ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第十話「苦い協力」①

一方、無事着陸し交戦区域に向かう黒田、エミリア、愛美。

 

「もう少しで到着だ、離れるなよ」

 

エミリアの乗る陸戦型ゲッターロボの背中には巨大な、英語の『X』のような形状をした赤色の専用兵装ユニット『ライジング・サン』が装着されている。

愛美の海戦型ゲッターロボと黒田の乗るBEETの二機は『ターボホイールユニット』に酷似した推進ユニットを両足に装着し、陸戦型ゲッターロボと同じように地上を高速滑走する。

 

“メカザウルスだ!”

 

前方には多数の角竜、暴君竜型メカザウルスが待ちわびたと言わんばかりに雄叫びを上げて立ちはだかっていた。

 

「やだあ、キモい!!」

 

「こ、こんなにいるの……っ」

 

竜斗と同じく愛美とエミリアはその多数のメカザウルスを前に怯む。

 

“大丈夫、俺がオトリになる。君たちは俺が注意を引きつけている時を狙って攻撃するんだ!”

 

「しかしクロダ一尉が……」

 

“心配するな、エミリアはオレの後に続け。そして水樹はここから砲撃援護してくれ!”

 

黒田は右足でペダルを力強く踏み込む。それに連動しブースターがフルスロットル、BEETの推進力が増し、猛スピードでメカザウルスに突っ込んでいく。

メカザウルス達の眼は全て黒田の機体に向き、まるで獲物を見つけたかのように興奮し出だす。BEETは左腰のナイフホルダーから『プラズマ・ソリッドナイフ』を取り出し、メカザウルスの密集地に飛び込んだ。

「ウワオ……っ!」

 

エミリアは魅了されている。

BEETは車輪とブースターを駆使し、まるで『蝶のように舞い蜂のように刺す』の如く、疾風のごとく無数のメカザウルスを手玉に取り、かき回して撹乱している。

そして目玉や心臓部など比較的柔らかい所や急所を的確に斬りつけ、突き刺している。

自分ではこんな操縦は絶対できない、そう思わせるほどの華麗な動きであった。

「へえ、黒田さんやるじゃん」

 

あの愛美ですら認めるほどである。

 

“エミリア、今の内に突入して攻撃だ”

 

「了解です!」

 

そして撹乱され陣形を崩されたメカザウルスの群れについにエミリアの乗る陸戦型ゲッターロボが介入した。

「アタシだって出来るんだから!」

 

陸戦型ゲッターロボの左腕のドリルをフル回転させて、混乱している一機の角竜型メカザウルスの胴体に全力でぶちかました。

ゲッター線駆動のトルクを搭載したドリルの回転力は凄まじく、一撃でメカザウルスの身体を貫通、粉砕したのだった。

「やったわ!」

 

メカザウルスの初撃破に喜ぶエミリア。

 

“喜んでるのは早い、次来るぞ!”

近くにいたティラノザウルスの姿をしたメカザウルスが口を開けて、その鋭い牙で噛み砕こうとゲッターに襲いかかる。が、ゲッターロボの右手のアームで頭をガッチリ掴まれた。

 

「はあっ!」

 

 

ペンチ状のアームに一気に力が加わり、メカザウルスの頭を一撃で挟みつぶす。

 

“いいぞエミリア!”

 

一機、また一機と確実に倒していくエミリア。

 

「今からここを突破するぞ」

 

とっさに攻撃を止めて黒田と共にメカザウルスを置き去りにし、前進した。

 

「今だ水樹、トドメだ!」

 

“はいは~いっ♪”

 

海戦型ゲッターロボの左右の脛が左右にに開放。

十、二十を超える多数の発射口から全ての中から丸い弾頭が現れた。

彼女がモニターに映る前方のメカザウルス全機を赤い囲み、照準をつけてピストル型レバーの引き金を引くと、脛の全ての発射口から小型のミサイルが一気に飛び出してメカザウルスに群れに飛び込んでいった。

直撃し、弾頭が破裂すると中から緑色の粒子が周りに拡散、メカザウルスを包み込み、次々と機械を残してドロドロに溶かしていく――。

 

――これは『ゲッターミサイル』と言う早乙女の考案した、弾頭内に火薬ではなくゲッター線を特殊技術によって濃縮し詰め込んだミサイル兵器でベルクラスの対地ミサイルもこれを大型化したものだ。

直撃すると弾頭が爆発、凝縮されたゲッター線を直接浴びさせるという、対メカザウルスにおいて真価を発揮する兵器である。

 

「うえ~っ、キモチワルイのがゴロゴロしてる!」

この一帯は、一瞬で密集したメカザウルスは皮膚などの有機物だけを溶かしてヘドロ状となり、残った鉄屑だけが汚物のようなゴミが辺りに散らばりまかれてもう動くことはなかった。

“水樹いいぞ、俺達の元に来い”

 

「はぁい♪」

 

すると彼はなぜか複雑な表情をとる。

 

「なあ水樹」

 

“どうしたの黒田さん?”

 

「君のクセかどうか分からないけど、その……ぶりっ子みたいにねちっこく甘い声で返事するの……やめてくれないか。

確かに君はかわいいけど一応君もさ、軍人になったんだから、もう少し節度良くだな」

 

“え~~っ、マナこれがいいもん。治せっていってもムリですよぉ”

 

黒田は今、苦渋の表情をしていた。

 

“クロダ一尉、気にしちゃダメですよ。 ミズキはああいうコなんですから……”

 

 

「……なんか調子狂うなあ」

 

“まあ固いこと言わないでよ黒田さん♪マナちゃんとやるからあ”

 

「…………」

 

……そして愛美も追いつき合流。三機はさらに激戦区へと足を踏み込んでいく。

“エミリアと水樹はしばらく早乙女一佐の指揮に従って行動してくれ。俺は今から周辺の友軍の援護に回る”

 

「了解です!」

 

「はあい」

 

「互いに離れずに早乙女一佐の指示通りに動け。

それにゲッターロボはシールドがある分、多少の被弾は大丈夫だから二人で助け合えば必ず生き残れる」

 

“分かりました。クロダ一尉も絶対に死なないでください”

 

「ああ、分かってるよ!」

 

“ねえ黒田さん、後でマナとエッチしない?”

 

突然、愛美の爆弾発言に黒田は仰天し、そして凍りついた。

 

「……ミズキ、アンタって女の風上にも置けないヤツね、不潔よ!」

 

“ハッ、何よエラそうに。まだ一度も男知らないくせにマナに口出ししないでくれる、このクソバージンガイジンオンナ!”

“アンタみたいに恥じらいのないビ〇チよりはマシよお!!”

 

……また下品な口喧嘩の始まる二人に黒田で完全にやつれていた。

 

「君達、そろそろいい加減にしてくれ……」

 

 

だが黒田もそんな二人を信じて離れるも、彼の指示とは裏腹に別行動を取りはじめるエミリアと愛美。

 

「ねえ、どっちがあのキモいヤツらたくさん倒せるか勝負しない?」

 

突然と、愛美から勝負を言い渡されるエミリアだったが。

 

“はあ?アンタ実戦の最中に何言ってんのよ、緊張感なさすぎにもほどがあるよ!”

 

「ただ倒すだけじゃつまらないもん。操縦ヘタクソなアンタだと張り合いがないけどガマンしてあげるわ」

“…………っ!”

 

挑発しかかる愛美。そしてさらにエミリアにこんなことを言い出したのだった。

 

 

「イヤならまた石川を襲っちゃうからね、モチロン『えっちぃ』意味で」

 

“なあ!!?”

 

“それが嫌だったら勝負して勝つことね。

フフ、またイシカワが泣きながらマナのアソコ舐める姿が目に浮かぶわねえっ♪

二人の勝負で決めたことって言えば……早乙女のオジサマ達もさすがに手出しできない”

 

「ミズキ、アンタってオンナは……っっ!!!」

 

だが愛美なら本当にやりかねない。エミリアはまんまとそれに乗った。

 

「分かったわよ!!これ以上アンタにリュウトを汚させないんだから!!」

 

“オーケー♪”

 

……実戦だというのに愛美の一言から二人の対決が始まった。

エミリアは死に物狂いで、地上のメカザウルスを次々とドリルで撃破していく。

前方の離れたメカザウルスへ、背中のX字状の専用兵装ユニット『ライジング・サン』の上部に取り付けられた小口径の銃口、計二門を向けて車輪を使い滑走する。銃口から青白く小さなプラズマの弾丸を連射し、メカザウルスに命中。

怯んだ隙をついて急接近、高速回転するドリルでメカザウルスの上半身を抉った。

 

「二十五体めっ!」

 

重装備で機動力が落ちており、その影響か攻撃を多少受けるも、シールドをフル活用しながら突っ込んで破壊していく。『ライジング・サン』下部の発射口二門から小型ゲッターミサイルを二発同時に発射、百メートル先の飛行型メカザウルスに見事命中させて撃墜させた。

一方、愛美の機体、海戦型ゲッターロボはその場から動かずに脛と両肩からの無数のゲッターミサイルで地上、空中のメカザウルスを次々に落としていた。

 

「もう四十体めかあ……つまんないな……っ」

 

想像していたことと違い、手応えがなく退屈そうな表情の愛美。

 

“エミリア、水樹。孤軍奮闘で頑張ってるとこを申し訳ないが”

 

突然、二人の元に早乙女から通信が。

 

「サオトメ司令、どうしました?」

 

“竜斗が危ない、今にもやられそうだ。”

 

「えっ!?」

 

それに一番反応したのは当然、エミリアであった。

 

“エミリアは覚えているか?二ヶ月前の戦闘で、ライフルを携行する知的な行動をするメカザウルスから必死に逃げ回っている、もうシールドのエネルギーが切れかかった状態だ”

 

「な、なんですって!!」

 

“あと、前方から謎の巨大メカザウルスが地上から君達に迫ってきている”

 

モニターに確認する二人。確かに巨大なだんご虫のような姿をしたメカザウルスがゆっくりとこちらへ接近している。

 

“ベルクラスも援護に入る。君達は竜斗と合流し、協力してそのメカザウルスから優先的に対処だ。

その後、三機で地上の巨大メカザウルスに総攻撃をかけるんだ!

それまでは黒田達に何とか耐えてもらう!”

 

「………………」

 

「………………」

 

“今ここで君達の連携力が試されるぞ。

このまま竜斗を殺されたくないのなら、三人揃って生きて帰艦したいのなら、二人は仲間と思い協力することだ!”

 

……二人はモニター から互いの顔を見つめ合い、黙り込む。

「ミズキ……」

 

“…………”

 

だがエミリアの顔を見るのもイヤなのか険しい顔の愛美。

 

「アタシはリュウトと助けたいからアンタと協力する……ミズキは……」

 

“……イヤよ”

 

「ミズキ……っ!」

 

 

“大キライなアンタと手を組むなんて死んでもイヤ。けどまあ、そんなこと言ってる場合じゃないみたいだし……マナに、ここじゃ土下座はできないから勘弁するけど『協力してください、マナ様』と頭下げて言えば、してやってもいいわよ”

 

「っ!!!」

 

一瞬ブチ切れそうになるエミリアだが、ここはグッとかみ殺した。

 

「協力してと言い出したのはアンタなのよ、ならそっちが筋通すもんじゃないの?違う?」

 

「…………」

 

……こんな緊急時にまで自己中なことをする非常識な愛美に、怒りのあまりに涙が混みあがるも……だが、ついに。

 

「……協力どうかお願いします……ミズキ様……っ」

 

泣く泣く頭を下げて嘆願。本当はこんなこと死んでもしたくないが、今の状況を考えると彼女との協力以外はありえない。エミリアは優先を考えて愛美に屈したのだった。

 

“……フフっ、アンタできるじゃない。わかったわ、アンタと協力する。

まあマナも石川に死んでほしくないからね――アイツには何かあった時の『盾』になってもらうつもりだから”

 

「…………!!」

 

屈辱を浴びた自分はともかく、好きである彼に対してそんなことを言うのはいくらなんでも彼女には耐えられなかった。

 

物凄い憎悪がこもった眼でヘルメット越しから愛美へ睨みつけた。

 

“しっかりついてきなさいよ、アンタ!足手まといにならないでね”

 

「…………」

 

……すっかり上機嫌で勝手に率先する愛美だが、今にも背後から憎しみむき出しなエミリアから闇討ちされそうな険悪な状況である。

 


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