ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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番外編④「エゥゲ・リンモ攻略戦~天空の戦乙女~」⑥

破滅の光・・・その余波はエゥゲ・リンモ領域にも届いており、敵味方全員がその場で固まった――。

 

「マリア伏せろ!」

 

早乙女達はあまりにも眩い光を受けてとっさに地面に顔を伏せて失明を免れる。球状の光は上空へ上がっていきキノコの笠へて変わっていく。

 

「ぐっ・・・!」

 

それは一騎討ちに集中していた竜斗達も戦闘を止めてしまい思わず目を押さえてしまう。

 

「エゥゲ・リンモは一体何してやがるんだ!!」

 

リオペレーションルーム内にいる者全員もその光景を見ており想定外だと辺りは騒ぎになっていた。

 

「落ち着け!向こうに連絡してエゥゲ・リンモ及び各部隊の者の安否及び状況を確認しろ」

 

慌てる者の多い中、リョドだけは落ち着いて指示を出すのは立派である。

 

「連絡は取れました。小島を支えている昇降機の柱が破壊され傾いて射角が大きくズレただけで他には影響は全くありません!」

 

「修正は可能かっ?」

 

「時間がかかりますが問題ありません」

 

「よし、急げ」

 

――徐々に光が治まり視界が見えるようになるとゆっくりと起き上がる早乙女。爆発した先に見える巨大なキノコ雲を見て思わず息を呑む。マリアは直ちに先程の爆発を解析した。

 

「し、司令!先程の爆発の威力は水爆級です!放射線等の有害な物質は発生していないようですが」

 

言葉を失う早乙女。愛美のおかげで結果的に助かったもののもしあのまま日本に放たれていたら・・・考えるだけでゾッと寒気が襲う。しかし早乙女はこのままでは、と急いでに各機に通信する。

 

「全員、大丈夫か!」

 

『な、なんとか大丈夫ですっ』

 

『サオトメ司令、一体何が起きたんですか!』

 

多人数から質問責めに逢う中、何故か酷い顔をした愛美から通信が入る。

 

「どうしたんだ水樹、そんな痛そうな顔をして」

 

『どうしたもこうしたも、制御装置まで着いたけどメカザウルスがいっぱい襲いかかってきたから弾薬全部ぶっ放したら制御装置どころか昇降機諸とも破壊しちゃって・・・逃げたら今度は後ろから物凄い衝撃波が来て吹き飛ばされて・・・もう目が回ったり頭打ったりで最悪よ・・・!』

 

だからあんな巨大な物が傾いたのか、と全員が納得する。

 

『一体なにが起きたのよ・・・』

 

「そのことについてだが、まずあの爆発は水爆レベルの威力だったことが分かった」

 

水爆・・・もの凄い衝撃の事実に早乙女と同じ言葉を失いく一瞬で黙りこんだ。

 

「水樹の行動が結果的に運よくいい方向に流れていたがもし何事もなく日本へ向けて発射されていたら・・・」

 

『じょ、冗談じゃない・・・間違いなく日本は・・・』

 

「そこで私は思ったんだが、先日の日本各地にいくつかミサイルの類いが落ちたのは知っているな。もしあれがあの水爆だったとしたら、先日のはその実験だったとしたら?』

 

『もしかして・・・!』

 

本来日本に落とすのはこの水爆であり、ミサイルコンテナ弾による爆撃は牽制攻撃で自分達をここにおびき寄せて日本の防衛能力が手薄になっている間にそれを撃ち込むだったのでは、と。

 

「確か流星のような早さで地上に落下したと言ってたな。ということは水爆ミサイルをこのレールガンで撃ち出し、超音速で日本に撃ち込むつもりだったんだろう。その速さでは間違いなく迎撃はほぼ不可能に近いからな」

 

『ふざけんじゃねぇぞ・・・っ!』

 

全員が恐らくおなじことを思っているだろう。あのまま日本のどこかに撃ち込まれていたらその一帯から広範囲にかけて焦土と化していただろう。

 

『サオトメ一佐。私達にも詳しく教えてくれませんか?』

 

ジェイド達アメリカ空軍隊員にこれまで何があったかを

全て伝える。

 

『・・・なるほど、よくわかりました。ありがとうございます』

 

「もうここまで言わなくても分かるだろうが一刻の猶予はない。傾いたといってもあのくらいでは間違いなく修正後、再び発射態勢に入るだろう。その前に何としても冷却装置を破壊しろ!」

 

『了解!』

 

そこから全員が一丸となって残りの冷却装置の破壊に一点集中した。当然メカザウルスも妨害してくるがそっちのけで放置する。

 

『一基、破壊した!』

 

『こちらも一基潰した!』

 

順調に破壊していく各機。一方でジェイド達アメリカ空軍部隊はメカザウルスの殲滅に専念していた。

 

『全機、地上のメカザウルスに集中して破壊しろ。彼らの活路を開かせろ!』

 

『オーケイ!』

 

各機が奮闘し、一気に勢いを上げていきメカザウルスをさらに劣勢へと追いやっていく。その様子を見ていたリョドは、

 

「このままでは全滅する。各機、直ちに退却しろ」

 

向こうの部隊に退却命令を出すが、

 

『そんな!このままおめおめと敵に背を向けて逃げ帰るワケには!』

 

「このままではエゥゲ・リンモは陥落するしお前達も危ない、直ちに帰還しろ」

 

『私達は恐竜帝国、爬虫人類の勝利のためにゴール様を誓いました。退却などと自身の恥を晒すぐらいなら――』

 

「責任は私が持つ、命あっての物種だぞ!」

 

何とか説得しようとするが向こうは全く聞き入れない。

 

『私達は例えリョド様の命令であっても、最後の一発でもリナリスを日本に撃ち込むまでは最後の一人になろうと決して諦めません。必ずやリョド様に、恐竜帝国に一矢報いてやりましょう!』

 

向こうから強制的に通信が遮断されてしまい、リョドは『馬鹿共が・・・』というひと言と共に険しい表情へと変える。

メカザウルス達も必死で立ち向かうがここまで追い詰められたらもはや巻き返すことはできない。

 

『あと三基!』

 

エミリアも奮闘し、一基ずつ確実に破壊していく。ベルクラスからもゲッターミサイルを地上へ撃ち込みメカザウルス、固定砲台を殲滅していく。エゥゲ・リンモに埋め尽くすほど群がっていたメカザウルスも残り僅かになっていた。

 

「よし、もう少しだ。最後まで気を抜くなよ!」

 

早乙女は直ちに竜斗に連絡を入れるが応答してくれない。反応はあるので無事なのが分かるが驚いたのはベルクラスを追い込んだ六機の戦闘機の反応がいつの間にか一つだけになっていた。

「まさか竜斗が撃破したのか」と正直疑ったが、残り五機の反応がどこにも感知されないとなれば逃げた・・・だが一機は残っているのに他は逃げる、ということは考えられないし事実と受けいれる他はなかった。

ただゲッターロボ、敵の反応は明らかに弱まっている。間違いなくどちらも疲弊している証拠だ。

早乙女は各機に「誰か空いてる者はいるか?」と尋ねる。

 

『どうしたんですか?』

 

「竜斗が心配だ、誰か彼の援護に行ってくれないか?」

 

その事に真っ先に反応したのはエミリアだった。

 

『リュウトは大丈夫なんですか!?』

 

「ああ。ちゃんと反応はあるが応答してくれない。恐らくあの戦闘機との相手に集中しているのだろう。だが機体のエネルギーはかなり弱まっている、このままでは危ない」

 

『そんな・・・けどアタシの機体じゃ空を飛べないし・・・』

 

「なので戦闘機かSタイプのBEETで行ける者はいないか?」

 

『私が行こう』

 

そんな中、一人が名乗りを上げる。ジェイドである。

 

『一佐、その彼のいる位置を教えてください』

 

「すまない少佐。彼、竜斗は空戦型ゲッターロボという赤いSMBに乗っている。敵は君と同じ、翼竜の姿をした変わった戦闘機だがとんでもない機動力を持っている。決して油断するな」

 

ジェイドは受信したデータとマップを確認していく。

 

「各機、私がいない間任せるぞ」

 

『分かった!』

 

同僚にエゥゲ・リンモのことを託し、すぐさま旋回して竜斗がいる遥か上空を飛翔していく。

 

「竜斗に関してはジェイド少佐が行ってくれた。だから各人は気にせず今の任務に専念してくれっ」

 

『分かりました!』

 

仲間と別れたジェイドは向かう最中、ベルクラスから受信した空戦型ゲッターロボと敵機の簡易データを閲覧する。

 

(ゲッターロボ・・・か)

 

調べていくと実に面白いことが分かる。ゲッターロボの性能、特性、動力、そしてパイロット・・・軍人ではなくただの一介の高校生達がSMBに乗ってメカザウルスと戦い続けていることと戦歴、そして敵機も戦闘機だと知り『同業者』として非常に興味を持っていた――。

 

「く・・・ヤバイ・・・っ!」

 

そして竜斗は未だにリィオと激闘を繰り広げている。空戦型ゲッターロボのシールドは攻撃の受けすぎにより、エネルギー残量は切れており機体のあちこちにマグマ弾による溶けた痕が。竜斗はかなり疲れた表情をしているのに対しリィオは疲れが見えているどころか、活き活きとしておりここで戦闘経験の差が出ていた。

 

「しぶといヤツだ、だがアタイの勝ちが見えてきたな!」

 

ここが正念場だ、と彼女はさらに気合をいれて突撃する。近づけさせてなるかとライフルを構えてプラズマ弾を連射するゲッターロボ。しかしスニュクエラは回避行動を取らず、凄まじい速度で前進しながら左右上下に動き全て避けている。

 

「もうテメェの動きは見切った!」

 

スニュクエラからミサイルが二発飛び出し、機体が過ぎ去った後からついていく形で前進する。

 

「!?」

 

スニュクエラがゲッターロボに急接近、体当たりでもかますのかと思いきや目の前で機体を翻して離れていく。竜斗が怯んだ隙に目の前にはなんとミサイル二発が間近

に迫っていた。

 

「うわあっ!?」

 

すかさず竜斗は慌てて左操縦レバーを前に出して左腕に出した瞬間、ミサイルはライフルと腕に直撃。見事吹き飛んでしまいもはや右腕だけになってしまった。

 

「次で最後だ、覚悟しやがれ!」

 

再び急旋回してマグマ弾を撃ちながら今度は残りのミサイルまでも発射しトドメを刺すつもりのリィオ。

 

「こ、こうなったら!」

 

追い詰められた彼は一か八かと、ライフルを右腰の充填用アダプターにかけて、予備として後ろ腰に一振りだけ装備していたゲッタートマホークを取り出して身構えた。

 

「そんなものでスニュクエラをやるつもりか!できるもんならやってみやがれ!」

 

超速度で飛ぶこの機体をどう捉えて斬る気なのかと彼女はおもわず鼻で笑ってしまう。一方で竜斗はまさに背水の陣で挑むがトマホークだけでどうやって立ち向かうつもりなのか・・・。


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