お気に入り件数が1000を突破し、嬉しさのあまり筆が進んだ作者です!
4桁かぁ…怖いなぁ…。
こんな拙い作品を呼んで下さっている読者の皆様、本当にありがとうございます。
1000件突破を祝しまして、作者の脳内では祭が開催されております。
話が進むと言いながらちょっとしか進んでねぇ…。
芙陽達は劉備と契約を交わした後、すぐさま劉備の案内で義勇軍と合流した。
そこで出迎えたのは幼い外見の少女二人。
「お帰りなさい、桃香様!」
「お帰りなさいでしゅ…」
「ただいま!朱里ちゃん、雛里ちゃん!」
暖かく劉備たちを迎えた彼女等は、突然現れた男、芙陽を見て身を固くする。
「あの…そちらの方々は…?」
朱里と呼ばれていた髪の短いほうの少女が恐る恐る聞いてくる。芙陽は名乗ろうか迷ったが、その前に劉備が芙陽達を紹介した。
「この方は芙陽さん。私たちが探してた『天の御使い様』だよ!」
「はぁ……はわわ!?」
「あわわ…!?」
予想外の名前に驚愕する二人。しかし、慌てながらもすぐさま落ち着きを取り戻し、芙陽に対して礼を取った。
「劉備よ、この子等は?」
「うちで軍師をしてくれてる諸葛亮ちゃんと、鳳統ちゃんです!すっごく頭が良いの!」
劉備はここまでの道中で芙陽に慣れたのか、それとも開き直ったのか畏まった態度は鳴りを潜めていた。芙陽自身も終始ビクビクとされては鬱陶しいのでむしろこちらの素で話してもらった方が気が楽である。
「しょ、諸葛孔明と言いましゅ!て、天の御使い様とは知らずご無礼を…!」
「鳳統…士元です…」
諸葛亮は未だ慌てながら、鳳統は恥ずかしそうに顔を帽子で隠しながら挨拶をする。
芙陽はその姿に軍師など務まるのかと心配になったが、かの諸葛亮と鳳統ならばその才は確かなのだろうと思っていた。
しかし、今まで劉備を甘やかすだけであった、主導者として大切なことを教えなかった彼女らへの期待は薄まっているのも確かであった。
「フム。儂は芙陽と言う旅人じゃ。『天の御使い』などと噂されることもあるが、儂自身はその自覚も無い。そう畏まらずとも良い。
後ろにいる二人は儂の旅の共をしている軍師の荀彧と武人の趙雲じゃ」
「芙陽さんはね、私を喰い殺すために着いてきてくれたんだよ!」
「「!!?」」
等と言う劉備の爆弾発言により再び混乱が生じたり、狐の姿に変身した芙陽に二人が怯えたりもしたが、何とか落ち着いて現在は芙陽と劉備の契約について説明を終えたところである。
「では…芙陽様は桃香様の成長を見極めるために我々に同行する、と言う事で良いのでしょうか?」
「ウム。その認識で間違いはない。ただ、その前にお主ら全員に言っておかねばならぬことがある」
「なんでしょう?」
芙陽は劉備たちを見渡すとハッキリと言い放った。
「儂は劉備の行く末を見届けるために同行する。だが、常に儂を戦力として数えることはしないでほしい」
「……それは、戦闘には参加しない、という事でしょうか…?」
いち早く芙陽の言葉に反応したのは諸葛亮であった。
「儂が出る戦かどうかは儂が決める、という事じゃ」
「それは……」
それは余りにも横暴である。そう言いたい諸葛亮だが、先の劉備と芙陽の話を聞けば無理を言って動向を求めたのはこちら側である。
ここで変に話を拗らせて、最悪芙陽が陣営を去ってしまう事は避けたかった。
「まぁ、流石にそれではお主等に不利が過ぎるからの……星、桂花」
「「はっ」」
「儂がこの陣営にいる間、こやつらに力を貸してやれ」
「「御意に」」
芙陽の命に何一つ文句も言わず了承する二人に劉備たちが感嘆しているが、話は更に進む。
「この二人の扱いに関しては任せる。そして儂についてじゃが、戦に出る時は軍議にも顔を出そう。だが、必ずしも命に従うとは思わんことだ」
「単独行動で遊撃……ですか?」
鳳統が芙陽の言葉を汲み取って確認を取る。
「その通り。だが、お主等の策を邪魔するような行動は控えよう」
芙陽が悪戯な笑みを浮かべて二人を見る。
今の言葉には裏がある。『単独行動を
つまり、『芙陽の行動で混乱するような軍にはするな』と言っているのだ。
二人はそれを正確に読み取っているようで、芙陽の挑発とも取れるこの言葉にしっかりと返事を返す。
「なら、私たちはそれすらも好機に変えましょう」
「不測の事態に対応できないようなら、私たちがいる意味がないです……!」
諸葛亮、鳳統は静かに闘志を燃やした。
二人の瞳に満足げに頷いた芙陽は、一先ずは自分の話は終わったことを伝える。
「まずは、私たちの現状とこれからの事を芙陽さんたちに説明しないとね」
「それでは、えっと、軍の現状から…」
鳳統が現状を説明する。
現在この義勇軍の兵力は12000程で、先日中規模の黄巾賊討伐を行ったばかりなので休養を取っている最中である。
物資や兵站が不足しているが、曹操軍との共同戦線を敷き、その補給でなんとか回っている状態だ。
次に、諸葛亮がこれからの話をする。
情報では黄巾賊が冀州に集結しているとのこと。曹操軍も同じ情報を掴んでいると思われるため、このまま両軍は冀州へ行軍し、恐らく集結しているだろう諸侯と共に黄巾賊の本陣を叩く。
と、諸葛亮がそこまで説明し終えると、芙陽が苦い表情をしていることに気が付いた。
劉備が『また何かやらかしてしまったのか』と怯えながら尋ねる。
「ふ、芙陽さん…?」
「ん?……あぁ、済まぬ。……曹操と共同戦線?」
「は、はい…」
芙陽はどうしたものかと頭を抱えたくなった。
唯でさえ彼女の勧誘を断って、桂花まで連れ出して来たのだ。そこで現在は劉備の陣営に同行しているなどと知られたら何を言われるかわかったものではない。
「……絶対怒る…」
「子供ですか!?」
芙陽の呟きで何を悩んでいるのかすべて理解した桂花。思わず全力でツッコミを入れた。
だが、直後に星が更に芙陽を追い詰めた。
「芙陽様、問題は曹操殿だけではござらん」
「なに……?」
「夏候惇が暴走を起こしかねませんぞ」
「……」
忘れていた。曹操と同じくらいには芙陽を誘い、芙陽が旅に出ると聞いて一騒動起こしかねなかった彼女だ。
『裏切ったな貴様!!』とか言って斬りかかってきてもおかしくはない。
「……めんどくさ!」
思わず普段の大人気な雰囲気を崩してしまう程には面倒な事態になりかねない。
悩みに悩んだ末、芙陽は問題を先送りにすることにした。
「よし、取り敢えず黄巾賊が滅されるまで儂の存在は秘匿するように!」
「「「「「えぇー!?」」」」」
勿論劉備たちからは膨大な不満が持ち上がったが、そこは芙陽の口先三寸で丸め込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「劉備たちの陣営に?」
「はっ、曹操様。三人ほど合流したようです」
「秋蘭、芙陽達だと思う?」
「趙雲が芙陽に合流したのなら、芙陽、荀彧、趙雲の三人の可能性がありますね」
「その三人、皆女性だったのかしら?」
「いえ、三人の中でも頭らしき金髪の人物は男であったそうです」
「金髪…華琳様!芙陽では!?」
「話を聞いていた春蘭?その金髪は男だそうよ」
「芙陽は男だったのですか!?」
「姉者……」
「良く思い出しなさい、芙陽は男だった?」
「女でしたね!……なら、その金髪は芙陽ではないですな!」
「そうね」
勘が鋭くても馬鹿は馬鹿であった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「曹操、孫策、公孫賛…官軍もいるな。やはり利に目聡い諸侯はここへ来るか」
「孫策がいる割には袁術の旗がありませんね…」
「大方黄巾賊本体を孫策に押し付けて自分たちは小規模か大したことない部隊でも潰しに行っとるんじゃろ」
「……そんなことしても何の利も無いのに…本当に馬鹿なんですね…」
芙陽と桂花が話しているのは冀州、曲陽。
読み通り、黄巾賊の本陣拠点周辺には多くの軍が集結していた。
黄巾賊は曹操達が重要拠点を潰して回ったことにより物資の調達が困難になり、巨体であるが故に行動も遅く、最早その勢いは風前の灯火である。
ここで黄巾賊の頭である張角、もしくは将軍の張宝、張梁の首を取ることが出来ればその名は飛躍的に大陸へと広まるだろう。
それ以外にも利となるものは多く、多少なりとも戦略眼があればこの地に集まることは当然であった。
この場にいない袁紹や袁術は集まった諸侯から"無能"の烙印を押された。
「朱里、集まった諸侯の総兵力はわかるか?」
芙陽が諸葛亮、朱里に尋ねる。
芙陽は真名について深く考えたことは無いので今までにも真名を預かることは少なかった。そもそも真名の無い芙陽は相手が真名を許そうが許すまいがどちらでも良かったのだ。
だが、劉備たちはそうでもなかったようで、『これからお世話になるのだから信頼すべき。そしてそんな相手に真名を預けるのは当然』と言って多少強引にでも真名を預けてきたのだ。
そうなっては芙陽も断る理由は無いので大人しく真名で呼ぶようになった。桂花は少し焼き餅を焼いた。
「総兵力は15万に達するでしょう。やはり曹操さんの軍が圧倒的に多いですね…。
対して黄巾賊の本陣には20万程の兵がいるようです」
「差は5万か。ならば勝ちは見えておるな」
此方はその多くが正規兵。義勇兵である劉備軍もこれまでに多くの戦を経験している。対して黄巾賊は正常な指揮も受けることが無い元・農民の集まりである。
その差は5万という数を覆すには十分であり、子供の集団に大人が徒党を組んで襲い掛かるようなものだ。
「更に、黄巾賊は兵站が確保できなくなったために糧食不足で、戦える人材は限られてきましゅ…」
芙陽の言葉に補足するよう鳳統、雛里が口を開いた。
人見知りをする朱里よりも更に引っ込み思案な雛里だが、意外にも芙陽には懐いた。物事の本質を見抜く才は朱里よりも上なのだろう、最初こそ怖がっていたものの徐々に心を開き、今では桂花と共に芙陽に教えを乞うようにもなっている。
対する朱里は、全体を見渡す広い視野を持ち、軍略や戦略も後々を意識しながら立てていく。芙陽に対しては早々に慣れたのか何度も教えを乞うている。しかしどこか対抗意識のようなものがあるらしく、自分の考えを纏めては『これはどうですか!?』と芙陽に意見を求めてきては討論を行っている。この時高確率で桂花と雛里が参戦する。
因みに、劉備軍における芙陽の立ち位置は相談役である。黄巾賊の騒動が治まれば正式に発表されることになるが、現段階では芙陽の存在はある程度秘匿されているので、ちょっとした客人程度の扱いである。
芙陽の従者である桂花と星は客将扱いとなる。勿論桂花は軍師として、星は将としての雇用だ。
しかし、三人とも情報が秘匿されているので敵味方問わず兵たちは『誰だ?』と疑問符を浮かべている。
しかも、芙陽に関しては劉備達に正体を明かしているため男と女を気紛れに使い分けており、兵達は『マジで誰だ?』と密かに困惑している。
最近では金髪の男と女が同一人物なのではないかという話もちらほらと持ち上がり、『男装の麗人だ!結婚したい!』『いや、女装が似合う男だ。諦めよう』『どっちでも良い!結婚したい!』『お前…』という会話が流れているとかいないとか。
「さて、どこが最初に動くかの」
楽しそうに言う芙陽だが、それに疑問を抱いたのは劉備、桃香であった。
「最初に動くって、皆で連携は出来ないの?」
「桃香様、ここに集まっている諸侯は皆名を上げるために来たのです。下手に連携を取ると獲得できる利が少なくなってしまいますから…」
「う~ん…じゃあ皆良いとこ取りを狙ってるんだねぇ…」
「儂等もそれを狙わねばここに来た意味を失うからの。のぉキャシャーン?」
「愛紗です」
最近弄られ役が板についてきた関羽、愛紗である。桂花からの嫉妬の視線が痛い。
「しかし、完全に後手に回っても損を押し付けられてしまうのでは?」
「愛紗の言う通りですな。朱里、動きそうな軍はあるのか?」
愛紗の言に星が同意した。
「今のところどこも様子見の姿勢ですが、予想が外れなければ動くのは孫策さんでしょう」
「でしょうね。あそこは多分今一番名を上げたいところだから。今なら馬鹿な飼い主もいないし好機を逃すとも思えないわ」
桂花が朱里の予想に同意する。
「それに、袁術さんに離れ離れにされた臣下の人たちも呼び戻したみたいでしゅ…」
雛里も同じ意見なのか、更に確信できる情報を持ち出した。
バラバラになっていた孫策の臣下達。恐らくは妹の孫権もここに来ているのだろう。
一目見たいと思った芙陽だが、曹操に気付かれず行動するには多少のリスクが伴う。ここは大人しく黄巾賊で憂さ晴らしをしようと決めた。
「曹操は動きそうかの?」
「曹操さんは情報の秘匿が徹底されていて動きが読めません…」
「なかなかやるのだ!」
「なら、注意を置くのは曹操さんの方かなぁ?」
「ですね。しかしそれに気を取られて孫策さんに後れを取るわけにも行きません」
「いずれにせよ、我らは少しでも損を減らすように動くしかないのでは?」
愛紗がそう言ってしまうのも無理はない。劉備軍は集まった諸侯の中でも一、二を争う弱小勢力である。利用されて損耗することは避けなければならない。
「でも、多少の危険を冒してでも利を取らないとここから飛躍なんてできないわよ?唯でさえ弱小なんだから」
歯に衣着せぬ桂花の言葉だが、実質は他人事ではなく己の属する組織を憂いての言葉である。それが理解できる周囲の面々は気にすることもなく桂花に同意した。
「我々にできることは動くであろう孫策に呼応して戦場を有利に導くことでは?」
「星さんの案が最も妥当かと。兵力の少ない私達が出来ることは限られますが、機動力があるのは有利です」
星の案に雛里が賛同する。朱里も反対意見は無いのか、同意して詳細を話し合う。
「曹操さんも孫策さんが動き出すであろうことは理解していると思われます。そこで私たちは、孫策さんの動きを注視していち早く動けるようにしておきましょう」
軍議の結果を朱里が纏めると、それぞれが合意を示して解散の流れとなった…その前に
「済まぬが、儂はちと単独で行動させてもらう」
途中から黙っていた芙陽が口を開いた。
「芙陽さん…どうしたの?」
桃香がその理由を尋ねる。芙陽から険悪な雰囲気は伝わってこないので、単純に疑問に思ったのだ。
「曹操の動きが気になっての。あやつの事じゃ、何か企んでおるのだろう」
「なら、芙陽様はそちらへ?」
朱里が確認を取る。芙陽が別行動を取るのなら、それなりの前準備が必要になるだろう。
「ウム。なに、あまり派手なことはせんよ」
「芙陽様の"派手"と、我らのそれが同一であれば安心できるのですがな」
星が悪戯顔で芙陽に言うが、芙陽はケラケラと笑って煙管を咥えた。
「まぁ、邪魔な者は切り捨ててしまうが、それは"派手"ではなく"当然の処理"じゃろ?」
暗に『ちょっと暴れるかもね!』と言う芙陽に、軍師たちは顔を引き攣らせた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「では、甘寧と周泰が侵入、放火の後、黄巾賊を殲滅する」
「御意」
「わかりました!」
周瑜の策に頷く二人。
孫策達は読み通りいち早く動こうとしていた。
「他に何か気になることは?」
周瑜が周りに聞けば、陸遜がふと思い出したように口を開いた。
「劉備陣営が私達と同じく動こうとしてますが~」
「我等の動きに気付き呼応しようとしているのだろう。あちらも戦力が乏しく派手な動きは出来ないからな」
「最近将が増えたみたいだけど?」
「…金髪の男と少女二人か」
「…芙陽の可能性は?」
「充分に有り得る話ですね~。向かった方向と時期が合致してます」
「…芙陽殿であった場合、何をするか想像もつかんな」
「ま、周囲に甚大な被害を及ぼすことはないじゃろう」
「そうね、もし芙陽だったら便乗しちゃえば良いと思うわよ?」
「なら、甘寧と周泰は金髪の男を見かけた場合、黄蓋殿の指示に従うかその男に合わせて動くように」
「……はっ」
「そんなにお強いのですか?」
周泰が首を傾げる。甘寧も腑に落ちていないようだ。
「大陸の先を見通し、口先で袁術軍を騙し、雪蓮に圧勝した…と言えば分かるか?」
「「!!?」」
二人の顔が驚愕に染まる。
多くの者はその存在を知らず、その実力も知らず、正体も定かではない。
そんな狐の武勇が、この戦いで広く知られ、後にこう称された。
『たった一人の過剰戦力』
黄巾賊最期の戦いの火蓋が切って落とされた。
華琳さん気付いて!いるよ!芙陽そこにいるよ!
常識が邪魔をして芙陽の存在に気付けなかった覇王ちゃんでした。
最も正解に近かったのが春蘭であることは彼女たちにとって悲劇かもしれません(笑)
活動報告でもちょっと宣いましたが、ハイスクールD×Dの二次が書きたい今日この頃です。
あ、書きませんよ?その前にマジ恋何とかしないと怒られそうですからね!
しかも原作読んだことないしね!読んだのは全部二次作品だからにわか知識しかないです。
それ以外にも芙陽がゼロの使い魔で召喚されちゃったり問題児の世界に呼ばれちゃったりと色々妄想してます。恋姫が終わったら書くかもしれません。
なんだろ…『異世界どうでしょう』シリーズ?(笑)
次で黄巾の乱は終われるかな?
張角め…首を洗って待っていろ…!