ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

180 / 187
番外編④「エゥゲ・リンモ攻略戦~天空の戦乙女~」⑦

(もう後がない、ここで死ぬくらいならやってやる!)

 

竜斗は覚悟を感じ取れる鋭い眼光で急接近するスニュクエラを見据えていた。

 

「ここで終わりにしてやるよ!」

 

勝利を確信し、何のためらいもなく突っ込んでくるリィオ、背水の陣で挑む竜斗。果たして――。

 

「くたばれ!」

 

今度こそ蜂の巣にしてやろうと機首の機関砲からマグマ弾をばら蒔きながら突撃してくる。ゲッターロボは咄嗟に左に逃げて飛んでいく。

当然、リィオも逃がすまいと追ってくるが竜斗は「今だ!」と力強く右操縦レバーを押し出した。

連動してゲッターロボは右手に持つゲッタートマホークを振りかざすとそのままスニュクエラへ向けて投げつけた。

 

「なっ!」

 

ブーメランのように高速回転しながら飛んでくるトマホークに驚いたリィオは慌てて右旋回しようとした時、ゲッターロボは咄嗟にライフルを構えてゲッタートマホークに狙いを定める。

 

(いけっ!)

 

ライフルから発射されたプラズマ弾が怒濤の勢いでトマホークに向かっていき、直撃。するとスニュクエラの避けた方向へ弾き飛ばされていく。

ゲッターロボの方に旋回したスニュクエラの目の前に弾き飛ばされてきたトマホークが直撃寸前な距離で横切りリィオは仰天、すぐさま急ブレーキをかけて止まってしまった。

 

「うおっ!?」

 

肝を冷やした彼女だったがすぐに切り替えて発進しようとした時、

 

「?!」

 

何とスニュクエラの真横にゲッターロボが待ち構えており、ビームシリンダーを展開した右腕を突きだし密接させていた。

 

「はあっ!」

 

小さなゲッタービームがスニュクエラのコックピットを貫き、途端に爆散した。バラバラになった破片は海面に落ちていく。

 

「・・・・・・」

 

寸手の所で勝った・・・それを見届けた後、安心した彼はレバーを放して激しく息切れした。

 

(ホントに死ぬかと思った・・・ホントに強かった・・・けど――)

 

それ以上にそんな相手を倒したという高揚感で嬉しさが今にも溢れそうだった。

 

(黒田一尉・・・俺、やりましたよ)

 

心の中でそう呟くのであった。その時、レーダーに謎の反応があり竜斗はすぐにモニターを見るとそこには見慣れぬ戦闘機の姿が。同時に早乙女から通信が入っていることに気づき、すぐに出る。

 

「司令!」

 

『大丈夫か!応答が全くないから心配したぞ!』

 

「す、すいません・・・けど僕、何とか全て撃破しました。ゲッターロボはもうボロボロですが・・・」

 

あの六機をたった一機で・・・早乙女は驚くと同時に彼の底知れぬ力に嬉しさから身震いした。

 

「ところでそっちはどうなりましたか!?」

 

早乙女は敵レールガン砲台のこと、先程の爆発に関すること、自分がベルクラスから離れていった後の経験を全て伝える。

 

『いますぐ戻ってこい。今そこに迎えにきているハズだ』

 

竜斗は目の前の戦闘機が仲間だと知り、直ちに合流する。

 

「迎え、ありがとうございます」

 

『・・・・・・』

 

お礼を言うがしかし無反応だ。通信がうまくいかないのかと疑問になるが、早乙女から、

 

『彼はアメリカ空軍からの援軍だ。残念ながら日本語は通じないようだ』

 

「えっ・・・てことは、外国人・・・」

 

竜斗はすぐに「サンキュー、ベリーマッチ」とぎこちない英語で言い直す。しかし向こうは無反応だ。何だか気不味い空気になっていくが、

 

『彼から「無事でよかった」と通信が入っている。それよりも二人とも、すぐに戻ってきてくれ』

 

二人はエゥゲ・リンモに向かっていくその最中、竜斗は隣に飛行する戦闘機とパイロットが気になって仕方がない。

 

(アメリカ人か・・・エミリアと一緒なら通訳ができるんだろうけど・・・なんか絡みにくい人だなぁ・・・)

 

一方、ジェイドはヘルメット越しからボロボロのゲッターロボを眺めていた。

 

(ゲッターロボ・・・あと確か竜斗と言ったな・・・彼はなかなか面白い戦い方をしてるな)

 

実は竜斗とリィオの対決の途中に到着したのだが、そのあまりの激闘ぶりに割り込む余地はなかった。しかしゲッターロボの戦いぶりは、確かにまだまだ未熟であるが見張るものがある、と彼もまた竜斗の戦闘センスを確かに感じとっていた。

そしてまだ互いに知らない、後に二人はバディとして、師弟のような関係になることを――。

 

そしてベルクラスに到着するとジェイドは役目を果たしたと言わんばかりに颯爽とエゥゲ・リンモ領空を戻っていく。竜斗もその先にある、傾いているようだかそれすらも忘れる超巨大な砲台に思わず圧巻される。

 

『見えるか?あれが日本にミサイルコンテナを撃ち出していたレールガン砲台だ。あとあれで水爆級の威力のあるミサイルまで撃とうとしてたが水樹のおかげで一発目は外れてくれた』

 

「・・・・・・・」

 

彼が今思っていることは、恐らく全員が感じたことと同じだろう・・・その時、エミリアと愛美から通信が入り受信すると待ちわびていたように嬉しそうな顔だ。

 

『大丈夫なのリュウト!?』

 

『アンタ勝手に飛び出していってどれだけマナ達が心配したかわかってんの?』

 

「ご、ごめん・・・」

 

『しかもゲッターロボがこんなボロボロになるなんて・・・アンタにもしものことがあったらマナはともかくエミリアが悲しむことになるんだから次からは気をつけなさいよね」

 

釘を刺されて苦笑いする竜斗。しかしそういう愛美も何だかんだで無事でなによりと嬉しそうである。

 

『レールガン砲台の冷却装置を全て破壊しました!』

 

その朗報が全員の耳に入り、これで終わりか、これからどうなるんだとエゥゲ・リンモに注目が集まる。

 

「よくやった、恐らく砲台の加熱し続けて自滅するだろう。そうなると小島内は危険だ。マリア、直ちにエミリアと水樹をを引き揚げるぞ。各機も直ちにレールガン砲台から退避せよ」

 

小島と海面に浮上する二機のゲッターロボを回収し、他の機体も離陸して退避する。エゥゲ・リンモは未だに『ズオオ!』と起動音の音がする。このまま加熱して暴走して破壊されるか、もしくは――。

 

「し、司令!」

 

解析を続けるマリアが突然、驚くような声で早乙女を呼んだ。

 

「レールガン砲台がまだ正常に稼動してます!」

 

「なにっ?」

 

「冷却装置と思われる反応を一つ確認しました。場所は・・・砲台真下の溝の奥にあります!」

 

モニターを見ると確かに爆発はおろか、寧ろ射角の修正が終わり、完全な発射準備を開始していたのだ。そして再び電力を溜める音が響いている。

 

「各機よく聞け。あの砲台はまだ死んでいない!再び発射態勢に入っている!」

 

早乙女から告げられたその事実に当然、全員が耳を疑った。

 

『どういうことですかっ!?』

 

「本当にすまない。マリアが解析した結果、砲台真下の溝の奥にもう一つの冷却装置があった。だがそれまではその装置は反応しなかった。恐らく君達が破壊した冷却装置はダミーでこれが本物か、もしくは全てを破壊された時のための非常用か――とにかくそれを破壊しない限り終わりではない」

 

『しかし、誰が溝の中に・・・』

 

溝の中は狭い上、間違いなくメカザウルスに追撃されてしまうだろう。向こうからしてみれば決死の思いで最後の冷却装置の破壊を妨害してくるハズだ。そう考えるとこの任務は非常に危険がつきまとう。撃墜される可能性は高いがかと言ってやらなければリナリスの第二射をただ待つだけである。

 

『では私が最後の冷却装置を破壊してきます』

 

なんと再びジェイドが名乗りを上げる。

 

「少佐、これまでも君が色々と引き受けてばかりで申し訳ないがやってくれるか?」

 

『ええ、誰かがやらなければならないんですから仕方ありません。それにこういうのは得意ですから』

 

早乙女、いや全員が彼に対する感謝の気持ちでいっぱいになる。そして刮目される中、ジェイドはただ一人エゥゲ・リンモを突撃していった。

 

(さっき俺を迎えにきてくれた人か・・・?大丈夫かな・・・)

 

竜斗は彼が気になって仕方がない。果たしてどうやって破壊するのか、そして無事に帰ってくるのか、と。それはここにいるほとんどが思うことだ。

 

溝に向かって急降下していくジェイド機。当然、空にいるメカザウルスが血眼になって追いかけてくる。しかしジェイドはさらに飛行速度は上げていきついに溝の中に突入した。少しでもずれると壁、弾薬を運ぶベルトに接触しかねない狭い間を寸分乱れない絶妙なバランスを持って先へ進んでいった。

しかしメカザウルスが後ろからマグマ弾、ミサイルなどで追撃を始める。果てには真上から爆撃まで初めもはや逃げ場のない。

しかしジェイドはそんな袋小路に状況にも関わらず全く焦る様子もなく淡々としている。余程肝が据わっている証拠だ。その時、モニターが溝の奥先で何かが捕捉される。

 

(あれが冷却装置か)

 

この先は内部に突入してしまうのでそうなれば脱出は完全に不可能になってしまう。直ぐさま上昇させると同時に一定の角度になった瞬間、機体の左羽翼に装備したミサイルを一発発射した。ミサイルは加速して真っ直ぐと溝の奥へ入っていき冷却装置に見事直撃させて爆発。爆炎が溝の中を伝って広がっていく。

機体はそのまま砲台部に衝突寸前に翻してそのまま空へ上がっていく。

ジェイドを追っていたメカザウルスは止まれずそのまま内部に突入して爆炎に呑み込まれていった――。

 

「最後の冷却装置の破壊を確認しました!」

 

全員は歓喜の声を上げた。ジェイドが戻ってくると無事と成功を祝って暖かく迎えた。当の本人は出来て当たり前と言わんばかりに平然とした態度である。

 

(す、凄い・・・っ)

 

一部始終を見ていた竜斗は驚きのあまり声がでない。まだ彼の全てを知らないが恐らく今の自分は足元にも及ばないだろうと直感で察した。

 

「今度こそやったか!?」

 

「・・・いや、まだ起動しています!」

 

全ての冷却装置を破壊したにも関わらずエゥゲ・リンモは更に電力を上げる。それと同時になんと砲身がまるで口のように上下に開き、そこから膨大な熱を放出していたのだ。

 

「砲身を使ってまで排熱しているのか・・・化け物め・・・」

 

あまりのしぶとさに誰もが絶望しかかっている。しかし向こうは待たずすぐに砲身を閉めている。そして、

 

「砲台が発射態勢に入ってます!」

 

砲身内に凄まじい量のプラズマが溜まりに溜まり、今にも吹き出しそうになっていた。

 

『もうどうすることもできないのかよ・・・っ』

 

こんな遠い所まで来て、全員が必死で奮闘したのに最後の最後で発射を止められないのか・・・逆に追い詰められてしまい万事休すかと誰もが思った。その時、空で待機していた空戦型ゲッターロボが突然、エゥゲ・リンモへ飛び出していく。

 

『何をするつもりだ!』

 

「一か八かの賭けです、砲身内にゲッタービームを撃ち込んでみます!」

 

『やめろ、間違いなく間に合わん!射線上にいれば水爆は君に直撃するぞ。それ以前にそんなボロボロな状態でゲッタービームを撃つ気か?下手したら空中分解するぞ!』

 

『お願いだからやめてリュウト!』

 

早乙女達から「早まるな」と説得されるが彼は止める気はない。

 

「このままでは間違いなく日本に撃ち込まれますよ!そうなったら・・・だからゲッタービームに全てを賭けます。皆は今すぐここから出来るだけ遠くへ退避してください!」

 

全く気が変わることがない彼に周りは狼狽し、ざわめき出す。そんな中で愛美は忽然とした態度で竜斗を見据えていた。

 

「マナ、石川に賭けるわ!」

 

という突然の支持することを発する。

 

「みんな、このまま指をくわえて日本がやられるの見てるだけでいいの?石川があれだけ自信と責任感を持っているんならマナは止めない、寧ろ応援するわ」

 

『ミズキっ!』

 

「エミリア、イシカワのことが好きなら信じてやりなさいよ。アイツ今すんごい輝いてるよ」

 

確かに今の竜斗は絶対にやり遂げてくれるような凄い自信に満ち溢れている。しかし万が一のことがあれば・・・その可能性が一番高いのは誰からの目を見ても明らかだ。

 

「早乙女さんにしても今回は変に自信ないわね。いつもみたいに飄々としてた方がいいんじゃなくて?」

 

珍しく彼女から指摘され早乙女は呆気に取られるも、すぐに「一本取られたな」といつも通りの表情へと戻る。

 

「そうだな。では竜斗、君に全てを託すぞ!」

 

早乙女からも後押しされて竜斗はさらに自信がつく。そうなると感化されたように周りから応援の声が上がっていく。

 

「みんな・・・」

 

そんな中で竜斗の元に未だに不安そうなエミリアと真逆の愛美から通信が入る。

 

『マナ、さっきはあんなこと言ったけど絶対に生きて帰ってきなさいよね。アンタがいないとこれから困るんだから』

 

『リュウト・・・絶対に帰ってきてね!アタシもリュウトがやり遂げるのをこの眼で見てるから!』

 

「ありがとな二人共、俺行ってくるよ!」

 

二人から激励されその自信は確固なものとなった竜斗は迷うことなくエゥゲ・リンモへ全力で向かっていった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。