ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第十話「苦い協力」②

……快諾とは到底言えないが、一応、協力という形を決めた二人は早乙女に通信をとる。

 

“二人とも、準備はいいか”

 

「いいですよ、早乙女のオジサマ♪」

 

「………………」

 

……愛美はともかくエミリアは嫌悪感丸出しな顔で黙り込んでいる。

 

“我々はこれより空戦型ゲッターロボの援護に入る。

そのメカザウルスは君達が相手をしている雑魚とは比較にならない程の強敵だ。

あのメカザウルスに熟練した何者かが搭乗していると思われる。このままではなすすべなく撃墜されてしまうのは必須だ。時間がない、全力で行くぞ!”

 

二人は早乙女の指示通りに動き、配置する。

「…………っ!」

 

空中では、空戦型ゲッターロボはラドラの乗るゼクゥシヴの猛攻から必死で回避していた。

 

「ちい、ちょこまかと!」

 

ラドラは逃げ続けるゲッターロボに苛立ちを感じていた。

 

「まあいい、ヤツの動きが鈍った時が最後だ。どちらが先にへばるか!」

 

竜斗はマグマ弾を回避するのに必死でもはや顔には疲労しか見えない。

 

「人間様をなめるなよ!」

 

航空自衛隊の戦闘機も負けじと応戦するも、ゼクゥシヴにはまるで赤子扱いされるかの如く、次々に精密射撃で撃ち落とされていき、そして追いつかれ剣で胴体を叩き斬られていき、地上へ墜ちていく。

ラドラの駆るゼクゥシヴの圧倒的戦闘能力は竜斗をさらに絶望へと追いやる。

 

(俺……死ぬかもしれない、やっぱりコイツに勝つなんて無理だったのかな……っ)

 

汗まみれの顔に浮かぶは昔のような弱気な表情。

彼の心は諦めの方向へ進みはじめていた。それが機体の操縦に影響し、ゲッターロボの動きが大幅に鈍ってしまった。

それを見たラドラは好機と言わんばかりにライフルをゲッターに向けてマグマ弾を発射。

左腕部、右脚部、背中のド真ん中にそれぞれ直撃させた。

 

「うあっ!」

 

シールドが破壊されて、むき出しとなった装甲に容赦なく鉄をも溶かすマグマの塊を撃ち込まれた箇所が溶けてボロボロになり、さらに動きが鈍くなる。

「今度こそ私の勝ちだ、覚悟しろ!」

 

ライフルから剣に持ち替えて、刃がマグマ熱で紅に染まると両手持ちで振り込み、ついに突撃した。

(やられる……!)

 

今度こそ終わりだ、竜斗は死の覚悟を決めた――。

 

 

「!?」

 

 

ラドラはふとモニター上のレーダーを見る。無数のゲッター線の反応を持った『何か』が地上からこちらへ追跡してきている。

今のモニター視点を替えて地上方向の画面に変えると映るは無数の丸い物体、ミサイルだ。

ゼクゥシヴはその場から離れるが、ミサイルは逃がさず追っていく。

 

「ちい!」

右手に剣、左手にライフルを持ち、追ってくるミサイルをアクロバティック軌道を描くように飛行しがら一つ残さず撃ち落とし、そして切り払う。

 

“竜斗、聞こえるか!”

 

「さ、早乙女司令!」

 

ベルクラスがついに到着、そして諦めかけていた竜斗の元に早乙女からの通信が入る。

 

“大丈夫か!”

 

「……な、なんとか!」

 

“今から私達が君の援護に入る。ベルクラスがオトリになるから君は地上へ行け!”

 

「……地上ですかっ?」

 

“すでにエミリア達がスタンバイしている。水樹が地上からミサイルを撃ち上げて時間を作ってくれている。

今はとりあえずヤツを地上に陽動させて君達ゲッターチームの連携で倒すことを優先にしろ!”

 

だが竜斗は浮かばない顔をしていた。

 

「でも……僕らの機体であんな素早い機体に太刀打ちできるでしょうか、ちゃんと地上まで陽動できるかどうか……それに僕の機体にはもう腹部のゲッタービームしか……っ」

“弱気になるな竜斗。本当にこの機体にはゲッタービームだけしかないと思うか?まだあるだろ?”

「…………あっ!」

 

“あれだけの大量のミサイルを全て正確に撃ち落とし、切り落とすようなとんでもないメカザウルスだ。

恐らく、現戦力であのメカザウルスに一発でも当てられる機体は空を自由に飛べる空戦型ゲッターロボだけだ。右腕の『アレ』を使え――”

 

竜斗は思い出す。ゲッターロボにもう一つの内蔵された切り札があることに。

竜斗は弱気な顔から一気にキリッと凛々しい態度をとった。

 

“心配しなくてもヤツはお前を追ってくる、ここまで追い詰めた相手をやすやすと逃がすことはしまい。

それに追ってこなくてもどうにかして地上まで叩き落としてやるから安心して行け、竜斗!”

 

「はい!」

 

空戦型ゲッターロボはすぐさま地上へ急降下していく。

一方、ゼクゥシヴも海戦型ゲッターロボが放ったゲッターミサイルを残らず全て破壊していた。

 

「くそ、余計な邪魔を……ん!?」

 

モニターに見ると今度は標的であったゲッターロボの姿はなく、今度は浮遊艦であるベルクラスが彼の前に立ちはだかった。

ベルクラスは機関砲を前方一面にバラまくも、ゼクゥシヴは再び回避行動をとる。

その最中ラドラはレーダーを確認すると、ゲッターロボが遥か地上へ降りていくのが分かる。

 

「この浮遊艦をオトリにしたな、だがな!」

 

ここまで追い詰めた相手を逃がしはしまいと思ったのだろうか、自身もゲッターロボを追って降下していく。

ゲッターロボに対する執念は爬虫人類としてゲッター線を嫌うがための破壊本能なのだろうか、それともキャプテンを名を持つラドラとしての誇りが許さないのだろうか――。

 

予想通り、地上へ降りていくゼクゥシヴに早乙女は「よし」と不敵に笑う。

 

「マリア、対地ゲッターミサイル発射用意。目標、降下中のメカザウルス一機に集中攻撃」

 

「了解!」

 

艦の左舷底部の全ミサイル管の発射口が開口し大型のゲッターミサイルが次々と発射。

全てがゼクゥシヴの追尾していった。そしてミサイルの反応に気づいたラドラもすぐさま機体を振り向かせる。

左右の翼を全開に広げ、翼の各骨組み上に生えるように突き出た角のように見える内蔵兵器、『ウイングミサイル』全てを発射させて、全て命中、誘爆させて再び地上へ降下する。

 

「右舷底部、対地ゲッターミサイル発射用意」

 

今度は右側のミサイル発射管を開門させて残りを全て発射。

再びゼクゥシヴめがけて向かっていく。

「何度やっても無駄だ!」

 

ラドラはライフルを上に向けて、機体を重力に身を任せるように落下しながら精密射撃で撃ち落とした。

 

「ゲッターミサイル……全て撃墜されました……」

 

「見事だ。敵ながらあっぱれだ」

 

ここまで来ると、もはや敵であっても賞賛を送りたくなるほどの強靭な精神と操縦技術……ラドラのパイロットとしての能力は計り知れない。

だが、そんなラドラの顔は汗だくで、疲労の色が見えていた――。

 

一方、地上ではついに三機のゲッターロボが集結する。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

竜斗達は再びモニターから互いを見つめ合う。

 

「エミリア、水樹。ここは協力して絶対に三人で生きて帰ろう」

 

“リュウト、アタシはモチロンよ。けど……”

 

“……………”

 

何も言わない愛美に対し竜斗は、

 

「水樹は俺達と協力したくないのは分かる。

俺だって、正直今までお前のしてきたことは絶対に許さないし、同じチームとしてあまりいい気分じゃない。

けど、だからって水樹だけ蔑ろにはしない、それに死んでほしくない」

 

すると愛美は……。

 

“イシカワの分際でよくもマナに向かってそんな口きけるわね”

 

「…………」

 

“はっきり言ってマナはね、アンタ達を見てるだけでスゴくムカついてくんの。

ホントウならこんなのに乗りたくなかったし――なんでマナがこんな目に遭わなきゃいけないのよ。全部アンタのせいよ、責任とってくれる?”

 

“ミズキ……っ!!”

 

彼女の底無しの自分勝手さに、エミリアの表情が一層険しくなった。だが彼はコクっと頷いた。

 

「……いいよ」

 

“リュウト!?”

 

「元々二人を守るって約束だし。あのメカザウルスにやられそうになって一瞬弱気になって諦めかけたけど、今からちゃんと二人を守りぬく。

この戦闘が終わったら俺が早乙女司令に水樹を安全な場所に送ってもらえるよう話してみる。叶うかどうか分からないけどそれでいい?」

 

 

 

“………………”

 

「無理して付き合うことはないよ、水樹の代わりの人を入れてくれると思う。

俺達はこのままメカザウルスと戦う、多分全てが終わるまで――。

 

けど今はこの状況を何とかしないと俺、いやみんな死ぬかもしれないんだ、そんなの俺もイヤだし二人共イヤだろ。

水樹、今だけでもいい、力を貸してくれないか?”

 

彼の嘆願にまだ黙り込む彼女。だがクスっと笑った――。

 

“……イシカワって意外と自分の意見を言えるタイプなんだね、マナ驚いちゃった。

わかったわ。確かに正直イヤだけどマナも死にたくないからね、今回だけよ”

「……水樹、ありがとう。エミリアにも悪いけど協力してくれ」

 

“え、ええ!”

 

「よし、今から三人の力を合わせよう!」

 

――三機はそれぞれ少し距離を離し三角になるように配置につき、瓦礫や障害物に機体を遮蔽する。

そしてちょうどゼクゥシヴも竜斗を追って地上に近づいた。

 

「……ゲッター線反応が三つもある……」

 

ラドラは十分周辺を警戒する。ゲッターを動力源とする機体は一機だけではないのは少し前に確認したが……。

 

「……出てこい!」

振り向き、ライフルを地上三十メートル先の倒壊した建物に向けてマグマ弾を発射し、直撃させた。

するとその陰から愛美の乗る海戦型ゲッターロボが飛び出した。

 

「これでもくらいなさあいっ!」

 

両肩からのミサイル発射管から大型のゲッターミサイル二発を発射、ゼクゥシヴへ向かっていく。

しかしラドラは全く焦る様子もなく後退しながら、ライフルを向けて撃ち落とそうとした。

 

「なに!?」

 

その後ろから何かが近付いてくるのが、地上を素早く削るように滑る音、そしてレーダーで分かる。

、エミリアの乗る陸戦型ゲッターロボである。

 

「当たって!」

 

彼女の押し出した右レバーに連動し、ペンチ型アームをゼクゥシヴに向けて射出した。

スラスター推進のアームに、繋がった金属ワイヤーがグングン伸びていき、アームがゼクゥシヴの背にあるブースターを見事ガッチリ掴んだ。

 

「私としたことが!!」

 

ミサイルをすぐに撃ち落とし、アームを引き離そうと上空へ上がろうとするがエミリアはそれを許そうとしなかった。

 

「……死んでも離さないわよお!!」

 

陸戦型ゲッターロボは両踵の車輪をフルに逆回転させて後退し、反発力で相殺させる。

 

「逃がさないんだから!」

 

今度は愛美の機体が近づき、なんとその蛇腹状の腕をバネのようにいっぱいに伸ばしてゼクゥシヴの両足に絡ませたのだった。

 

「くうっ!」

 

ラドラはレバーをガチャガチャ動かすが一向に動かない。

 

「トリは任せたわよリュウト!」

 

エミリアの掛け声に同じく地上の積み上がった瓦礫に隠れていた空戦型ゲッターロボがついに満を喫して登場。

 

「これでもう避けれないぞ!」

 

彼は一片の希望を賭けてゼクゥシヴへ高速に近づく。

 

「私をナメるなあ!」

 

刃が真っ赤であるマグマ・ヒートブレードで瞬時に海戦型ゲッターロボの絡みついた蛇腹の両腕を切り離し、構えて間近に迫った空戦型ゲッターロボを迎撃すべく剣を構えた。

 

「どうあがこうと勝つのは私だ!」

「!!」

 

ついに距離を詰めた空戦型ゲッターロボは全力で左手の拳で殴りかかるが、いなされてマグマ・ヒートブレードの餌食になり、左腕を切断されてしまった。

だが、竜斗は剣で振り切った隙をついて右腕を突き出してゼクゥシヴの顔に触れる寸前に止めた。

 

(な、なぜ当てない……?)

 

ラドラは不思議がっていると、右前腕の装甲がスライド開放、中から現れたのは謎の赤いレンズとそれに連結した細長い金属の筒とそれにいくつもの内部へと繋がるチューブ……。

 

(まさかっ!!)

 

時すでに遅し、レンズがカッと赤い光を発光。ゼクゥシヴの頭部を包んだ。その鱗で覆われた爬虫類の皮膚は一気に溶解。赤色光が弱まった時にはもはや首のない妖怪のような姿になっていた。

 

 

 

『近接近戦用ビーム・シリンダー』

 

 

空戦型ゲッターロボの右前腕部に内蔵された、短射程のみ有効の小型ゲッタービーム砲。

空戦型ゲッターロボの切り札とはこれであった。

 


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