ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第十五話「対馬海沖の決戦、後編」①

――海中。海上自衛隊仕様のBEETの兵装である、ホーネットガンから金属ワイヤーの大網を発射し、メカザウルスを見事に覆い捕縛、動けなくした後でもう一つの機能である高圧電流を流して感電死させる。

肩のキャノン砲から先の鋭いハープーンをメカザウルスの身体に打ち込み、捉えた所を魚雷を撃ち込み撃破させる。

 

だが水中特有の抵抗があるため動きが大幅に鈍る。

特にそれはBEETなどの人型の機体に顕れていた。

 

泳ぎに適した首長竜型メカザウルスの動きは軽快であり、次々とBEET、潜水艦に急接近し、その強力な牙を突き立てて噛みつき、マグマ、または溶解液を注入、鉄をも簡単に溶かす代物なのだから内部のパイロットはなすすべなく、

ドロドロにそしてグロテスクに機体共々溶かされていった――。

だがメカザウルスの猛攻をかいくぐり次々に海の底に沈めていく、BEETが存在した――そう、黒田の搭乗する機体だった。

 

まるでメカザウルスの行動を全て読んでいるかの如く、海中であるにも関わらず機敏であった。

突撃してくるメカザウルスを上手く避けて、続けてホーネットガンで捕縛、高圧電流を流し込み感電死させた。

 

一方で、マリアの乗るゲッターロボも奮闘していた。

 

(ターゲット・ロックオン……!)

 

モニターに移る前方先のメカザウルスに照準を合わせ、両肩の大砲の射角を合わせて、二発の大型ゲッターミサイルを発射。見事に命中、粉々にした。

 

“マリア助手、その調子です”

 

「あ、ありがとうございます……けどやっぱり私、マナミちゃんよりセンスがなくてうまく扱えられません……」

 

“いやいやそんな謙虚にならないでください。

……と、前方からメカザウルスがさらに来ます、注意してください!”

 

いくら倒しても次々に攻めてくるメカザウルスにそろそろ疲労と消耗が目に見えてくる頃である。

 

「残り弾薬とエネルギー量がキツくなってきた……こいつらの戦力はどれだけあるんだ?」

 

 

犠牲をいとわない人海戦術を繰り出す敵に苦渋の表情の黒田。

 

そして、多数のメカザウルスの後方からジュラ・ノービスも次々に魚雷を発射。

だが突然、艦首部の口部分が大きく開き、八つの巨大な牙が姿を現す。

 

「『セクペンセル・オーヴェ』射出準備完了。前方の敵部隊を捉えました」

 

「よし、メカザウルスを直ちに前方及び範囲内から退避させよ」

 

ジュラ・ノービスの前方に群がっていたメカザウルスが一斉に四方八方に散開し、離れる。

 

「『セクペンセル・オーヴェ』、射出せよ」

 

八つの大きな牙が同時に海中に飛び出し、まるで意志のあるかのように自ら抜け前へ広がり多機のBEETを囲み、陣形を組む。

するとその牙達がそれぞれ共鳴反応を起こし、光線で線をつなぎ箱型の包囲網……結界が作られ、半透明の赤色膜が全面に張られて機体が閉じ込められた。

「な、なんだこれは!?」

混乱する海自部隊。瞬間、ジュラ・ノービスの開いた口の中から巨大な円状の砲門が姿を著した――。

 

「『ヒュドゥン砲』発射スタンバイ――」

 

「撃て!」

 

放たれた極太の青白いレーザーのような光線は一瞬で結界に直撃した。

すると内部が真っ赤に染まり、何も見えなくなるが……、

 

「うわあっ、熱い、熱いィ!!!助けてくれえーーーーっ!!!」

 

通信から心が引き裂かれるような隊員の断末魔が聞こえるも数秒で通信が遮断された。

 

内部はようやく見えるようになるが、だがそこには囲まれたはずのBEETの姿が跡形もなかった。黒田達は絶句した。

「これは……っ」

 

マリアは感づいた。この放たれたレーザーのような光線が何なのか。

 

「もしかしてフォノンメーザー……?」

 

つまり超音波の波長を増幅し、一点集中で放射することでレーザー状となり熱を帯びる。

これがフォノンメーザーであり、特に水中において多大な威力を持つ兵器である。

 

マリアはすぐに通信で黒田や海中の部隊に警告する。

 

「各隊員に警告します。敵部隊の正面から離れて、そしてあの物体の形成したエリア内に絶対に入らないで下さい!」

 

“マリア助手、あの兵器は一体!?”

 

「……あれはおそらくフォノンメーザー砲。超音波をレーザー化した兵器です。そしてあの八つの牙のような物体は、先ほどのような結界エリアを作り、フォノンメーザーをエリア内全てに乱反射させるようです。

どのような原理か分かりませんが見る限り、エリア内は電子レンジ以上の効果を発揮するようです」

 

 

『セクペンセル・オーヴェ』

 

 

爬虫人類の言語で『鋭い牙を持つ守護者』という意味を持つ自律型支援兵器。

本艦の大口径フォノンメーザー砲『ヒュドゥン砲』の性能を増幅させる機能を持つ、第十三海竜中隊特有の兵器である――。

 

「さらに牙を展開し、この一帯全てを覆い尽くせ。次で敵機全てを粉々にしてくれる」

 

陣形を解除した牙達はさらに広がり始める。

「各隊員、あの八つの物体の破壊を最優先にしてください、おそらく今度は私達全員を囲むつもりです!」

 

急いで牙へ向けて魚雷を放つBEET、潜水艦。

だが牙達はそれを容易く回避する。本当に生きているようである。

マリアも機体をフル稼働させ牙を追いかけながらゲッターミサイルを放つも、ここは水中であるにも関わらず全く当たらず。そんな中、早乙女から通信が。

 

“大丈夫かマリア!”

 

「な、何とか――」

 

“こちらも問題が起きてな。

空戦型ゲッターロボの炉心が異常を起こして臨界点突破寸前になった。あの時みたいにな――”

 

「え、エミリアちゃんは無事なんですか!?」

 

“安心しろ、そうなる前に緊急停止させて私のようなことにはならなかった。

今急いで艦に戻してメンテナンスさせている――”

 

それを聞いてホッと安心した時、

 

「!?」

 

散っていた複数のメカザウルスがゲッターロボに狙いをつけて大口を開けて襲いかかってきた。

慌てたマリアは攻撃に移ろうとするも、メカザウルス達に先手を取られ何度も体当たりをかまされた。

その衝撃に当然、機体内部のコックピットは激しく揺れ、彼女は翻弄された。

一応バリアが張られていたため機体自体は損傷はないが、マリア自身はたまったものではなかった。

(う……気持ちワルく……っ)

 

だが、メカザウルス側はお構いなしに次々に突撃を繰り出しゲッターロボは身動き一つとれずにいた。

 

彼女自身も激しい振動で顔色が悪くなりついに……。

 

「うぅ……、げえ……っ!!」

 

極度の緊張と度重なる激しい揺れに翻弄されたせいで強烈な吐き気を催し、ヘルメットを着けたまま嘔吐してしまった――。

 

(だめよ……っ、ちゃんと気を持つの……!!)

 

すぐさまヘルメットを取り、汚れた口元を手で吹く。

すでに彼女の顔色は真っ青になっていた――。

 

こちらへ向かってきていた二機のメカザウルスにゲッターミサイルを撃ち込み、何とか撃破するも、次々に今度は四方からメカザウルスが次々に襲いかかってきた。

だがその横から魚雷を撃ち込まれ、爆発。

メカザウルス達は魚雷が来た方向へ視線を向けるとそこにはランチャーを構えた数機のBEETが。

 

「マリア助手!!」

黒田と海自隊員の混成チームであった。メカザウルスに彼らは魚雷を撃ち込み一機ずつ確実に沈めていく――。

ゲッターロボ付近のメカザウルス達を掃討し、ランチャーに魚雷を再装填し、すぐに彼女の元に駆けつける黒田。

 

「大丈夫ですか!?」

 

すぐにモニターで彼女の安否を確認するが、顔色が酷く悪いのがすぐにわかる。

 

“……だ、大丈夫です。メカザウルスに体当たり攻撃をされて少し気持ち悪くなっただけですから……っ”

「…………」

 

だが黒田はベルクラスの早乙女に通信をとった。

 

「一佐、マリア助手はもうこれ以上戦闘継続は危険です。

直ちに彼女を帰艦させてください、お願いします!」

 

“………………”

 

「マリア助手を死なせるわけにいきません、すぐに彼女を回収してください!」

 

そう嘆願する彼だが、マリアが通信を割り込む。

 

“……黒田一尉、私は大丈夫ですからこのまま戦闘を継続させてください”

 

「だ、大丈夫なわけないでしょう!」

 

“戦力を減らすわけにはいきません。私だってすでに覚悟はできてます――”

 

 

頑なに拒む彼女だが黒田は苦渋の表情を浮かべる。そして早乙女は。

 

“マリアはこれから黒田のいるチームと共に行動しろ、あまり離れるな”

 

「い、一佐!?」

 

彼は何一つ表情を変えずにそう言いきる。

 

「その方が遥かに勝算、なにより生存率も高くなる、わかるな」

 

“了解……!”

 

「黒田、そういうことだ。マリアを頼むぞ」

 

“ちょ、待ってください一佐!!”

 

早乙女は通信を切り――そして腕組みをして息を吐く。

 

「――水樹、入ってこい」

 

突然、そう言い上げると入口ドアが開き、そこにはオドオドとした愛美の姿が。

 

「マリアが心配になったか」

 

「…………」

 

「君でも人を心配するような気持ちがあるのか。それはそれで安心した」

 

すると――。

 

「……マリアさんは、大丈夫なんですか?」

 

「……いや、ヤバいらしい」

 

「!?」

 

「黒田に言われてモニターを見れば顔色が悪かった。彼女は戦闘を続行すると宣言したが、おそらくやせ我慢だろう」

 

「……じゃあ、なんで助けようとか何もしないんですか!?」

 

「彼女は戦力を減らしたくないからこのまま戦闘を継続すると答えたからな。

そう言うなら私は彼女の意思を優先にする、それだけだ」

 

愛美は呆然となる。

「ハア!?なんで助けようとしないの、続けるったってそんな状態じゃ余計に危険じゃない!」

 

「彼女が自ら戦闘を継続すると言った。 ならまだ彼女は大丈夫、やれるだろうと、私はそう解釈してる」

 

「マジ信じらんないんだけど……アンタは鬼か!」

 

「鬼ね……前にもエミリアにそう言われた。そうだ、私は確かに鬼だ。

それに水樹、君はもう関係のない人間だ。私のやり方に口出ししないでくれたまえ」

 

「なっ!」

 

「では君はどうしたいんだ?」

 

「ど、どうしたいって……」

 

「そうやって私にウダウダ言うくらいならなんで何もしない?

君はマリアが心配じゃないのか?」

 

「…………」

 

 

 

「君がそこまでマリアを心配するのかそこまでは分からんが、彼女を助けたい気持ちがあるんならするべき事はあるだろう――もっとも君のような甘えとワガママの、ガキ同然の人間に行動に移す意思と性根がないのだろうが!」

 

「~~~~~~っ!!」

 

――牙の追撃を続けるBEET部隊。

途中でメカザウルスの妨害に遭うも、連携を取り一機ずつ確実に破壊していく。

マリアと黒田のいるチームへメカザウルスの大群が襲いかかってきたがゲッターロボが前に出る。

 

「ここは私が引き受けます!一尉達は引き続き、あの物体の追撃を!」

 

「マリア助手、無茶です!」

 

「ゲッターロボにはまだシールドがあります。大丈夫です!!」

 

「…………!」

 

自ら盾になるゲッターロボ。照準をメカザウルスに合わせ、各武装を展開――各発射口からミサイルが飛び出し、全て命中し撃破する。

だがさらに別のメカザウルス達が後ろから次々に現れゲッターロボへ突撃。

ミサイル攻撃の次弾が追いつかずに先ほどと同じく体当たりを受けて翻弄される。

だがそれだけで飽きたらず、今度はジュラ・ノービスからの魚雷が飛来し、無防備となったゲッターロボに命中し、大爆発。

 

「キャアアアアッ!!」

 

彼女は頭の後部を強くぶつけ、脳震盪を起こし気絶してしまった。

 

「マリア助手!!」

 

黒田はとっさに彼女を助けようと戻りかけるがメカザウルスがそれを阻止するかのように立ちはだかる。

 

「くそおっ!!」

 

だがそうしている間に牙達は一気に包囲網の範囲を拡大させていく。

このままではゲッターロボと黒田、そして海自の部隊全員が海の藻屑と化してしまうのを待つだけであった――。

 


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