ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第十四話「対馬海沖の決戦、前編」①

――朝九時前、ベルクラスでは今日もいつも通りに竜斗達の訓練が始まろとしていた……のだが、

 

「あれ、水樹は?」

「そういえば……朝から全く見てないわ」

 

午前中は戦術論講座で室内では竜斗とエミリアはすでに準備を整えており、講師の早乙女もスタンバイ出来ている。だが愛美の姿はなかった。

 

「ちょっとあいつの部屋を見てきます」

 

「頼む。もしかしたらドアロックしてあるかもしれん。その時はこのマスターキーを使え」

 

早乙女からマスターキーを借りて竜斗はすぐさま彼女の部屋へ向かう。扉に立つがドアが開かない。

「……まさか」

マスターキーでロックを解除し、彼女の部屋へ踏み込んだ。

 

「やっぱり……」

 

彼女はベッドでいい気にスヤスヤ寝ていた。だが彼はすぐにこの部屋の周りを見て唖然となる。

 

……彼女の好きなピンクや黒色などのソファーやデスク、本棚、タンス、なんとベッドの掛け布団も自分色に染め上げて、この自衛隊内とは思えない場違いなインテリアばかり置かれている。

そして床にはなんとふわふわの絨毯が敷かれており、外とここは見事に隔離された別空間で言うなれば『メルヘン』である。

確かに早乙女は別にインテリアに制限をかけてないが、完全に部屋を私物化している証拠だ。

 

(ぬいぐるみもたくさんあるけど……てかマムチューばっかじゃん)

 

彼の言うマムチューとは、大小問わず部屋の至るところに置かれているぬいぐるみである。

その丸っこいタヌキか何かの小動物の体につぶらな瞳、そして悪魔なのかコウモリの羽根をはやしたその愛くるしいデザインは幅広い世代で愛されている国民的キャラクターの一つである。

かわいいもの好きな愛美はそのマムチューがお気に入りなのか、手乗りサイズからビッグサイズのぬいぐるみまでそろっている具合だ。

 

……と、見とれている場合じゃなく彼女を強く揺さぶる。

 

「水樹、起きろよ!」

 

「う……うん……?」

 

 

 

眠たそうな声を出し、目をこすって起き上がる。

 

「……なんで石川がマナの部屋にいんのよ……」

 

「……というか水樹、今何時かわかる?」

 

彼女はスマホの画面を見る。じっと見つめ……しかしまたゴロンと寝転ぶ。

 

「なあ、俺達はともかく司令も待ってるんだよ!」

 

「んふう……もうこんな時間なの……?

起きればいいんでしょ起きれば……」

 

ピンク色の可愛らしいパジャマを着た彼女は大きなあくびをしてやっと起き上がる。

 

「昨日何時に寝たんだよ?」

 

「……朝4時」

 

「…………」

 

休日でもじゃないのに呆れて何も言えない竜斗。

 

「……今から準備するから早く出ていって。早乙女さんに準備してるっていっといて」

 

……竜斗は座学室に戻り、彼女の言った通りの事を早乙女に伝える。

 

「なら君達だけでも先に進めるか」

 

そして講座が始まるも、十分、二十分、三十分……全然こない……そして一時間後、ようやく姿を現す愛美。

 

「おはよう水樹」

 

「……おはようございます」

 

「重役出勤とは感心しないな」

 

「……すいません。女の子は身だしなみとか色々と準備がかかるもんで」

 

「そうか、なら早く座れ。講座を再開する」

 

彼女は二人とは一席空けて座り、やっと三人揃っての講義が始まった。

……寝坊で遅刻してきたにも関わらずあくびをしやる気なさそうな、反省してなさそうな顔の愛美。実に超がつくほどのマイペースっぷりである。

 

……栃木での戦闘から約一ヶ月後。

ゲッターロボの修理は三機とも完了し、いつでも出撃できるようになっていた。

そしてなんといっても、今日は三人が一番楽しみとしている……そう、給料日である。

 

昼休み、制服に着替えた竜斗達は駐屯地内のATMから給料の引き卸しに来ていた。

 

「給料入ったことだし何を買おうかな……?」

「アタシは街で欲しいミシンを見つけたから買おうかな。

久しぶりにぬいぐるみを作りたいし、あとリュウトの制服とか服が破れたら直してあげる」

 

 

「お、ありがとう」

 

 

エミリアは、料理はおろか裁縫、洗濯、掃除などの家事全般をこなせる人間であり、料理や裁縫が趣味であるという本来は家庭的な女性である。

共働きの両親のこともあり、小学校高学年からはもう一人で大体はこなしており、腕前も竜斗から高い評価をもらっている程だ。

 

「そういえば水樹の部屋が凄まじいことになってたんだけど……見た?」

 

「知らない、どんなの?」

 

彼は見た通りのことを彼女に話す。

 

「ワォ……一回、見てみたいけどアタシ達仲悪いし見させてもらえないだろうなあ……」

 

おそらくあれらは初給料で買い揃えたのだろうが早乙女やマリア、そして黒田が見たらどう感じるのだろうか――。

 

……夜九時。駐屯地の黒田が所属する連隊舎の一室で、早乙女と黒田は竜斗達について会話をしていた。

 

「竜斗は大したパイロットですね、BEETに乗せても十分やっていけるレベルになってます」

 

「流石は竜斗だな。エミリアと水樹は?」

 

「……厳しいです。BEETの制御系はゲッターロボとは別物ですからね。

証拠に彼女達を試しに座らせたんですが殆ど理解できなくて悲鳴あげてましたね……」

 

「では、彼女達はゲッターロボ専門にした方がいいな」

 

……黒田は話題を変えて、早乙女にこう話した。

 

「一佐、聞きたいことがあるんです」

 

「どうした?」

 

「もし三人共ゲッターロボから降りたいと言い出したらどうしますか?」

 

「…………」

 

「……個人的に、やはり竜斗達に無理やり強いているようにしか感じません。

水樹に至ってはいつもの態度からそう感じるのは明白でしょう」

 

今まで思ってきたことを伝える黒田に早乙女は腕組みをして黙ったままだ。

 

「やはりゲッターロボは自分達軍人が乗るべきなのでは――」

 

「…………」

 

「僕や一佐のように正規の自衛官は国防が主だけど、自ら志願した軍人です。

だからSMBに搭乗して戦い、死ぬ時の覚悟はすでに出来ています。

しかし彼らはほぼ強引的にパイロットになって、まだあまり社会を知らない歳です。そんな子達の未来を奪うようなことをしてもいいのでしょうか?」

 

「――では黒田、もし君が彼らと同じ立場だったらどうする。正直に答えたまえ」

 

「……はっきりいってイヤです、強要して来るなら訴えたことでしょう」

 

「ああ、そうだな。私は訴えられても仕方ないことをしてる。

だが、彼らに強制させたが今までに降りたい、辞めたいとも一言も聞いていない。君はどうだ?」

 

「いえ……っ、でもなかなか口から言えないだけでは?」

 

「いや、彼らは現時点ではまだ乗る気はあると、私はそう思っている」

「ではもしも彼らが本気で降りたい、辞めたいと言ってきたらどうします?」

 

「その時はもうどうしようもないな、やめさせるしかないだろう。

だが心配はいらない、彼らは絶対にリタイアしないよ」

 

「その根拠は?」

 

「私お得意の『勘』だよ、ククク」

 

不敵な笑みを浮かべる彼に黒田は苦笑い。

 

「……一佐ってやっぱり不思議ですね、何考えてるか分かりません」

 

「当たり前だ、私を理解されてたまるかってな」

 

「…………」

 

この男、早乙女を攻略する人間は誰一人ともいないだろうと彼はそう考えた。

「――そういえばマリア助手って彼らについてどう思っているんですか?」

 

「はっきり言って君と同意見だ。今でも彼らを乗せることに快く思ってないよ。彼女は私と違って常識人で優しいからな」

 

「そうですね。なんか母性に溢れているっていうか包容力があるっていうか……母みたいですもんね」

 

「ん?もしかして黒田はマリアが好きなのか?君にはもう婚約者がいるだろ?」

 

「い、いや、そういうつもりでは!けどなんか心配で……」

 

「心配?」

 

「マリア助手を見てると、あんな華奢な身体でいつも激務に追われてるのに、キツいとか全然弱音を吐かないじゃないですか。大丈夫なんですか?」

「だからこそ私はマリアを助手にした。

口うるさいけど何でもこなす才女だからな。他の人間ではとっくの間に耐えきれなくてやめるか逃げている。

だが私はそんな彼女を人一倍信頼しているし、心配している」

 

早乙女の彼女に対する心情に黒田は、感慨深くなる。

 

――次の日の午前中、いつも通り三人は黒田の操縦訓練を受けていた。が、

 

“黒田一尉、訓練は中止だ。すぐに竜斗達と共にベルクラスの司令室に来い”

 

突然の早乙女からの放送と共にサイレンが甲高く鳴り響く。

またメカザウルスが現れた、竜斗達三人はとっさに理解する。四人は急いで司令室に戻ると、早乙女とマリアがすでに待っていた。

「どうしましたか?」

 

「対馬海沖に大量のメカザウルスが出現した。すでに空、海自の部隊が交戦しているが劣勢のようだ。

我々ゲッターチームの出動となる」

 

「了解!」

 

「それで三人共、今回は初の海上戦闘だ。竜斗と水樹の機体はいいが、エミリアは……」

 

「あっ!」

 

陸戦型ゲッターロボはその特性上、海上戦闘はできない。

つまり、エミリアは参加できずに余ることに。

 

「ならエミリアはどうするんですか?」

 

「そこでエミリアに聞きたい、君は戦闘に参加したいか?」

 

早乙女にそう言われ彼女は迷いなく、

「はい!リュウトとミズキが必死で戦うなかでアタシだけ安全にここにいるのは絶対にイヤです!」

 

 

「君は偉いな。よし、ではそこで竜斗に頼みがある」

 

「何でしょうか?」

 

「今回、君にBEETに搭乗してもらいたい。空戦型ゲッターロボはエミリアに搭乗してもらう、いいか?」

 

竜斗は初のBEETのパイロットとしての実戦に不安が広がる。

 

「りょ、了解!」

 

「なあに心配するな、今回も私が君をサポートするから安心しろ。

黒田はAタイプで水樹と共に行動、海自部隊と協力してくれ。

竜斗はSタイプかAタイプ、つまり空戦仕様か海戦仕様のどちらにするか?」

 

「うーん……エミリアが心配だし、均等に分かれた方がいいからSタイプで」

 

「分かった。ではエミリアと竜斗は互いに連携を取りながら空自と協力して空中のメカザウルスを一掃してくれ。

そして水樹と黒田は海中のメカザウルスを頼む」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

 

突然、愛美が割り込んでくる。

 

「マナもそれに乗りたかったのにエミリアだけ卑怯よ!」

 

ここにきてくだらないワガママを言い出し、皆は狼狽する。

 

「お、おい、こんな時にワガママ言うなよ」

 

「うるさい!そもそも石川、あんたはいつもエミリアとくっつきしすぎ。

何時でも一緒にいなきゃならないわけ?」

 

「いや、そういうワケじゃ……だってエミリアだけ一人にするのはあまりにも危ないし」

 

「そうやってすぐ言い訳するんだから。マナから見ればアンタは結局この子ばかり見て贔屓してるようにしか見えないの。

マナがむかつくのはそこよ!」

 

しかしエミリアもついに頭に来てしまい、

 

「リュウトはアタシ達チームを守るために一番苦労してんのよ。

それなのにアンタはこんな時になってなんで自己中なことばかり言うの?ふざけるのもいい加減にしてよ!」

 

「は?普段でも二人はイチャイチャばかりでマナと壁作ってるじゃない、それで何がチームよ。

 

黒田さんだって石川達ばかりと絡んでさ、全然マナを見てくれないじゃない。

エミリアが前にマナに対して差別してるって言ってたけどこれも立派な差別じゃん!!」

 

 

 

竜斗、黒田、エミリアはその言葉にショックを受けて落ち込んでしまった。

 

「マナミちゃんもうやめなさい、黒田一尉に失礼よ!

竜斗君達にも可哀想じゃないの!」

 

「ホラ、そうやってマナばかり悪者扱いするのね!

だったらマナはもうやめる、戦わない!!

そうやって仲のいいあんた達だけで仲良く勝手に戦ってればいいじゃない!!」

 

そう言い捨てて愛美は部屋から飛び出していった。

 

「マナミちゃん!!」

 

マリアは慌てて彼女を追いかけようとするが、早乙女に止められる。

 

「水樹は私に任せろ。マリアはここで待機、そして黒田達に出撃準備させておいてくれ」

 

「司令!」

 

「元はいえば私が彼女を強引にパイロットにしたんだからな。なら責任をとるのも私だ」

 

早乙女も部屋を出て行き、残された四人は茫然自失していたが、

 

「全員、今はとりあえず格納庫へ待機!いつでも搭乗できるようにして」

 

「は、はい!二人とも行くぞ!」

 

マリアの指示を受けて黒田達は急いで格納庫へ向かって駆け出す。その途中……。

 

「……なあ二人共。よく考えたら俺達は水樹と正面から向き合わなかったんじゃないかな。

俺も水樹が苦手と言ったが、それは彼女を避けてる意味もあったんだと思うんだ」

 

「「…………」」

 

「水樹も水樹で悪いところはたくさんある。

だけどこんなことになったのは俺を含めた君達チームとしての自覚が足りなかったんだよ、きっと」

黒田の言葉は、二人の心にズシンと重みとして沈んだ。

そして早乙女は出て行った愛美の後を追い、そして追いつく。

 

「水樹!」

 

「…………」

 

二人はその場で立ち止まる。だが彼女は振り向かず身体を震わせていた。

早乙女は彼女の気持ちを察して頭を優しく撫でる。

 

「無理してるな。ホントはここから降りたくてしょうがないんだろ」

 

「…………」

 

「本来、君はこの自衛隊という規律の厳しい場所には合わないもんな。そんな君を無理じしている私が悪いな」

 

まだ黙り込む愛美に彼はついにこう切り出した。

 

「よし。では君をゲッターチームから外す。この戦闘が無事終わったら君を地元まで送ってやろう。部屋で待機してなさい」

 

「えっ……?」

 

すると早乙女は通信機を取り出してマリアに連絡する。

 

「よく聞いてくれマリア。水樹をチームから除外する。

今作戦だけ海戦型ゲッターロボは君が操縦してくれ。

ベルクラスは私が全て担当する。いいな」

 

マリアはそれを聞いて一瞬たじろいでしまう。

 

“りょ、了解しました……直ちに格納庫へ向かいます”

 

「ああっ、格納庫に着いたら黒田達に説明し、そしてパイロットスーツに着替えて機体に搭乗してくれ」

 

通信を切ると、愛美は彼にこう聞いた。

 

「ま、マリアさんがマナの機体に……?だ、大丈夫なんですか?」

 

「ああ、彼女は元々開発スタッフだがゲッターロボのテストパイロットも兼ねていた。

だから一応操縦はできる。だが正直な話、君より操縦は遥かに下手だ。

私はとある事故でゲッターロボの操縦に耐えられない身体になっている。しかし戦力を減らせない現状況で、操縦できる彼女が適任ということだ」

 

「…………」

 

「海戦型ゲッターロボは本来、三機の中では一番操縦が難しい。

制御系と火器管制の操作レバーがそれぞれ個別に別れているのは知ってるだろう。

はっきり言って竜斗はともかくエミリアでは到底扱えられない。

マリアでさえ苦戦していた機体を君は多少の訓練だけでいとも簡単に乗りこなせるとは私でも思わなかった。

だからこそ私は君を必要とし、手放したくなかった。君の力があれば絶対に恐竜帝国から世界を救えると。

だが君が降りたいのならもはやそれも意味はない。そうなれば今はただ、現チームメンバーでの運用を考えることだ」

 

早乙女は艦ブリッジへ行こうとするが彼女はまたも引き止める。

 

「じゃあ下手をすればマリアさんは……」

 

彼女は気づいた。それでは彼女が戦死する可能性は自分より高くなってしまうことに。

 

「その時は、君の本望を叶えた結果になったというだけだ。だが君にはなんの罪はない、それはマリアでも承知している。安心しなさい――」

 

 

 

早乙女は去っていく。

だが愛美の顔は凄く不安げと後悔に満ちた、いつもの彼女らしくない表情だ。

 

『なにか取り返しのつかないことをしたのかもしれない……』

 

そればかり考えていた――。

 

格納庫では先ほど着いたマリアから説明を受けて、当然の如く三人は仰天した。

 

「早乙女司令はゲッターロボに乗れない、だけど今戦闘は海戦型ゲッターロボが必要不可欠。

マナミちゃんが抜けた今、私が乗るしかないの。

大丈夫、マナミちゃんより操縦は下手だけど何とかやってみるわ。

黒田一尉、あなたの足手まといにならないよう頑張りますのでよろしくお願いします」

 

「マリア助手……いえ、僕からの方こそよろしくお願いします」

 

「私達は心配ないから竜斗君とエミリアちゃんは思う存分やりなさい。

けど危ないと思ったらすぐ近くの部隊かベルクラスに援護してもらうこと、いい?」

 

「マリアさん……」

「あと……マナミちゃんを責めないであげてね――」

 

……そして彼女はパイロットスーツに着替え、海戦型ゲッターロボのコックピットに乗り込んだ

 

(これに乗るのも久しぶりね、よろしく頼むわ)

 

テストパイロットだったこともあり手慣れた手つきでコンピューターを動かしてシステムを起動させるマリア。

コックピット内がライトアップした時、同時に早乙女から通信が入る。

 

“マリア、いけるか?”

 

「はい、いつでも出撃できます」

 

“すまないなマリア、できることなら死ぬなよ”

 

「心配ありがとうございます。大丈夫です」

 

そして他、各機体に乗り込んだ竜斗達。

“上手く起動できたか竜斗?”

 

「はい」

 

“よし。操縦については今まで教えた通りに。君ならBEETでも十分やってけるよ”

 

今回、初のBEETに乗り込む竜斗は緊張しつつも落ち着いてシステム起動させ、レバーに握りしめる。

と、今度はエミリアから通信が。

 

“……リュウトごめんね、アタシのために機体を変えちゃって……”

 

「気にしないで。それよりエミリアの方は大丈夫?」

 

“ええ、アタシの機体とほぼ同じだから大丈夫。足手まといにならないように頑張るわ……リュウト?”

 

竜斗の表情は浮かない。

 

 

 

「ねえ、水樹について本当にこれでよかったのかな?」

 

“…………”

 

“…………”

 

それについてエミリアと黒田は黙り込んでしまう。

 

 

 

「なんか気分が悪いよ。ここに向かう途中に黒田一尉の言ったことはまさにその通りだと思う。

だからこそ、こんな結末でいいのかなって……」

 

彼らの心は割り切れず、もやついていた。

 

“おい、出撃前だと言うのに暗い話をするな”

 

三人の元に早乙女からの叱咤が通信が入る。

 

“今からベルクラスを発進し、すぐに交戦区域に向かう。

その話はもうやめて今は戦闘に勝つことだけを考えろ。

ここで死んだら元も子もないだろ。今から気合いを入れていけ!”

 

「「「はい!」」」

 

早乙女の言葉に気持ちを無理やり入れ替える三人。

 

……そしてついに駐屯地の地下から満を喫して発進し、大空へ飛翔したベルクラスはその凄まじい推進力を持って対馬沖へ全速力で向かっていった。


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