ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第二十一話「大雪山戦役、前編」①

地上、そして空から波のように押し寄せるメカザウルスの大軍団。地面を蹂躙し雄叫びを上げながらこちらへ駆けてくる恐竜……悪夢そのものだ。

 

地上部隊は各火器で迎撃を開始。プラズマ弾、ミサイル、実弾、ありとあらゆる弾丸全てを撃ち込む。

耐えしのぎそのまま突撃する機体、回避する機体……撃破されたメカザウルスの後ろから走ってくるメカザウルス達がついに地上部隊の側まで接近、次々に爪や牙、そして口からのマグマをはいて一斉に襲いかかる。

一瞬でこの一帯は敵味方入り混じる合戦となる。

 

「はあっ!」

 

エミリアの乗るゲッターロボも奮闘し、左腕の高速回転するドリルで穿ち、メカザウルスを一撃で粉砕していく。

だがその後ろにメカザウルスが牙を尖らせて迫っており、彼女もそれに気づくが反応は遅かった。だが突然、メカザウルスの首が胴体と離れて飛ばされていく。

そこにはジョージの乗るステルヴァーが右手首から突き出たダガー状の小刃を横に振り切っていた。

 

「油断するな!」

 

「はいっ!」

 

このステルヴァーも地上を速く動け、両手首から突き出る刃を駆使して次々にメカザウルスの首、胴体をまるで紙のように切断していく。

 

この武器は刃を高周波振動させているため切断力が増す仕組みである。

 

左腕を突き出すと前腕部の装甲が縦に開き、小型ミサイルを発射し前方のメカザウルスに不意撃ち。怯んだ隙に再びダガーで一刀両断した。

 

「ヒューッ、流石はアメリカ製だぜ!」

 

その高性能ぶりに彼は興奮する。

エミリアもなるべくメカザウルスと一対一になるように持ち込み、そして確実に撃破していく。

他のメカザウルスがゲッターロボの背後に忍び寄り噛みつこうとした時、ライジング・サン中央のドリル状の物体が射出され、メカザウルスを貫通。

それだけでは止まらず、まるで生きているかのようにゲッターロボ周辺を飛び回り、死角から近づくメカザウルスに向かって自動的に突撃し、穿っていく。

 

「すごくいいねコレ!」

 

彼女は便利なこの兵器を感心する。

ゲッターロボはメカザウルスの胴体を右のペンチ型アームでがっちり掴む。握りつぶさずにアーム中央の発射口からプラズマエネルギーのレーザーを発射し、メカザウルスの身体を貫通、そのまま頭ごと上へ焼き切った。

「やるなエミリア君!」

 

「いやあ、ジョージ少佐には及びません」

 

「そんなことないさ。けど機体の性能を頼りにしている部分もあるから過信はするなよ」

 

「はい!」

 

「まだまだ奴らは押し寄せてくる。途中で力尽きるなよ!」

 

ステルヴァーとゲッターロボの高性能機の前に周りに無数のメカザウルスの残骸が積み上がっていくばかりだ――。

 

 

 

 

後方砲撃部隊のBEETは肩に取り付けた高射砲の角度を調整し、発射態勢に入った。

 

「充分引き寄せよ」

 

上空から押し寄せる翼竜型メカザウルス、数隻の恐竜母艦から発進する恐竜帝国製の戦闘機の大軍。中には空爆を開始するメカザウルスもいた。

「撃てっ!」

 

 

命令ともに地上からBEETによる対空砲火が始まった。

次々に撃ち落とされていく敵機だが、まだまだ後方からさらにメカザウルスが黒い塊となって大雪山から押し寄せてくる。

 

「では行きますか」

 

ジョナサンの乗るステルヴァーがついに動きだし、携行するバズーカを上空に傾けて、セーフティーを解除、照準を合わせる。

しかしバズーカの砲身には、いわゆるハザードマークがついているが。

 

「俺が熱いキスをくれてやるぜ」

 

モニターに映る全てのメカザウルスを赤枠で囲んだ。

 

“全機、後方ステルヴァー機の射線上から退避し防御姿勢に入れ、繰り返す――”

 

早乙女からの命令で全機が戦闘を止め、後退し身を構える。そして

 

「ファイアっっ!!」

 

撃ち出されたミサイルが遥か上空の、メカザウルスの塊へ飛んでいき十数秒後経った時、それは起こった。

 

赤色光が球体状に膨れあがり炸裂。想像を絶するほどの衝撃、熱、光が一帯全てに襲いかかり空中の、範囲内にいたメカザウルス全ては呑み込まれていていき、離れていたメカザウルスにも衝撃波を受けて吹き飛ばされていく。

地上にもその余波が到達し、突風が突き抜け巨大な砂嵐が巻き起こり、キノコのように上空へ巻き上がる黒煙が見える。

 

「……っ、もしかしてあれは……?」

 

「爆発の規模を見ると戦術核だろうな。だが放射能が検出されてないのを見ると、博士の主張が正しかったようだ」

 

「……司令、もしかしてあれが核弾頭だと知ってましたか?」

 

「さあ?」

 

ベルクラスの艦橋からその凄まじい光に目を押さえてうろたえるマリアと、分かって準備していたかの如く、いつの間にか遮光目的でサングラスをつけていた早乙女。

 

「め、目がチカチカする……っ」

 

同じく爆発の様子を見ていた愛美は離れていたこともあり無事だったもの、強烈な光で目をゴシゴシこすっている。

 

“大丈夫かい、マナミ?”

 

ジョナサンから心配する声が。

 

「アンタ、一体何を撃ったのよ……」

 

“小さな太陽さ”

 

こんな時に冗談をかます彼に愛美でさえ呆れる。

 

“おいジョナサン、許可なくいきなり核をぶち込むようなクレイジーなことはやめろ!”

 

ジョージからお叱りを受けるも、

 

「いいじゃん、あんなに敵が迫ってきて今撃たなきゃいつ撃つんだよ?」

 

“味方機にまで被害を受けたらどうするんだ!”

 

“二人共やめろ!”

 

口もめになる二人の元にジェイドから通信が入る。

 

“よくやったジョナサン。だが今はなるべく周りの状況を考えるように戦え。

今は自衛隊と合同作戦中だということをわすれるな。

核はここぞという時まで残しておけ”

 

ジョナサンは意外とあっさり命令に従い、核弾頭バズーカと背中のランチャーを交換する。

二羽折りにした砲身を直列に連携させると長い砲身となる。

グリップとしっかり握りこみ、腰をドシっと構えて固定するステルヴァー。

砲身にプラズマエネルギーを送り込み、チャージ完了させる。再び上空のメカザウルスに向けて射角を合わせた。

 

「ヘイっ!」

 

その身の丈並みのランチャーから放たれたのはプラズマを帯びた弾丸。

その音速を超えた凄まじい弾速は一瞬で遥か上空先のメカザウルスを次々と貫通していった。

 

「ほう、レールガンの類か」

 

早乙女は腕組みし、ステルヴァーの武器を嬉しそうに注目していた。

 

「ではこちらも行くか。水樹、一発目行くぞ」

 

彼女に伝えるとついに出番ですかと指を鳴らす。

斜めに傾けているドーヴァー砲をゆっくりと空のメカザウルスの密集域に合わせ、足の緩衝器を作動させる。

 

“全機に告ぐ、これよりゲッターロボはドーヴァー砲を発射する。

一応の被害を避けるために前線部隊は速やかに退避せよ”

 

早乙女の命令で前線にいる部隊機は左右へ一定の距離まで離れた後、

 

“いいぞ、撃て!”

 

「んじゃあ、いっきまあす♪」

 

 

彼女はトリガーを引いた時、その巨大な砲身から、大玉とたとえるに相応しいプラズマを帯びた巨大な弾丸が音速を超える速度で瞬く間に上空へ突き抜けていくが、その弾丸が通過した際の余波は四方八方に広がり、メカザウルスの群れのほとんどが一瞬で潰れ、バラバラに分解し、そして吹き飛ばされていった。

恐らく今の一撃で百機近くが吹き飛んだだろう。

 

離れた場所で退避していたジェイドとエミリアはその威力に唖然としていた。

 

「ワオ……ミズキヤバすぎ……」

 

「ヒェーっ、サオトメ一佐もクレイジーな兵器を造るものだ……」

 

そのドーヴァー砲を撃った愛美も呆然し、固まっていた。

 

“水樹、大丈夫か?”

 

早乙女の声にハッと我に返る。

 

「……早乙女さん、マナびっくりした。衝撃が半端なくてまだ手がしびれてる……」

 

“すまない。実はまだ一回のテスト射撃しかしていない代物で、無事に使えるかどうか分からなかったが大丈夫のようだ。感謝するよ”

 

「ちょっ!じゃあもしゲッターロボに何かあったらどうするつもりだったのよ!?”

 

“その時はその時だ。また弾を装填してエネルギーチャージしていつでも使えるようにしとけ。幸運を祈る”

 

彼の通信はここで切れる。

 

「コラァ逃げるなーっ!」

 

こんな時にも調子を崩さない早乙女である――。

 

 

大雪山の北側では戦闘機型メカザウルス、そしてメカエイビス大部隊と交戦する混成航空部隊。

空戦に特化した部隊同士が繰り広げる高機動戦闘、ドッグファイト。

その中でも竜斗は今までの訓練、そして実戦によって裏付けされた経験がゲッターロボによってフルに発揮され縦横無尽の働きを見せていた。

 

(負けるわけにはいかないんだっ!)

 

その凄まじさはまさに戦神の如し、アクロバティックな機動を描きながら無数のメカザウルスを撃ち落としていく。

メカエイビスの方も、以前戦ったタウヴァンの量産機であり、攻略法を知る彼は以前使用した大型プラズマソードでピンポイントで斬り込み一刀両断していく。

「あの子スゴいな……っ」

 

「ああっ、俺達も負けてられないぜ!」

 

自衛隊隊員、米軍パイロット、そしてジェイドも彼の活躍に感心していた。

 

(ゲッターロボの性能もさることながら、彼のパイロットとしての能力も底知れないな。

だがまだブランクというものを味わってないだろう。

その時が来た時、はたして彼は乗り越えられるだろうか――)

 

ジェイドの駆る機体はステルヴァーであるはずなのだが人型ではなく戦闘機型だ。

彼もまた経験豊富な歴戦の戦闘機パイロットであるため、様々な空中戦闘機動(マニューバ)で翻弄し、ミサイル、バルカンを駆使して次々にメカザウルスを撃ち落としていく。

(やっぱり本場の人はスゴい……っ)

 

竜斗、いや日本の隊員もその華麗な機動を魅せられていた。

だがその時、ジェイドの目の前にメカザウルスが待ち構えていた。

だがそこで彼は信じられないことをする。

 

「ヴァリアブルモード!」

 

両主翼、各尾翼の後部、なんとそれぞれ人型の手足に変形し、機首も変形しステルヴァーの特徴的な鋭角な顔が出現。

一瞬で他二機のような人型に変形、右手首から高速振動刃を突出させて勢いに任せてメカザウルスの首を横一閃に斬り込み、切断した。

その後、再び戦闘機形態に戻り夜空を駆けていく。

 

「か、かっこいい……」

 

竜斗は思わず口から出る。

 

――アメリカ製SMBの特徴に人型、戦闘機型への可変機能がある。

 

ステルヴァーはアメリカ軍現主力SMB『マウラー』のノウハウを活かされて開発された新型であり、ハイブリッド動力である点、開発案などゲッターロボと通ずる部分が多く、師弟であるニールセンと早乙女の思想がほぼ同質なのかもしれない。

 

「竜斗君、いい筋してるな、驚いたよ」

 

彼からのお褒めに照れる竜斗。

 

“少佐のように本場の人が凄すぎて僕なんか……っ”

 

「そうへりくだるな。自分に自信を持つことも成長の秘訣だぞ、常に積極的になれ」

 

“……はい!”

 

「よし、この調子でさらに敵を叩くぞ。行くぞ!」

 

……北と南で奮闘する早乙女率いる混成部隊に次々とやられ劣勢になっていく第十二恐竜中隊側。

 

「メカザウルス、メカエイビス小隊が次々と壊滅……」

 

「地上人類がここまでやるとは……っ」

 

劣勢になることが想定外だったのか苦渋の顔を浮かべる中隊のオペレーターに対し、冷静さを保ち平然としている二オン。

 

「地上人類軍にはゲッター線の機体の他にデータにない新型機が確認されてます」

 

「…………」

 

「こちらへ押し込まれてきています。二オン様、どうしますか!」

 

「第二陣を出せ、それでもダメなら三、四陣と次々に出せ。一歩も引かせるな、奴らを倒せなくとも疲弊させろ」

 

「そっそんなことをしたら中隊の戦力の大半を失うことになります!もう少し慎重に戦うか本隊に援護を要請すべきでは?」

 

「その必要はない。我々爬虫人類にとって戦死は名誉ある死だろ。ゴール様も喜ぶ」

 

「こちらには二十数機の脆い対空、対地砲台としか残されてません。もしこのまま攻め込まれれば圧倒的に我々が不利です」

 

「私の命令に従え、聞こえないのか?」

 

「しかし――」

 

次の瞬間、反論したオペレーターが二オンの強力な念動力によってその場にグシャグシャに潰されてしまった。

他のオペレーターは恐怖のあまり顔が真っ青だ。

 

「こうなりたくなければ命令に従え。

心配するな、我々には切り札がある。

奴らがどうあがこうが我々に勝ち目はない、絶対にだ。さてしばらく楽しませてもらおうか」

 

彼のこの絶対的な自信はどこから生まれるのか、誰も知る由はなかった。

 


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