ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第二十八話「世界へ――後編」③

夜十時、マリアは容態を見に医務室の早乙女の寝ているベッドに訪れる。だが、すでに彼の姿はいない。

まるで神隠しのように消えた早乙女に心配になったマリアは司令室のモニターで探そうに急いで向かう。

中へ入るとなんと、すでに黒いスーツに着替えた早乙女がデスクに座りパソコンをいじっていたのだ。

 

「やあ、一足先に起きてたよ」

 

「あなたって人は……もう大丈夫なんですか?」

 

「ああ、栄養剤も貰ったし数時間も寝れば十分だ」

 

顔中は絆創膏だらけであるがすでにひげを剃り顔立ちを整えており、普段通りの飄々な態度の早乙女。

マリアは彼の驚異的な回復力に心底呆れかえっていた。

「ど、どんなことされたんですか?」

 

「言わなくても帰ってきた時の姿で察しがつくだろ?」

 

「……それでよく一ヶ月間、耐えましたね」

 

「なんてことないさ。そして尋問とは別に、私を拷問したヤツらの中に政府の人間じゃない者が含まれていた。

姿や言葉、振る舞いを見て金掴まされた三下のヤクザやチンピラだろう。

だが暴力で私を屈させようなんざ愚かだよ。

それに今時の日本で拷問だなんて、時代錯誤もいいとこだよ」

 

酷い目に遭ったと言うのにまるで慣れているように淡々と語る早乙女の底なしの精神力に恐怖すら感じてくる。

 

「ただ、問題はこれからだな。尋問の際は適当に答え続けて一応お咎めなしとされたが、向こうは納得しきれてないからな。拷問された際に気絶したと見せかけて向こうの話をこっそり聞かせてもらった。

 

恐らくあらぬ疑いをかけてくるだろう、それで無理にでも私からゲッター計画を奪うつもりだ」

 

「…………」

 

「これ以上、私を野放しにする気はないんだろうな――」

 

――淡々と無機質にカタカタいじる、まるで機械のような雰囲気の早乙女だったが、ふと手を止めて彼女を見つめる。

 

「君達は大丈夫だったか?」

 

「ええなんとか……しかしエミリアちゃんはあなたが拷問されたことに対して凄く憤怒してました」

 

「……彼女は優しいからな。だが、それではこれからの戦いについていけんな。竜斗と水樹は?」

 

「普段通り平常でしたが、内心彼らも複雑でしょうね――」

それを聞き、黙り込む早乙女。だが彼は何か決意を決めて彼女にこう言い放つ。

 

 

「私は日本を離れる」

 

「えっ」

 

「相手が相手だ。このままではゲッター計画は確実に政府に渡る。

権限は向こうの方が強い、さすがに私や幕僚長では政府上層部相手に防ぐ手はない。

だがこれからの戦いにはゲッターロボとベルクラスは必要となる。

どの道、ニールセン博士の約束もあるしアメリカへ行かなければならんからな――これ以上日本に留まる意味もない」

 

ついに海外へ進出すると宣言する早乙女だがマリアは腑に落ちない。

 

「しかし現状をどう打開するのか……?」

 

「打開?そんなことはしない」

 

 

「え、じゃあ……」

 

「決まってるだろ?亡命さ」

 

「なっ!?」

 

「一刻も早く海外に行かなければな。知られれば向こうは意地でも差し押さえにくるだろう。現にもしかすればここに盗聴器をつけられているかもしれんし」

 

「しかしここにはベルクラスのクルー以外には誰も……」

 

「可能性は否定できないだろ?やるなら早く行動を起こすべきだ、違うか?」

 

「そうですが……司令、もし国外に逃亡すれば……」

 

「私達は国賊扱いになるだろうな、恐らく長い間は日本に戻れぬかもしれん」

「…………」

 

「だが戦争を一刻も早く終わらせたいなら私達はいつまでもここに留まる意味はない、前進せねばならない」

 

「……竜斗君達はどう思いますかねえ?」

 

「どう思おうが私は連れて行く。ゲッターロボはあの子らの機体だし、それに博士に会えばゲッターロボを改造してくれて今まで以上に強力なモノとなる、鬼に金棒だ。水樹に関しても向こうと相談して新規開発するとしよう。で、君はどうする?」

 

彼女は沈黙する。

 

「君には誇りがあるもんな、簡単に決めれるワケがない。

だから別についてくる気がないのならそれでもかまわん。

だが悩む時間もないぞ。私と付き合うか、それとも日本に留まって、後の残飯処理する日々に追われたいか?」

 

すると彼女は深くため息をつく。

 

「司令、私はあなたと仕事上で付き合って数年。祖国と家、自分の誇りと平和のために、色々振り回されながらもあなたに従事してきましたが、まさかそんな行動に出るとは正直思ってもみませんでしたよ」

 

 

「…………」

 

「もしあなたに付き合うとなると、私も国賊扱いされるとなると祖国、家にもう顔を見せられなくなると同じです、二度と帰れなくなります――」

 

後ろめたい気持ちとなっているマリア。だが――、

 

「しかし、私も自らの意志でここまで来ましたし司令、あなたのワガママに付き合うとも言いました――だから」

 

「だから?」

 

「私を納得させてください!」

 

「納得ね。どうやって納得させてほしい?」

 

「それは――」

 

……夜中、全員が寝静まった後、鍵を掛けた早乙女の部屋のベッド上では。

 

「……マリア、本当にいいのか?」

 

「ええ……あたしに勇気を下さい。これから先、茨の道に突き進む勇気を、失敗を怖れぬ勇気を……」

 

シャワーを浴びた二人は裸になり全てをさらけ出し、仰向けの早乙女にのしかかるように乗るマリアの姿が……。

 

眼鏡は外し、まるで真珠のような純白で綺麗な素肌、そして美しい金髪を下ろした彼女はまるで美の女神だ。

 

早乙女も痩せてしまったとはいえ、その引き締まった全身の筋肉を持て余すことなく見せつける。

 

「あの時の寸止めが忘れられなかったのか?」

 

「司令がああやって私に迫ったからです。これもあなたの責任です、ちゃんととってくださいね……?」

 

……二人は上下に重なるように密着し、濃厚な接吻を始め、舌と舌をねっとり絡み合わせる――。

 

「……意外だ、君もやるときは積極的になるんだな」

 

「……私だって女ですし、もう十年ぶりですもの――」

 

「にしても……君は本当に美しいな。このサラサラで清潔感のある金色の髪、透き通るくらいの澄んだ紺碧の眼、柔らかく包容力のあるキレイな肌……他の男性がなぜ狙わないのか不思議なくらいだよ」

 

 

「それはお世辞ですか?」

 

「ああっ」

 

「…………」

 

「なんてね、本音だ――」

 

「フフ……」

 

体勢を逆にし、仰向けになるマリアの秘部に早乙女の右手がたどり着き、指を使い奥に突き入れ、そして優しく弄ると緩急をつけて刺激すると彼女はビクビク反応し、甘い声と共にもがくように悶える姿がすごく可憐であった――。

 

「スゴく濡れてる――かわいいなマリア」

 

指についた、トロリと垂れる愛液をペロっと舐め、彼女の首筋に優しく口づけをする。そのまま口を滑らせるように彼女の胸へ辿り、チロチロ乳首を舐める早乙女。

「んん……っ」

 

あの時以上に女性の顔になっているマリアに彼は興奮しないはずはなかった。

 

「司令……強く抱いてください……っ、私が……あなたについていくための安心と勇気を分けてください……っ」

 

「マリア……」

 

――リードする早乙女、今までの彼とは思えないくらいの艶な男と化している――彼女の秘部を舌でじっくりと転がすように、そして愛でるように舐めると、ヒクヒクしている秘部から愛液がトロっと流れ出ている――。

 

「くぅ……んっ………っ」

 

 

――彼は自分のモノを彼女の中に入れて緩急を入れつつ突き上げる。

 

 

(お父さん、お母さん……これから先、私はあなた方と二度と会うことはできないでしょう……だけど、これも世界を救うために私の選んだ道です。

 

だからせめてもの――どうか私達の行く末を見守ってて下さい……)

 

マリアは絶頂が来て自身のタガが外れたように高らかに喘いだ。

何度も、何度も、何度も―――――部屋から漏れ出すほどだった――。

 

……彼女は彼についていくために自ら穢れる道を選んだ――だが、交わる二人の間には刹那的な愛も生まれていた。

 

――次の日の午前中。早乙女は三人を司令室に呼び、自分の決意を話すと三人は沈黙した。

 

「長い間日本には戻れぬかもしれんが戻れんというワケではない。最悪全てが終われば君達だけでも日本に帰すと約束しよう」

 

すると、

 

「……分かりました。僕は司令についていきます」

竜斗から先に名乗り出た。

 

「……国賊扱いされるのは嫌ですが、かと言ってこのベルクラスとゲッターロボを奪われてしまうのはもっと嫌です。

まだ戦争が終わってないのに、こんな中途半端なところで放り出されるなんて……こうなったら政府が絡んでいようとも、国賊扱いされようと、世界を救えるなら行く道を進むだけです」

 

はっきりと断言する竜斗に各人の彼の見る目が変わる。

 

「ありがとう竜斗」

 

すると今度は、

 

「ワタシもゲッターロボに乗るために戻ってきましたし、ここまで来た以上後戻りはしたくありません。

クロダ一尉、北海道の戦いで亡くなった皆……いや日本で亡くなった人々を報うためにワタシも勇気を振り絞って司令についていきますっ!」

 

エミリアも自分の意志を伝え、残りは愛美だが、彼女は腕組みをしたまま黙っている。

 

「水樹はイヤか?」

「……まさか日本から追われることになるなんて考えてもなかったわ。

もしかしたらこの先、もう日本には生きて帰れないかもしれないのに――」

 

彼女の言葉にドシンと錘のようなものが心にのしかかる竜斗達。だが、

 

「けどマナには帰る場所はここしかないし、それに亡命だなんて映画みたいなスリルなことはこれっきりだからね。

それに海外へタダで行けると思えばこれ以上なことなんてないわ。

観光したいと思ってたし、ついていかないワケがないじゃない?」

 

実に彼女らしい楽天的な言葉で全員の表情が柔らかくなった。

 

「満場一致で、我々ゲッターチームはこれより国外へ亡命する。

各人はもう日本に未練を残さないように準備していけ、いいな」

 

「「「了解っ!」」」

 

三人が司令室から出て行った後、

 

「君はアパートを退去しとけ。荷物も持っていきたいのなら私がすぐに手配しよう、解約金も必要ならすぐに出そう」

 

「ありがとうごさいます」

 

「私はこれから幕僚長にこのことを伝える。迷惑だろうが彼なら私に協力してくれるだろう――あと、向こうの陣営に連絡して受け入れさせてもらう許可、準備を取らねば。

それとマリア、君はクルー全員に艦から降ろすよう伝えてくれ、彼らまで我々の反逆行為の巻き添えにするわけにはいかん」

 

「了解です、あと気になることが……」

 

「なんだ?」

 

「万が一の話ですが、もしバレたら政府が軍全域に出動をかけて我々の国外逃亡の妨害をしてくるのでは?」

 

「高確率であり得るがこのベルクラスは頑丈だ。最大全速で堂々と突っ走り、太平洋沖に出ればもう追ってこれまい。

だが攻撃だけは絶対にするな、相手はあくまで敵ではない」

 

「承知です」

 

すると早乙女は不敵な笑みを浮かべる。それを見た彼女は不気味に思えてしまう。

 

 

「司令……どうしましたか?」

 

「生まれ故郷の日本から亡命、ということは次は世界が相手、そしてゲッターロボの強化……私の好奇心と探求心が刺激されてな、ウズウズしてたまらないんだよ」

 

……やはり早乙女は変人だ。

と、思いつつも彼女は彼を何があっても信じることを決めていた。

 

これからずっと――。

 


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