ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第二十四話「戦いの果てに――」③

――散開した三人はすぐさま攻撃された方向をサーモグラフィで移すと人型の熱源反応を多数確認。

だが、それらはメカザウルスではなく等身大の人間のサイズだ――。

 

米軍隊員とも考えたが自分達とは離れた場所にいる、こんなに早くここまで来るとも考えられない……。

ということは、例の爬虫類の人間だ。

 

BEET、ステルヴァーは前に飛び出してプラズマ弾、各対人機関砲でできるだけ内部を壊さないように的確に攻撃、至るところに隠れている生体反応を吹き飛ばし、そして撃ち抜いていく――。

 

「…………」

 

だがエミリアだけは動かずにただ前の床ばかり見つめている。そこには上の鉄橋部から吹き飛ばされて、地面に叩きつけられて倒れ伏せる瀕死状態の……爬虫人類の兵士が。

(アイリを殺したのもこいつら……だけど……っ)

 

自分の昔からの友達である愛梨をあんな殺し方をした敵の憎しみ……だが目の前には、恐らく身体中の骨がぐしゃぐしゃとなって苦痛で、そして死にかけているこの爬虫人類に対する哀れさと悲しみ……それらが揺れ動いていた。

 

(これが戦争なんだ……)

 

いつか竜斗と一緒に話していた『恐竜と一緒に暮らせたらいいな』。

だが、この目の前に写る現実はそう甘くなかった――。

 

その時、ステルヴァーがその死にかけた爬虫人類の兵士に機関砲を撃ち込み粉砕してしまい、驚いて唾を飲むエミリア。

 

“エミリア君、キツいか?”

 

 

「……い、いえ……っ、大丈夫です……」

 

ジョージから心配する声を受けるも『ウソ』をついてしまう。

 

“ここは俺達がやるからっ”

 

向こうも負けじと応戦するも、いくら爬虫人類と言えど、生身で二十メートル以上あるSMB相手には無謀としか言えず、次々に撃ち抜かれ、吹き飛ばされ、そして踏み潰されていく――。

 

「…………」

 

――彼女は自分を情けなく感じた。

役立ちたいから自ら内部に行きたいと言い出したのに、結局こういう時になると心が揺れ動いて役立てない自分の甘さを――彼女は優しすぎたのだ。

 

そして隠れていた爬虫人類全てを殲滅。辺りには彼らの死骸や欠如した身体の一部なのが転がっていて屍地獄である――。

 

「大丈夫か?」

 

“ああ、どうやら死に損なったわ”

 

罠にかかり爆発で吹き飛ばされたBEET隊員はどうやら無事のようである。

 

「応援を呼ぼう」

 

外で待機している他機に通信をかけるとすぐに三機のBEETが駆けつけ、右足の無くなったBEETを持ち上げて再び外へ戻っていった。ジョージが立ちつくすゲッターロボに駆けつけ、彼女に通信をかける。

 

「エミリア君?」

 

“……アタシ、やっぱり役立てません……”

 

泣き声でそう呟いた彼女。

 

「……これが戦争だって分かってるけど……こんなんじゃダメだと分かるけど……どうしても非情になりきれません……っ」

 

 

 

悲痛の思いを告げる。

するとジョージは再び怒るかと思いきや、ニコッと笑う。

 

「……エミリア君はホントウに優しいな。

それは悪いことじゃない、むしろいいことだ――」

 

“けど……少佐に怒られたのにまた弱音を吐いてしまって……自分が情けないです……っ”

 

“言っておくが、だからと言って人間本来の優しさを失ったらそれこそ本末転倒だよ。

こんな汚れ仕事を行うのは俺達のような生粋の軍人だけでいいと思うんだ”

 

「…………」

 

“君達ゲッターチームは元々そういう訓練を受けてないからできないのは当たり前だ。

君はゲッターロボで内部の破壊をするだけでいい、それ以外は私達に任せてくれたらそれで構わないさ」

 

“すいません……っ”

 

「ほら、元気だしな。君の友人や両親がこの基地のどこかにいるんだろ?

もし無事ならそんな悲しい顔じゃなくて安心するような元気な顔を見せてやれよな」

 

彼の励ましがどれだけ彼女を気を軽くしたか計りしれない、感謝しきれない気持ちでいっぱいだった。

 

――その後、早乙女に連絡し、あったことを全て伝える。

 

「……そうか、まだ奴らが潜んでいたか」

 

“一応今いる場所の敵反応はないですが、先にまだまだいると思われます、ここからどうしますか?”

 

“まず先の出入り口を開けてみてくれ、だが慎重にな”

 

早乙女から指示を受けて、BEET一機がその扉に着くと無理やりこじ開けようとするが固くて開かない。

次に拳を打ちつけてみると扉は丸く凹んだ。

もう一撃全力で拳を振り込み、扉を吹き飛ばし、先を見ると同じく広い空間が。

辺りが暗いがモニターをサーモグラフィで内部を映すとやはり熱源反応を多数見られ、動かず静かに潜んでいる。

 

一旦仲間の元に戻り、その内部について早乙女に伝える。

 

“内部にスモーク・グレネードを投擲し突撃。

もし攻撃してくるようなら殲滅しろ”

 

三発のスモーク・グレネードのピンを抜いて向こうの空間に投げ込むと数秒後に破裂。一瞬で内部は白い煙で覆われて、こちらにも伝わってきている。

「全機、突撃せよ」

 

一機ずつ煙に覆われた向こうの空間へ突入していく。

すると四方八方から爬虫人類による機関砲、バズーカ、アサルトライフルによる火器による集中砲火が起こるが煙のおかげか、敵機の位置が掴めずバラバラな場所に着弾している。

 

しかしBEET側は正確性に優れたモニターがあるため煙まみれだろうが敵の居所がはっきり分かり、今度はBEET、ステルヴァーの集中砲火で次々に爬虫人類を殲滅していく――。

 

「やつら、基地がこんな状態になっても最後まで抵抗するか!」

 

玉砕覚悟で挑んでくる彼ら爬虫人類達であるが、無駄死に等しいほどにあっけなく吹き飛ばされて、身体中を穴だらけにされて、そして木っ端みじんになっていく。

 

――主君、そして種族のために戦って死ぬことが最高の名誉とされる彼ら爬虫人類の悲しい性である。

数分後にはこの場の敵殲滅、確保に成功するBEET達。

周辺には前のフロアのように爬虫人類の死骸が散らかり、床がどす黒い血にまみれている。

 

辺りを見ると外部へ通じるハッチと思われる扉やカタパルトなどが横並びされているのを見ると、ここは整備工場直結のメカザウルス格納庫のようだ――。

 

「敵殲滅に成功しました。

この先からは人間専用の通路しかないようです」

 

“では機体から降りて前進せよ。

すでに米軍達が内部に突入しているから合流してくれ、一応GPS機能で各部隊の現在地を見れるようにしてある。あと降りる際各装備を忘れるなよ”

 

BEETから米軍のような全身装備、ガスマスクなどの防護装備を施した隊員が降着装着で床に降りていく中でエミリアだけはどうすればいいか迷い、すぐ早乙女へ通信をかける。

 

「サオトメ司令、アタシはこれからどうすればよろしいですか……?」

 

“このまま行くのがイヤならそのまま外に戻ってくればいい、誰も君を責めはしないから安心しろ”

 

「……リュウトやミズキはどうしてますか?」

 

“あの二人は各バディと共に内部に入っているよ”

 

「え……っ?どうしてですか!?」

 

“二人についてはしょうがない。ステルヴァーに待機してても、もし外部で何かあったら操縦はできないからだ――”

 

二人がすでに内部にいることに驚く彼女。

 

“君はどうする?危険を侵してまでついていくことはないよ”

 

彼女は悩む。このまま足手まといになりそうだからそのまま下がったほうがいいと。

 

だが竜斗や愛美も内部にいるのに自分だけそのまま帰るのも負い目を感じる――彼女が悩んだ末の答えが。

 

「――アタシ、行きます」

 

“これから先は生身で行かなければならないから非常に危険だ。無理しなくていいんだぞ?”

 

だが彼女は首を横に振る。

 

「……アタシは生身で戦う技術もなければ勇気もありません。

はっきりいって足手まといですし、ワタシのワガママです。

だからといって、リュウトとミズキ……チームの二人が生身でこの基地内で頑張ってるのにワタシだけ外で無事を祈るのはイヤです。

この基地内のどこかに友達や両親がいる、もし無事ならワタシも迎えにいきたいんです、この手で助けてあげたい!」

強がりで震え声になっているエミリア。

そしてモニター越しの早乙女は無表情且つ沈黙したままである。

 

“サオトメ一佐、なら私が彼女を護衛しますよ”

 

ジョージがまたそう名乗り出た。

 

“いいのか?竜斗達の場合はやむをえないが、彼女は別にここから先ついていく必要なんてどこにもないんだぞ”

 

「彼女なりに悩んで決めたのならそれでいいじゃないですか、私は本人の意志を優先しますよ。エミリア君、いいんだろ?」

“ハイ!”

 

「それに、彼女が一緒なら竜斗君達も安心するでしょうし――」

 

本人の命がかかっているのにそんな問題ではないと思うが――彼の楽天的な理由に何か考えがあるのか。

 

 

「大丈夫ですよ、エミリア君は私が責任を持って預かります、どの道私も行かなければなりませんからね」

 

普通の人間ではそう言われても躊躇するも相手は早乙女、簡単に話はつく。

 

“――では、よろしく頼むぞ”

 

 

――二人は地上に降りて合流し、彼から予備の装備を渡され、彼の指示通りに装着する。

 

「ジョージ少佐……すいません本当に……」

 

 

「…………」

 

だが彼は途端に彼女の両肩を握りつかみ、グッと睨むように見つめる。

彼女はその眼力に圧倒されてしまう。

 

「……しょ、少佐……」

 

 

「……こんなことを言いたくないがサオトメ一佐の言うとおり君は本来連れて行く必要性が全くない、はっきり言って足手まといだ――」

 

「…………」

 

「だがエミリア君は行きたいと言ったから、私は君の意志を尊重し連れて行く。それにあたって約束してほしい」

 

「なんでしょうか……」

 

「私は君を守るために命を張る覚悟だ。ここからは私や他隊員の指示に対して的確に動き、二度と弱音を吐いたり泣き出したりするな。それが守れないようなら私は君を連れて行かないし、途中でそうなるようなら私は君を見捨てるぞ」

 

非情な警告に突きつけ、さらに眼力を強めるジョージ。

この先は未知の領域。どんな敵や罠が待ち構えているか分からない。

彼が絶対守ると言っても、ここからは生身で行動するため、下手をすれば二人とも生きて帰れないかもしれない――これは最終警告である。

 

「どうする、それでも行くか?やめるなら今の内だぞ」

 

しかし彼女は負けじと意地を張って首を横に振る。

 

「い、いえ。ワタシは自分の決めたことを投げ出したくありません、覚悟の上です!

これからは弱気にならないと誓います!」

 

「神に誓ってか?」

 

「はいっ!」

 

すると彼は彼女から手を離した。

 

 

「……分かった。そこまで言うなら君を連れて行こう、またよろしくな!」

 

「はいっ!」

 

二人は突入する部隊と合流する。最初はエミリアも一緒に来ることに狼狽するが、彼女がその意思を自ら伝えて納得させる。

 

米軍部隊と同じく各装備の最終点検し、異常がないか調べる。

 

「では我々はこれより内部に突入し米軍部隊と合流する。

移動中は常に周囲の警戒、人員を掌握し、絶対に孤立はするなよ――」

 

“了解!”

 

「ここまで来たからと言って最後まで気を抜くなよ。我々人間の勝利は目前だ、行くぞ!」

 

“オオーーッ!!”

隊員達は気合いの雄叫びを上げて士気を向上。その後、先頭が扉から顔を出して左右の安全を確認し、四人飛び出して前後警戒をつかせる。その後一人ずつ飛び出して全員揃うと、通信機と専用のGPSを頼りに通路をゆっくりと歩いていく。

 


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