ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

81 / 187
第三十一話「新規一転」①

一ヶ月後。三月下旬、依然と雪の残るネバダの荒野。

施設内の地上ポートにはアルヴァイン、エミリアの新機体、そしてついに完成した愛美の新機体が並ぶように直立している。

 

「アルヴァイン、石川竜斗スタンバイ完了です」

 

「ルイナス、エミリア=シュナイダー、オーケーです」

 

「アズレイ、マナいつでもイケるわよっ♪」

 

三機の生まれ変わった新型ゲッターロボ。

 

竜斗の『ゲッターロボSC「アルヴァイン」』、

 

エミリアの『ゲッターロボGC「ルイナス」』、

 

愛美の『ゲッターロボAC「アズレイ」』、

 

それぞれの新たな機体が勇姿が日の光に照らされている。

愛美機は前と同じくBEETをベースにしているため、外見的には変わったようには見えないが特徴的であった蛇腹の両腕はなくなり従来と同じ形となっている。

機体色は前と同じく黄色である。

 

 

“三人とも準備はいいか。これより新型ゲッターロボ三機による武装、射撃テストを兼ねた模擬戦闘訓練を行う。

ルールは前と同じくプラズマシールドが消滅した時点でその機体は即失格、巻き添えを食らわないようにすぐにこちらへ帰還してくれ。

戦闘ステージは区域外の指定ポイントから約平方三〇キロの範囲内。

各機がそこに入った瞬間からスタートだ、地形、岩場などの障害物を有効活用してしてくれ。

各機は戦闘エリア外に出たり、アルヴァインに至っては高度一〇〇メートル以上の上昇は失格と見なすから気をつけろ。制限時間は開始から一時間、気をつけて行ってこい”

 

 

早乙女にそう指示された後、三機はそれぞれ各移動ユニットを使い、エリア外に飛び出していく。

レーダーにインプットしたエリア内の場所とその範囲を確認して向かう。

先に到着したのは空中移動できるアルヴァイン、続いてルイナス、アズレイの順で突入していく。

 

“よし、では開始――”

 

ついにスタートする模擬戦闘。

施設内では各人が興味津々でモニターからその様子を見ている。

 

「行くよ、二人ともっ!」

 

“マナは容赦しないからそのつもりでっ”

 

“アタシだって負けないんだからっ!”

 

各人はやる気は十分のようだ。

 

「じゃあ先に行くわよ!」

 

先に行動開始したのは愛美の乗るアズレイ、車輪をフル稼働させて雪飛沫を上げながら高速滑走する。

左腕を空中浮遊するアルヴァインに向けると前腕の装甲が縦にスライドし、内部からロケット弾が爆炎を上げて打ち上げられた。

 

アルヴァインはすぐに『セプティミスα』を持ち構えて、ロケット弾に向けてプラズマ弾を発射、直撃し見事、撃ち落とす。

 

“待ちなさいミズキっ!”

 

ルイナスも車輪を展開して急速で彼女を追いかける。

右腕の大きな長方形の形をした新型アーム『ガーランドG』をアズレイへ向けた。

 

「シュートっ!」

 

すぼめたような先端部中央の砲口から高密度のプラズマ弾を連続で発射。

愛美は迅速且つ巧みにレバーを動かすとそれに追従して、車輪ユニットに内蔵された旋回用の杭が地面に打ち出され機体が急速旋回、ジグザグに左右に蛇行しながらプラズマ弾を次々に回避し、振り向いてバッグ移動しながら今度は両肩の発射管から大型ミサイルをせり出して、ルイナスへを照準を定めて撃ち出した。

 

しかし、エミリアも負けじと向かってくるミサイルとアズレイに照準をつけて、アーム前方側面から十、二十発の小型ミサイルをばらまき誘爆、そして追尾させた。

爆発による弾幕を張りながら突進してくるルイナスに対して、アズレイは華麗な舞で迫り来るミサイルかいくぐりながらエミリアを受けて立った。

 

「初っ端からオンナ同士でケリつけようかしら、エミリアっ!」

 

「望むところよっ!」

 

ドリルで穿とうとするルイナスをいなしたアズレイは右前腕内から、空戦型ゲッターロボの武装、ビーム・シリンダーをせり出して間近でビームを撃つが、負けじと同じく急速にのけぞり回避する――。

接近戦の応酬を重ねて、争っている二人に対し一方で、アルヴァインは今いた場所から二十キロ近く離れた場所にある巨大な岩場の裏から身を出して変形したライフルをぐっと密着せて構えて息を潜めている。

その形は銃身が伸びて長身と化している、いわゆる『スナイパーライフル』のデザインである。

 

(よしよし、二人が戦ってるうちに――)

 

弾薬を狙撃用の高速貫通弾に設定するとモニターは狙撃モードに移行、ズームを上げて二機のどちらかに『エイム』し神経集中させる竜斗。

 

 

(二人には悪いけど、これも戦術だ――)

 

慎重にそして確実な被弾を狙いに行く彼は、まずアズレイに狙いを定めてついに撃ち出した。

その弾丸は瞬く間にアズレイの張られたバリアに直撃し、機体には傷はつかなかったがその衝撃はコックピット内に伝わり彼女は揺らめいた。

 

 

「イシカワっ!? 」

 

隣にいるルイナスにも弾丸が当たり、衝撃でコックピットがグラグラ揺れた。間を開けず、一発、また二発と二機に命中していく――。

 

「リュウトはどこっ!?」

 

レーダーで確認し、場所を突き止めると二人は猛スピードで竜斗のいる場所へ向かっていく。

 

「あ、バレたか」

 

すると彼は逃げずに寧ろライフルを構えながら二人のいる方向へ向かっていく。その途中で彼は素早い操作で弾薬を散弾に変更した。

そして竜斗は二機に差し掛かった所に急停止し、真上から散弾をばらまき二機を立て続けに被弾させた。

 

「図に乗らないでよイシカワァっ!」

 

「協力しようミズキっ!」

 

二機はその場から直ちに離れて離散した。ルイナスは再びガーランドGをアルヴァインに向けて照準を合わせた。

 

「これならどお、リュウトっ!」

 

後部側面の発射口から、計四基の各先端部がそれぞれドリル、砲口のついた子機が飛び出した。

それらが自動的にアルヴァインへ向かってつきまとい、輪円状に動きながらドリル子機は突撃、砲口子機はプラズマ……いやゲッター線と思われる緑色のビーム弾を小刻みに発射、まるで蝶のように舞い、蜂のように刺すような攻撃でアルヴァインを次々に被弾させていく。

 

「くっ!」

 

彼は撃ち落とそうとするが、高い機動で素早い散弾でも当たらず。

すぐに逃げ出したアルヴァインに追い討ちを掛けるように胸部中央を展開するように開き、レンズ状の物体が露出する。

 

「逃がさないわよ!」

 

レンズからプラズマ……ではなく同じく緑色の光線、ゲッタービームを連射し拡散させるアズレイ。隙間なく飛び交うビームを超高速でジグザグ移動しながら避けるアルヴァイン。

 

「これならどうだ!」

 

右脛部からビームブーメランを取り出し投げつけて、すかさずゲッタービームを撃ち込むとブーメランを媒体に、ビームが四方八方に降り注ぎ雪の覆われた地面、岩場、そして二機に容赦なく襲いかかり、雪は融け、地形は轟音と共に破壊される。

二機は怯んでいる間にすぐにそこから離れて、今度は弾薬を榴弾、そして曲射に変更する。

 

 

角度調整し発射された弾頭は弧を描くように飛んでいき、岩場に隠れたルイナスの目の前の地面に着弾し爆風と破片と周囲に飛び散った――。

するとルイナスは飛び出して、ドリルのある左腕をアルヴァインへ向けて走り出す。

 

「はあっ!」

回転機上部に取り付けられた発射口からアンカーが射出され、金属製ワイヤーがぐんぐんと伸びていく。

何とそれはアルヴァインの足首にアンカーは当たらなかったものの、腕をひねり入れ、ワイヤーを湾曲させた。

 

「なっ!」

 

右足首に巻きつかれ、アンカーが上手くかまされて固定すると彼女は伸びたワイヤーを一気に押し戻した。

しかし竜斗は焦ることなくそこから空いた手で腰のトマホークを取り出して急降下した。

 

「リュウトっ!」

 

「エミリアっ!」

 

――白兵戦で互いの武器がぶつかり合い火花が飛び散る。そこには普段の仲のよい二人の姿ではなく、戦闘訓練としてぶつかり合う対戦者の姿があった。

 

「スゴい……成長したわね三人とも」

 

「ちゃんと機体の性能についていってる、さすがはあの子らのことだけある」

 

施設内でその様子を見ている早乙女とマリアは機体の性能、特に三人のパイロットとしての成長具合に感心していた。

一方でニールセン達も自分達の開発した兵器が遺憾なく発揮される様子に興奮していた。

 

 

「あとはもう少しで完成する『エリダヌスX―01』をアズレイに装着して発射テストするだけじゃな。

サオトメよ、わしからの約束であるゲッターロボの改造だがこれでどうじゃ?」

 

「文句のつけようがないですね」

 

「では、最終段階が終わり次第向こうへ移るかのう。今度はわしの約束を果たしてもらうぞ」

 

「分かってます、ここまでしてもらったからには私も喜んで腕を振るいますよ」

 

「よし。しかしまあ、あの子らもようやるのう。頼もしいことだ、ホハハっ」

 

 

制限時間がもう十分を切り、三人は見事に生き残っている。

しかしどちらももうシールドのエネルギー残量が残り僅かとなっており、あと三発か、二発、いや一発当たれば消滅するかもしれない――。

そして三人の表情にも疲れの色が見え始めている、息を切らし汗まみれ、それでも三人は最後の最後まで被弾しないように攻撃を続けて反撃の隙を与えないように、そして逃げ切ったり、または岩場などの障害物を利用して盾にしたりと全神経を集中させて戦い続ける――そして、

 

“終わりだ、よく耐え抜いたな三人とも”

 

時間終了の合図が早乙女から告げられる。

その結果はなんと一人とも脱落者はいなかったことだ。

前までは一番ビリであったエミリアでさえ最後まで生き残ったことに本人でさえ疑っている。

 

 

“よし、直ちに帰還してくれ。機体を格納したら精密検査を受けてゆっくり休め”

三人はやっと気が抜けてへたり込んだ。しかしその顔からは達成感に溢れており明るい顔色だった。竜斗は二人に通信をかけて異常はないか問う。

 

「み、みんな、どこか異常はない?」

 

“ワタシは大丈夫よ……疲れたけど……”

 

“マナも疲れた、早くシャワー浴びたい”

 

口振りと二人の態度を見るとどこも悪くないようだ。

 

“エミリア見直したわ。まさかアンタまで生き残るなんて思わなかった”

 

“ワタシもここまでやれたことに一番びっくりしてるっ、前までは一番最初に脱落してたのに……”

 

「ここまでやれたってことはエミリアの努力は実ったってことだろうし、それにもう気を落とすこともないと思う。じゃあ施設に帰ろっか」

 

三人は戻り、三機をベルクラスではなく施設の格納庫に収容して各整備を受けさせる。

男女別で施設の医務官から精密検査を受けて異常がないことが分かり、三人は施設内シャワールームで汗を流した。

竜斗は私服に着替えて、今は誰もいない休憩所のソファーに腰掛けていると同じく私服に着替えたエミリアがそこにやってくる。

 

「リュウト、おつかれっ!」

 

「エミリアも」

 

彼女は隣に座り、彼と話をする。

 

「よく頑張ったなエミリア、前に比べたら段違いに操縦上手くなってて俺もここまでスゴいと思うよ」

 

「……アタシも未だに信じられないもん。まさか脱落しないなんて自分ですら思わなかった……」

 

「けど嬉しいだろ?」

 

「うん。これでもう二人の足手まといにならないと思えるだけでスゴく嬉しいから、まあこれからも頑張るけどねっエヘヘ」

 

彼女はそう笑顔で答えた――。

 

「ゴーラちゃんは今何してるんだろう――」

 

「そうだね、また会えればいいな。

爬虫人類にもあのコのような人間がたくさんいればいいんだけど……」

 

「エミリアは爬虫人類を許さないって言ってたけど、そこはどうなの?」

 

「アタシだってお父さん達を無惨に殺したあいつらを絶対に許さないけどゴーラちゃんにまで憎む気はないよ。むしろあのコとならもっと仲良くなりたいと思った」

どうやら彼女も自分と同じ考えで一安心する竜斗。

 

「それでミズキは絶対にあのコすら許さないのかな……前に聞いたけどあの時の夜中、襲いかかったみたいだし……何とか踏みとどまってくれたけど」

 

「……難しいだろうね。けど一線を越えなかったのはアイツなりの優しさだし、時間がかかると思うけどきっと何とかなるよっ」

 

「そうなってくれればいいね……」

 

「俺、ゴーラちゃんを渡したラドラって人に会った時、確かに怖そうな外見をしてたけど、話は通じそうな人だなって感じた。

またあの人にも会えればいいな」

 

するとエミリアは突然、クスクス笑い出す。

 

「どうした?」

 

「なんかあれだね。アタシ達、なんかスゴい所まで足を踏み入れてる感じが非現実的でおかしいの。

普通に暮らしたアタシ達が突然ゲッターロボに乗ってその爬虫人類と戦ってきたけど、今度はその爬虫人類と対話をするってことがさあ。

普通に暮らしてたら絶対に巡ってこないことだよ」

 

「……そうだな。俺達はこんな貴重な経験をできたのも、早乙女司令に出会ったことに感謝すべきだね」

 

「うん……」

 

早乙女に出会ければここまで至ることはなかった所か、あの場で死んでいたかもしれない――二人はこれは奇跡だなと実感した……。

 

「ねえ、リュウト」

 

「ん?」

 

「すぐ隣にいっていい?」

 

「え、いいけど……」

 

そう言い彼女は彼のすぐ傍まで寄る。

さきほどと一変して二人は沈黙する……ソファー上の彼の右手の上に彼女の左手が重なる。

 

「アタシ達さ、本当は付き合ってんだよね、今までそんな暇なかったけど」

 

「う、うん……」

 

「誰も居ないしさ、久し振りに恋人らしくしたくてさ……」

 

「エミリア……」

 

「それにそろそろさ、アタシ達も次のステップに進みたいかなって……」

 

「あ、ああ…………そうだな」

 

竜斗はごくっと唾を飲む、彼女は何かを求めるような眼差しをしてくる――そして彼もそれが分かり、ここは男らしく、と彼もその気になっていく。

 

「リュウト……」

 

「エミリア……」

 

二人は身体を密着して、顔を近づけ合い見つめる。息が当たるくらいに唇同士が近い。

二人は周りなど目もくれずにそのまま唇が交わ――。

 

「なあにやってんのかしら二人とも~っ」

 

二人は驚き、すぐに正面を見るとニヤニヤとしている愛美がいた。

 

「ミズキ……いたの……」

 

「お熱いことね、止めて悪かったかしら?」

 

「…………」

 

いいムードを彼女にぶち壊されて二人はモヤモヤする。

 

「マナだけ仲間外れでつまんないから、よかったらこのまま3Pに持ち込まない?」

 

 

「「………………」」

 

――二人は辟易した。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。