ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第三十五話「存在意義」①

最初に自分の使い慣れたゲッターロボに乗り込み、システム起動する竜斗達。

 

「準備はいいか?」

 

“はいっ”

 

“オーケーです”

 

“いつでもいいわよ”

 

三人から承諾の合図を貰い、隔離された計測場で各定位置についた早乙女達は遮光用ゴーグルをつけてスタンバイ完了する。

 

「もう一度言っておく、絶対に途中で放棄せずいいと言うまでゲッター炉心の出力を上げ続けろ、わかったな」

 

――そして、

 

「よし実験開始だ」

 

それを合図に三人は一気にゲッターエネルギーの出力を上げ続けてチューブに繋がれた供給線を通して計測器にエネルギーが注がれていく――。

 

そこで最初に着目するはアズレイ、彼女の機体が一番早くすぐに炉心の限界点を突破しそうになっていた。

 

「ホハハ、やはりマナミ君はスゴいのう」

 

「ああ、パワフルを感じるな」

 

続いて高いのはエミリア、緩やかだが異常はなく順調にエネルギーが高くなっていく――。

 

「エミリア君も無難に上げているが……果たして肝心の竜斗君は」

 

彼らは竜斗の計測器に注目する……やはりアルヴァインだけ出力が二人と違い一周り、いや二周り出力値が低い……。

 

「竜斗、それが本気かっ?」

 

“真面目にやってます!”

 

本人がそう言うが二人と比べて遥かに出力が低く、これでは炉心の不具合か手を抜いていると思われても仕方ない。

 

「水樹、いいぞ」

 

愛美が一足先に終わりその凄まじく達した出力を弱めていく。その後すぐにエミリアも終了を言い渡されて出力を抑えて停止させる。

 

だが、竜斗だけは相変わらず全く出力が上がらずそして一向に終わりがなかった。

 

(な、なんで出力が上がらないんだ……)

 

彼もこの異変に困惑しかけるも諦めずに何とかゲッター炉心の出力を上げようと必死でピッチを上げる――が、

 

「もういい竜斗、次行くぞ」

 

結局、出力が気持ち程度に増えたぐらいで劇的な変化は全くなく一回目の実験は終わった――。

 

再びマリア達が整備に移る間、待機場所では三人は沈黙していた。

エミリアと水樹が見つめる先には不可解な現象を前に落胆する竜斗の姿が……。

 

「リュウト……」

 

エミリアが堪えきれず彼を励まそうとしにいこうとすると、愛美に止められる。

 

「そっとしておきましょう。

けど、確かにおかしいわね、アメリカに来てからの初めての戦闘の時のようなあの凄まじさがウソのよう」

 

「一体何があったの…………」

 

と、時間を潰していると整備を終えて次なる実験のためにマリアが迎えにくる。

 

「終わったわ、二回目の実験が始まるわよ」

 

彼女と一緒に行く三人だが、竜斗がかなり落ち込んでいるのがマリアはすぐに感じた。

 

「竜斗君、心配しなくていいのよ、気持ちを楽にして取り組んで」

 

と、彼女から励ましを受けると「はい」と弱々しい声で返ってくる――。

そして今度はアルヴァインに愛美、ルイナスに竜斗、そしてエミリアがアズレイのコックピットへ乗り込む。

 

「さて、恐らくここで大体が分かるかもしれませんね。

原因はアルヴァインの炉心か、それとも竜斗か――」

 

「ニールセンよ、お前はどっちに賭ける?当たれば百ドル、どうじゃ?」

 

「ならワシは竜斗君の方に賭けるぞい」

 

 

「じゃあワシは炉心じゃな」

 

こんな時にどちらが原因か賭けている二人に正直呆れるが誰もが無視して先を進める。

 

「三人とも、配置につきました」

 

「よし、始めるか――」

 

二度目の実験が開始された。しかしここですぐに結果が明らかに判明する。

なんと愛美の乗るアルヴァインの出力が一瞬でゲージを振り切れ、初戦時と同じ凄まじい出力を叩き出したのだ。

 

「なんだと……」

 

「なぜマナミ君だとここまで出力が一瞬で上がるんじゃ……」

 

彼らは驚愕する一方で、エミリアの乗るアズレイは一回目と同じく緩やかだが無難に出力を上げている。が、本命はというと。

 

「竜斗……お前……」

 

竜斗の乗るルイナスのゲッター炉心の出力はかなり低かったのだ。はっきりいってエミリアの半分以下である。

 

(なんで、なんで俺だけ出力が全く上がらないんだ……)

 

嘆く竜斗はヤケになり出力をがむしゃらに上げようとするも全く上がらず――。

測定場では重々しい雰囲気に晒されている。これで竜斗に原因があるのが判明したが更なる疑問も生まれた――。

 

「とりあえず最後までやってみましょう」

 

この後も、三回目に入るも結果は三人共変わらず。

出力値のダントツは愛美、次にエミリア、そして竜斗が最下位という結果に終わった。

 

「…………」

 

合流した時のエミリア達が見た竜斗は完全にどんよりしていた。そしてその結果に彼女達は、彼が哀れすぎて励ましの言葉もかけてやることも出来なかった。

……各人が色々と気まずい雰囲気の三人はその後、早乙女達に合流する。が、突然キングが目の色を変えて竜斗に近づき胸ぐらを掴んだ。

 

「キサマ、ちゃんとマジメにやってんのか!」

 

 

と、彼の怒号が響き渡る。

竜斗はすっかり怯えきっており、その二人の光景に慌てて周りが二人を引き離す。

 

「マナミ君やエミリア君は納得できる結果なのになぜじゃ……やっぱり手を抜いているんじゃないのか!?」

 

「博士!」

 

キングから色々貶された竜斗はもういてもたってもいられなくなった。

 

「俺は……俺は……」

 

いたたまれなくなった彼は混乱し、なりふり構わずその場から走りさっていった。

 

 

「リュウトっ!!」

 

エミリアは急いで追いかけようとした時、早乙女が止められる。

 

「二人はここで待機していてくれ。私が竜斗を何とかする」

 

と、早乙女が彼の後を追いかける。

この場にいる者全てが呆然しその場に静寂となった――。

 

「竜斗!」

 

早乙女が追いかけたその先には彼は壁に顔を伏せていた。

彼は優しく肩に手を置いた。すると彼は悔しさと悲しさが入り混じったその声でこう言った。

 

「司令……僕は司令に言われた通り一度も手を抜いてません……なのに……」

 

「竜斗…………」

 

「なんで水樹とエミリアはちゃんと出力が上がるのになんで俺だけ……っ」

 

彼は握り拳を壁に何度も叩きつけた。

 

「これから僕はどうなるんですか……これじゃあゲッターロボに乗っても絶対に役に立てない、明らかにみんなの足手まといになるじゃないか……っ!」

 

ブランクとはまた違う、原因不明のゲッターロボの力が引き出せなくなっているという挫折感から色々な負の感情が入り混じる複雑な心境でその場に泣き崩れる竜斗に早乙女は。

 

「竜斗、今から休憩所で二人で話するか」

 

二人は近くの休憩所に行き、彼を落ち着かせるために自販機で紙コップに入ったコーヒーを買って渡した。

「ありがとうございます……」

 

竜斗はソファーに座り気落ちして肩を落としている。早乙女も隣にソファーに座り込み、自身も紙コップに入った出来たてで湯気の立つ無糖のコーヒーをすすった。

 

「悔しいか」

 

――彼は迷いなく頷いた。

 

「だろうな。今までちゃんとゲッターロボに乗りこなして、そして的確にこなしてきた君が突然私達でさえワケも分からないコトになって、そしてこんな目に遭ってるもんな――」

 

「…………」

 

「私達は一刻も早く君のためにもこの原因を解決したいと思う、ここに来てからこれまでにゲッターロボに乗っていて何があったか教えてくれ。思い出せることだけでいい」

 

そう言われ、今までの記憶を洗いざらに思い出す竜斗――するとやはり、二週間前の夜間戦闘で突然耳に入ってきたあの言葉が引っかかる。

 

『適応しないお前にはこの力は扱えられない』

 

 

早乙女にこの事を伝えると彼は考えこむように腕組みして背もたれる。

 

「適応しない、か……本当にそんな声が?」

 

「はい……気のせいかとも思うんですが、今でも耳に残っています」

 

「しかし、確かに今の君の状態を見れば否定はできないな。にしても、今回に限らずゲッター線を発見してから実に不可解なことばかり起こっている。

それにあの娘、ゴーラからもゲッター線は爬虫人類を絶滅寸前にして、私達人類に進化を促したとも言っていたし、本当に我々が興味本位で手を出してはいけないモノなのかもしれんな」

 

 

二人はゲッター線という謎が謎を呼ぶ摩訶不思議な存在に段々とおぞましく感じてくる。

 

「とりあえず、どうにかして君が本調子に戻れるように何とかするしかない。

機体については私と博士達で相談して何とかする、だから君は自身の問題を解決するよう努力しろ」

 

「司令…………」

 

「竜斗、何があっても絶対に諦めるな。これからもゲッターチームのリーダーとして必要不可欠な存在だからな。

本当に悔しい思いがあるならエミリア達を心配させないために今は問題を解決することだけに集中しろ、いいな」

 

と彼にそう喝を入れた――。

 

戻ってきた竜斗と早乙女にキングは申し訳なさそうな態度をしていた。

「竜斗君……さっきは悪かったな。ついイライラしたもんだから――」

 

謝るキングに彼は首を横に振る。

 

「……いえ、確かに手を抜かれたと思われても仕方ないですから――」

 

しかし竜斗は少しも怒らずかしこまった。

 

「イライラの理由にワシと百ドル賭けて負けたのも入るんじゃないか?」

 

「おいキサマ!」

 

と、ニールセンが藪から棒に余計な事を口走り、今度は二人のたわいない喧嘩を始め、辺りは呆れ、失笑を買っていた。

 

その後、一応全員は解散し三人に自由行動を取らせた後で早乙女はゲッターロボの整備の傍らでニールセン達に竜斗から聞いた事実を話し、そしてこれからどうするかを。

 

 

「……もう現実とは思えんな。ゲッターロボに乗っていてそんな声が聞こえるなどと」

 

「彼本人がそう言っています、それに耳にも残っているそうで」

 

さすがの二人もこれには頭を悩ませる。夢と現実の壁が崩れかけていることに。

 

「で、本題に入りましょうか。竜斗の話が本当なら、二度とどのゲッターロボに乗っても完全な力は引き出せないということです。

しかし彼は今も悔しい思いをしていますし、これからも乗る気はあるでしょう。才能含め、ゲッターチームをまとめるのにもこれからも彼は必要不可欠だと思います」

 

早乙女の主張に二人は考え込む。しばらくしてキングが先にこう提案する。

 

「ならいっそのことアルヴァインのゲッター炉心を取り外してグラストラ核反応炉を搭載するか?」

 

「確かにそれもありですが、もはやそれはゲッターロボじゃなくステルヴァーですね。

それにゲッタービームやトマホーク、ブーメランなどの武装のいくつかが使えなくなりますが?」

 

「ステルヴァーの武装を使えばいいではないか、核弾頭やリチャネイドが使えるぞ」

 

「あれらはステルヴァー専用だ、ゲッターロボが扱えるようにはしておらん。

そもそもそんな面倒なことをするくらいなら竜斗君をステルヴァーに乗らせたほうか早いじゃろ」

 

と、ニールセンに指摘され落ち込むキング。

 

 

 

「ならどうするんじゃ?彼にステルヴァーの操縦訓練をさせて乗せるか?」

 

「彼はゲッターチームのリーダーなんですから、出来れば乗せる機体はアルヴァインの方向でお願いしますよ。

それにアルヴァインを放置するのは私達やあなた達の改良や武装が無駄になると言うことですよ」

 

それを聞いて辟易するキング。すると今度はニールセンは何かを決断した。

 


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