ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第二十話「決戦前」①

――夜十時過ぎ。格納庫にてすでにパイロットスーツに着替えた三人は来るべき決戦を前に円陣を組んでいた。

 

「いよいよだね。みんな気分は大丈夫?」

 

「……うん。正直言ってやっぱり怖いけどここまで来たからにはもう泣き声は言わない、大好きな日本を守るためにワタシ頑張る!」

 

「イシカワだけマナ達とは反対方向に行くのね。

ガンバってね、マナはエミリアと仲良くやるから安心しなさい。

まああのジョナサンっていうヤツがいるけど……」

 

二人とも覚悟を決めてるようだ。

 

「二人はベルクラスが後方にいるから司令から色々援護してもらえるから大丈夫だと思う。

俺は空自と米軍の人達、そしてジェイド少佐と一緒に頑張ってくるよ」

 

三人は腕を組み合い、互いの顔を見る。

 

「二人とも、今までの経験を生かして絶対に勝って、そして全員生き残ろう。いいね」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

「ゲッターチーム、行くぞ!!」

 

「「オーッ!!」」

 

気合いを入れた三人はすぐさま各機に乗り込み各システムの最終チェックを行う。

 

(よし、各動力炉のエネルギー出力、システムとも正常。いつでもいけるぞ)

 

竜斗はシステムチェックをしている最中、何故か手が止まる。

 

(そういえば……あのメカザウルスは現れるのかな…………?)

 

彼の言うメカザウルスとは、ラドラの駆るゼクゥシヴのことだ。

栃木での戦闘以来、全く姿を現していないが戦う気はなくなったのかなと竜斗は思うが、今ラドラがどういう境遇にいるかなど、彼に分かるはずもない。

 

(あの時は逃げてくれたけど……次はどうするんだろ……?)

 

――各部隊のSMB、戦闘機、自衛隊車両が一斉に移動を開始しベルクラスも浮上を始める。

すでにコックピットでスタンバイしている三人の元に早乙女から通信が入る。

 

“どうだ気分は?”

「僕達はいつでもいけます。これで日本を守れるなら勝つまでですよ」

“よし、その意気だ。竜斗は今よりベルクラスから発進し、九時の方向五十キロ地点まで移動してくれ。

そこで君の部隊と合流することになるのでその後は共に行動、開始まで一緒にいろ。

一応マップにその場所を記しておいたが出来るだけ出力を出さずに低空飛行で行け。もしかすれば敵の対空砲火があるやもしれん”

 

「了解です」

 

“エミリアと水樹はベルクラスが定位置に着き次第発進し、各配置場所についてバディと行動してくれ”

 

「はいっ!」

 

「オーケーっ」

 

すると竜斗は突然、

 

「早乙女一佐」

 

“どうした?”

「……エミリアと水樹をよろしく頼みます!」

 

彼から二人を守り通してほしいという気持ちがスゴく伝わる。

 

“安心しろ。むしろ君達は生きていかなければならないんだ。少なくとも両親と友達に会えるまではな”

 

「司令……」

 

“君は二人の事よりもまず自分が無事生き残ることを考えろ、いいな”

 

「はいっ!」

 

腰にトマホーク二本、右手にライフル、左手にミサイルランチャー、背中に折り畳まれた大型プラズマソード……完全武装した空戦型ゲッターロボのテーブルが外部ハッチの位置に移動しカタパルトと連結、ハッチが開放され、先に夜空が広がる。

 

“竜斗、翻訳機能のオンにしたか?”

 

「すでに入れてます」

 

“よし、ジェイド少佐にいっぱい胸貸されてこい”

 

カタパルトは射出され、空中に飛び出したゲッターロボはウイングを展開し、低空を保ちながら指定された場所へ飛んでいった。

 

「竜斗……絶対に生きて帰ってきてね」

 

エミリアはコックピット内で彼の無事を一心に祈っていた。その時、モニターに愛美が映り込む。

 

“なあに辛気臭い顔してんのよ”

 

「いやあね、リュウトの無事を祈っていたの」

 

“アイツなら心配ないわよ、腕いいし。それよりもアンタ自身の心配したらどお?”

 

「うん……」

 

“怖くて仕方ないんでしょ?”

 

「そ、そんなことないわよ!」

 

“はい図星。声ふるえてんよ”

 

黙り込むエミリア。そんな彼女に愛美は。

 

“あ~あっ、そんなんじゃいつまで経っても石川に迷惑ばかりかけまくるわね。そのうちアイツ、アンタに愛想尽かしてマナに気ぃ向くかも~ねっ?”

 

「な、なんですってえ!!」

 

また彼女に挑発されてしまうも、黙っていられないようだった。

 

“ホラホラ、悔しかったら意地見せなさいよ~~っ♪”

 

「くうっっ!!」

 

 

 

挑発してくる愛美にエミリアの顔は真っ赤になり、また喧嘩へ発展しそうに。

 

“どお、元気出た?”

 

「………えっ?」

 

“マナがアンタを奮い立たせるにはこれが一番のベストかなと思ってね”

 

「…………」

 

“アンタがしっかりしないとマナまでやる気なくすからね、これから毎回これやる?”

 

……どうやら彼女なりの励まし方のようである。その意味を知ったエミリアの目から涙が。

 

「ミズキ……ありがとう」

 

“泣くのは全てが終わってからよエミリア、勝つんでしょマナ達は”

 

「……うん!」

 

“では気を取り直してオンナ同士で仲良く頑張りますか!”

 

女同士、モニター越しでやり取りしている間にベルクラスがすでに定位置に移動していた。

 

“二人とも、用意はいいか?”

 

「はい!」

 

「いいわよっ」

 

“では降下させるぞ。水樹は降下しすぐに後方支援部隊と合流し、ドーヴァー砲を取り付けろ。砲身とジェネレータはすでに向こうに運んである。

エミリアは前方に移動し、君のバディと合流してくれ」

 

二機のテーブルは降下用ハッチの真下へ移動。そしてハッチが開放され、下から風が突き上がる。

 

“では全員、健闘を祈る”

 

エミリア、愛美の順番で降下。今回は低空なため、パラシュートなしですぐに地上へ降着し膝を折り曲げて衝撃を抑える。

 

“じゃあ行ってくる。ミズキ頑張ってね”

 

「アンタもしっかりね!」

 

互いにエールを送り、それぞれの行動に移る。

陸戦型ゲッターロボには今回も背部に『ライジング・サン』を装備しており、機動力は素より落ちているは戦闘力については向上している。

『ターボホイール・ユニット』で地上を滑走し前方の地上部隊の待機所に到着する。

その中央にはBEETではない、黒くスタイリッシュな機体の姿が。

 

“エミリア君、来たか”

 

モニターにヘルメットを被ったジョージが映る。

 

「ジョージ少佐、これが例の新型機ですか?」

 

 

 

“ステルヴァーだ。ここで活躍すれば量産も考えてる機体で俺達のは所謂テスト機だよ”

 

ほぼ全身が黒色で鋭角的でスタイリッシュ、大盾のような平らなバインダーが両肩に付けている独特のデザインの機体、ステルヴァーだ。

どのような性能なのか、見たいものだ。

 

“戦闘中は私と常に離れず行動だ。孤立するよりそのほうが遥かに安全だ。もし危険が迫ったら遠慮なく私を頼ってくれ”

 

「は、はいっ!」

 

“君達ゲッターチームは元は高校生らしいな、無理するなよ”

「し、知ってたんですか?」

 

“サオトメ一佐から聞いたよ。それに君達の両親や友達が行方不明なのもね”

 

「…………」

 

“だけど今は勝ち残ることに集中しろ。君の乗るゲッターロボの力を決して疑うな、信じろ。いいな!”

 

「はいっ!」

 

一方、愛美は後方でドーヴァー砲の換装を受けていた。

数機のBEETと大型クレーン車を使い、巨大な砲身を右肩に、そして箱型の大型プラズマジェネレータを背中に設置する。その横に専用弾薬が置かれている。

 

「うわあ、足が地面にめり込んでる。確かに今回は動けなさそうね」

 

一体こんな馬鹿でかいものから何を撃ち出すのか不思議だ。搭載している間、彼女は座席で足を組み、鼻歌を歌っているとモニターにあの男、ジョナサンが映る。

 

“へえ、ずいぶんと余裕そうだなお姫様?”

 

彼は英語だが、ゲッターロボに内蔵された翻訳機によって日本語に変換される。

 

「はいはい」

 

ジョナサンの乗る機体は外見はジョージ機と何ら変わりないが、武器だけ違いがある。

ジョージ機の装備しているのは従来型のライフルだが、こちらは背中に折りたたみ式の巨大なランチャー、右手には円筒状の長いバズーカのような武器を携行している。

 

“おいおいマナミは無愛想だなあ。今回君とタッグ組むんだからさ、仲良くいこうよ”

 

「アンタこそヘマしないようにね」

 

明らかに向こうが先輩なのにタメ口且つ生意気な態度の愛美。

 

“ヒュ~、気が強いねマナミは。俺はそういうタイプが好みなんだよね。よし、やっぱりこの作戦が終わったら俺とデート……”

 

瞬間に通信を切る愛美だった。

 

「ウッザっ、こんな奴と組むとかマジありえないっ!」

 

この二人はこんな状態で連携が上手くいくのか心配である。

 

そして竜斗は低空を保ちながら飛びつづけ、襲撃されることなく指定ポイントへあと少しの位置まで来ていた。

 

「どうやら何事なく行けそうだけど向こうまでは気を抜いちゃいけないな」

周りをよく確認しながら飛び続け、ついに指定ポイントに到着する。

そこには大多数の、フライトユニットを装着したBEETと日本の戦闘機、そして見たことのないタイプの戦闘機も多数、地上にずらりと待機している。

地上に着地し、合流すると全員がゲッターロボを出迎える。

 

“久しぶりだな、対馬戦以来か”

 

「対馬……てことはあなた達は!」

 

彼らはあの対馬海沖で共に闘った空自隊員である。

 

“今回もよろしく頼むぜ、期待してるよ”

 

「はい、よろしくお願いします」

 

話を済ませ、ジェイドの乗るステルヴァーと合流する……がしかし彼の機体は人型ではなく戦闘機型である。

 

“来たか”

 

「遅れてすいません、今回はよろしくお願いします」

 

彼は日本語で喋っているが早乙女から向こうにも翻訳機を搭載しているから安心して日本語を使っていいと言われている。

 

 

“ところで君は空中戦は何回目だ?”

 

「ええっと、確かもう八、九回目です。模擬戦闘も含めればもっと……」

 

“実戦回数が約九回か。君はゲッターロボの、その空戦仕様のパイロットに任命されてから一年未満にしてはやけに戦闘が多いしそして見事生きている”

 

「は、はあ。半ば成り行きと強引で乗ったようなものです……けどゲッターロボは操縦は簡単ですし武装も強くて、それにシールドまで搭載してますから」

 

“ふむ。だがいくらなんでもただの高校生が乗り込み多少の訓練だけでここまでやるとはな”

 

 

「ぼ、僕達のことを知ってるんですか?」

 

“サオトメ一佐から色々とな。君達のような子達がなぜ軍隊に混ざっているのか私達含めた全員が気になっていてな”

 

恐らく朝の朝礼時に米兵がこちらをジロジロ見ていたことに関してだろう。

 

「……もしかして僕達は邪魔と思われてますか?」

 

“正直、一般人を兵士として使うのは反対だ。

出来れば君達は降りて安全な場所へ避難すべきだが君達はゲッターロボに自ら乗っているのだろう、そういうことならこれ以上私は口出しできない”

「…………」

 

“悪気を感じたのならすまない、許してくれ。

だが君達は確かにサオトメ一佐の言うとおりそういう才能があるのかもな”

「……ありがとうございます」

 

“まあともかく、今作戦中はよろしく頼む。

君の力を頼りにしている、思いっきりやってくれ。

逆に危なくなったら私はすぐに援護に入るし、私も危なくなった助けてほしい。バディになった以上は二人は生死を共にする一心同体ということを忘れるな”

 

「一心同体……了解です!」

 

そして航空部隊も、低空飛行で大雪山の北へ移動を開始する。

 

“よおジェイド。バディのお守り、しっかりやれよな。ハハハっ”

 

「お前こそ、調子に乗って墜ちるなよ」

 

ジェイドの所に、航空部隊に混じっていた未見の戦闘機のパイロットから通信が入るが、どうやら自衛隊ではなく例のアメリカ軍パイロット、つまり彼の仲間のようだ。

「ジェイド少佐、あれも少佐の機体と同じアメリカ軍のSMBですか?」

 

“ああ、アメリカ軍現主力機で可変型SMB『マウラー』だ”

 

「可変型……もしかして変形するってことですか?」

 

“そうだ、今の戦闘機型とゲッターロボみたいな人型にな。だが今回はその機会はあまりないだろう”

 

変形……一度は見てみたいと強く思う竜斗であった――。

 


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