ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第三十二話「オペレーション・ダォイルシエ」⑥

「ヒュージ・マグマリアクターから生み出す膨大なエネルギーを応用した戦略兵器だ。

着弾すれば半径数百キロ全ては灰と化すだろう。たとえ空からの二発は対処できても地下からではどうもできまい、まとめて死ね、地上人類!」

 

ジャテーゴの嘲け笑う声が今にも聞こえてきそうなエリア51では――。

 

“新たな情報が入りました、北部の地下千メートル付近から同じような反応を確認、こちら一直線に南下してきます――各施設内にいる者は速やかに退避してください”

 

地下からも来ているという事実に全員が慌ててふためいている。しかし開発エリアでニールセン達は焦ることもなければ逃げ出すこともせず、早乙女と通信を介している。

 

 

“サオトメよ、これは弾道ミサイルだな。地下からも同じものがこちらへ来ているそうだ――アラスカのタートルからだと言っていいだろう”

 

「……計算しましたが恐らく、空からの二発はこちらへの到達時間は五分もないでしょう」

 

“地中からは……十分切るなこりゃあ”

 

「どうします、退避しますか?」

 

“敵の弾道ミサイルということは、恐らく戦略兵器級の威力じゃろう。ましてや地下からも来るのならワシらに逃げ場などないな。

ならどうにかして撃墜する以外にないだろう――”

 

“では狙撃で撃ち落とすか”

 

二人の間にキングも話に割り込んでくる。

“アルヴァイン、テキサスマックそしてアズレイ。この三機を各位置に配置させて各武器でミサイルを狙撃させよう。

ただ地下からも来るのならそこをどうするか――”

 

“心配するな、エリダヌスX―01なら出来る。では今すぐ三人にそう伝えろ”

 

早乙女はすぐに竜斗、ジャック、そして愛美に通信で何が起こっているのかと今から各人にすべきことを伝える。

 

「オゥ、それはベリーデンジャラスねっ!」

 

「弾道ミサイルを撃ち落とすなんて……」

 

「できるの…………?」

 

三人はそれぞれ返事は異なるが考えていることは同じなようである。

 

“実に危険な賭けだがやらなければ恐らくこの場にいる全員が消し飛ぶだろう、かと言って逃げる時間もない。ということはもはや実行あるのみだ。

 

「総掛かりで叩くのは……?」

 

“音速域を超えて飛んでくる物体だぞ。横から多少ドンパチやらかすだけではビクともしないし万が一、撃墜し損なったら追いつくのはまず不可能になる。

ということは手遅れにならない内に真正面、そして遠距離から撃ち落とすしかない、それがこの状況下で出来るのは君達の機体だけということになる”

 

三人に重大な使命による重圧がのしかかる。一歩間違えたら全てが終わりと化すというこんな状況……。

 

“アンダスタンね、ここまで来たからにはやりましょう!ユー達も早くカクゴ決めなサーイ!”

 

と、ジャックがやる気あるその表情で二人にそう伝える。

ジャックという突然現れたこと男は、エミリアでも話さない奇妙な日本語を聞いて二人は思わずブッと吹き出し笑ってしまう。

 

“なんか笑ったら緊張がとれたわ。イシカワ、もうやるしかないようね”

 

“そうだね。司令、僕達はやります!”

 

「そう言うのを待っていた、では――」

 

ついに狙撃でのミサイル撃墜を決行する竜斗達。早乙女の指示で西側が竜斗、ジャックが東、そして愛美は北側にそれぞれ移動し配置につく。

 

“竜斗君、頑張れよ!”

 

“兄さん、頼むよ!”

 

“マナミ、やれると俺は信じてるからな”

 

 

ジェイド達からそれぞれ応援を受けてますますやる気が上がる三人。

アルヴァインのセプティミスαの弾薬を高速貫通弾に設定し、スナイパーライフルへ瞬時に変形。

 

「イッツ、ショータイムっ!」

 

テキサスマックは二丁のリボルバー銃、専用ライアットガン、プラズマ・エネルギーライフルなどの火器全てをなんと全て各直列、並列に合体させて巨大で長銃身を持つ重火器へと変化を遂げた。

 

「ほう、なかなか面白いギミックを作るもんじゃなキングよ」

「しかしあれはセプティミスαのプロトタイプみたいなもんでいちいち全て持ち歩かないといけないのが難点じゃがな――」

 

二機はそれぞれ射角を合わせて構える。一方で愛美は。

 

「地下から来るミサイルはどうやって破壊すんのよ、マナに地面潜れっての?」

 

ニールセンにそう訴えるとニコニコした顔でこう返される。

 

“アズレイはその場から動かんでも狙撃可能じゃよ”

 

「え、どうやって?」

 

“まず教えた通りに、銃を構えて照準モードにしてくれ”

 

彼女は言われた通りにパネルキーを打ち込むとコンソール画面に、

 

 

『Xスキャンモード』

 

 

と表示され、画面が真っ暗になるが。

 

 

「モニター動かして下をよく見てみろ」

 

モニターを下方に動かすと……。

 

「……地面なのにさらに下に四角いものがあって人みたいなのが動いているのが分かる……」

 

“それはワシらのいる施設の内部と人間じゃよ”

 

それを聞いて彼女はもの凄い事実が分かり、衝撃を受ける。

 

「もしかしてこれ……透視してる……?」

 

ニールセンはそれを聞きたかったのかニヤッと不敵の笑みを見せた。

 

「『ファーサイトシステム』。

X線を応用、最大限に利用し壁、地面、いや地球上のありとあらゆる障害物を透視して直接標的のみ直撃させることができるエイリアンらしい機能を持つ兵器じゃ。

それとアズレイに搭載されたソナーを併用すれば有効範囲にいる敵全てをサーチすることもできる。 これこそエリダヌスX―01の本領とも言うべきシステムで、これさえあればその場から動かずとも海底、地底、上空だろうが場所を選ばず目標に直撃させれるぞい」

 

……誰もがそんな恐ろしい代物を開発してしまった彼に呆れ、開いた口が塞がらない。

 

……狙撃銃の極致、ここにあり。

 

“じゃああのバリアも?”

 

「ああ、バリア自体を無視して機体そのものに直撃させることができる、スゴいじゃろ?”

 

愛美はポカーンとなった。

 

“おじいちゃんさあ、一体何者?”

そう言われるとホッホッホと呑気に笑うニールセン。

 

「ただの武器作りの好きな老人じゃよ――しかし、一発撃つと冷却とエネルギー供給含めて次の発射まで間隔が凄まじく長いという欠点がある、ミサイルのここの到達時間を考えるとマナミ君に許される弾数は一発限り。仕損じるんじゃないぞ」

 

それを聞いて少し気が引く。つまり失敗は許されないということだ。

 

“大丈夫だ、マナミ君の腕ならできると信じておる。胸を張っていけっ!”

 

そう言われると彼女も少しだけ欠けていた勇気が後押しされてついに覚悟を決めた。

 

「……分かったわ」

 

それぞれ各火器を構え、コックピット内では狙撃照準モードに入る。

竜斗、ジャック、愛美は成功を信じ、それぞれ全神経を集中させる。

 

“……来たぞ、ミサイルだ”

 

早乙女から各人に合図を知らせ、機体の指を火器のトリガーに置かせる。

ズームアップした画面には夜空の中央に何やら赤い炎のような輪っかが見え大きくなっている――ミサイルだ。

 

“竜斗、ジャック、君達の出番だ”

 

「はいっ!」

 

「オーライッ!」

 

二人の集中は更に高まった時、早乙女から「撃て!」と合図された。

 

(これで――)

 

(チェックメイトゥ!!)

 

アルヴァイン、テキサスマックの火器から放たれた、キング特注である専用高速貫通弾、そして極めて高密度に凝縮したプラズマ弾が一直線で上空を駆け抜ける。

空気抵抗に負けず、グングン空に伸びていく各弾丸はついに超音速で落ちるミサイルに同時に直撃した――。

 

テキサスマック方向のは、そのままプラズマ弾がミサイルの装甲を貫通し、何も起きずにただ胴体が爆発して空中分解してその沢山の破片が地上へ落ちていく。

 

竜斗方向からのは、高速貫通弾がミサイル内部に到達し、止まるとそこから弾丸に集約された物理エネルギーが拡散して弾丸が破裂、破片が制御や起爆に必要な回路を破壊してミサイルに異常を来して小規模の爆発が起こる。

次第にそれが広がり外部からも分かるぐらいの爆発が起こり、そのまま大爆発して同じく空中分解した――。

それを見届けた早乙女は最後に『トリ』の愛美へ通信をかける。

 

 

“水樹、準備はいいか?”

 

「いつでもオーケーっ!」

 

パッシブソナーを何度も確認する愛美。冷却、そしてエネルギー供給も終わったエリダヌスX―01の銃口を下げて、ミサイルの来る遥か先の地面へ。

 

そしてパッシブソナーに高速で入り込む物体が出現、モニターのX線で映された先には円い熱源反応が中央に映し出されている自動的に照準が捕捉される――地下のミサイルだ。

 

“今だ水樹っ!”

 

「いっけーーっ!!」

 

トリガーを引いた時、再び何とも言えない奇妙な音が聞こえその捕捉した物体は姿を変えて、まるで爆炎のような形になり、そして遥か先の地面がまるで間欠泉のように粉塵が上空へ吹き上がっていた――ソナーとモニターを見ると反応、そしてミサイルと思わしき姿がどこにもなくなっている。

「――ミサイル、全て破壊に成功」

 

「……やったな」

 

早乙女達は安心の息を大きく吐いた。

……とりあえずの危機は去りついに終わりが来て喜び……いや疲れが酷く、ほとんどがそれでぐったりとなっている。

 

「エミリア、やっと全て終わったから迎えに来たよ」

 

エミリアを迎えにボロボロで、そして仰向けに倒れているルイナスの元に降り立つアルヴァイン。

彼女も元気になったのか、コックピットから元気な姿で出て来る。

ヘルメットを外し、汗で濡れた茶髪と顔が寒い夜空と風に晒されて寒くなりくしゃみをするエミリア。

彼はすぐに彼女を自分のコックピットに入れてやる。

 

「アタシ……ちゃんと生きてるんだね……あの時もうホントにダメかと思った……」

 

「でも生きているってことはちゃんと勝って生き延びたってことだよ」

 

「うん……けど、ゲッターロボも新しくなって強くなったと思ってたのにあのメカザウルスに全く歯が立たなかった……まだまだ自分の未熟さを思い知ったよ」

 

「俺も……恐らくこれから戦うメカザウルスもそんな強敵ばかりなんだろうな。まだまだ精進する必要があるね」

 

「頑張ろうねリュウトっ」

 

「ああっ」

 

アルヴァインはルイナスを右手で持ち抱えて基地へ帰っていった――。

 

「まだまだ改良の余地はあるな」

 

基地では修復作業に追われる各人員達を尻目に、ニールセンはそう呟いた。

 

「……あれほどの性能を持ちながらまだ納得しておらんのか?」

 

「当たり前だ。あんな最悪な連射性能とエネルギー供給の効率では全然実用的ではないわ――冷却時間の短縮化などまだまだ見直す点も沢山ある」

 

「というか、よく射撃テストすらしていない試作品同然の代物が初実戦でマトモに機能したのが不思議じゃわい」

 

「ワシが作ったのだからそこは折り紙付きじゃ。だが確かにわしも不安はあったけどな。

ともかく明日からまた忙しくなりそうだな」

「お主も大変だのう」

 

「いいや、我が子の不具合の修正に全力を注ぐのも親の務めじゃ。改良は好きだし――そうじゃ、アズレイの炉心をまた改良するか……いやそうなると他の二機も改良したくなる……ああっ、やることが多すぎてこんなヨボヨボの年寄りの頭の中には入りきらんわいっ!!」

 

「――楽しそうじゃのう」

 

彼のウキウキしている姿からは、確かに楽しんでいるようだ――。

更地のような状態になった基地地上部にはステルヴァー、テキサスマック、そしてアズレイが円を描くように立ち並び、その中央にはジェイド達が降り立ち辺りの惨状に辟易している。

 

「焦土もさることながら……メカザウルスの残骸ばかりで吐き気がするぜ」

 

千機以上のメカザウルスが破壊され地上に叩きつけられたこのエリア51を取り囲む周辺は機械や恐竜の屍ばかりで異様な光景だった――。

 

「ジョナサンっ!」

 

彼の元に愛美が手を振りながら走ってくる。

 

「オー、マナミィ!」

 

着くなり二人は抱きつき合い彼は彼女を持ち上げる。

 

「マナミ、相変わらずお人形みたいに可愛いね」

 

「ありがとう、ジョナサン」

 

彼女も英語でちゃんと返したことに彼らは驚く。

 

「アメリカで長くいることになりそうだったからエミリアとか色んな人から英語を必死で勉強したの、イシカワも一緒よっ」

 

 

 

「へえ。けど短期間でここまでやるとは流石だな」

 

「マナは天才だからっ」

 

その後、基地内に入り竜斗とエミリアもジェイド達と合流を果たして、他のブラック・インパルス隊員共互いに戦友として堅い握手を交わす。

「少佐達、お久しぶりです」

 

「助けに来てくれて本当にありがとうございます」

 

「連合軍上層部から出撃許可がなかなか降りなくてな、すぐに駆けつけられなくてすまなかった」

 

「にしても君達の機体は凄く変わったな、見違えたよ。

それにマナミ君から聞いたが彼女から英語を勉強したんだってな、素晴らしいよ。そしてエミリア君も」

 

三人は照れる。その時、彼らの元にあのジャックとメリーがやってくる。

 

「オゥ、ユー達が例のゲッターチームネ、三人ともこんなティーンヤングマン、ガールズで驚きましたっ。

おっと自己紹介ネ、ミーはジャック。キング博士の息子デス」

 

相変わらずのインチキ臭い日本語を喋ると竜斗と愛美はクスっと笑う中、エミリアはなぜか唖然となっていた。

 

「けど日本語お上手ですね、どうして――」

 

「あたし達、君達と同じ歳ぐらいに日本へ長い間留学してたからね。

私はメリー、妹よ。これからよろしくね」

 

ちゃんとした日本語を話すメリーに竜斗達が「オオッ」となる。するとエミリアはワナワナ震えながらこう言う。

 

 

「……ジャックさんの喋り方……ど、どうしたらそんな覚え方をするの……アタシでさえそんな喋り方にならなかったのに……」

 

彼女は、同じく日本語が使える外国人として理解出来なかった。

 

 

「兄さんは本当はマトモな日本語を喋れるんだけどこんな喋り方を気に入ってるのよ。もうやめてよ、そんな変な喋り方っ」

 

「外国人が覚えたての日本語を使おうとするとこうなる見本なのさ」

 

……と、ここでマトモな日本語を喋り三人はさらに「オオッ」と驚く。

 

「オゥシットゥ、今のは聞かなかったことにしてネ」

 

「兄さん、間違いなく全アメリカ人が勘違いされるからやめてよ」

 

まるで漫才のようなやり取りをする兄妹に、彼らは疲れを忘れてゲラゲラ笑っていた――。

 

 

 

……一方で作戦失敗に終わったアラスカ、ジャテーゴ率いる第三恐竜大隊では――。

 

 

「おのれ……まさか地中のミサイルまで破壊するとは……」

 

さすがの予想外の事態に動揺、そして並々ならぬ怒りが込み上がるジャテーゴは両拳を握りしめて苛立ちからか震えている。ラセツ達含むその場の全員がそれを感じとり誰も助言などできない。

 

「……三中隊共失ったか――もう許さぬ。何としてでも奴らを首を取ると私は誓おうぞ、それを私が正式に王座に着いた時の勝利の美酒の肴にしてくれるっ」

 

ジャテーゴから凄まじくそしてどす黒い執念がにじみ出ていた。

 

「して、これからどうしましょうか?」

 

ラセツの問いに彼女は一息つき、こう告げる。

「長い間、様子見と守備的にこんな極寒なアラスカに留まってたがいつまでいても仕方がない。そろそろ攻撃態勢に入ろうと思う――」

 

「つまりそれは……」

 

「アラスカから南下してドラグーン・タートルで敵本拠地そのものを叩きにいく。大隊の全戦力を結集してな――」

 

これを聞いて全員の気が引き締まる。

 

「恐らくアメリカ本土で史上最大の決戦と化すだろう。今の内に兵力を蓄えておけ、いいな」

 

「御意!」

 

「我々、爬虫人類は主神ゼオ=ランディーグの加護を受けている、そして神は我々にこう告げた。

 

『お前達爬虫人類はいずれ宇宙の覇者となるべく、大いなる創造主たる我に選ばれた唯一無二の種族だ。

民を愛し、脅かす敵と戦い殺し、そして進化しろ』と――私達は何も恐れることはないっ!」

 

“ロジェグリエンヌヴ、ナミュルシ、シュオノレゥル!(我ら死にゆく者、爬虫人類の繁栄のために!)”

 

部下達の、祈りの言葉が辺りに響き渡った。

 

「ヤシャ、ラセツ。お前達もその際は前線で指揮を取り戦え。決して容赦はするな」

 

「分かっておりますジャテーゴ様」

 

「我らジャテーゴ様のためとあらばっ」

 

「フフフ、頼りにしてるぞ。

さて、これより始まるか、史上最大の生き地獄が――」

 

彼女のその不敵な笑みはもはや歪みを感じる。果たして――。

 


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