ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第三十二話「オペレーション・ダォイルシエ」③

竜斗、エミリア、愛美の三人は各中隊司令官であるリミル、クラン、そしてリンゲィの駆る専用メカザウルス、メカエイビスとそれそれ一対一に持ち込まれており、それぞれが必死で早くなんとかしようとするが、向こうも手慣れた戦士であり一筋縄ではいかなずに手こずっている。

こんなことに時間を無駄にしたくないのに……三人は完全に焦っていた。

 

……第三十九恐竜中隊司令官、リンゲィ=ミ=シェイクム。竜斗は彼へ未だに説得を試みていた。

 

「僕はあなた達と仲良くなりたいのにどうしてそれが分からないんですかっ!」

 

“『お前たち地上人類は決して野放しにしてはならぬ存在、それがたとえ和平を望んでいてもだ!』”

 

「ゲッター線で進化したから、もしかしてそれだけの理由ですか!?」

 

 

“『そうだ、太古から我々をとことん苦しめたゲッター線の加護を受け、それだけで飽きたらず、湯水のように使う貴様らの存在自体が悪なのだ』”

 

 

「……僕らは好きで使っているわけではありませんっ!どうか話だけでも聞いてくださいっ!」

 

“『もはや戦闘中にこんな戯れ言は聞かぬっ、行くぞ!』”

 

ついに向こうから強制的に通信が切れた。

自分の訴えが一方的に拒否されたことに彼はたちまち悔しい思いでいっぱいになった。

こうなった以上、彼も今は戦うことに割り切る。

……リンゲィの乗るこの巨大プテラノドン型メカエイビス『ミョイミュル』は、はっきり言って武装、装甲、機動力を見ても突出した点はないようで恐らくはアルヴァインよりも性能は幾分劣っているのではないかと思えるが――。

 

ミョイミュルの、全長百メートル近くある巨大な両翼を前へ羽ばたくと強烈な風が巻き起こり、アルヴァインを突き抜けて後ろへ吹き飛ばされそうになるが、その場に身を構えて耐え抜くがそのまま頭部の細長い口を開けると大量のマグマを噴射し、その暴風に流されてアルヴァインに当たる。

幸いシールドが張られて損傷はないが止まることなくおびただしい量のマグマを吐き続けて風の流されるままに飛び、捉えているアルヴァインに連続的に浴びせていく。

 

 

竜斗はこのままではと、ペダルを踏みブースターを点火。勢いよく上昇して暴風圏を逃れるがそこに待ち構えるはミョイミュルから飛び出した同じ姿をした子機達。一斉砲撃を繰り出して休ませる暇も作らせない。

華麗で高速なマニューバを描き、子機の攻撃を回避しながら竜斗はライフルを片手持ちでミョイミュルに向けてプラズマ弾に設定し、発射。しかしミョイミュルはすかさず各翼を前へ折り曲げて身体を翼で隠す。

 

プラズマ弾は翼に直撃するも先にプラズマ弾が消し飛び、羽根には全く損傷すらない。

通じないと分かると今度は榴弾、直射に設定して上から頭部へ直接狙い撃つが羽根によって払いのけられて別方向に落ちていった。

それも通用しないと分かったアルヴァインは腹部をかがめるような態勢を取り、腹部の中央の円いしきりが開くとレンズが出現した。

 

「これならっ!」

 

ゲッター炉心の出力が上昇し、レンズが真っ赤に光った時、ゲッターロボ唯一無二の兵器であるゲッタービームが放たれた。

ゲッター線の粒子が濃縮したこの光線は一直線上に向かっていき盾のように使う巨大な羽根にぶち当たった。

 

「はああっ!」

 

まだまだ出力を高めていくがまだ羽根を貫通しない、しかし向こうも流石にキツいのかその状態を維持したままだ。

互いの押し比べ。どちらの打ち勝つのか――竜斗は負けじとビームの出力をさらに上げようとしたその時だった。

 

 

“選ばれない者にはこの力、使いこなせぬ――”

 

誰かの囁く声が竜斗の耳に入り、彼の動きは停止した。

 

(な、なに…………)

 

“適応しないお前に……この力を扱う資格はない”

 

 

通信か、いや通信などかけてない。そしてこの中には自分しかいない、では一体誰の声か……。

 

 

ビームの出力が弱まっていきそしてついには途切れてしまう、それどころかアルヴァインの動きさえ止まっている。

 

リンゲィはそれをチャンスと言わんばかりに子機達を遠隔操作でアルヴァインを包囲する。

 

「はっ!」

 

気づいた時には時すでに遅し、子機からの四方八方からの攻撃をまともに受けてしまった。

 

「うわああっっ!」

 

各砲撃を受け続け翻弄されるアルヴァインのシールドのエネルギーがレッドゾーンに入ってしまった――。

 

「司令、このままではっ!」

 

「…………」

 

一方、ベルクラスだけで未だに大量に群がるメカザウルスの集中攻撃を受けており、こちらもシールドのエネルギー残量が残り少なくなっていた――。

 

「竜斗達はっ?」

 

「三人共、謎のメカザウルス達に一対一へ持ち込まれていますが全員相手のペースに呑まれているようですっ!」

そんな時、ついにベルクラスのシールドエネルギーが切れて消滅してしまう。だが向こうの攻撃は一向に止まらずついに装甲部に被弾した。その衝撃が艦橋に伝わり激しく揺らめいきここにいつ被弾するかも分からない。

 

「も、もう持ちませんっ!」

 

「くっ……」

 

 

今まで持ちこたえてきたこの艦も、ついに終わりを迎えてしまうのか……と二人は撃沈を覚悟したその時だった、遥か南東の彼方から大量の何かこちらへ到着するとメカザウルスの群れに襲いかかり一気に数百という数が力を無くして地上へ落ちていく。

何事かと思い、即座にモニターを拡大するとそこには黒い戦闘機、それはあのステルヴァーのみで構成した編隊、そしてもう一機の謎の機体がこちらへ向かってくる。

ちょうどその中の一機から通信が入り、拾うとモニターに現れたのは何とジェイドの姿があった。

 

“大丈夫ですかサオトメ一佐!”

 

「少佐!来てくれたかっ」

 

ジョージ、そしてジョナサンからも通信が入り久々の対面をする彼ら。

 

“俺達が直ちに援護に入ります”

 

“ではブラック・インパルスの力、見せてやりますかっ!”

彼らが素早くこちらへ到着すると直ちに介入する彼らブラック・インパルス隊員。

その華麗なマニューバを見せながらミサイル、機関砲、プラズマ弾などの火器をばらまき飛ぶ鳥を落とす勢いでメカザウルスを撃墜していく――。

 

「司令、正体不明のSMBから通信が入ってます」

 

開くとモニターには見たことのない彫りの深いネイティブ系アメリカ人と思わせる男性、そしてメガネをかけた若く、そして茶髪のボブカットをしたアメリカ人女性の二人組が映り込んでいた。

 

「ヘイ、あなたがサオトメ一佐ですネ?」

 

「君達は?」

 

“ワタシはキング博士の息子のジャックデース、どうぞヨロシクネっ”

 

おちゃらけているような雰囲気、そしてどこかイントネーションのおかしい、すなわち胡散臭い日本語みたいだかちゃんと喋っており、驚く二人。

 

“私はメリー、同じくキング博士の娘でジャックの妹です。私達はこのテキサスマックでこれよりあなた方の援護に入ります”

 

 

妹のメリーはちゃんとした日本語を喋るようだ。

 

彼らの乗る機体は本体と思わせる人型のSMBは、カウボーイの白いテンガロンハットを被り、ポンチョかマントのような物で全身を隠している、今までのSMBとは異色のデザインであり、その後ろには巨大なスラスターとそして至りつくせりと言わんばかりのミサイルポット、ビーム砲台、機関砲台が大量に取り付けられた、まるで要塞のような巨大重兵装ユニットとドッキングした、たとえるなら空飛ぶ火薬庫とも言える姿をしていた。

 

「テキサスマック……これは?」

 

“ここの施設にいるはずの父、キングが私達のために極秘に造り上げた試作型SMBです。

兄がこのテキサスマックを、私が背部のこの『ケツァルコアトル』を担当します。ここは私達に任せて後退してください”

 

 

 

「すまない。ではよろしく頼む」

 

ベルクラスは急いでその宙域から離れていく。

 

“では兄さん、行くわよ!”

 

「オーケーっ!」

 

ユニット後部にあるスラスターを駆使して、猛スピードでメカザウルスの密集地に到着し、テキサスマックはポンチョをバサッと開くとその中には多くの重火器が内側に取り付けられており、二丁のライフルを取り出し前へ向けた。

 

「メリー、ケツァルコアトルの全火器を一斉開門しろ」

「了解。ブラック・インパルス隊は速やかに射線上から退避してください」

 

“了解した”

 

“ジャック、メリー、派手に頼むぜ!”

 

ステルヴァー全機はテキサスマックに任せて旋回し、後方へ下がっていく。

 

「ターゲット、マルチロックオン。目標、前方広範囲のメカザウルス軍団!」

 

メリーのコックピットではモニター全体に映るメカザウルス達一機ずつに細かく赤い囲みが入ると、ケツァルコアトルに搭載された火器の砲門全てが開いた――。

 

「兄さん、いつでも行けるわよ!」

 

「よし、フルファイアーーっ!!」

 

それは鮮やかだった。テキサスマック、ケツァルコアトルの火器全てからビーム、ミサイル、プラズマ弾、機関砲、ありとあらゆる火砲でテキサスマック前方全てを七色光で染め上げた。

全ての弾頭が千以上のメカザウルスを一撃で貫き、そして消し飛ばした――それはまるで花火を見ているのようである。

 

「一三〇〇機近くを殲滅か、初弾でなかなかのハイスコアだなメリー」

 

“ええっ、だけど予備弾薬積まずに来たからもうこっちの弾薬はないわ”

 

「メリーは後方に下がり待機しててくれ、ここからは俺に任せろ!」

 

“それじゃ頼むわっ”

 

テキサスマックは連結部を外して空中へ飛び出すと各脚部と腕の関節部にあるスラスターを稼働して空中に浮遊し、ケツァルコアトルは急旋回してそのまま遙か後方へ下がっていった。

 

「では初実戦テストと行くか、テキサスマック!」

風にたなびくポンチョから両手を出すと持っているのは先ほどの二丁のライフルである。

 

各スラスターを噴射して空中を縦横無尽に高速移動しながらプラズマ弾をフルオートでぶっ放して敵を殲滅するテキサスマック。

すると今度は二丁のライフルをなんと、直列に連結するように合体させ長身砲が出来ると上空へ垂直に掲げた。

 

「テキサスマックのライフルはこんな使い方も出来るんだ!」

 

機体内のプラズマ反応炉がフル稼働し、それに連動して砲口から青色の極太の光線が遙か宇宙へ伸びていき、そこから横一線に全力で振り込んだ。

 

「ゴートゥヘェル、メカザウルス!!」

 

その凄まじい長さを持つ光の剣刃がメカザウルスを一斉に凪払い消し飛していく――しかし、その代償に連結した長身ライフルもオーバーヒートして焼きついている。

 

 

 

 

 

「やはり試作品だと精々ここまでか」

 

テキサスマックは連結したライフルを元通りにして再びポンチョにしまう。

ちょうどその時一機のメカザウルスが大口を開けて向かってきている。

テキサスマックは被っているハットを取ると内部中央にある『とって』を持ち、小盾のように正面に向けて、メカザウルスの噛みつきをハットを盾に防ぐ。

 

「残念っ!」

 

開いた手でポンチョから今度は大型のリボルバー銃を取り出してメカザウルスの頭に突きつけ、

 

「ザ、エンドゥっ!!」

 

トリガーを引き、発射されたその強力な大型の弾丸がメカザウルスの頭部を突き抜け胴体に入り込み内部で炸裂。その強烈な物理エネルギーが内部にある機械や回路、微かに残る内臓をズタズタにしてついには内部から外部に突き出て破裂したのだった。

肉塊と化したメカザウルスはそのまま機能停止し地上へ墜ちていった。

 

「ヒューッ!」

 

呑気に口笛を吹くジャック、戻ってきたステルヴァー部隊と共にそのまま残り少なくなったメカザウルスの掃討を始める。

 

「イーーヤッフォーーっ!!」

 

彼らのその圧倒的戦力を持ってメカザウルスの数は一気に激減し、戦況は大きく変わった。

 

その光景を後退して離れた場所から見ていた早乙女とマリアは驚き、心強い味方が駆けつけたことに安心と興奮が入り混じっていた。

 

「やはりアメリカ側の戦力は凄いな」

 

「ええ……っ」

 

……一方、竜斗達にそれぞれジェイド達から通信を受けていた。

 

「ジェイド少佐!」

 

“竜斗君、挨拶は後だ。空中にいるメカザウルスの群れは私達がなんとかする。君達は目の前にいる敵に集中してくれ”

 

「了解、少佐もそちらを頼みます」

 

二人の会話からは互いの再開に喜び合っているようであった。

 

“エミリア君、大丈夫かっ!”

 

「少佐……お久しぶりです!」

 

“苦戦してるようだが、私も手を貸そうかっ”

 

「い、いえ、少佐達が来てくれただけでも凄く心強いです、アタシはまだまだ頑張れます!」

 

“そうか、では私達は空中のメカザウルス達を抑える、君達は思う存分やれっ!”

「はいっ、お願いします!」

 

――そして、この二人も久々の再開に当然喜び合っていた。

 

「えっ、ジョナサンっ!?」

 

“やあマナミ、また会えて嬉しいよ。助けに来たからもう安心してくれよ!”

 

「よかった……また会えた……!」

 

“挨拶は後で、今はこいつらの対処を最優先だ”

 

「うん!頼りにしてるわジョナサン」

 

“マナミ、無理すんなよ”

 

「アンタが来てくれたからにはマナがあいつなんかケチョンケチョンにしてやるからっ!

ジョナサン達は空にうようよいるメカザウルス達をお願い!」

 

“任せとけっ!”

 

互いに顔を合わせた後、先ほどまで苦渋だったゲッターチームの顔色は一気に明るくなった。

 

 

「みんな、少佐達が来てくれたからには何としてでも勝つよ!」

 

「ええっ、これでアタシ達に――」

 

「怖いものなんてないんだからっ!」

 

上空のメカザウルスを心配する必要がなくなり、今は前にいるメカザウルスに集中できることに三人は意気揚々にレバーをぐっと握りしめて今まで以上に気合いをいれた。

 


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