笑んだまま少しだけ悩むと、手に持つ武器を大きく振って天に掲げた。

 

「あぁ、わかっておる。お主も嬉しいのだろう?」

 

芙陽が優しく頷くと、恋は掲げた方天戟を肩に担いで腰を落とした。

 

「そうだな。まだ付き合って貰おう…まだ付き合ってやるとも」

 

同じく芙陽も常を眼前に構え、程良く力を抜いた状態で視線を恋に集中させた。

 

走り出す恋。待ち構える芙陽。

二人の距離は一瞬で縮まり、方天戟は風を切る。

音だけを残したその切っ先は芙陽の首を捕えんと迫るが、芙陽はその時既に大きく上体を逸らして躱す。

恋の攻撃は終わらない。

 

「フッ!」

 

方天戟を振った勢いを生かし、鋭い回し蹴りを放つ。しかし芙陽はそれを片手で掴むと、軽々と恋を振り上げた。

恋も驚くばかりではいなかった。

足を掴んだ手に方天戟を向けて振り払う。芙陽に離されて空中に浮かぶ自分の身体を捻り、踵を振り下ろして芙陽の頭を狙う。

 

「……やぁ!」

 

迫りくる踵。芙陽は半身を逸らしてそれを避けるが、恋の本命はまだ残されていた。

 

「はあ!!」

 

「っ!なんと!」

 

踵落としから地に着いた足を軸に回転。一瞬で勢いを持った方天戟を芙陽に叩き込む。

芙陽は咄嗟に常を構え、防御に徹した。

 

ガギャァッ!!と、耳を塞ぎたくなるような鋼の悲鳴が響いた。

 

予想以上の攻撃に、芙陽の足元は耐えきれずに滑る。そのまま後退し、構えなおして呟いた。

 

「足運び、戦術、良し……改善された。まだ強くなるか…また一つ登ったな、恋」

 

「芙陽、強い。……追いつきたい」

 

「化物の域に来るつもりか?人の生を外れるぞ」

 

「でも、芙陽はそこにいる……寂しくは無い」

 

「クフフ…愛い奴じゃ」

 

命のやり取りをしながら、互いの情を確かめる。誰が見ても異常である。

しかし、たとえこの結末がどちらかの命を奪おうとも構わない。それだけの絆が二人にはあった。

 

だが、この二人の逢瀬も終わりの時が迫る。

 

「恋殿ーー!!」

 

喉を傷めるのではないか。そう心配になるほど声を張り上げて恋を呼ぶ小さな少女。

周囲はいつの間にか陣を整え火矢を放っている董卓軍と、突然の火矢に混乱を始める連合軍に囲まれていた。

芙陽達が闘っている最中、恋の軍師である陳宮が逃亡の隙を生むために実行した策であった。

 

「迎えか?」

 

そう聞けば、恋は少し寂しそうに一つ頷いた。

 

「芙陽様!」「芙陽殿!」

 

それと同時に芙陽の方へも声がかかる。火矢により撤退の気配を見せる呂布の部隊に星と愛紗が駆け付けたのだ。

 

「次で……最後」

 

「そうじゃの」

 

互いの意思を確認し、構える。

戦場に空いた空間に再び気迫が渦巻いていく。芙陽の後ろには星と愛紗。恋の後ろでは陳宮がハラハラとした様子で見守っている。

 

恋の視線は芙陽だけに向けられた。一挙動も見逃さず最善の一手を見極めていた。

恋の手は得物を確りと握っていた。しかし力みはせず、まるで掌に吸い付いているように刃先までの感触が伝わった。

恋の呼吸は深かった。激しく脈動する心臓を落ち着かせるために、息を吸い込むと吐き出し、半分ほどを残して息を止めた。

 

全ての準備を終え、恋は走り出す。

 

「……っ!」

 

流れる様に方天戟を振るう。

その時、恋の見ている光景は酷くゆっくりと流れていた。

 

自分と同じように刀を振ってる芙陽。互いの正面で武器が交差する。

ぶつかり合う恋の方天戟と芙陽の常。火花を生みながら滑り、そのまま勢いに任せて離れていく。

 

ここまでは恋の想定通り。ここから恋の本命が始まる。

 

恋は正面に芙陽がいるにも係らず、そのまま体ごと回転していく。

余りにも大胆な行動。無防備に背中を向ける体制。背中を犠牲に渾身の一撃を放つ。恋が導き出した、芙陽に勝つ方法だった。

恋の視線はまだ芙陽を捉えている。しかし、目に入った光景は恋を動揺させた。

 

芙陽と恋の視線は交差している。だが、恋の視界には芙陽の背中が見えている(・・・・・・・・)

 

(…!?)

 

自分と全く同じ行動。しかし動揺しているような暇はない。恋はすぐに覚悟を決めた。

 

(これで、良い。このまま……全力を!!)

 

背中合わせに互いを見ながら、同じ動きで次の攻撃に移る。

全ての力を乗せて。持てる者全てを吐き出すように、恋は吠えた。

 

 

 

「…ぁぁああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

初めてだった。このように全力で声を出して叫んだのは。

 

全力を出して、魂すらも得物に乗せて、恋は腕を振り抜いた。

同じく振り抜いている芙陽の刀が見え、それが触れ合った瞬間。

 

二度目の閃光が周囲を包み、恋の視界は白く染まった。

 

 

 

 

恋がゆっくりと目を開くと同時に、やや後ろで何かが突き刺さる音がする。

見ると、手に持っていたはずの方天戟が逆さに突き立っていた。

意志の無い筈の己の武器から、どこか誇らしげな雰囲気を感じ取り、微笑みながら前を向く。

 

刀を振り抜いたままの姿勢で、芙陽が立っていた。手には確りと常が握られている。

 

「……負けた」

 

「……あぁ、儂の勝ちじゃ」

 

恋は自分でも驚くほど素直に負けを認めた。

そっと目を閉じる。心は満ち足りていた。華雄もこんな気持ちになったのかと、場違いなことを考えた。

 

「……ころす?」

 

全てを受け入れることにした恋はそう問うが、芙陽はどこか困ったように笑う。

 

「正直、殺すのは惜しい」

 

「じゃあ、連れてく?」

 

立て続けに問う。しかし、芙陽は首を横に振った。

 

「お主には、まだ守る者がおるじゃろう?」

 

芙陽が視線を向けたのは、目に大粒の涙を溜めてこちらを見ている陳宮だった。

 

「……いい、の?」

 

「本来は、良くないがの。まぁ、良い」

 

芙陽は刀を降ろすと、慈しむように常を撫でてから鞘に戻す。

 

「行け。……また、会おう」

 

芙陽はそう言って目を瞑った。この場を見逃すと言う意思表示のつもりだった。

恋はゆっくりと立ち上がり方天戟を持つと、深く礼をして陳宮の下へ向かった。

 

「れ…恋殿ぉ!!」

 

勢いよく飛びついた陳宮を撫で、恋は言う。

 

「ねね、逃げる」

 

「うぅ…グスッ…承知なのです!!」

 

既に撤退の準備は整っている。恋は隊を引き連れて戦闘を走り、立ちはだかる敵を吹き飛ばしながら姿を消した。

芙陽が目を開ける頃には、恋の部隊の姿は無く、虎牢関へと殺到する連合軍が見えるだけだった。

 

芙陽の傍に星と愛紗が近づいて来る。

 

「宜しかったのですか?」

 

「クフフ…お主等も見逃したくせに何を言う」

 

星の言葉に芙陽は笑いながら答えた。愛紗も溜息を吐きながら口を開く。

 

「既に勝敗は決していました。火矢で混乱している今なら逃げ切ることは出来るでしょう」

 

「周囲には呂布の隊と我等の兵しかおりませんでしたからな、『逃げられた』と言っても怪しむ者はおりますまい」

 

「カカカッ、そうか…」

 

ケラケラと笑う芙陽に、星が言う。

 

「…楽しそうでしたな」

 

「あぁ、幾度か相手が人間であることを忘れたの」

 

煙管を取り出し、火を付けながら冗談めかして言うが、実は本音である。

閃光を放つあの攻撃。あれはとても唯の人間が放てるようなものではない。どうやら恋は芙陽が思うよりも"人外"だったようだ。

しかも、闘いの最中で成長を見せた。恐ろしいことに成長期なのだ。

最初に悪かった『戦術』も『足運び』も、全力で戦ってこなかったが故の経験不足が原因だろう。それが芙陽との闘いで開花したのだ。

芙陽を相手に多くの経験を得た今、恋はこれから更に成長するだろう。

 

「…次に勝ったら、傍に置こうかの?」

 

「…妬けますなぁ」

 

「桂花の嫉妬が今から目に浮かびます」

 

煙を吐きながら呟いた言葉に、二人が反応する。芙陽はそれに苦笑いを返した。

 

「さて、虎牢関を落とすぞ。そしたら儂は董卓に会いに行く」

 

「葵はどうされたのですか?」

 

「虎牢関の先。近道を割り出して待っている」

 

話ながら歩いていると、後ろから声が聞こえてくる。

 

「にゃーー!!芙陽!呂布はどうしたのだ!?」

 

「……あ」

 

完全に忘れていた、鈴々を騙したこと。どう収拾を付けるか考えていなかった。

 

「話が違うのだ!逃げないって言ったのに!」

 

完全に怒っている鈴々は地団太を踏むが、その後芙陽が言った『呂布は腹が減ってもう全力が出せないから今日は帰るらしい』という言葉に簡単に騙された。

『そーなのかー』と何故か納得する鈴々に、義姉として恥ずかしくなった愛紗は両手で顔を覆った。

 

 

その後、『天の御使いが呂布に勝った』という報が両軍に伝わり、『絶対無敵』の虎牢関は破られた。

 

そして、『反董卓』の乱も最終局面に突入する。

 




やっちゃったZE!
読者の皆さんのせいで恋ちゃんが人間を止めたようです。どうしてこうなった…。

オマージュは本当に一部だけで、それ以外は作者が三国無双のBGM聞きながら無い頭捻って考えました。「迫力無い」とか「どっかで見たことある」とか言わないでね!マジで!

恋の評価については作者の偏見で決めてます。最初はALL「良し」だったんですけど『戦闘中に成長する』って言う熱血主人公みたいなことしてみたくて『足運び』と『戦術』を「悪し」にしました。
元々野生動物みたいな子ですし、それっぽい戦闘するならそういう"人間らしい"部分は未熟なんじゃないかと思っての事です。
最後の一撃は北野武版「座頭市」を見て思いつきました。

次はいよいよメイドコンビです。へぅ!


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