ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第十八話「前進」①

あれから二ヶ月後。晩秋になり肌寒くなった頃。

 

黒田がいなくなってからやはり寂しさもあったがそれをバネに、竜斗とエミリア、そして愛美の三人は操縦訓練、体力練成などの様々な訓練を今まで以上に真剣に取り組み、パイロットとしての能力、そして団結力と連携力を一層強めていた。

 

……その間に数回のメカザウルス出現による出動もあったが見事メカザウルスの掃討に成功し、実戦における経験と戦闘技術がついてきていた。

 

これもやはりゲッターロボそのものの強さもあるが早乙女の言う通り、彼らの訓練成果、ゲッターパイロットとしての適性、そして生き残るほどの強運を持っていることを裏付けていた。

 

――夕飯時、三人はベルクラスの食堂で今日行ったゲッターロボ同士の模擬戦闘について盛り上がっていた。ちなみに評価の順は高い方から愛美、竜斗、エミリアである。

 

「エミリアは一対一の接近戦に持ち込むと滅法強いけど複数の相手だとやっぱり苦手ね。周りに気を取られると攻撃が当たらなくなるわね」

 

「あちゃあ……これから気をつけます」

 

「俺からだけど、水樹は凄く機敏で確実に攻撃当ててくるけど動きが派手すぎて隙が所々あるよ」

 

「そういうアンタはマナの逆。堅実過ぎて決定力がないよ。男なんだから派手にやんなさいよ」

 

「確かにリュウトは間合いを取ったり攻撃を避けるのは上手だけど、いまいち攻めの勢いに欠けるっていうか」

 

「勢いか……。この反省を次に活かせるといいな」

 

すると愛美は目を細めて彼を見つめる。

 

「イシカワさあ、最近よくリーダー風吹かせてるよね」

 

「えっ……そういうワケじゃないけど……」

 

「別に責めてないし。この中だと石川が一番しっかりしてるからリーダーに適任だと思うし、ねえエミリア?」

 

「うん、アタシもリュウトがリーダーでいいと思う。

要領いいしまとめる力もあると思う」

 

「じゃあゲッターチームのリーダーは石川に決定、拍手♪」

 

二人は拍手を浴びせると彼は顔を赤くさせる。

 

「じゃあ面倒なことは全てリーダーの石川に任せるからよろしくね♪」

「ちょっ!?」

 

 

「アハハッ!」

 

三人は楽しく盛り上がっている頃、司令室では早乙女とマリアも彼らについて雑談していた。

 

「人間やればできるものですね。

彼らの今の仲を見てるとまるで人が変わったようで感心します」

 

「三人に共通した目的ができたからな。それも凄く重要な目的だ」

 

「……彼らのご両親とお友達が無事だといいんですが」

 

「そうだな」

 

早乙女は一息ついて、マリアにこう言った。

 

「――もう頃合いだな。明日の午前中に彼らを司令室に来るよう伝えてくれ」

 

「ということはもう……」

「ああそうだ」

 

――次の日の午前中、司令室に集められた三人は早乙女からこう言われる。

 

「最近の君達の成果は素晴らしいな。感心するぞ」

 

早乙女からのお褒めの言葉に三人は照れている。

 

「君達は覚えているか?

前に私が言った『我々は攻めに移る』と」

 

「は、はい。あと北海道の大雪山辺りに敵の本拠地があるとかどうとか」

 

「そうだ。あれからの調査でどうやら大雪山の地下に奴らの本拠地があると分かった。

そこを潰せば少なくとも日本制圧の危険は一気になくなる。もっとも、世界にはまだうじゃうじゃいるがな」

 

「じゃあ、もしかしてついに……」

 

「ああ、君達の今のチームとして機能ならなと思ってな」

 

早乙女は机に手を置いて三人をぐっと見つめる。

 

「我々ゲッターチームは北海道の全師団の部隊と協力して日本の本拠地を包囲し、叩く。

君達が行ってきた以上の最大規模の戦闘になるだろう」

 

三人の心に衝撃が走る。

 

「なお、今回はアメリカ軍も来日し我々に協力、支援してくれる。

最近ロールアウトしたばかりの新型機のテストも兼ねて実戦投入するそうだ」

 

「新型機ですか……」

 

「細部のことは分からんが、向こうも新エネルギーを動力とする機体でゲッターロボとほぼ同等の性能を持つと言っていいだろう」

アメリカ軍とも協力、そしてゲッターロボの同格の新型機……今まで味わったことない新鮮な情報が彼らを実感させる。

今までとは比べものにならないほどの激戦が自分達を待ち受けていると――。

 

「作戦開始の予定は今から約二週間後だ。その間に我々は北海道へ移動、向こうの部隊と合流し作戦準備に入る。

自由の利くのは今日から一週間の間だ。休日を使ってリフレッシュと身支度をしておいてくれ」

 

「了解です」

 

「ところでそろそろゲッターチームのリーダーを決めたい。

もう黒田がいない今、まとめ役が必要になるからな、誰にする?」

 

「もうそれについて三人で話したんですが、僕になりました。二人とも異議なしで」

「君なら心配ないな。

では竜斗、よろしく頼む。そして二人も彼に負担かけないように彼の指示に対して的確に行動し、彼を支えてやれ」

 

「はい!」

 

「はあい♪」

 

「では竜斗、今日から一日の訓練が終わったら私かマリアが君に明日の訓練内容や情報を伝えるからそれを二人に申し送って欲しい。

これから諸事の情報は基本的に私達から竜斗、そして竜斗から二人へ伝わる形になるので肝に銘じておくように」

 

……その夜。いつも通り訓練を終えて、各人が寝るまで自由の時間を送っている。

明日の指示を聞いた竜斗はまずエミリアから伝えに彼女の部屋に向かっていた。

何の気なくノックを忘れて入った時、彼はその光景に面食らう。

 

「うわあっ!!?」

 

「りゅ、リュウト!!?」

 

彼女は自室のシャワーから上がったばかりなのか、服はおろか下着すらつけてない全裸だった。

愛美以上の色気ある身体が素晴らしい。

 

「ゴメン!!」

 

「の、ノックぐらいしてよっ」

 

 

 

 

彼はすぐさま背を向け、彼女はすかさずバスタオルを身体に巻く。

 

「……明日の訓練を聞いてきたから伝えようと思って。明日も一日中、ゲッターロボ三機で模擬戦闘だって……」

 

「そう……ありがと……」

 

「ゴメン、まさかそこで着替えるとは知らなくて……脱衣場があるだろ?」

 

「アタシ広々とした場所で着替えたいのね」

 

おそらく彼女は普段からこんな感じなのだろう。

 

「じゃあ俺行くから……」

 

「待ってリュウト!」

 

何故か彼を引き止めるエミリア。

 

「ワタシ……その……別に裸見られたの怒ってないから……寧ろリュウトになら見られてもいいよ」

 

「……エミリア?」

 

彼女はどこか思いつめた表情だ。

 

「リュウトってさ、ミズキの言ってた通り堅実だよね。

いいことだと思うけど、こういうのは一歩先踏み込まないっていうか……」

「…………」

 

「前にリュウトがアタシに好きって言ってくれたのは凄く嬉しいけど、なんていうか……あれから全然進展がないっていうかさ……」

 

その時、竜斗は黒田とドライブしてた時に彼が言っていた『二人の関係は姉弟のようなもの』を思い出す――。

 

「アタシは……アタシはリュウトをちゃんと見たいし、リュウトもアタシをちゃんと見てほしいの。

今までみたいに姉弟じゃなくて男、女として!」

 

「エミリア……俺は……」

 

「リュウトはミズキに色々と酷い目に遭ってきたからもしかしたらそれに関係してるかもしれないし、元々リュウトって自分から行くタイプじゃないのは昔から知ってるからずっとガマンしてた。けど……アタシにだって女としての感情があるの。

リュウトが見てくれないとアタシ……好きって言われたのがウソのように感じるの……」

 

「………………!」

 

彼も彼女にどう言えばいいか、それ以前にどう伝えればいいのか分からなかった。

 

「……あ、ゴメンね。アタシ、何思い上がった変なこと言ってんだろ……今の忘れてねリュウト!」

 

 

 

竜斗は無言で出て行く。彼女は燃え尽きたようにその場にへたり込んだ。

 

「アタシ……何言ってんだろ……バカみたい……っ」

 

だがそんな彼女も知らず知らずに涙がポロポロ流れており、そして床に顔を伏せて嗚咽するのであった。

 

そして竜斗も通路の壁に寄りかかり、頭を抱えていた。

 

(……確かにそうだ。俺はエミリアに好きって言ったけど、あれからなに一つも何かしてやれてない。あいつに言われるまで気がつかなかった……。

黒田一尉の言ってた通りにそこまでの関係でしかなかったんだ……けど、どうしていいかわからないんだ……)

 

結局、竜斗にしてもエミリアにしても、そういうのに対して疎いのが原因である――。

 

――次の日から竜斗とエミリアの二人は互いにどこか気まずい雰囲気を出していた。

訓練時以外の会話もぎこちない笑顔も強張っており、そして距離を置いているようにも見える。

 

「…………」

 

愛美は二人の『異変』を何となく感じ取っていた。

 

……休日に入り、竜斗は一人で部屋イス座りながらあの事について悩んでいた。

すると、ドアからコンコンとノックする音が聞こえる。

エミリアだったらどうしようと緊張してドアを開けるとそこにはすでに私服に着替えていた愛美がムスッと不機嫌そうな顔をしていた。

 

「石川、アンタ今日ヒマ?」

 

「え……うん、ヒマだけど……」

 

「なら今からマナと一緒に付き合って」

 

「えっ?」

 

突然の誘い、竜斗は一瞬あの時の嫌な記憶が蘇り、たじろいでしまう。

 

「もうあんなことしないわよ。マナ買い物したいから付き合ってって言ってんの」

 

「つまり俺は持ち係ってこと?」

 

「そっ。今すぐ着替えてね、部屋で待ってるから」

 

彼女は一方的にそう伝えてスタスタと去っていった。

 


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