ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第二十四話「戦いの果てに――」②

ステルヴァーチーム含む米軍部隊は基地上部に静かに着陸する。そして何割かのマウラーはステルヴァーのように人型へ変形を遂げてから足元を壊さないように降り立つ。

 

――人型のマウラーはデザインは異なるが、ステルヴァーのような鋭角的で前衛的ではなく、BEETとのような無骨さを感じる機体で、これは可変性を意識して開発されている。

ステルヴァーやマウラーといった、このような可変機能を持つアメリカ軍のSMBは他国にはない専売特許である。

 

「ジェイド少佐、万が一のことのために何割かの機体を基地部上に待機させてくれ、残りは基地部内に突入だ。

地上部隊も断面を破壊してそこから突入し、途中で君達と合流させる」

“了解です”

 

「竜斗はどうする、機内に待機しておくか?」

 

“いえ、連れていきます。万が一外でなにかあっても彼にはステルヴァーを操縦することができません。私と共に行動した方がまだ安全かと――”

 

「彼を無事守り抜けるか?」

 

“私達は『バディ』です。何としてでも死守しますよ。

彼はこれからの主戦力に成りうる逸材でもありますから――”

 

英語で会話する二人にちんぷんかんぷんで理解出来ない竜斗だったが、

 

「リュウトクン」

 

彼を前のモニターを見るようにジェスチャーして指示するジェイド。前に乗り出してモニターに映る早乙女と対面する。

 

“よお竜斗。どうだ、ステルヴァーに乗った感想は?”

 

「……座っていただけですが、ゲッターロボやBEETとはまた違う臨場感を味わえましたし、同時に本場の人の凄さを思いしらされました……」

 

“君らしい感想でなによりだ。

で、本題に入るが、君は今から少佐と共に行動してもらう”

 

「え……?ということは僕も基地内に?」

 

“もし外に何かあった場合、君にはこの機体を操縦できまい。だから少佐と共に行動し、彼に守ってもらえ”

 

「でも……英語も話せないし、それよりもパイロットしかしたことのない僕だと少佐の足手まといにならないですか?」

 

“心配するな。それを分かったうえで絶対に守ると彼からそう提案した。だから言葉に甘えさせてもらえ。君自身もいい経験になるだろうしな”

 

「…………」

 

一気に不安感に満たされる竜斗だった。

“彼から予備の兵装を借りて装備しろ。英語が分からなくても、戦術講座で教えた軍隊専用のジェスチャーをしてくれる。君なら頭にすでに入ってるだろう”

 

「……了解です」

 

“よし、では幸運を祈る。最後まで気を抜くなよ”

 

通信が切れるとすぐにジェイドは編隊の三割の機体にここで待機するように命じる。

 

「ジョージはバディのエミリアと共に行動してくれ、ちゃんと彼女を守ってやれよ」

“了解、ジェイドも竜斗君を守ってやれよな!”

 

「心配するな。彼らはこれから必要となる人間だからな――」

 

ジョージ機だけ離陸し、空中で変形してエミリアのいる場所へ向かっていった。

自分はシートベルトを外してすぐさま機内に搭載してある兵装を取り出して装備する。

 

その後に竜斗の分の予備装備を取り出して渡し、様々なジェスチャーや届かない部分は手伝ってもらい無事に装着した。

 

 

――僕は正直怖かった。爬虫類の人間の造った未知の基地内部へ今から入り込むのだ。

何が出るか分からないし、捕らわれた人々は無事なのか、不安も一層掻き立てられる。

ジェイド少佐から借りたこの全身装備が重く、そして身体が締め付けられるような圧迫感があり、ガスマスクから通じる息の吸い、吐きの通りに、肌身の時よりも凄く違和感を感じた。それらが、これが軍隊なんだと――一般人にはおよそ味わえないそれを実感する――。

 

 

 

コックピットを開き、ジェイドから先にハシゴを使い降りていく。降りて足場の無事を確認し、竜斗に「降りてこい」と指で指示する。

ゆっくりとハシゴを降りていくが全身装備の重さと窮屈さが彼の動きを邪魔する。

 

「あっ――!」

 

なんと足を滑らせてハシゴから落ちてしまった竜斗。だが、瞬間にジェイドが彼の身体を受け取り、支えたのだ。

 

「アーユーオーライ?(大丈夫か?)」

 

「はい、ありがとう……じゃなかった……イエス、センキューベリーマッチ――」

 

地上に降り立つ二人はすぐさま仲間の米軍隊員達と合流していく。そしてジョナサン、そして愛美とも合流する。

 

「イシカワァ!」

 

「水樹!」

 

二人は無事を喜び抱き合った。

 

「ジョナサン、彼女をちゃんと守ってやれよ」

 

「当たり前だろ、なんつったって俺の勝利の幸運の女神だぜマナミは」

 

「ふっ、相変わらずの日本人好きだなお前は」

 

「ああ。俺の嫁さんにするぜ、絶対に!」

 

ジェイドとジョナサンは当然英語でそう言っているので当の本人達には分かるはずもないが、もしこれを聞けば彼女はどのような返事をするか見ものである――。

「今エミリアだけ一人だけど大丈夫かな?」

 

「心配しなくても周りに仲間はいるんだし、あのコの力を信じなきゃ」

 

「……そうだなっ!」

 

ジェイドは全隊員を集合させ、各小銃、拳銃などの各装備品の点検をさせる。どうやら彼が米軍隊員達の指揮官も担っているようだ。

中には戦闘前の襲撃で見せた各重火器の他に最新型通信機、救急バック、そして爆薬などを携帯する隊員も。

 

「我々はこれより基地部の内部への入り口を見つけ次第突入する、もし発見できなければ爆薬を使う。

絶対に固まって行動し、全方向の警戒を怠るな――」

 

“了解!”

 

「あと、ケガ人が出ても絶対に見捨てるな。誰がか担ぎ、誰かがその分を補え。『One for all,all for one』を忘れるな」

 

――『ひとりがみんなのために、みんながひとりのために』という意味の言葉。

アメリカンフットボール出身のジェイドらしい言葉である。

 

 

一方で自衛隊のBEET部隊と陸戦型ゲッターロボは断面部にたどり着き、どう内部から侵入するか考えていた。

その時、ちょうどジョージが上部から飛び降りて駆けつけてくる。

 

「ジョージ少佐!」

 

 

 

“今からまたバディとして君と共に行動するからな”

 

「本当にありがとうございます!」

彼女は心から安心したその時、次はモニターに早乙女が映りこむ。

 

“ゲッターロボのドリルで穴を開けて、入り口を作れ!”

 

「了解ですっ!皆さん下がってください!」

 

BEETとステルヴァーはすぐに後退し、ゲッターロボは左のドリルをフル回転させて、壁を穿った。

ガリガリと音と共に金属の壁がヘコみ、そしてヒビが入っていく。

ライジング・サンのドリル型自律兵器を射出させて手伝わせること二分、人が容易に入り込めるほどの大穴を開けることに成功する。

下がっていたBEET数機が穿孔した部分を強引にバリバリと剥がしたり、プラズマ・ソリッドナイフで脆い部分を熔断したりして穴部分をさらに広げる。

中を覗くと無機質、MBでも活動できるほどの空間があった。

BEETのモノアイ部のライトを全体に照らすと、天井には辺り一面に鍾乳石が垂れ下がっているの見える。

 

「早乙女司令、機体ごと内部に入れますがどうしますか?」

 

“まず何機かが先遣し、内部が安全かどうかを調べてほしい。

誰が行くかは君達で決めてくれ”

 

その場の全員に伝える。すると、

 

「アタシ行きます!」

 

なんとエミリアから一番先に名乗り上げたのである。

が、部隊長があまり快くない表情を浮かべる。

 

“エミリア、君はやめておけ。内部にどんな危険が孕んでいるか分からん”

 

「いえ、ワタシが行きます。

今回アタシは泣いてばかりで一番役立ってないですから、せめて少しだけでも役立ちたいんです!」

 

彼女の『誠意』が凄く伝わるが、彼らは仲間とはいえ、まだ女子高生であるエミリアをこの『地雷地帯』にもなりうる場所に真っ先に放り込むのに躊躇するのは当たり前である。

 

「では俺も行きます」

 

すると続くようにジョージが名乗り出た。

 

「二人は『バディ』ですからね、俺が彼女を守れればそれでいいんじゃないですかねえ?」

 

 

 

“うーん……ジョージ少佐、君が彼女の無事を願うなら止めるよう説得するという選択肢もあるんじゃないかな?”

 

「確かにそうですけど今の彼女を見てください。さっきまで泣きじゃくってたコがこんなやる気満々になっているんですよ、立派じゃないですか。

彼女の気持ちに応えて行かせてみるのもいいと思いますがね」

 

“…………”

 

「それに今の彼女だと俺でも止めることはできないと思いますが――」

 

すると部隊長はため息を一度つくとエミリアをもう一度見る。

 

「エミリア、本当に行くのか?」

 

“はいっ!”

 

彼女のやる気の籠もった元気でハキハキした返事を聞くと、ついに折れる。

 

「……よし、では先遣はまずエミリア三曹とジョージ少佐が決まった。他に行くものは?」

 

「では俺が!」

 

「私も!」

 

次々に手を上げる隊員。どうやら彼女のやる気な態度に感化されたようである。

 

 

 

(エミリアはもしかしたらような『太陽』のような要素を持っているのかもな?)

 

ジョージは彼女から何か魅力を感じ取っていた。

 

――それは『北風と太陽』の出てくる『太陽』のような、人々に活気をもたらすような『力』を持っていることを。

 

……ゲッターロボ、ステルヴァー、そしてBEET二機の計四機が先に内部に入ることになり、一機ずつゆっくりと入っていく。

薄暗いためライトを照らして周囲を確認する四機。

……自分達人間が使うものとは全く異質の機械類が多く設置されて、横並びにあるドッグと思わしき場所にはまだ未完成と思われる分解されたメカザウルスの部品や、手をつけてない本体の各種の恐竜が動くことなく、まるで人形のように寂しく佇んでいる。

 

「なんなのここは……」

 

頭上には垂れ下がった鍾乳石に、場違いとも見えるクレーンがメカザウルスの部品を持ったまま放置されている。

 

ここは基地部のメカザウルスの整備工場であることを、四人はすぐに気づく。

 

「内部の大気は……どうやら二酸化炭素がかなり多いが酸素も少なからずあるといったとこか。解析不能な成分もあるけど一応有害ガスではなさそうだな」

 

「内部温度は……40度か、真夏みたいだな。これも溶岩の影響か……」

 

次々調べていくが、次第に全員に共通した疑問が出てくる。

 

「……しても誰もいないな」

 

「ああ、やけに侵入が楽だなこれは……」

 

ドリルなどでかなり大音を上げて侵入したにも関わらず、ここには爬虫類の人間の気配すらない。

なおさらそれが不安を掻き立てられるのである。

 

「俺達もしかして罠にハマった?」

 

「分からんが、このまま警戒を続けるに越したことはないだろう――」

 

彼らはさらに工場の奥へと進む。各携行火器を構えて周囲の警戒に神経を使う――。

 

「……あれは?」

 

前方に出入り口らしき巨大な鋼鉄の扉が見えた。

 

「開けてみよう、俺が先にいく」

 

「ちょっと待て!」

 

仲間のBEETが前に出て、その入り口付近へ歩いていく。

あと十メートル程に迫った時、

 

「ん?」

 

右足にヒモのような何かが引っかかった時、何とその足場がカッと光ったその瞬間に大爆発を起こし、BEETの右足は吹き飛ばされた。

吹き飛ばされて倒れ込むBEET、エミリア達に緊張が走る。

 

「敵がいるぞっ!」

 

爆発が収まるとアチコチの物陰から機関銃と思わせる連続かつ高速の発砲音がして、各機の装甲に当たる。

 

やはり隠れていたのか――三機はすぐさまそこから四散した。

 


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