ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第二十九話「合流」②

……ゲッターロボの改造は目まぐるしいほどに物凄い早さで進んでいく。

ニールセンとキング、そして早乙女という、兵器開発の天才と言ってもいい三人が全力で取り組んでいる。

金がらみでないため渋々だったニールセンも何だかんだでノリノリであるのは、エンジニアとしての血が疼くのか。

 

まず先に一番無事であった陸戦型ゲッターロボから改造が始まる。

当初、ニールセン以外の人間は武装含めたそのデザインの奇抜さにあっけを撮られる。

 

「シーデビル(イカ)」

 

という単語が飛び交っていた。

 

この機体、というより各ゲッターロボに共通して施された改造の内容は機体全体の駆動部位、フレーム、そして動力炉の見直しと改良。

 

各機独自の改造ではまず陸戦型はペンチ型アームを外し、長方形の形をした巨大アームに取り替える。

 

「これは多武装内蔵アームでこれで基本的に全距離対応できる万能兵器だ、名称は『ガーランドG』と名付けた」

 

「ほう。ちなみにその名前の由来は?」

 

「特にないのう。思いつきでカッコいいから名付けただけじゃ」

 

「相変わらずですね。その軽率な発想は」

 

「おぬしも人のこと言えぬはずじゃ。

ベルクラスと言うのは、ちゃんと意味があって名付けたのか?」

 

「……いえ、特には」

 

この二人の思考と発想はよく似ているようだ。

「あとは、ドリルの回転機部分にアンカー射出器をつけておこう。これでそのまま引き寄せて穿てることができる」

 

色々とやりたい放題にいじられるも意外と早く改造が終わった。

 

次は竜斗の機体である空戦型の改造に着手する。

 

陸戦型と違って装甲が黒こげだったり錆びてたりと色々と不具合が目立つため、ニールセンは辟易した。

 

「サオトメよ、少しは直そうとはしなかったのか?」

 

「私もあの後色々と野暮用と不都合なことがありましてね、そんな暇がなかったんですよ」

 

いちいち装甲の修理をするのが面倒だったのでいっそのこと、予備のBEETを分解、試作品のパーツなど、この機体と合うパーツを使い、交換し、前と同じく紅と白でバランスよく塗装していく――。

 

 

左右前腕部に固定式キャノン砲とそれに肘まで連なるように一体化した、まるで小盾のような形状の金属板を取り付け……明らかに前のとは全くの別物へ変貌していく空戦型ゲッターロボだった。

 

その後、プラズマ・エネルギーライフルとは異なる、巨大で変わった形状をしたライフルのような物を右手に持たされる。

 

「この兵器はどんな仕掛けが?」

 

「これはわしの自慢の一品じゃ」

 

キングが誇らしげに名乗り出て、ニールセンに似た笑い声を上げる。

 

本名はダリオ=S(サンチェス)=キング。

 

テキサス州出身で同じく兵器開発の権威としてニールセンの旧友である。

彼は主にSMB用兵器開発専門で誰も考えつかないような『キワモノ兵器』を造るのが得意だ。

 

「可変式多目的複合ライフル『セプティミスα』。状況に合わせて変形しプラズマ弾、散弾、狙撃用の貫通弾、榴弾に撃ち分けることができるぞ。

ただ各弾薬を一まとめにした特別に作った弾倉で従来とは異なり後部から取り付けるように装填しなければならない。

両肩内が専用ウェポンラックになっておりその中に予備弾倉を入れるスペースを設けてある」

 

……なるほど、だから前と比べて両肩が肥大化してるのか。それだけじゃない、全体的に殆どパーツを交換した空戦型ゲッターロボは前のようなスタイリッシュな体躯ではない、重装備前提で装甲が増強されてマッシブなデザインになっている。

 

 

「一応空中において高機動で動く前提の機体なんですが、これでは機動力下がりませんか?」

 

それを二人に聞くと「わしらを見くびっているのか」と鼻で笑われる。

 

「寧ろ逆に機動力が上がってるわい。完成したら試してみるがいいさ」

 

「ただ高性能過ぎて扱いはちいとキツいかもしれんが、聞けばこの機体のパイロットは腕がいいらしいからきっと上手く扱えることだろう。楽しみじゃわい、ハハハ!」

 

……二人の絶対的な自信を聞き、早乙女はこう思った。

こんな足がヨボヨボな老人でありながらさすがは兵器開発の権威、自分など足元に及ばないだろう。

そしてこのレベルの技術力を超えるどころか辿り着くには一体どれほどの年月と努力がいるのか……もしかしたら才能が足りないのかもしれないと自分の未熟さを思い知らされるのだった――。

 

「そういえばキングよ、おぬしに息子と娘がいたはずじゃがどこに?」

 

「さあな。こんなご時世だってのにあいつらは呑気にメキシコへ旅に出ると言い出してきり戻ってこん。メカザウルスが蔓延っているというのに一体無事かどうかも分からん。

あんな楽天思考ぶりは一体誰に似たんだか……」

 

「おぬしに似て自由人じゃな、ホハハ」

 

「お前も人のこと言えんだろうが」

 

二人だけ楽しく雑談しながらテキパキと作業を完璧にこなす彼らに果たして本当に老人かと疑ってしまう――。

 

そして――完成した空戦型ゲッターロボの姿は、ニールセンとキングの好き勝手な改造で、まるで重装兵とも言えるガッチリとした体型となり、はっきり言って鈍そうである。

これで前より機動力が上がっているとは早乙女ですら信じられない。

 

「こいつらに名前をつけてやるか」

 

「お得意の名付けか。ならカッコいい名前にしてやれよ」

 

ニールセンとキングは二人で二機の名前について盛り上がっている間、早乙女は一人、仕上がったゲッターロボのコックピット内で、竜斗達が扱いやすいようにOSの書き換えとシステム、そして操縦管制の改造、設定を行っているマリアの元ほ訪ねるが、大変で流石の彼女もヒーヒーと苦悶を洩らしていた。

 

「大丈夫か」

 

「は、はい……しかしエミリアちゃんのはともかく竜斗君の機体はもはや別物ですよ……彼は本当に扱えられると思いますか……?」

 

彼女は疲れと急且つ大幅な改造からの不安で疑心暗鬼に陥っていた。

 

「さあな。だがあのがめついニールセン博士が条件つきとは言え無償で大改造してくれるんだ、信じないとな。

それに竜斗達が扱いやすくするのは私達の仕事だ」

 

「は、はあ……」

 

「水樹の機体からは私が代わりにやろう。君は休憩も兼ねてあの子達と付き添ってやれ。見知らぬ地に来て不安だろうしな」

 

「……はいっ」

 

彼からの気遣いに彼女は少し活気がついた――。

 

そして最後の仕事である、愛美の新しい機体の作成についてかなり手間を取らせることになってしまった。

 

その理由は、休憩の最中にてニールセンが早乙女にとあることを提案する。

 

「サオトメよ、実は最後の機体にはワシが是非とも装備させたいのがあるのだがそれが実験段階で、それもなかなか進行しないのだ」

 

「それは何故ですか?」

 

「大雪山の戦いの後、ジェイド達からの報告を聞いた。

何でも敵側には難攻不落なバリア発生装置があるらしくてな、知っているか?」

 

それはダイを防護していたリュイルス・オーヴェのことである。勿論それを知っている彼は頷く。

 

「ええ、はっきり言って苦し紛れの作戦で攻略しただけで破壊自体は出来ませんでしたね」

「だがあの時はよくても問題はこれからだ。

もしかしたらそんな装置を装備するヤツがいつ、そしてどれだけの数で現れるか分からん。そうなれば間違いなく敗北は必須だ」

 

「……でしょうね」

 

あれほど苦戦した装置だ、あれを装備したメカザウルスが無数に現れたら、今の状況ではもはやこちらに打つ手なしだろう。

 

「で、博士には何かいい手があると?」

 

「ああ、やはり破壊が一番楽だと思うぞ」

 

「と、言いましてもゲッターロボやステルヴァーよりも機動力が高く、そして特殊な金属製で堅牢なあの装置をどうやって?」

 

「そこでだ、ゲッターロボの動力源であるゲッター線を使ってとある実験してみたい、大丈夫か?」

 

 

「一応機体に使う炉心があるので大丈夫ですが、どのような実験を?」

 

「まあ、見てのお楽しみだ――」

 

……早速、早乙女は新機体に使うもう一つのゲッター炉心を施設内のエネルギー工学専門エリアに搬入し、ニールセンと各技術者と共に実験の用意にかかる。

 

多数のチューブで連結された専用のガラス管内に設置し、起動するとゲッターエネルギーの出力上げていく。

その隣には同じくもう一つのガラス管内に設置された球状の物体がある。

それは各SMBの標準エネルギー炉であるプラズマ反応炉であり、ゲッター炉心と同じくプラズマエネルギーの出力を上げていく――。

 

「ワシらはこう考えていた。もしエネルギー同士を共鳴反応させたらどうなるか?」

 

「共鳴反応ですか」

 

光で目がやられないに特殊ゴーグルを付けて、隔離室から遠隔操作をしながら実験の行く末を見守っている。

 

 

「おぬし達が来る前にプラズマエネルギーとワシが開発したグラストラ核エネルギーを試しに複合させてところ、反発するか中和して相殺するかと思いきや意外にも共鳴反応の起こして出力が急激に上昇してな。

それを見たワシらは「これは……」とかつてないほどに胸が高まった」

 

エネルギー同士の共鳴…早乙女はそんな実験どころか、考えたことなど一度もなかった。

 

「そこでワシはゲッターロボの動力源であるゲッター線でも試して見たくなってな。

サオトメの発見した新エネルギー、ゲッター線はもしやあの時以上の出力を引き出すかもしれん」

 

……これは確かにやるべき価値があると思う。早乙女に反対する理由などどこにもなかった。

 

「そういうことなら喜んで引き受けましょう」

 

「よし、ではもう一つ見せたいものがある。ついてこい」

 

ニールセン達に連れられて向かった先は兵器開発エリア。

様々な拳銃、小銃、ランチャーやバズーカなどの生身で扱う対人兵器、SMB用兵器、試作品や最新式……ありとあらゆる兵器がこのエリアに飾られておりその手の物好きなら喉から手が出るほどの充実ぶりだ。

そんなエリアに最奥。広大な部屋のど真ん中に眩いライトで照らされた兵器の元へ辿り着く。

 

……両手持ちでないと確実にバランスを崩しそうな長い銃身と一体何を撃ち出すのか不思議に思えるほどの大口径。

 

アンチマテリアル・ライフル、またの名を対物ライフルと呼ばれる一種の狙撃銃の形状によく似ている。

 

「名は『エリダヌスX―01』。

まだ組み立てただけで射撃テストすらしていないが、もし開発に成功すれば、ワシのこれまでの人生の中で最高とも成りうる兵器だ」

 

「しかし、ここまで出来ていながら実験していないとは?」

 

「それはな――」

 

――その時である、施設内に鼓膜の破れかねない程の甲高い高音のサイレンが鳴り響いたのだった。

 

 

“緊急事態、北東側より多数の飛行型メカザウルスが南下侵攻しながらこちらへ接近中――各部隊は直ちに戦闘態勢に以降せよ。繰り返す――”

 

ここに来て初戦闘か――施設に駐在しているSMBはそれぞれエリア51全体に配置し、他にも各対空砲、ミサイル砲を起動させ迎撃態勢に入った。

 

早乙女はマリアへ通信をかけ、ベルクラスを浮上させて迎撃態勢に移るように伝える。

 

「博士、どうします?」

 

ニールセンはこの時を待っていたかのように、不気味と自信満々な笑みを浮かべている。

 

 

「では、向こうは飛行型ということで先に改造を施した赤いゲッターロボの初テストと行こうか――」

 

「空戦型を、ですか?」

 

「空戦型とかストレートな名で呼ぶな、すでにカッコいい名前をつけてある、それは……」

一方、ベルクラスの座学室で英語の勉強をしていた竜斗達三人もメカザウルスがこちらへ向かっていることを知るが、今はどうすることも出来ずにあたふたしていると、マリアがやってきて彼にすぐ通信機を渡した。出ると早乙女からであった。

 

「司令、メカザウルスが!」

 

“そこでだ。君は今すぐパイロットスーツに着替えておけ。

改造した君のゲッターロボのテストを兼ねて実戦投入する」

 

竜斗はそれを聞き、「えっ」と大きく声を上げた。

 

“いきなりで怖いか?”

 

「い、いえ。では着替えてきます」

 

“私が迎えにいく。着替えたら格納庫で待機しておけ、いいな”

 

切れると通信機をマリアに返す。そして何を伝えられたのかエミリアと愛美も気になって仕方がない。

 

「石川、早乙女さんがなんて?」

 

「俺にパイロットスーツに着替ておけって」

 

「じゃあまさか……っ」

 

全員がその意味にすぐ気づく。

 

「俺のゲッターロボから先にテストを兼ねて投入するって言ってた。俺、行ってくるよ」

 

彼は久々の操縦とそして改造された自分のゲッターロボに対する未知なる期待とちゃんと扱えられるかという、興奮と不安が混合していた。

 

「竜斗君、急ぎましょう!」

 

「はいっ!」

 

マリアと共に出て行こうとした時、エミリアに引き止められる。

 

「ガンバってねリュウトっ!アタシ達応援してるから」

 

「イシカワだけズルいけどそんなこと言ってる暇ないみたいね。

その新しいゲッターロボで気持ちいいくらいにアイツらをケチョンケチョンにしてきてね、楽しみに見てるから♪」

 

二人からそれぞれ応援されて勇気をもらい、自信満々な表情を取った。

 

「任せといて!」

 


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