大雪山から第二陣と思われるメカザウルスの大軍が出現、それに対し後方で待機していたベルクラスもついに動き出す。
「マリア、対地ゲッターミサイル発射用意、目標は大雪山麓から出現したメカザウルス群」
「了解!」
艦の発射口が開き、一斉にゲッターミサイルが遥か先のこちらへ向かってくるメカザウルスの群れに降り注ぎ、大半を粉砕した。
だがその後ろからまるで虫のように湧き出るメカザウルスは一気に駆け込み地上部隊に到達、乱戦状態に。
エミリアとジョージも同じく乱戦に巻き込まれるも、ベースを崩さず一体ずつ確実に撃破していく。
「一体どれだけいるの!?」
彼女は今まで以上の数で現れるメカザウルスに驚愕する。
“キツいがそれでも今は来る敵をただ倒すことだけ考えろ!私も可能な限り援護する、決して心を折るな”
気を凌いで頑張るエミリア。だが向こうの人海戦術に押され始める地上部隊。
撃破される機体も多くなる中、後方の愛美とジョナサンの元に早乙女から通信が入る。
“二人共、空中のメカザウルスは他機に任せて二人は地上部隊の援護射撃にまわってくれ”
「わかったわ!」
「オーライっ!」
ゲッターロボはドーヴァー砲を水平にし、発射準備にかかる。
ステルヴァーも同じく大型リニアランチャー『リチャネイド』を水平に構える。
「先にいくぜマナミ!」
砲口からプラズマを帯びた専用劣化ウラン弾が発射され一瞬で大雪山付近のメカザウルスの群れへ直撃、巨大な爆発が起こった。
「こっちもいくわよ!」
ドーヴァー砲発射態勢に入るゲッターロボ。
“前線の味方機全てに告ぐ、後方のゲッターロボがドーヴァー砲発射態勢に入った、速やかに一旦後方へ退避せよ”
機体全てが後方へ移動し、この周辺はがら空きになる。
メカザウルスは突然の敵の後退に混乱している。
“水樹、今だ!”
「消し飛べハチュウ類!」
ドーヴァー砲から発射された巨大な弾丸は音速を超える速度で真っ直ぐ飛び、通過直後に発生した衝撃波が左右拡散するように広がりメカザウルス、いや全て範囲内にある物体を粉々にしていき前方のメカザウルス全てが一掃された。
「やっぱり試作品だな、砲身が焼けついてるぜ」
「あちゃあ、ジェネレータがオーバーヒートしてる。しばらく使えないわね……」
二つとも試作品であまり間をあけない発射のせいか、各火器に異常をきたしていた。
「よし、地上部隊は前進せよ。状況次第、再び援護に入る」
各機は前線に戻っていく。
“ミズキ、サンキュー”
愛美の横に彼女のゲッターロボがいた。
「大丈夫?」
“ええ、なんとか。またお願いね、頼りにしてるわミズキ”
「エミリアもね♪」
互いに気づかって機体の拳をつけ合い、エミリアは再び前線へ戻っていった。
「ジョナサン、機体の調子はどうだ?」
“まあまあだ。ところでジェイドの方はどうかな?”
「アイツなら心配ない。
誰よりも経験のある根っからの飛行機野郎だから上手くやってるさ。さて俺も前線に戻るか」
“気いつけなジョージ”
「ありがとよ」
彼らもゲッターチームと同じく深い絆で結ばれているようである。
その北側の部隊も、どれだけ撃破させても虫のように出てくるメカザウルスを前に苦戦を強いられていた。
しかも今度は地上の砲台からの対空砲火が始まり、避けるのも難しくなって次々とBEETやマウラー、戦闘機が撃墜されていく――。
「竜斗君、このままでは私達までマズい。まず地上の砲台をなんとかしよう!」
“了解!”
二人は地上へ降下を始める。
「私が先に出向いて砲台の囮になる。君はその隙に砲台の破壊を行ってくれ!」
“しかしそれでは少佐が危険に!”
「なあに心配するな」
ステルヴァーは再び人型に変形し、背中のスラスターを駆使して素早く降下しながらライフルを地上に撃ち込み牽制をかける。
当然砲台は撃ち落とそうとする集中砲火を加えるがジェイドの卓越した操縦によってことごとく回避していく。
そして迂回しゲッターロボが同じくライフルを各砲台に照準を合わせて素早く狙撃し、追いつかない分はミサイルランチャーで追撃し砲台を爆破、全てを機能停止させた。
「よし、これで多少は楽になる。戻るぞ」
ステルヴァーは再び空中で戦闘機に変形し、ゲッターロボと上空へ戻っていく。
(何から何までスゴい……俺も少佐みたいにここまでなれるかな?ここまでいければ確実にみんなを守れるかもしれない……)
数々の華麗なマニューバ、空中で変形し敵を翻弄、何よりそれらを完璧にこなす操縦技能と度胸の違いを見せられた竜斗はジェイドに憧れすら抱いていた――。
この苛烈を極めるこの『大雪山戦役』。
両軍にあるのは二つに一つ、勝利か敗北かのどちらかだ。
地上人類側が勝てば日本解放、爬虫人類側が勝てば日本制圧、及び地上人類殲滅――ここまで来たからにはどちらも引き下がれない。そして始まってすでに数時間経った今は、地上人類側の方が優勢である。
「第二陣、第三陣壊滅、対空砲台もやられました」
「中隊の全戦力は残り僅かです。これでは確実に敗北です!」
オペレーター達の顔から焦っているのが分かる。
すると二オンは腕組みをやめる。
「……戦いが始まって約数時間。戦力的にはこちらが劣勢だが、あらかた向こうの兵力も疲弊していることだろう。では最終兵器を発動する」
「二オン様、その最終兵器と言うのは……?」
二オンは中央パネルの前に移動し、オペレーターをどかすと器用に画面をスライド、タッチしていく。
『パスワード入力』のような画面に行き着くと、知らなかったハズのシークレットパスワードを平然と打ち込む二オン。
「本隊の兵器開発総主任ガレリー様に教えてもらった。この中隊の本当の正体をな」
「本当の正体ですと……」
「ここ数年間、最近まで基地内は大規模な改造を行われていたのを知っているな」
「は、はい。そういえば……それはなぜですか?」
「それはな、この基地そのものが最終兵器なのだからな」
「この地下基地……が?」
「お前達が知らないのも無理はない。
この最終兵器は我々爬虫人類がゲッター線によって地下に追いやられる前に、いざという時に造られた古代の兵器なのだ。
遺伝子操作と薬物投与、気が遠くなるほどの年月を使いなじませて成長、強化した恐竜をベースにしたメカザウルス二体、そして最新技術を駆使して造り上げた、この新兵器を搭載した地下基地が組み合わさったハイブリッド兵器――。もっとも、その兵器の存在を知るのは私以外には兵器開発においての名門ガレリー様の一族とごく一部のみらしいがな」
パスワードを入力し終えると艦橋自体が変形し、艦橋のど真ん中に操縦席、オペレート用のモニター席が完成する。
二オンは操縦席に座り込み、オペレーター達にも周りの席に座らせる。
「これより我々第十二恐竜中隊は地上人類部隊を殲滅した後、そのまま日本制圧に移る。目覚めろ、『ダイ』!」
大雪山からマグマの急活性化、及び膨大なエネルギー反応を早乙女はコンピューターを通じて感知。
「大雪山から凄まじいエネルギーが……これは……?」
「しっ司令、大雪山直下のマグマが急激に活性化、このままでは噴火する危険も!」
「全機、大雪山から莫大なエネルギー反応と地下マグマの活性化を確認、噴火の危険性がある。
地上部隊は速やかにこちらまで後退せよ。なお北側の部隊も一旦そこから後退し、指示を待て」
全部隊が戦闘を中止、メカザウルスを無視し後退する。
“二人とも大丈夫?”
エミリアと愛美に竜斗から通信が入る。
「リュウト!無事なのね!」
“うん、なんとか。エミリア達もどうやら大丈夫みたいでよかった”
「石川、あのデカい山になにがあったの?」
“わからない。司令の命令で交戦区域から後退しただけだからそこまでは……”
大雪山から黒い煙が上空に吹き上がり、同時に地震も起こり、徐々に大きくなる。グラグラ揺れる地上に地上の部隊は翻弄された。
「キャアアアっっ!」
「やだア、マナ地震キライなのよ~~!!」
コックピットでわめく女性陣達。
「マナミ!!」
ジョナサン機はなんと彼女の機体に抱きつくのだった。
「マナミ、オレがいるからダイジョーブっ!!」
「こんな時に抱きつくんじゃないわよっ!!」
何故か漫才じみたことをやらかす二人。
エミリアも地震が怖いのかジョージにすがるようにくっついていた。
その時、ようやくジェイドからジョージ達へ通信が入る。
「ジェイド、何がどうなってる!?」
“私は今、山頂付近に赴いてるが黒煙がひどくてよく分からん。だがあの山の中からとてつもなくヤバいものを感じる”
「ヤバいものだと?」
“私の勘だがな。監視をこのまま続ける。二人はゲッターチームと待機だ”
「「了解」」
だがついには山からマグマが溢れ出ており、しかも山自体が崩れはじめていた。
「大雪山が崩壊……このままではマグマが溢れて地上に流れ込みます!」
「待て。大雪山から何か出てきている」
早乙女達が目を凝らしてみると黒煙でわからないが崩壊した大雪山から何か首の長い恐竜のような物体が一つ、いや2つ地面から動いている。
それも長い、千メートル近くまで伸び続けているがこれは……。
なんと大雪山どころか周辺の地盤が沈下し陥没した時、ついにそいつが姿を現す。
「なんですって……」
「これは…………」
その姿はマリア、早乙女さえも唖然とさせる。それは他もしかり。隊員全員がその姿に驚愕、絶望する。
恐らく草食系恐竜であるアパトサウルスをベースにしたメカザウルスが二体横並び、その背中には無数の砲台を張り巡らせた地下基地部が聳え立つ恐竜要塞。全長が桁外れであり、ベルクラスよりも四倍、いや五倍、六倍はあり、高さも見積もって確実に一キロ前後あるその巨体は山そのものである。
これが第十二恐竜中隊の最終兵器であるブロント級地上攻撃戦艦『ダイ』である。
産声を挙げるかの如く咆哮がこの北海道全域に響かせる。
「ウソだろ……っ」
竜斗はボソッと口からその言葉が出る。こんな山のように巨大な要塞が隠されていたなんて思ってもみなかったことなのだから。
基地部を支える二体の恐竜の口をガバッと開けると『シュオ……』と高熱が吹き出た時である。
「全機、直ちに警戒態勢!」
早乙女が注意を呼びかけた瞬間、二つの口から大量のマグマが吐き出されこの地帯全てが一瞬灼熱地獄と化し、BEETの残骸や取り残された隊員、メカザウルス全てがマグマの中に消えていった。
今度は背中の基地の周りに張り巡らせた砲台が一斉に開門、百、いや二百、三百を越える大型ミサイルが雨のように降り注ぎ、広大な大地はマグマと爆焔で真っ赤に染まり、ボロボロの荒野となる――。
「こっこんなのどうやって倒すのよ……っ」
全長三千メートル以上を誇る巨体に加えてその類をみない超火力の砲撃による目にうつる光景が火の海に対しあの愛美がビクビクと臆していた。だがそこで前に出るのはジョナサンのステルヴァー。すぐさま最初に使用した核弾頭バズーカに持ち替えて狙いを定める。
「この恐竜ヤロオ、核をぶち込んでやる!」
“ジョナサン大尉、待てっ!”
早乙女の制止を振り払い、核弾頭ミサイルを発射した。
続けて再装填し、計三発を連続発射。
推進ロケットによってぐんぐんと伸びていき見事直撃し核爆発、ダイはその強烈の光に包まれた。凄まじい衝撃波、熱が周りに拡散すると共に特有のキノコのような巨大な煙が空高く舞い上がり雲のようになっている。恐らくは爆心地一帯は見るも恐ろしいことになってるだろう。もっとも民間人は既に避難し、何より放射能は出ないので二次被害が少ないのは幸いであるが。
「これでどうだ。さすがに核三発撃ち込まれたらただじゃすま……」
だが全員が目を疑う。煙の中からダイが元気な雄叫びを上げて出てくるではないか。しかもそれもどこの破壊箇所すら見当たらない、全くの無傷で。
「マジかよ……っ」
ジョナサンは激しく動揺した。
pixivで投稿した分と書きためを全て投稿したので次回から投稿ペースが遅くなっちゃいます、すいません。
けど頑張って書いていくので楽しみにしてて下さい。