ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第三十二話「オペレーション・ダォイルシエ」②

地上ではエミリアと愛美は降りてくるメカザウルスの対処にまわっている。

 

(数が多すぎてキツくなってきた……)

 

ルイナスは浮遊している一機のメカザウルスに狙いを定め、アンカーを撃ち出す。

勢いよく上昇するアンカーは見事そのメカザウルスに撃ち込まれ、突き刺さる。

痛みの悲鳴を上げてもがくがそのギザギザな銛はもがけばもがくほど深く食い込んでいき取れない。

固定されたのを確認するとすぐさまエミリアはアンカーに繋がったワイヤーを素早く巻き戻し、メカザウルスを地上へ無理やり引きずり下ろす。

同時にドリルを高速回転させて地上に待つルイナス。それはまるで獲物を捕らえたアリジゴクのようである。

そのままメカザウルスは強烈なワイヤーの力でズリズリ引きずられ、ついにワイヤー下で回転するドリルに到着しグチャグチャにグロテスクに粉砕された。

 

「…………」

 

彼女はやり過ぎたかなと、罪悪感を感じている。

 

“エミリアやるじゃないっ”

 

「……けど今のってなんかスプラッター映画でありそうなやり方よね……待ち構えてる感じがえげつないっていうか……」

 

“なあに気にしてんの。相手は憎っくき敵じゃない”

 

「……確かにそうだけどさ」

 

彼女もこの中にあの爬虫人類のパイロットがいたのかな……と思うとなんかやりきれなくなってしまう。

 

“ほら、次から次へとアイツらが来るんだからしっかりしなさいよね”

 

彼女の言うとおりだ。こんな状況でしょうもないことを思っていてもただの無駄である。

彼女も気を取り直して再び行動を開始する。

 

右手のアーム、ガーランドGを上空に群がるメカザウルスに向け、そして背部のライジング・サンの各先端のハッチが開き、そして中央部のドリルが回転を始める。

 

「みんな手伝ってっ!」

 

各兵装に搭載された、計九機の自律回路搭載の攻撃用子機が一斉に飛び出しブースター、スラスターを駆使して素早く上空のメカザウルスの群れを包囲しそれぞれ突撃、ビームによる射撃の飽和攻撃を繰り出して殲滅していく。

 

子機達が単独行動している間、ルイナスは別方向から多弾ミサイル、プラズマキャノンを展開して確実に撃ち落としていく――。

 

「ほらほらいくわよォ」

 

愛美のアズレイも同じく地上から、内蔵するビーム砲、各ミサイルを打ち上げて飛ぶ勢いで落としていく。

前機にはなかった左右の腰部側面には折り畳まれた砲身を伸ばして上空へ向けると青色の光弾、プラズマビームを二発同時に発射。

コマのようにその場で機体を軸に右回転するとビームも円を描き、多くのメカザウルスをなぎはらった。

その時、死角から一機のメカザウルスが急接近してくるが瞬時に右腕を突き出すと、腕の中からビーム・シリンダーがせり出した。

レンズがカッと赤く光、目の前に迫っていたメカザウルスは赤色光に包まれた。

光が途切れるとすでにメカザウルスの頭部から胴体がキレイさっぱり消し飛び残りの肉塊がその場にドチャっと落ちる。

 

「爬虫類の分際でマナに近づこうなんざ百年早いのよっ!」

 

余裕溢れる愛美。するとさらにメカザウルスの一機、二機、いや十、二十、いやそれ以上を超えるメカザウルスがアズレイに押し寄せてくるも、愛美は火器管制を『フルバーストモード』に変更。アズレイに内蔵火器全てを展開し、上空全方位にミサイル、ゲッタービームを避ける隙間もないほどに撃ちつくして近づこうとするメカザウルス全てに襲いかかり、大破し、溶けていき地上へドサドサと落ちていく――。

 

「けど全然キリがない……」

 

どれだけ撃破してもまるで虫のように湧き出てくるヤツら、メカザウルスにさすがの彼女も辟易した。

 

「エミリア、アンタもうどれだけ倒したの?」

 

“……覚えてないわよもう……それよりも終わりが全然見えないのがつらい……っ”

 

「…………」

 

“それに、流石にルイナスの飛び道具だけじゃ追いつかないわ”

 

エミリアが今にも泣きそう顔になっている。

確かに強力な新型機になり、強力な武装があると言っても向こうは飛行するメカザウルスばかりで、空戦に長けたアルヴァインでもなく、かと言って砲撃戦用のアズレイと違い、コンセプトが地上戦前提であるこのルイナスでは苦戦を強いられているのは必然だ。

 

 

「それでも一機でも多く倒さないと。そうでしょ?」

 

“う、うん……”

 

「マナだって正直もうイヤイヤだけど必死でやってんの。

ここをブッ潰されないうちに少しでもアイツらを多く叩くのよ!」

 

……百を超えるメカザウルスによる空爆が激化し、辺りはもう更地に近い状態である。

地下にある本拠地は休むことなく爆発の衝撃による振動と轟音が続き、天井が崩れる所もあるなど少しずつ被害が出始め全職員も参っている――。

 

武器開発エリアではニールセンと叩き起こされて不機嫌なキング、そして各スタッフ、エンジニアが総出でエリダヌスX―01の総仕上げに入っていた。

 

「くそ、せっかく人が寝ている最中に叩き起こしやがって。空気読めんのかまったくっ」

 

「文句言うならヤツらに言え」

 

瞬間、凄まじい揺れが起こり、彼らは翻弄されて床に倒れふせた。

しかもウインチワイヤーが切れて長い銃身が床にぶつかってしまう。

 

「く、早く済ませんとな。にしても護衛は一体何をやっとるんだ」

 

その地上では戦況はさらに激化し、ゲッターロボと共に護衛についていたマウラーだけでは力不足で、もはや手に負えなくなっている――。

 

戦闘機になったマウラー達は空中戦を繰り広げるもメカザウルスの固まりに呑み込まれて粉々に潰されて、マグマによって溶かされて一気に数が減る一方であった。

 

エミリアと愛美も気を凌ぎながら奮戦するも終わりの見えないこの状況に吐き気さえ催していた。

そんな時、上空から二機のメカザウルスが地上に降下して降り立つ。

そいつらはルイナスとアズレイの元へ向かい立ちふさがる。

 

「な、なにこいつら……」

 

上空で蠢いている同じメカザウルスの姿ではない。

一機はトカゲの人間にしたような細身でスラッとした体躯、もう一機は暴君竜をベースに左右の肩、腕、腰にそれぞれキャノン砲が取り付けられた如何にも砲撃主体と思わせるメカザウルス。内部のコックピットに座る各爬虫人類のパイロットは不敵に笑っている。

 

『ほう、こいつらが日本の部隊を潰した例の機体か。

確かにクセのある姿で、これはやりがいがあるぜ。なあクラン?』

 

『ああ、ジャテーゴ様から一対一に持ち込めと言われているから時間稼ぎにもちょうどいい、ここで相手になろう。リミル、その黄色い機体を頼むぞ』

 

それぞれトカゲ型メカザウルスはルイナス、暴君竜型メカザウルスはアズレイに標的をつけて立ちふさがった。

 

「もしかしてこのメカザウルスって……」

 

「マナ達にタイマン持ち込む気!?」

 

二人もそれに気づいた。そんなことをしている暇などないがどうやらどいてくれる気もなさそうだ。

 

『では行くぞ』

 

不意にトカゲ型メカザウルスは高く飛び上がり、いきなりルイナスへ目掛けて全力の、プロレス技であるドロップキックを繰り出した。

 

 

「キャアアアッ!!」

 

直撃を受けたルイナスは勢いよく吹き飛ばされて地面に強く転がりこんだ。

 

「エミリアっ!」

 

愛美は彼女を助けようと動こうとした時、胴体に何かが直撃し爆発した。

振り向くともう一機のメカザウルスが右腕のキャノン砲をこちらに向けて砲口から硝煙が上がっている。

 

そしてよく見ると、そのメカザウルスの頭上に、前に見たことのある球状の金属体が二つ浮遊しており飛び交っている。

 

「アイツ、もしかして……」

 

試しに愛美はメカザウルスに照準を合わせて腰側面のビーム砲を伸ばし、すぐさま撃ち込む。

プラズマエネルギーによる青いビームが勢いよく飛んでいくが相手は避ける動作すらしていない。

球状の金属体はビームに素早く感知してメカザウルスへ淡い光の膜を展開した時、ビームは膜に直撃する。だが膜が破ることなくビームが先に消滅……愛美はあれが何なのか確信した。

日本において、あの巨大恐竜要塞ダイを頑なに守っていたあのバリア発生装置、リュイルス・オーヴェである。

 

『ほらほら早くしねえとお前らの基地がなくなっちまうぞ』

 

暴君竜型メカザウルス『ウルスラ』に乗り込むのは第三十八恐竜中隊司令官である、一癖ありそうな雰囲気を持つキャプテン、リミル=シ=ムルリアは下品な笑みを浮かべている。。

 

 

「この……マナをなめんじゃないわよおっ!」

 

すっかり血の上った愛美はウルスラへ向かって突撃。

勢いを載せて殴りかかろうとしたが簡単にいなされてしまい、その隙間を狙われて蹴り飛ばされてしまう。

 

『おいおい、戦い方がなっちゃいねえぞ?』

 

ウルスラの左右の腕が、肘から先がキャノン砲と化しており、その左腕の砲身を伸ばすと赤くドロドロのマグマをホースの水のように放射しアズレイへ浴びせにかかるがすぐに飛び起きてそこから車輪ユニットで周りをグルグル周りながら各火器を展開、

対するウルスラはそこから不動のまま全身に内蔵する火器を展開した。

 

『ミサイルパーティーの始まりか、面白い』

 

「いくわよっ!」

 

各ミサイル、ビーム、マグマ……アリの入る隙間のない火砲の雨が対面する二機の間に休みなく飛び交い、砲撃戦の応酬が始まった。

目まぐるしいほどの弾幕と粉塵に身を隠し、そして互いにエネルギー障壁を張りながら我慢比べをしている。

 

「っ…………」

 

愛美は必死な表情に対し、リミルは楽しんでいるのか嬉々である。

 

『いいねぇ。この鼓膜が破れるくらいの騒音と、吹き飛ぶような衝撃が身に染み渡る……これぞ火中にしか味わえんことだ』

 

そう言ってのける彼はかなりの変態であった――。

一方で、離れた場所でエミリアはもう一人のメカザウルスが対峙していた。

 

「…………」

 

彼女もこのメカザウルスから並みならぬ威圧感を感じていた。

あんな細身の体躯で強烈なドロップキックを放ってくるとは恐らく自分と同じく白兵戦主体の機体だと思われるが。

 

『キャプテン・クラン、メカザウルス・ルイエノ参る!』

 

間を置かずに走り出し、再び突進してくるトカゲ型メカザウルス、ルイエノ。

 

「来たっ!」

 

彼女はペダルを踏み、車輪を展開しすぐにそこから離れるもルイエノも全力疾走でルイナスを追跡してくる。

 

「ウソっ、速いっ!」

 

 

なんとブースターと車輪で高速滑走するルイナスに劣らぬスピードで、脚部を小刻みに踏み出しながら疾走するルイエノ。

まるで忍者のような出で立ちである。

ルイナスに追いつき平行に同時に走る二機。

 

「ついてこないでっ!」

 

ドリルで振り払おうとしたがルイエノは軽いフットワークで横飛びした。

ルイエノの右掌全体がマグマ熱で真っ赤に染まった時、突き出した瞬間になんとルイナスへ向けて射出してぐんぐんと伸びていく。

 

「手が飛んできたっ?」

 

金属ワイヤーがグングン伸びていき見事胴体に直撃するもプラズマシールドで弾かれて再び引き戻す。

エミリアはルイエノに照準をつけて機体の右腕を突き出し、ガーランドGから大量の小型ミサイルを発射する。

全弾が飛び交いながら向かっていくが、高速で且つ連続で『爆転』をしながらミサイルを避けていき、さらには左右に反復横跳びしてミサイルを蹴り払いする。その華麗な軌道と軽快すぎるその身のこなしはまるで体操選手のようだ。

 

「なんて素早いメカザウルスなの……」

 

彼女は思わず唾を飲み込む。

しかし間を置かずに今度は向こうが助走をつけて右足で強く地面を踏み込み、高く飛び上がりクルクル横回転しながら勢いをつけて強力な回し蹴りを放ってきた。

すかさずドリルを盾にして塞ぐが互いの顔の目点が合った時、ルイエノの口から高熱の火炎が吐き出されてルイナスの頭部に直撃、彼女は怯み動きが止まるがその隙に地上に降り立ち、すかさず踏み込みを入れて再び全力で蹴り上げるルイエノ。

 

「~~~~~っ!!」

 

後転して地面に倒れ込むルイナス。

 

『……様子を探るために用心していたが、あまりにも弱すぎる』

 

ルイエノのキャプテンパイロットで第三十七恐竜中隊司令官、クラン=デ=アマルーダ。

彼はあまりの肩透かしぶりにガッカリしていた。

 

『――そうか、パイロットは素人か。

では話は早い、次から全力でいく――』

クランのその赤色の眼がぐっと鋭くなり、操縦レバーを掴む両手に力がこもる。ルイエノはまるでアウトボクサーのような軽いフットワークを取りながら拳を構える。

ツェディック鋼と言われる、熱の伝導性が非常に高い金属で出来た両拳、今度は足もが真っ赤に染まり地面が焼けて煙が出ていた。

ルイナスもやっと立ち上がり、ドリルを高速回転させて身を構える。しかし、コックピットではエミリアは極度の緊張で大きく息を乱していた――。

 

(落ち着け、落ち着けアタシ……もう昔のワタシじゃないんだからできるよっ)

 

何度も自分にそう言い聞かせる彼女は今、冷静になろうと必死な状態だ。

 


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