ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第十七話「地元帰り」②

……ここが自分が住んでいた所とは思えないほどに、殆どの建物が壊されて廃墟のような街。

だが空気を吸うとそこが確かに自分達が住んでいた場所だったと実感する。

すでに瓦礫などが片付けられており、景色が良くなりまるで地平線を見ているようだ――。

 

「……あの時の朝霞周辺みたいになってる」

 

「いやそれ以上だと思うよ……」

 

竜斗達はとりあえず、偶然近くに通りかかった人に尋ねる。聞くとどうやら、自分とエミリアが通っていた小学校付近に仮設住宅がすでに出来ており、そこに街の人々が集まっているらしく小学校も無事で体育館で寝泊まりしている人がまだいるようである。ここからだと歩いて四十分ほどだ。

「俺達の小学校かあ……卒業以来だから懐かしいよな」

 

「うん。リエとかみんな無事かな……っ」

 

二人で盛り上がる中、後ろでただ黙って歩く愛美。彼女だけが彼らとは違い、別の小学校出身であるため会話に入れない。

 

「ところでミズキってさ、どこの小中学校出身なの?」

 

「そういえば俺達全然知らないよな」

 

二人に聞かれ、彼女は誇らしげにこう答える。

 

「マナは城野よ」

 

「城野……って言えば確か県内でも有数の私立学校だよね、中学までエスカレーター式の」

 

「それに入学審査が結構厳しいトコって聞いた覚えがあるわ。ミズキって凄いとこに行ってたんだねっ」

愛美は気を良くして自慢げに話し出す。

 

「マナは小、中とも成績上位クラスだったのよ、スゴいでしょ!」

 

「そう言えば水樹のテスト成績って毎回学年でもかなり上位だったよな。

けど、それならなんで俺達と同じ高校に?あそこ偏差値は県内でも中間より少し下ぐらいだし。

俺は特にこれといったやりたい部活や学科はなかったし、何より家から近いっていう単純な理由で決めたんだ。

確かエミリアも俺と同じ理由じゃなかったっけ?」

 

「うん。アタシも英語と国語以外の成績は中間ぐらいであまり高望みは出来なかったし、なにより家庭科があるからね。それ以上にリュウトと一緒に行けたのがスゴく嬉しかった!」

 

「お、おいっ……けどエミリアの場合、英語のテスト受ける意味なんてあったのかな?」

 

「けどニアミスでの点引きはたまにあったね。

けどさ、ミズキなら偏差値高い高校にも行けたでしょ?なんで?」

 

エミリアの質問に、彼女はこう答える。

 

「オモテむきはパパやママの期待に応えるために勉強は真面目に頑張ってたけど、本当はマナも遊びたかったからね。だから勉強の楽なトコにしたの。

さすがに最初は「何考えてるんだ」って反対されたけどね。

高校決まった時から溜まりに溜まったフラストレーションを発散すべく遊びまくってたわ。中学二年からは親の前ではいい子にしてたけど、隠れて結構色んな男と付き合いまくった」

「「…………」」

 

「あそこ規律が厳しくてさ、色々やらかしてバレると退学は確実だから。けど卒業までバレなかったわ、ようは頭の使い方が重要ね」

 

確かに愛美は人間含めた周りの状況を把握する観察力に長けているし色んな意味で『賢い』。

要所要所でそんな面を垣間見せてきた。

それも生まれもった才能というべきか。

 

――くだらなくも三人で仲良く会話しながら歩く内に、彼らは小学校の近くまで迫っていた。前を見るとプレハブ方式の仮設住宅の密集している広場を見つける。

そこに向かうと結構な人が外で賑わっていた。

 

「あれっ……もしかして竜斗じゃね!?」

「あ、エミリアじゃん!!おーいっ!!」

 

数人の若い男女が竜斗とエミリアの名を呼びながら向かってくる。二人は彼らを見つけた瞬間、目を輝かせて笑顔で迎えた。彼らは二人の昔からの友人である。

 

「お前どこにいたんだよ竜斗!

もしかしたら死んだのかってみんな心配してたんだよ!」

 

「ごめんごめん、色々あってさ」

 

「あたし達物凄く心配してたんだよ!今まで何してたの!?」

 

「ごめんねっ、けどエリコもリエもみんな無事でよかった!」

 

互いに心配だった、それぞれの友達が無事に生きていることを実感し喜びあった。

 

「……竜斗?お前、前より身体つき良くなってない?もしかして鍛えてる?」

「え…………いやまあ……」

 

「ところで後ろのコって……?」

 

全員が愛美に注目する。

 

「水樹っていって高校の同級生だよ。訳あって今まで一緒に行動してたんだ」

 

「ふーん」

 

「なあ、ところで英司は?」

 

「そうそう、ミキとかはアイリとか他のみんなは今どこにいるの?」

 

 

それぞれ見当たらない友達について聞くと、みんなに笑顔がなくなりどこか気まずい空気に……。

 

「あれ……どうした?」

 

竜斗達は怪訝そうに伺う。すると、

 

「それが……あの怪物達の侵略の後、英司達の逃げ込んだはずのC地区のシェルターに行ってみたんだ。そしたらシェルターが壊されてて、しかも溶岩まみれになってて見る影もなかった……」

 

「まさか…………」

 

自分達が入ろうとしたが、メカザウルスに踏みつぶされた挙げ句にマグマによって溶かされたシェルターに彼の友達、英司がいたと聞かされる……。

 

「け、けどミキ達は?」

 

「……あたし、偶然あの恐竜みたいな怪物がたくさんの人々をカゴのような物につかみ入れて連れ去るトコを目撃したの……確か美紀と愛梨もいたと思う……けど、怖くて助けることなんて出来なかった……っ」

 

今まで戦っていた竜斗達ですら知らなかったその事実に驚愕する。

 

「メカザウルスが……なんで……?」

 

「……メカザウルス?」

 

「あ、いや……けど連れ去って一体何をするんだろ……」

「もしかしたら捕まえた人々はエサなんじゃないかなって……あれからもう何ヶ月も経つし、もう生きてる保証なんか……」

 

エミリアの友達の理枝は涙ぐんで話しているうちに伏せて大泣きしてしまう。エミリアはそんな彼女の頭を優しく撫でて慰めようとする。

 

「……なあ俊樹、俺とエミリアの親を見なかったか?」

 

「さあ……ここにいないし、全然見かけてないんだ」

 

「私達も知らない。死体で見つかったとも聞いてないし……」

 

……会話の後、竜斗達はとりあえず友達と別れて自分達の親を探す。その途中、

 

「マナはこれからパパ達と友達を探してくる、多分近くにいるハズだから。ここでお別れね」

 

「水樹……お前司令の言ってたの、どうするんだ?」

 

「…………」

 

愛美は二人から去っていった。

この周辺、そして避難所の小学校にいる、友達の親や知り合いと会って尋ねるも誰も知らないと言う。

そうしている内にもう一日が終わり、すでに夜になっていた――。

 

二人は体育館に泊めてもらうことになり、寝る場所を確保、配給された食事を取った後、校庭の隅にある、月明かりに照らされたブランコ場に二人は黄昏ていた。

 

「……俺、理枝の言葉が引っかかるんだ。『メカザウルスが街の人々を連れ去った』って」

 

「…………」

 

「もしかしたら父さんと母さん、お前のおじさんとおばさんはメカザウルスに連れ去られたんじゃないかなって……」

 

死体も発見されてなく、誰から聞いても行方がつかめない以上はその可能性が一番高い。

しばらくすると竜斗はブランコから降りて振り返る。

 

「……決めた。やっぱり俺、戻ってゲッターロボに乗る」

 

「リュウト……」

 

「じっといられないんだ。父さん達がいないのにただここでじっとしているなんて……それならまだゲッターロボで戦い続けていったらその途中でもしかしたら父さん達の行方が分かるかもしれないし、同時に世界を救うことにも、黒田一尉の無念も晴らせることになる。

それに、未だ体育館で不便に寝泊まりしている人達を見ると……一刻も早くなんとかしてあげたい気持ちが込みあがるんだ。

昔の俺なら多分ゲッターロボから降りてたけど今の俺なら頑張っていける気がするから――」

 

「……けどリュウト、司令の言ってた『全てを捨てる覚悟』になれる?それにお父さん達は生きてるかどうかもわかんないし、生きていたとしても会うまでに死ぬかもしれないんだよ?」

 

「その時は……俺もそこまでだったってことだよ。父さん達の安否についてどうなろうと、ただ今は行方を知りたい。

そう考えると今からでも向こうに戻りたくなる」

 

彼の決心を聞き、彼女は感心し驚く。

 

「リュウトはホント前と比べて強くなったね、凄く感心した。

じゃあ、アタシもリュウトについていく!」

「……エミリアこそそんな簡単に決めていいのかよ。

俺が行くからお前も来るとかそんな感じじゃないのか?」

 

「正直それもある。けどお父さん達がここにいないんじゃ毎日心配のしすぎで頭が狂うかもしれない。

それだったらゲッターロボに乗って戦っていったほうが気が晴れるし、リュウトの言うとおり、お父さん達やアイリ達の行方が分かるかもしれない。

最悪ワタシに何かあっても、きっとお父さんとお母さんはいいコトをしたって喜んでくれると思う。

あと、ゲッターロボに乗るって言い出したのは自分なんだから投げ出すようなことは絶対にしたくない!」

 

「…………」

「それに……アタシだってクロダ一尉の無念を晴らしたい!」

二人は互いに真剣な眼を見つめ合った。

 

「分かったよ……けどあいつらになんて言う?」

 

「……アタシは何も言わないで出て行く。別れの挨拶みたいになって気が重くなるから――」

 

「…………」

 

二人は残り二日間は悔いのないように友達と有意義に過ごし、その後は――と心に決めた。

 


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