ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第三十二話「オペレーション・ダォイルシエ」④

『ちい、余計な邪魔が入りやがったか』

 

突然の敵の増援と、その圧倒的戦力によって一気に戦況が傾いたことでリミルはチッと舌打ちする。

 

『気を鎮めろリミル、敵の増援も計算のうち――』

 

『そうだ、我々はただの囮。もうすぐドラグーン・タートルからアレが発射されるだろう――それで奴らはどうすることも出来ずに壊滅を待つだけだ』

 

他の二人は焦るどころか寧ろ好機と言わんばかりだ――。

 

『そうだな、ではもっと遊んでやるか――』

 

ウルスラは左右の肩から突き出た長身のキャノン砲から丸めたドロドロのマグマ弾二発を発射、アズレイは車輪と杭を駆使して急速旋回して避けながらウルスラへ接近する。

 

 

「これでもくらいなさいっ!」

 

右前腕からビーム・シリンダーの出して、撃ち続けるがリュイルス・オーヴェがウルスラにバリアを展開して機体に当たる前に遮断されてしまう。

 

『いくら攻撃しても無駄だぜ』

 

ウルスラは腹部中央の装甲が横にスライドして開くと中から巨大なミサイル弾頭が出現、リミルはアズレイに照準をつけて発射する。

巨大な砲弾型のミサイルがロケット推進で猛スピードで向かってくる、アズレイは右側急旋回して離れていくがミサイルも旋回してアズレイの後を追っていく。

 

『逃げろ逃げろ、でねえと変なトコに当たって痛い目見るぜ?』

ウルスラからも全身に搭載した各火砲で追撃し、愛美を休ませる暇すら与えない。

その時のリミルはまるで狭い場所に追い詰めた袋小路の獲物をじわじわと追い詰めるような卑しい顔をしていた。

凄まじい軌道を描いて避けるアズレイ、砲弾は地面に着弾して破片が飛び、粉塵が吹き上がる。

 

「しっつこいわねぇ、乗ってるのが男なら女から嫌われるよっ!」

 

今すぐにでも追尾してくるミサイルを撃ち落としたいのに、メカザウルスからも絶え間ない砲撃で狙われ回避するだけで精一杯だ――。

 

「ああもおっっ!!」

 

いても立ってもいられなくなった愛美はメカザウルスへ振り向き突進していく。それもフルスピードではなく、明らかに低速だ。これでは間違いなくミサイルに追いつかれてしまうが。

 

ウルスラはこちらへ向かってくるアズレイへ休まず集中放火を繰り出すが愛美はプラズマシールドを駆使してそのままど真ん中に突っ込んでくる。

しかしミサイルもすぐそこまで迫っており完全に挟みうちされていた。

 

ウルスラとアズレイの距離がもう手の伸ばせる距離に迫った瞬間だった。

 

『――!?』

 

愛美の瞬時の器用な操作に反応してアズレイは、旋回用杭を何度も地面に打ち込み目の前でクルクルとウルスラの背後へ回りこんだ。

しかし彼の目前には自分の放った巨大ミサイルが自分に帰ってきており、どちらも回避できる余裕などなく直撃を食らった――。

凄まじく巨大な爆炎が半球状に膨れ衝撃波、そして轟音が四方八方に広がる――。

アズレイはそれに巻き込まれないようにフルスピードで逃げていく――。

 

「ダッサっ、自分の吐いたツバが自分に返ってきてやんの……っ」

 

爆炎が収まり、爆心地は広く粉塵が巻き起こり中は見えない、さすがにまともに食らえばただではすまないだろう――とだがその時、黒煙吹き上がるその中から再び砲弾が降り落ちてきたのだった。

 

「生きてるっ!?」

彼女は再び休みもくれるそこから離れて再び円を描くように走り出す。

 

その中心部の煙が止むとウルスラの全く掠り傷すらつかない無事な姿を発見した。

 

『おもしろい、実におもしろい。この俺相手にここまでやるとはな。ではそれに敬意を評して次は本気で行かせてもらうぜ』

ウルスラの背中が開くと中から巨大な翼竜の翼、スラスターが飛び出して展開。そのまま大空へ飛び上がった。

 

「あいつ空飛べんのっ!?」

 

今まで地上であまり動かなかったその鈍重そうな外見に反して空中で運用できることに驚く愛美――。

 

ウルスラはスラスターと両翼を駆使して、まるで燕のように空を左右を『8』の字を描くように行き交うよう素早く移動しながら両腕のキャノン砲、そして今度は脚部が開き、多数の小型ミサイルを地上へ空爆を始めた。

愛美は必死で避けながら、こちらからも全火器を展開して応戦するが一向に当たらず。

そして撃ち止まない上空からの砲撃に疲れ、そして苛立ちが見え始めていた――その時、彼女に通信が入る。

こんな非常時になんだと苛立ちながら開くとそこにはニールセンの姿が現れた。

 

“マナミ君、たった今『エリダヌスX―01』の最終的な調整が終わった。

今から非常用の格納庫ハッチを開かせるからすぐにそこから入って施設内の格納庫へ来てくれ、それを装着させる”

 

「はあっ?!今空からメカザウルスに攻撃されてるこんなヤバい時にムリよお!」

 

“では、先程増援に来たステルヴァー隊にその間の時間稼ぎを頼ませておくから安心して来てくれ”

 

「…………」

 

“早くしろ、ハッチの場所を記されたマップをそちらに送る。

エリダヌスX―01を装備したアズレイなら、バリアだろうがもう敵なしじゃよ”

 

「……ホントなの?」

 

“ああっ、ホントじゃ。ワシを誰だと思ってる?”

 

渋々だが、それを信じてモニターに表示されたマップを頼りに赤い点滅する場所へ走らせる。

その地点の、焦土と化した地上が突然と扉のように左右に開きSMB一機分入れるほどの大きさを持つ地下への道が現れる。

ウルスラから空爆がをどうにか避けながらそこにたどり着くと滑り込むように内部へ入るとすぐにハッチが閉まり地下へ引っ込んで行った。

 

『地下へ逃げたか……ん?』

 

ふと正面を見ると、何やら黒く鋭角的なデザインの機体がこちらへ向いて立ちはだかっている――ステルヴァーだ。

「よくも俺の未来に嫁さんになる予定のガールフレンドを傷つけようとしてくれたな、倍にして返すぜっ」

 

コックピット内ではジョナサンは憤怒を顕わにしていた。

 

『相手が変わったが時間稼ぎに越したことはねえか、来やがれ』

 

――この二機はこの宙域で激しくぶつかり合う。

ステルヴァーもおなじく各スラスターを駆使して空中を縦横無尽に動き回り、手持ちのライフルと腕部からの小型ミサイルによる飛び道具で応戦するもやはりバリアが頑なにメカザウルスに被弾するのを拒む。

 

『さあどうする?このまま時間が食うとお前らの退路すらなくなるぜ』

 

リミルからしてみればもはやお遊びだ。それに対しジョナサンはあの北海道における自分達を手こずらせたあのバリアがあることに気づき、舌打ちした。

 

「くそ、やっぱ上に逆らってでも核弾頭を持ってくりゃあよかったぜ……っ」

 

――そして、ここから離れた荒野ではエミリアの駆るルイナス、クランの駆るルイエノの一騎打ちが行われていた。

 

「手伝ってみんなっ!」

 

ガーランドG、ライジング・サンの各箇所から自律回路搭載の無人攻撃用子機『ドリル、ビーム・シーカー』を一斉に空中へ撃ちだし、蜂のような動きをしながらルイエノへ向かわせた。

 

『ほう、オーヴェシリーズのような自律支援兵器が地上人類軍にも存在するとはな』

 

それらに一気に囲まれるもクランは一切焦っていなかった。

シーカー九機のよって八方から包囲されて集中攻撃を受けるルイエノは瞬足を持ってその包囲から一瞬で抜け出した。

当然シーカー達も追跡を開始するが、再び両手、両足を発火させて後ろへ『タン』と軽やかにバックステップ。

通り過ぎて動きの鈍った瞬間を突いて高く飛び上がり勢いのついた回し蹴りを繰り出してシーカーをその強烈且つ高温を帯びた蹴りで一撃で破壊。

地上へ着地すると左手を突き出して射出、ワイヤーを伸ばすと左腕をグルングルン回し、鉄球と化したその左手はシーカーをなぎはらう。

 

その時だった、その死角からルイナスが高速回転するドリルを引き込みながら猛スピードで突進してくるのが。だが、

『甘いっ!』

 

ドリルで穿とうとした時、ルイエノはとっさにしゃがみ込みルイナスのその細い脚部に素早く足払いをかけて転ばせた。

 

「くうっ!」

 

立ち上がった時にはすでに間合いを取られており上から落下スピードを乗せた、真っ赤に発熱したカカト落としを放つルイエノの姿が。

しかしエミリアも負けじと瞬時にレバーを引き込み右に急旋回し間一髪の所で餌食にならずにすみ、カカト落としが地面に直撃し、大きなクレーターができた。

再び間合いを取りすぐに身を構えて体勢を立て直す両機、至って忽然な態度のクランと息を大きく乱しているエミリアはどちらが優勢かすでに分かる。

(このままじゃいくらやっても攻撃が当たらない……どうすれば……)

 

見る限り、あのメカザウルスはバリアのようなモノはなさそうでドリルを一回でも当てればこちらの勝ちだ。

だがそれ以上に素早くそしてパイロットも経験豊富且つ巧みな操縦技量を持っており、まるでこちらの動きを完全に読まれているようだ。

それはまるでかじった程度の素人が歴戦の達人相手に真正面から挑んでいるようでこのままでは一方的にぶちのめされるだけだ、彼女はどうすればいいか悩みに悩んでいた――。

 

……一方で上空では竜斗の駆るアルヴァインとリンゲィの駆るミョイミュルは各攻撃を身を削るように凌ぐ攻防戦を繰り広げていた。

 

ミョイミュルの両翼羽はゲッタービームに耐えるほど頑丈でありこちらからの攻撃を完全に塞がれていた。

回り込もうとするも相変わらずの子機達が疾風のように素早く動きながら付きまとい、幾度なく妨害をしてくる――竜斗は辟易した。

 

(あのメカザウルスさえどうにかすれば……)

 

こちらもシールドが切れてこれ以上の被弾は危ない、彼は回避に徹している。

 

「こうなったらっ!」

 

アルヴァインは右臑部からビームブーメランを取り出してそれを上に向けて投擲する。

 

展開したブーメランは高速回転しながらミョイミュルの頭上 の頭上を通り過ぎていくがすぐに旋回して後ろからミョイミュルの首一直線へ向かっていく。

しかし気づかれておりすぐに振り向かれて、振り込んだ羽によってに弾かれてしまう――。

 

しかしアルヴァインは今度は左臑部からもう一つのブーメランを取り出すと再び投擲する。

 

『何度やっても同じことっ!』

 

学習能力がないのかと鼻で笑うリンゲィ、しかし竜斗はすぐにライフルの弾薬にプラズマ弾に変更した。

 

「一かバチかだ!」

 

ライフルを片手持ちで構えてまとわりつく子機達からの攻撃を回避しながら、左右、そして上下に移動してブーメランになんとプラズマ弾を撃ち込んだ。

 

『なにっ?』

 

その読まれやすいブーメランの軌道がプラズマ弾によってカクンカクンと曲がりくねたりと強引に変則的な軌道を取る。

竜斗は続けてさらにプラズマ弾を撃ち続けてブーメランの軌道を変える。

さすがのリンゲィもこれの動きには対応できておらず挙動不審のような行動をしている。

 

「今だっ――」

 

ちょうどミョイミュルの真後ろにブーメランが差し掛かった瞬間に、ちょうど真正面の位置にいたアルヴァインはすかさずゲッタービームをブーメランに撃ち込み、リフレクタービーム機能が作動しゲッターエネルギーがミョイミュルの真後ろで大量に放出された。

 

『ば、バカなっ……』

 

高濃度のゲッターエネルギーを大量に浴びて、機械を残してドロドロに溶けていくミョイミュル――。

そして内部のコックピットにも到達しリンゲィもまたゲッター線によりドロドロに溶かされていった。

 

『無念……ジャテーゴ様……恐竜帝国……万歳っ……』

 

爆発せずにそのまま機能停止して地上へ落ちていく。そして本体から出されていた電波が途切れて同じくその場で子機達も機能停止して固まったまま地上へ落下していった――。

 

「か、勝った……」

 

竜斗はそれを見届けると気が抜けて被っていたヘルメットを取り、大きく息を吐き乱れしたのだった。

ちょうどその時、早乙女から通信が入る。

 

“どうやら決着がついたようだな”

 

「司令……」

 

“君はジェイド少佐達と合流して空中のメカザウルスの掃討を頼む……どうした?”

 

一騎打ちは彼が勝利したにも関わらず複雑な心境と表情で、その理由を早乙女に伝えた。

 

“私達や爬虫人類全てがゴーラのような思想を持つ人間ばかりじゃないのは君ならすぐ理解できるはずだ、現に水樹だってそうだろ?

こればかりはどうしようもない”

 

 

「…………」

 

“今はそれより今の状況を何とかするほうが先だ、気持ちを切り換えろ”

 

彼から通信が着れる。確かに今はそんなことを考えてる場合じゃない、早乙女のほうが正しいのは分かっている。

しかし彼にはもう一つの疑問があった。

 

 

『適応しないお前にはこの力を扱えられない』

 

 

 

――突然耳に聞こえ響いた謎の声。

頭にそれが未だ染み付くように残り、響くその言葉の意味は一体なんなんだ。

 

アルヴァインに乗り換えてからの初戦の時にあった危険な破壊衝動と、そして今回の時といい謎が深まるばかり――僕はますますゲッターロボに対する不信感を抱くようになっていった――。

 


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