ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第九話「ゲッターチーム」②

竜斗達は格納庫に着くさま、各機のコックピットに乗り込む。竜斗とエミリアは防護ヘルメットを被るが愛美はつけない。それは髪型が崩れるという理由らしいが。

 

“三人とも、準備はいいか?”

 

ちょうど、艦橋にいる早乙女から各機に通信が。

 

“今奴らは栃木県へ入った。どうやら南下しているようだ。BEET部隊はすでに待ち伏せをし、攻撃を開始するとのことだ”

 

「……ということは、また朝霞方面に」

 

“おそらくな。どうやら前の戦闘のことに対して根に持ってるみたいだな。ゲッターロボとベルクラスが主な攻撃対象となるだろう”

 

ということは朝霞で戦った、あのメカザウルスもいる可能性が高い。特に竜斗は次こそはと気を入れる。

 

 

“その前に一旦、朝霞に寄る。黒田の機体を積載しなければならない。寄るついでに今回、エミリアの機体に『ライジング・サン』と言う専用兵装を装備させる。背に装備するものでちいと重い。多少機動力は落ちるが色々武装を積んでるから戦闘力は上がる、君にはちょうどいいだろう”

 

「ライジング・サン……日の出ですか」

 

“日本という意味もある。日本好きの君にはピッタリの名前だろ”

 

 

「……はいっ!ありがとうございます」

 

“よし。朝霞にはあと十分ほどで到着する。すぐに用事を済ませて交戦区域に向かうぞ”

 

彼の通信が切れると今度は三人での通信が始まる。

「エミリア、怖くない?」

 

“だっ、大丈夫よっ、心配しないで”

 

だが声が震えてる。内心は怖いようだ。死ぬかもしれない実戦の初参加に怖がらない人間など、いたら狂人か戦闘馬鹿ぐらいである。

 

「安心して。俺がエミリアを守るから。無理するなよ」

 

“リュウト……っ”

柔らかい口調で彼女を安心させる彼に――、

 

“あ~~あっ、イシカワはマナを守ってくれないんだ~っ”

皮肉まじりに通信越しから呟く愛美。

 

「心配するなよ。水樹も今回初めてなんだし、ちゃんと守るから」

 

“ホントかしらね~~っ”

 

「…………」

 

“ミズキ、絶対に自分勝手な行動しないでね。今度こそアタシ達死ぬかもしれないんだから……”

 

“アンタなんかに言われる筋合いないわよ。

それよりこん中で一番操縦ヘタなんだからそっちこそ足引っ張らないでよ”

 

“ハア!!?ホント人をムカつかせることしか言わないわねえ。

一度はスゴくイタい目くらってみるといいんだわ、アンタって女は!!”

 

“なんですってえ!!?恐竜みたいなキモイのに踏みつぶされて死ねガイジンオンナ!!”

 

「だからこんな時にケンカなんかやめろーーーーっっ!!!」

 

……また口喧嘩に発展する二人。こんな状態でゲッターチーム、特にエミリアと愛美は果たして生きて帰れるのであろうか。

――栃木県中部。地上と上空には百、いや二百を超える各メカザウルスがそれぞれ侵攻していた。

 

空にはあの男、ラドラの駆る『ゼクゥシヴ』率いる飛行メカザウルスが。

怒涛のごとく蹂躙する地上のメカザウルス、後方には『メカザウルス・セクメト』が人間の造った建物を次々になぎ倒しながら進行していた、だんご虫のような形状が一層不気味さを際立っている。

 

「慈悲深いゴール様から与えられた、私にとって最後のチャンス。

我々と新型メカザウルス、『セクメト』……ゲッター線駆動の機体を今度こそ!」

 

本来ならゴールは挽回のチャンスなど与えないと言われているが自分の親しいラドラに情をかけたのか猶予を与えていた。彼は今、背水の陣の状況であり、その表情は非常に険しい。「全機、数キロ先に人類軍の機体の反応多数確認――戦闘準備!」

 

ラドラの命令にメカザウルス達は雄叫びを上げて士気、戦意高揚を図る。

 

その先にはラドラの言うとおり、すでに道路などにはあちこちにバリケードが張られ、それを楯に多数のBEETがそれぞれ兵器を携えて待機している。他の駐屯地から集められたBEETの混成部隊だ。

 

“恐竜帝国のメカザウルス軍、あと数分でこちらに到達します”

 

「よし、全機攻撃用意。朝霞の早乙女一佐が自身で開発した新型機、ゲッターロボとその支援艦も参戦するためこちらへ向かうとのことだ。

航空自衛隊も援護に来てくれる。彼らがくるまでなんとしても持ちこたえるんだ」

 

混成部隊の隊長の合図で各機はライフル、バズーカなどのプラズマ兵器、ミサイルランチャー、ロケットランチャー、長距離砲をそれぞれ、水平、上空に向けて攻撃態勢に入る。

 

――数分後、

 

「メカザウルス、射程内に入りました」

「よし、各機一斉攻撃開始!」

 

プラズマ弾、ミサイル、ロケット弾頭、まるで雨のような隙間なく埋め尽くされる数がメカザウルスへ一気に襲いかかる。

次々に被弾し、破壊されるメカザウルスもいれば易々と回避、

しっぺ返しで上空、そして地上からはマグマ弾とミサイルの雨を浴びせるメカザウルス。上空からは空爆を仕掛けるメカザウルスも。

 

ラドラの駆るゼクゥシヴもメカザウルスの中心となって攻撃する。

雨のように弾が飛び交う中を軽々と回避し、降下しながら携行するマグマ・ヒートライフルを地上のBEETに向けて、正確にマグマ弾を撃ち込み、確実に破壊していく。

ライフルのセレクターを変え、銃口から地上に滝のような量のマグマが噴き出し、地上へ降り注ぎ一面をマグマで飲み込んだ。

 

離れた場所からBEETが狙撃、攻撃するが、ラドラの操縦技術と機体の機動力から裏付けされた反応能力によって全くかすることすら出来ない。

 

そのままゼクゥシヴは地上へ降り立つと背中の広げた巨大な翼をたたみ、ライフルを右腰にかけて、背中から『マグマ・ヒートブレード』を取り出し、先の敵機体に向かって振り込みながら駆け出した。

対するBEETもプラズマ・ソリッドナイフを取り出して応戦しようと構える。が、

 

「なにいっ!」

 

ゼクゥシヴが通り過ぎた一瞬でBEETの胴体が横一閃に斬られ、爆散したのだった。

 

――一騎当千の如く、ゼクゥシヴは次々とBEETの軍団を反撃の隙も与えずに剣で真っ二つにしていく。

 

「あのメカザウルスを一刻も早く撃破するんだ!」

 

周辺の機体は一斉に攻撃をかけるが、ゼクゥシヴは飛び上がり再び翼を広げて上空へ。

熱で赤い剣刃が一瞬で冷却され、剣を背中に戻し、再び腰のライフルを取り出して再び上空から精密射撃を始めるゼクゥシヴ。

 

「すまない地上人類よ。

これもゴール様の、爬虫人類の為だ」

 

自分達の手で殺した人間達に懺悔しつつ、猛攻を加えるラドラ――。

 

その時、コックピット内のゲッター線感知レーダーに一つの反応が。

もの凄いスピードでこちらへ向かってくるのがラドラにわかった。

 

「これは……来たかついに」

 

 

彼は待ちに待ったとニヤッと笑った。

その反応とは早乙女率いるベルクラスである。

 

「交戦区域の味方機の反応、激減しています」

 

早乙女は格納庫のゲッターロボ、そして黒田の乗るBEETに通信を回す。

 

「全員、もうすぐで交戦区域に到着する。出撃準備だ」

 

“了解!”

 

「黒田一尉はエミリア、水樹、交戦区域の味方機の援護に回ってくれ。君ならこなせるだろう」

 

“了解です”

 

そして各人は操縦レバーを握り込む。その三人の表情は様々だった。

竜斗は目を瞑り、息を深く吸って吐き精神統一し、至って冷静。

エミリアは初の実戦デビューに緊張からか少し顔色が悪い。

そして愛美は……何故か無表情である。緊張などしていないのか……。

 

“竜斗、先に君から出撃させる。先陣を切れ。その後、黒田一尉、エミリア、水樹の順で地上に降下させる。

特にエミリアと水樹、パラシュートを忘れるなよ”

 

竜斗の乗る空戦型ゲッターロボのテーブルが動き出し、外部ハッチの方へ向く。全ハッチが開くと、ゲッターは膝を軽く曲げて発進態勢をとった。

 

「石川竜斗、空戦型ゲッターロボ発進します!」

 

カタパルトが射出されて空に飛び出し、背中のゲッターウイングをすぐに展開。ライフルとミサイルランチャーを携行し、交戦区域へ高速で向かっていった。

 

“三人、降下準備だ”

 

二機のゲッターロボ、そして重装備した黒田のBEETの乗るテーブルは各地上への専用ハッチへ移動。

 

「オレは先に地上で待ってる。降下に十分気をつけて!」

 

各ハッチが開き、遥か下の地上が見えた時、先輩である黒田から先に滑り落ちるように遥か地上へ落下していく。

 

“次はエミリア、用意はいいか”

 

「……は、はい」

 

戦うのが怖いか、それとも落下するのが怖いのか声が震えている。

 

 

“どうする、今回君だけやめるか?”

 

「い、いえ、そんなことは……」

 

 

 

顔が青ざめていく彼女。すると、

 

“あら、案外度胸がないのねアンタ”

 

突然、冷ややかな笑みを浮かべた愛美の通信が入る。

 

「ミズキ……っ」

 

“早乙女さん、先にマナから行っていい?”

 

“ああ、いいぞ”

 

“ならお先に、意気地なしさん♪”

 

そう言い捨てて、愛美から先に地上へ落下していった。

それが発起となり、彼女にも対抗心が現れて、

 

「サオトメ司令、アタシ行きます!」

 

“ほう、本当にいいのか?”

 

「あ、あんなヤツに負けないんだから!」

 

――おそらく強がりだろう。

 

“よし、では行ってこいエミリア”

 

ついに彼女の乗せたゲッターロボもまた滑り落ちるように落下。地上へ降下していく――。

 

数秒後、機体の背中からパラシュートを展開、そのまま真っすぐと地上へ降りていった。

 

一方、竜斗は一足先に交戦区域に到着したがその惨状、そしてメカザウルスの数に驚愕した。

「早く何とかしないと!」

 

すぐさまゲッターロボは手持ちのライフルとミサイルランチャーを駆使して上空のメカザウルスの掃討に当たる。

やはり訓練の成果が現れているのか、二ヶ月前の時と比べて機体の動きが俊敏であり、ラドラと同様にメカザウルスの攻撃を全て避けるほどだ。

プラズマ弾とミサイル弾頭を駆使して無駄弾を出さず、的確に撃ち落としていく――。

 

“只今到着した。直ちに援護に入る”

 

遅れて航空自衛隊の戦闘機もこの区域内に割り込むように到着、メカザウルスにミサイル、機関砲を浴びせつつ高機動力を活かしたドッグファイトを展開する。メカザウルス、ゲッターロボ、戦闘機が入り混じるここは安全地帯のない乱戦の場と化す。

「ついに現れたな!」

 

ゲッターの存在を感知したラドラは、すぐに標的をゲッターの方へ変え、上空へ移動開始。

 

「ゲッター線の機体が出現。私に任せ他のメカザウルスはセクメトを中心に展開せよ。

前方から三つの謎の反応がこちらへ向かってきているが、それら内二つはゲッター線反応確認。十分警戒せよ」

 

ラドラの指示にそれぞれ言われた通りの行動を忠実に開始するメカザウルス達。

 

「あいつだっ!」

 

竜斗にとっての宿敵、ラドラの駆るゼクゥシヴをモニターで確認。すぐに応戦。お互い間合いを取りながらアクロバティックに飛び回り、それぞれ持つライフルによる射撃戦の応酬を繰り広げる。

 

しかし二機共、一発も攻撃が命中しない。

 

「腕を上げたようだな」

 

まるで成長に喜んでいるかのように意気揚々のラドラ。一方、竜斗は。

 

「くそっ、当たらない……っ」

 

早くも疲れが見え始めていた。いくら成長したからといってもたかだか二ヶ月である。むしろ、こんな短期間でよくここまでこれたものだ。

二人の経験の差が現れ、ゼクゥシヴのマグマ弾がついにゲッターロボのライフルのバレル部分に直撃、溶けて使い物にならなくなった。

ライフルをその場で捨てて今度はミサイルランチャーを全弾発射。

ミサイル弾頭が怒涛の勢いで向かっていくが、ゼクゥシヴの翼の上に飛び出た幾つもの角のような物体を飛ばしてミサイルに当てて誘爆させたのだった。

 

「甘い!」

 

今度はミサイルランチャーにマグマ弾を直撃させて使えなくさせた。

 

「くっ!」

 

両腰にマウントされた二本のゲッタートマホークを取り出して折り畳んだ柄を展開、二刀流に構えて突撃する。

ラドラは白兵戦に持ち込もうとするゲッターロボに対し、ライフルを再び腰にかけて背中より剣を取り出して迎え撃つ。

 

……ゲッター線とマグマ熱。そのエネルギーの刃同士がぶつかり合い、火花が飛び散る。

 

「前よりはキレがよくなっているが、まだまだだな」

 

戦闘経験が豊富のラドラに竜斗は刃を当てようと必死であった。

もう少しなのに当てられない、このもどかしさは彼をさらに余裕をなくさせる。

 

「この程度の腕で私を斬ろうとは、笑止千万!」

 

ゼクゥシヴの横振りのなぎ払いが、ついにゲッタートマホークを二つとも弾き飛ばし、地上へ落ちていった。

 

「ああっ!」

 

ついに丸腰になってしまったゲッターロボに焦る竜斗。

 

「残念だがここまでだ。次はもう容赦はしない」

 

格の違いを見せて勝利を確信するラドラ。そしてとどめを刺そうと両手持ちで剣を構えるゼクゥシヴ。

 

「…………っ」

 

早々に追い詰められる竜斗。このままやられてしまうのだろうか――。

 


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