ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第十二話「それぞれの価値観」②

……次の日の午前中。ベルクラス、司令室では早乙女はモニターに映る、軍上層部の人物と会話をしていた。彼は全自衛隊の最高位に立つ統合幕僚長の入江だ。

 

“……分かった。作戦決行日の決まり次第もう一度連絡してくれ、北海道の全師団に君達を受け入れる用意をしておく”

 

「ありがとうございます、幕僚長」

 

“……大雪山か。そこに日本でのヤツらの本拠地があるということか”

 

「まだ断定したワケでは。ただ、様々な情報からそこに特定しただけです。

しかし、ほぼ確実と言ってもいいでしょう」

 

入江はかけていたメガネを外して、レンズを拭き始める。

 

“……ゲッター計画(プロジェクト)。これまでの成果はすでに聞いているよ。防衛省を通じて政府に無理を言って資金を出させたのが間違いではなかったな、おかげで私まで変な疑惑が立てられたが”

 

「………………」

 

“ただし、この計画に援助できる余裕はもうないということは分かってほしい。

国家予算から、他に対してはギリギリに割いてまで君の計画に費やしたのだからな――これ以上は借金大国の日本がさらに借金をしてしまう”

 

「何が言いたいのですか、幕僚長」

 

途端に早乙女の顔は険しくなった。

 

「確か幕僚長はこうおっしゃいましたよね、援助は惜しみなくすると。

今更そんな愚痴をこぼされても困りますね。

これも人類存亡に関わること、多少の出費に惜しんでどうします?」

 

“……悪かった。私は君を信用している、出なきゃ君の計画に賛同して資金を出すよう政府に促さなかった……ただな――”

 

「ただ?」

 

“……政府、軍上層部の大半の人間は君を快く思っておらん。君の性格、行動、そして君の計画に不信、不満を募らせている。

計画についての予算についても納得しない人間がほとんどだ。『なぜこんなワケの分からない計画に貴重な予算を割かなければならんのだ』とな。

それゆえ、君の身に何が起こるか分からん。ゲッター計画を機密にしたのは敵味方問わず、君の安全、そして計画を邪魔させないことが理由の一つだ”

「………………」

 

“特に、吉野官房長官と側近辺りは君をマークしているとの話だ。

気をつけろ、どんな権限を使ってくるかわからん”

 

「ほお、官房長官殿も私に興味をお持ちでしたか、それは光栄ですね」

 

“……私は君のようなそんな冗談を言ってのける軍人はいてもいいと思っている。

思考が柔軟で且つ個性的で行動力がある、何よりも君にはいい意味で『大それたこと』をやってくれる魅力がある。

しかし周りは頭の考えが古い人間ばかりだからな、受け入れられないのだろう。”

 

「……お気遣いまことにありがとうございます。

まあ、自分の周囲の評価はすでに分かっています。だが私は、こう見えても人類愛に溢れた人間です――」

 

“しかし一佐、下手をすれば本当に消されるかもしれんぞ?”

 

 

「私は危険を省みず自分を貫き通す人間です。そしてその妨害になるモノはいかなる手段をもってしても排除します。

軽蔑、中傷、妨害……私はそういうのは基本的に無視しますが度が過ぎる場合は――私は決して容赦しません。たとえ、それが国家であってもです」

 

“おい……本気でそう言っているのか?”

 

「本気以外に何がありますか?幕僚長、あなたも私の性格を十分理解しているはずです」

 

彼は目を瞑るも、微笑しだした。

 

“……さすがは私の見込んだ男だ、全く恐れてない。君だけは敵に回したくないよ。

心配するな、私は君を裏切らん。援助については今まで通り私が何とかしてやるから”

 

早乙女から険が取れていつもの平常の表情に戻る。

 

「正直、私もあなたのご協力がなければここまで来ることは出来ませんでした。心から感謝をしております、そして先ほどの失礼に対してお詫び申し上げます」

 

“気にするな。私も君を嫌う政府役員を徹底的に監視するが君も周囲の人間に気をつけろよ。何か起こってからでは遅いんだからな”

 

「承知しております。それに自分の身は自分で守れないようではこれから先、恐竜帝国とは戦っていけませんよ」

 

 

“ふっ、どうやら君を心配する必要がないようだな。それでは――”

 

 

通信が切れて、画面が暗くなる。

早乙女は机に手を置いて一息ついたのだった――。

 

……午後。作業服に着替えた竜斗達は早乙女とマリアの元で、ゲッターロボ、SMBの構造、及び簡単な整備の教習を受けていた。

楽々と理解し作業がはかどる竜斗、苦戦するも必死でついていくエミリア、そして後ろでつまらなそうに眺めているだけの愛美――二時間後。

 

「よし、二十分休憩しようか」

 

早乙女からそう言われ、近くのベンチに一人ドサッと座り込む愛美。退屈からか大きな欠伸をする。

「……………」

 

ベンチで一人、ボーッとしている時、

 

「マナミちゃん、疲れたでしょ。はい」

マリアが笑顔で、キレイなタオルを差し出した。それを無言で受け取る愛美。

 

「おとなり、よろしいかしら?」

 

「……どうぞ」

 

そしてマリアも隣に座る。

 

「……マナミちゃん、この今の生活は慣れたの?」

 

「………………」

 

優しい声でそう尋ねられるも無言である。すると。

 

「ねえマナミちゃん?」

 

「……はい?」

 

「あなたっていつも、どういう学校生活を送ってたのかしら?」

 

「……どうしたんですかいきなり?」

 

「なんか気になっちゃってね。言いたくないのなら構わないわ」

 

すると、

 

「マナは……学校でクラスのたくさんの友達と教室でおしゃべりしてた。

テレビ番組のこととか週末の予定、服とかコスメの話とか、あとよくみんなで自分のカレシの自慢話をしてた。

学校が終わったら知り合いの車を乗り回して街で夜遅くまでカラオケとかファミレスで雑談したりとか――」

 

うって変わりペラペラと楽しく語りに語る彼女。

 

「あとね、クラスみんなマナに優しいの、なんか愛されてるってカンジ。

七夕の時なんか、織り姫とかけて「マナヒメ」と呼ばれたりね――」

 

「マナミちゃんってすごく人気者だったのね、羨ましいわ。ねえもしよかったら今度、あたしにも何かいい服とか化粧品教えてくれないかしら?」

「いいですよ、マナに任せといて!」

 

教習中のやる気なさそうな態度と違い、ハツラツとして満面の笑みで楽しいトークを交わす愛美、そしてマリア。

 

「マリアさんはマナと同じくらいの時はどうだったの?」

 

「えっ、聞きたいの?つまらなくなるかもしれないけど」

 

「うん!」

 

マリアは何故か照れくさそうな顔をとる。

 

「私の父は職業軍人、母は看護婦でね。幼い頃から結構厳しい教育を受けてたの。

礼儀、勉強、スポーツ、家事とか全部叩き込まれたわ。

親の期待に応えるために学生時代は真面目で勉強ばかりしてた――だからあなたがスクールライフを楽しんでいたことを聞くと羨ましいって――」

「へえっ。カレシとかいたんですか?」

 

「……いたけどある日、些細なことで大ケンカしちゃったの。

実は父から護身術も習っていて、彼氏が手を出してきたからムカってきてね、逆に彼氏をコテンパンにのしちゃったのよね……」

 

「え…………」

 

「結局それで別れるハメになって……それから私は反省したわ。本当の危険じゃない限りはもう手を出さないってね」

 

普段はまるで穏やかな彼女にこんな一面があったと知る愛美はふと、前に用具室で自分とエミリアがケンカした時に彼女はキレて怒号を張り上げていたの思い出すが、あの時、マリアにそれ以上の一線を踏み込まなくてよかったと思い知る。

 

「ところで初体験とかどうでしたか?気持ちよかったですか?」

 

「えっ………………初体験……」

 

恥じらいもなく『アレ』について尋ねてくる愛美。当然、マリアは戸惑い赤面するも、

 

「……初めては怖くて痛かったけど覚悟はしてたし相手が優しくしてくれたから自然に慣れた。絶頂は『スゴく幸せな気分』だったわね」

 

「そうなんだ。マナの場合は別に痛くなかった。むしろスゴく気持ちよくてすぐイった」

 

彼女は生まれつきそういう体質なのだろう。好きなのも頷ける。

 

「ここだけの話、最初は痛くて『早く終わってーーっ!』って何度も思ったけどね――」

「昔付き合ってたとあるヤツなんか『ゴムつけて』って言ったのに守らずに生のままヤろうとしたバカがいたの――凄くムカついたわ!」

 

「わかる、そういう無責任なセックスはやめてほしいわよね、私なら絶対に相手を拒否するわ――」

 

恐らく男性陣にはとてもではなく入り込める余地がない、思い切った下ネタ話で盛り上がる二人……。

愛美もそうだが、そしてこんなきわどい話に合わせてくれるマリアも本当に大した女性である。そして意外とノリノリであることも驚きだ。

「マリアさんっていつも早乙女さんと一緒にいるイメージありますけど、そんな関係にならないんですか?」

 

「司令はもうそういうのは興味ないって前言ったわね。外食とかは誘われても肉体的には全然ないわね」

 

「へえ。マリアさんは綺麗な人なのに手ぇ出してないなんてね、意外だわ」

 

「マナミちゃんはもしかしてそういうの期待してた?」

 

「だって面白いじゃない。『職場内の危険な恋』的な」

 

「…………」

 

雑談に盛り上がる最中、マリアはふと、こう切り出した。

 

「……マナミちゃんってやっぱり前の生活に戻りたい?」

 

「………………」

 

再び落ち込んだように俯く愛美にマリアが優しく肩に手を置いた。

 

「無理しなくてもいいの。もしイヤならはっきり言っていいのよ」

 

「マナ――」

 

これはチャンスだ。彼女に『うん』と言えばきっと何とかしてくれる。愛美は期待を込めて言おうとした――。

 

「水樹、マリアさん、はいジュース。早乙女司令のオゴリだよ」

 

「えっ……?」

 

タイミングが良いのか悪いのか、竜斗がペットボトルのジュースを二人に差し出した。

 

「あら、ありがとう。ほらマナミちゃんもどうぞ」

 

「あ、ありがとう……」

 

すると竜斗は愛美に対して唖然とした表情になる。

 

「なによ」

 

「いや……あの水樹がありがとうって言うなんて……っ」

 

「なによ、マナだってそれぐらい言えるわよ!!

それに勘違いしないでよね、あんたに言ってるんじゃないわ、早乙女さんに言ってるんだから……」

何故か、所謂『ツンデレ』のような言い方をする彼女に竜斗は可笑しくなり笑ってしまう。

 

「石川……あんたまたマナにいじめられたいみたいね?」

 

「ちょっ!!分かったからやめてくれよ!!」

 

……最初と比べて二人の人間関係が良くなってきている気がする。そう感じたマリアは感心し、まるで母のような穏やかな笑みを見せた。

 

 

――夕方。夕飯を終えた竜斗は部屋で休憩していると、ドアからノックする音が聞こえた。

出ると、そこには私服姿の黒田が立っていた。

 

「黒田一尉、どうしましたか?」

 

「今から俺と外出しないか?」

 

「えっ?」

突然の誘いに驚く竜斗だが、

 

「一佐に言って外出許可証をすでにもらってある。もしよければ」

 

「エミリアと水樹はどうしますか?」

 

「いや君だけだ。一度男同士でドライブしようかなって。別に変な意味はないから」

 

「よ、喜んで。今すぐ着替えます!!」

「焦らなくてもいいよ。俺は今から車取ってくるから地上の地下エレベーター入り口で待ち合わせしよう」

 

黒田と別れた竜斗は支度しすぐさま言われた場所へ向かった。

出入り口ドアを出て一分過ぎ、薄暗い道路の前から白く大きい乗用車が向かってくる。

ライトを点滅させているのを見るとこれが黒田の車のようだ。

すぐに助手席側に行くと窓が開き、やはり黒田が運転していた。

 

「お待たせ。助手席に座って」

 

「はい、お願いします」

 

乗り込むと黒田はポケットから外出許可証を取り出し彼に渡した。

 

「では行きますか」

駐屯地の門に行き、竜斗は外出許可証を見せて、黒田は手帳を見せると出発した。

 

「さあてと……竜斗、どうした?」

 

「あ、いや……」

 

見ると遠慮しているのかこぢんまりしているように見える。

「そんな気を使わなくていいよ」

 

「……はい。けど黒田一尉っていい車乗ってるんですね、この中もスゴいですし」

 

いい匂いのする芳香剤、綺麗に整頓されていて、所々に宝石のように青く光るLEDライトや追加モニターなどの様々な用品を見ると、凝っていることがわかる。

 

「いやあローンで買ったし追加オプションとかでもう借金だらけだよ」

 

「いくらしたんですか?」

 

「えっと……新品で買ったしオプション含めると六百万ぐらいかな?」

 

「六百万……」

 

大金だが1000万とかよりもなんとなく現実味のある金額である。

 

「もう夕ご飯は食べた?」

 

「はい、黒田一尉は?」

 

「いや、まだだけどハンバーガーか何か買うよ。

ところで竜斗、外に出たら一尉はつけなくていいよ。外に出たら俺も一般人だ

 

「あ……なら黒田『さん』で」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

……そして近くに立ち寄ったファーストフード店に立ち寄り、ドライブスルーでそれぞれハンバーガーセット、ジュースを買う黒田と竜斗。

 

「これもドライブの醍醐味」

 

「そうですね。黒田さんはいつもご飯とかどうしてるんですか?」

 

「俺は駐屯地外のアパート暮らしだから基本自炊してるよ。安上がりだし」

 

「自炊とかスゴいですね」

 

「いやあ、けど慣れるといいもんだよ、ハハ」

 

……何気ない雑談しながらドライブを楽しむ二人。

 

「竜斗って学校生活はどうだった?」

 

「学校生活……ですか?」

 

思い出すと愛美にイジメられたことも思い出し、複雑な表情を取る。それに気づいた黒田は慌てて謝った。

「あっ……確か君は水樹に……ゴメン!」

 

「いえ、もう大丈夫です。それ以外は……特に何もないです。

普通に授業を受けて、休み時間に友達と会話して、どこにでもある平凡な学校生活でしたね」

 

「……そんな君も早乙女一佐と出会ってそしてゲッターロボに乗ることになった」

 

「…………」

 

すると黒田は彼にこう質問する。

 

「なあ竜斗、君はやっぱり地元に戻りたいか?」

 

「…………えっ」

 

「別に答えづらいことじゃない。よく考えたら君達はワケのわからないまま、ここに連れてこられてメカザウルスと戦わされているんだからな……正直イヤだよね、俺だったら絶対に訴えるレベル」

 

「……僕の両親と友達については心配です」

 

彼は俯く。すると逆に、

 

「……黒田さんは怖くないんですか?」

 

「えっ、何が?」

 

「メカザウルスと戦うことです。

実は昨日、エミリアに言われたんです。『これから先、メカザウルスと戦って死ぬかもしれないのに怖くないのか』って。

その時、僕は『怖いけど自分が変われるかもしれないから――』と答えました。

黒田さんはどうなんですか?」

 

「………………」

 

彼は黙り込む。車はライトがなければ先など全く見えない夜の道路をどんどん進んでいく――すると。

 

「正直イヤだよ。突然あんな恐竜の化け物が現れて、SMBってロボット兵器に乗り込んで操縦して戦うっていう漫画みたいな展開、『夢を見ているのか、なら早く覚めてくれ』って何度思ったことか……けどそんな気持ちを殺してでもやるのが俺達軍人なんだ」

彼は一呼吸置いて、竜斗にこう語り出した。

 

「実は俺、朝霞の戦闘で君に助けられた時に『なんで生き残ったんだ』と思ったんだよね。

あの時部下のほとんどはヤツらに殺されて、俺も次かと一機でも倒して死ぬ思いだった。

そしてメカザウルスに不意打ちを受けてやられそうになった時ゲッターロボ、つまり君が俺を助けてくれた。

しかしあの時から俺は凄く死んだ部下に対して負い目を感じていたんだ、これじゃ申し訳立たないんじゃないかなって。

……これって指揮する人間は大体そう思うのかな、それとも俺の考えが甘いだけなのかな?

そう悩んでいた時に君達の話を聞いたり、教官として指導している内にさ、こう思ったんだよね。

『自分が生き残ることは君達が生き残ることに繋がるかもしれない』ってね」

 

「どういう……意味ですか?」

 

「これは俺の思い上がりだけどさ、君達がこれから先ゲッターロボに乗っていくんだったら、悪いけどまだ戦場で通じる戦い方ではない、つまり未熟ってこと。

君達は俺個人的に到達してほしいレベルにまだ行き着いてないし、俺自身もそれになるまで教えきってないってこと――」

 

「つまり黒田さんが生き残ることによってその分、僕達に操縦技術とかを指導してもらえる……」

 

「そうだ。そして君達が上達するということはその分自分達や俺、早乙女一佐やマリア助手、いや沢山の人々の命を救えるということになる」

 

……なるほど、これで利害一致しているというわけだ。

 

「実は一佐が言ってたけど、君達にはそういう才能と運を持ち合わせていて、訓練次第でまだまだ伸びる。

そして強力なゲッターロボを完全に乗りこなせれば本当に世界が救えるかもしれない。

しかし、さっきも言ったが君が元の生活に戻りたいのならそれはしょうがない、俺には強制することはできない、ただ一佐にそれについて僕から相談することはできるけどね」

 

「……その時はどうするんですか?」

 

「新たなパイロットを探してイチから教習させないといけなくなるな――その時は確実に自衛官が選ばれるな」

 

「……黒田さんはゲッターロボに乗りたくないんですか?」

「オレは……BEETの方がいいかな。確かにゲッターロボは操縦は簡単だけど、やっぱりBEETの方が個人的にしっくりくるよ」

 

彼が乗れば絶対ゲッターロボのポテンシャルを引き出せるだろう、もったいないと感じる竜斗。

 

「……なんか話がこじれちゃったな。悪いな竜斗、楽しいドライブ中にこんな話して」

 

「あ、大丈夫です……」

 

「話題変えよっか。ところで最近エミリアとどうだ?」

「エミリア……ですか?」

 

「君が前に医務室に運ばれた時があっただろ。実はあの時な――」

 

黒田はエミリアが話したことをそのまま彼に伝えた。

 

 

「……それ、外出の時であいつの真意を知りました、それで僕は完全に決めたんです、今度は俺が守る番だと――それをエミリアに伝えました」

 

「……それで?」

 

「それでって……えっ?それってどういうことですか……」

 

 

 

「君達は今、付き合ってるのかなって?恋人として」

 

「えっ……それは……」

 

口がごもってしまった竜斗。

 

「君達二人はなんか姉弟みたいな関係だから。

けど、もし恋人として付き合ってるって言うんなら……なんか違うんだよな……っ」

 

「違う…………?」

 

「う~ん……異性としてっていうかなんていうか……やっぱり、なんでもない。さっきの話はなかったことにして」

 

「黒田さん…………?」

 

何故か話を濁す黒田に妙な視線を送る竜斗。それに対して彼は気まずくなった。

「ま、まあ気にしないでくれ――あと、水樹だが……」

 

「水樹ですか?」

 

「最近さ、水樹とうまくいってる?チームメートとして」

 

「水樹とですか……?」

しかし竜斗はその質問に対し、悩んでしまう。

 

「……なんか絡みづらいっていうかなんて言うか……そもそも僕、アイツにイジメられてましたから、今は普通に話せますがやっぱり抵抗感がありますね……」

 

「……まあそうだよな」

 

突然、水樹についての話題に結局雰囲気は重くなる。

 

「一体どうしたんですか?」

 

「……いや、水樹と上手くやってるかなあって。オレもあのコがちょっと苦手でね……かわいいんだけど凄く高圧的っていうかなんていうか……」

 

「水樹は傍若無人ですからね……」

 

「それにさ、前の戦闘で水樹からいきなり「エッチしない?」って突然言われてさ、びっくりってレベルじゃなかったよ」

 

竜斗はそれを聞いてドン引きする。戦闘中にそんなことを言い出すなんで、ここまで来ると病気だろう、と彼は感じた。

 

「オレ、彼女いるのにそんなことしたら罪悪感で間違いなく潰されるよ」

 

「黒田さん……彼女がいるんですか?」

 

彼はそれを聞いて少し驚く。

 

「一つ年下の一般人のコでね、実はもう同棲してて、結婚する予定なんだ」

 

「け、結婚するんですか!?おめでとうございます!!」

 

竜斗に祝福されて黒田は顔を赤くし照れている。

 

「それで、いつ結婚するんですか?」

 

「この戦争が終わった後だよ。もう互いの両親には話はついてるし、後は安心して式を上げるだけだ」

 

 

「じゃあ僕達は黒田さんの為に今から頑張らないと……」

 

竜斗は決心した。彼が幸せになるためにこれからもゲッターロボに乗り、世界を救うことを……。

 

「ありがとうな竜斗。その気持ちだけでも凄く嬉しいよ」

 

彼は竜斗の頭を優しく撫でた……。

 

「竜斗もエミリアと結婚する気でいる?」

 

「…………」

 

竜斗も顔を赤くした。

 

「両想いで言うことなしだからな二人は。エミリアみたいな女の子を奥さんにできる君も幸せ者だな」

 

「いやあ……」

 

「ハハハ――」

 

――将来の幸せについて盛り上がる二人。

だが前の戦闘の敗北に、今以上に戦力を強化しはじめている恐竜帝国。

果たして人類としての未来を恐竜帝国から守り切ることはできるのか――。

 


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