ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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番外編⑤「中南米戦線~密林の悪魔~」④

――そして当日の朝六時。竜斗はブラック・インパルス隊と共に今作戦の内容の最終確認をしていた。自分達空戦部隊は先発隊として先に赴き、空爆を開始。敵をいぶりだすか地上部隊のために障害物を排除した後、エミリア達ゲッターチーム率いる地上部隊が展開する、という大まかな作戦内容である。

 

「――以上が作戦の内容だ。地上からの高エネルギー兵器による対空狙撃があるということで我々ブラック・インパルス隊が攪乱、囮になりその間に他の部隊が空爆するということになるができればそれを素早く破壊してほしい。早く破壊できればそれだけ安全を確保できるし我々も攻撃に専念できる」

 

ジェイドがモニターに映し出されたマップに指揮棒を指して説明している。

 

「今回に限り、ゲッターチームから石川三曹が我々のチームメンバーとして参加する。彼は戦闘機乗りとしては初めてだから全員フォローを頼むぞ」

 

して本人はかなり緊張した様子で顔が強張っている。するとジョナサンが突然、竜斗の股間をガシッと掴みぐっと揉み下し揺らした。

 

「うわあっ、た、大尉!?」

 

「緊張してガタガタだから俺がほぐしてやろうってなっ!」

 

「俺らがいるんだから安心しろよ。アソコじゃなく身体がそんなに固くなってたらエミリアとヤる時どうすんだよ!ワハハハっ」

 

「ど、どういう意味ですかっ!?」

 

ちょっかいを出す彼らについ乗ってしまう竜斗。そんな様子にジェイドは「ゴホン」と咳を吐く。

 

「コールサインについてだが、我々はいつも通り『インパルス』だ。石川三曹についてはあのリリエンタールに乗るということでかなりのダークホースである。それにちなんで彼は『インパルス0(ゼロ)』という呼称とする」

 

初めて与えられたコールサインについて、竜斗は自分もブラック・インパルス隊の一員なんだと実感すると共にカッコいい名だと気分が高揚した。

 

「我々先発隊の発進は午前九時だ。それまでに各人準備をしておけよ」

 

ジェイドの話が終わり、とりあえず解散すると竜斗は彼らにお辞儀をする。

 

「今日は色々とよろしくお願いしますっ」

 

「そんなかてぇことしないでいつも通りにしてればいいさ。俺らは仲間なんだからなっ」

 

「それよりもリリエンタールの『呪い』に呑まれねえようにしろよ。お前が死んだら元も子もないんだからな!」

 

「は、はい。ありがとうございます!」

 

皆に励まされ、気持ちが楽になると同時に気合いが入る。絶対に乗りこなしてみせると、その上で作戦を成功させて生きて帰ると。

彼らと別れ、竜斗は次にニールセンの元に向かう。彼はリリエンタールのある格納庫で待っていた。

 

「博士っ」

 

「来たか。では機体の最終的な確認をするぞ」

 

コックピットに乗り込み操縦の仕組みと各武装の説明を受ける。操縦管制はステルヴァーと同じなのは既に頭に入っている。武装に関しては機関砲二門とアルヴァインのハンディ・プラズマキャノンと同型の物が一門、ECMシステム。後は『ギリガン』という名を持つミサイルが六発。このミサイルに関してはとんでもない代物で周りからの反対の声もあったらしい。竜斗は何か嫌な予感がよぎった。

 

「あとステルヴァーの兵装であるリチャネイドか、核バズーカかオールストロイの内、二つを装備できるぞ。竜斗君は何を持っていくかの?」

 

彼は選ぶとしたらリチャネイドとオールストロイだと思っている。核バズーカに関してはそんな一歩間違えれば自分はおろか、味方にさえ巻き込むような物騒な物を扱える気がしないし、使う気にもならない。

ニールセンにそれを伝えるとどこか残念そうな顔を見せる。

 

「・・・分かった。出撃までに搭載しておく。また時間が来たらここに来てくれ」

 

その場を後にする竜斗。一方、ニールセンは何故かニヤリと不気味に笑んでいた・・・。

そんな彼の何かの思惑にいざ知らず、時間があるので一旦ベルクラスに戻る。格納庫に行くと既にルイナスとアズレイが起動していた。

 

「リュウトっ」

 

「イシカワ!」

 

彼に気づき中からエミリアが出てきて、続くように愛美も出て三人は対面する。

 

「今回ゲッターチームとしては俺いないけど絶対に無理するなよ二人共」

 

「こっちは大丈夫よ。それよりもアンタこそしっかりね」

 

「アタシもミズキがいるし、頑張ってくるから心配しないで」

 

二人共、調子が良さそうで安心する。そして三人はいつものように円陣を組む。

 

「今回も作戦を成功させて絶対に生きて帰ってくるぞ!」

 

「「オーーっ!!!」」

 

――そして時間が来てすぐにリリエンタールの格納庫に着くとニールセンの元へ訪れる。

 

「よし。君がこのリリエンタールを乗りこなして活躍することを祈っとるぞ。最初は慣れるために出力は徐々に上げていけ。間違っても最大まで上げるなよ」

 

最後の忠告を受けて、自分の乗る曰く付きの戦闘機、リリエンタールに視線を向ける。オリヤという人物に会ったこともないので分からないが周りの話から分かったことは彼は超一流のパイロットであることだ。だがそんな人物でさえ乗りこなせずに死に追いやった化け物だ。

自分は今からそんな化け物に乗り込むのか、と正直不安と恐怖でしかない。しかしここまで来たからには覚悟を決めて乗ろうと心に決めた。

 

「・・・・あれ?」

 

外見を見ると何か違和感に気づく。それば自分が「頼んだ物」が積んでおらず、何かが代わりに積まれていた。

 

「博士、僕は確かリチャネイドとオールストロイを搭載するよう頼んだはずですが?」

 

見てみるとそれは自分の望んでない兵装、核バズーカであった。するとニールセンは何故かニコッと笑い竜斗を見る。

 

「すまんな、リチャネイドは整備や他機との兼ね合いで今ないんじゃ。今回は代わりにこれを使ってくれ」

 

当然、彼は「えっ?」と声を上げた。

 

「まあいいじゃないか、リチャネイドがなくてもこの二つがあれば充分だぞい」

 

「ええ・・・しかし核なんてとんでもない物、ジョナサン大尉ならともかく素人の僕が使いこなせるわけないじゃないですか!」

 

瞬間、ニールセンは竜斗に鋭い目でグッと睨みつける。その先程の穏やかさとは一転した威圧感に怯んでしまう。

 

「竜斗君、君は恐らく核以上の代物、ゲッター線で動くゲッターロボに乗っていたのでないのか?それと比べたら核なんぞ比較にならんじゃろ」

 

「し、しかし・・・」

 

「それにステルヴァーとリリエンタールの動力は一応ハイブリッドだが核動力だぞ。今からそれに乗り込む君はそんなこと言っておられんだろう。今回だけとはいえ君もブラック・インパルス隊の一員なら覚悟を決めたまえっ」

 

「・・・・・・」

 

「大丈夫じゃ。核と言っても放射線とかそんな危ない物質の問題は既にクリアしておる。心配せんでバンバン撃てばええ!」

 

「・・・博士、最もらしいことをもしかしてリチャネイドの整備とか本当は嘘なんじゃあ・・・」

 

「おっと、さて時間だぞ。早く乗り込めっ」

 

納得のいかないままコックピットに乗り込む竜斗はすぐさまステルヴァーと同様の手順で操作し、起動させる。計器類が光りエンジンの音が格納庫内に響く。

 

(ここまでは大丈夫だ・・・落ち着け・・・落ち着いてやればいけるから――)

 

操作方法自体は覚えているとはいえ初の戦闘機での出撃、そして自分が今乗っているのは悪名高いリリエンタール。ゲッターロボに初めて乗った時以上に空気が重い。今回、ブラック・インパルス隊と同様のパイロットスーツとヘルメットを着込んでいるため普段と全然感覚が違う。正直、心臓はバクバクで極度の緊張感で身震いしていた。

そんな彼は一旦、眼を瞑り自身の心に落ち着くまで何度も語りかけた。

ふと横を見るとニールセンが親指を上にグッと立ててサインを送っているのが見える。彼もそれに応えるように親指を上に立てた。それを見たニールセンは笑顔で彼を見送っていた。

 

(博士・・・よし、俺も男だ。もう覚悟を決めよう!)

 

先程の緊張感は次第に消えていき、平常心を保つようになる。

整備士の指示に従い、車輪を動かしてゆっくりと旋回し格納庫から出る。キャノピー越しで見る外の景色はゲッターロボのコックピットからとはまた違った風景が見え見とれてしまいそうだ。そのまま滑走路に着き、発進スタンバイに入るリリエンタール。

その時、通信の受信し正面のモニターを入れると、自分と同じヘルメットを被る人物が映る。

 

『どうだ、リリエンタールの乗り心地は?』

 

マジックミラーのようになっていて目視では分からないが声からしてジェイドのようだ。

 

「やっぱりゲッターロボのコックピットと全然違うので少し戸惑ってます。けど、なんとかやってみます」

 

『分かった。操縦方法はステルヴァーの戦闘機形態と同じだから落ち着いてやれば君なら大丈夫だ。もし途中でやはり操縦が無理そうなら自動操縦に切り換えろ。その後で仲間が君を基地まで誘導するから心配するな』

 

「分かりました」

 

『よし、我々は先に出る。君も準備が整い次第離陸し、空で落ち合おう』

 

ジェイドからの通信が切れてすぐに計器類と尾翼、補助翼の動作確認などの最終チェックを行い発進準備が整った――。

 

(・・・やっぱり緊張するな。けどもう後戻りはできないしやるしかないっ)

 

地上の整備士から発進許可の手信号を受けて竜斗は親指を上げてコンタクトを取った。

 

(よし、行くぞ!)

 

ジェットエンジンのノズルが広がりバーナーのように吹き出しながら発進し、車輪を走らせてグングンスピードを上げながら滑走路を進む。その勢いに乗ってついに空へ飛翔していくリリエンタール。その光景を見届け「第一関門突破したか」と安心するニールセン達。

 

「後は竜斗君次第じゃぞ。死ぬなよ」

 

と、そう小声で漏らす彼であった。


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