ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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番外編その三です。内容はファンサービス物であまり本編とは関係のない(?)話ですので深く考えない方がいいです。今回の主役はもちろん竜斗です。


番外編③「宇宙光」

――突然現れた謎の敵。メカザウルスには到底見えない姿でSMBよりも二、三倍、いやそれ以上にある巨大であり、そしてどこかゲッターにも似た部分を持つ機体。

突然、虚空より現れたそいつは僕らに向かってこう言った。

 

「ゲッターロボ」と――。

 

 

ある日の午後、基地真上の空が気味の悪い紫色になり雷がバチバチと轟音を鳴らして降り注ぐ。

それはまるで悪魔の降臨しようとするかの如く。

敵の出現か、各機が戦闘配備し各機に乗り込む。それはゲッターチームも同様だった。

 

「準備はいい二人とも!」

 

「ええ、いつでも!」

 

「ふぁ~っ、せっかく気持ちよく昼寝してたのになんて空気読めないヤツらなのよ……」

 

三人は機体に乗り込み、すぐさま外に飛び出すとそれぞれ地上、そして空中に配置をとる。そして他のSMBも各場所に配置し戦闘態勢に入った。

 

「膨大なエネルギー反応確認。これは一体……」

 

「さあな。だが、ただ事ではないのは確かだ」

 

早乙女とマリアはベルクラスの艦橋のモニターで異様な空を観察している。

 

「来るぞっ」

 

その紫色の空がねじ曲げたように、まるで穴のような歪みが発生する。その中からゆっくりと何かが降りてくる。

 

「め、メカザウルス……?」

 

「いや、データにない。よく見ろ、どこかゲッターに似ていると思わないか?」

 

「そう言えば……」

 

その姿はメカザウルスとは言えない無機質、無骨のデザイン。それ以上にどこかゲッターロボと似て通った点も多いのは何故か。

 

「なんだあれ…………」

 

「メカザウルスじゃないよね、あれ……っ」

 

竜斗達もその今まで見たことのない謎の巨大な物体に唖然とし、そして狼狽する。

 

「アンタ達、相手が誰であろうと敵なら倒すしかないでしょ?ほらシャキッとする!」

 

と、愛美は二人に喝を入れた。そして謎の機体のコックピットに座る謎の人物はモニターに映る無数のSMB、特に三機のゲッターロボを捉える。

 

「ゲッターロボ……いや、私の知っているゲッターロボとだいぶ違う。

それに各形態が三機に分けられている……もしかしてこのゲッターは一人乗りか……?」

 

この謎の人物からゲッターロボという言葉が発せられるが何故知っているか……。

 

「いや、そんなことはどうでもいい。ゲッターロボが存在する限り、どの道この次元の宇宙の破滅は必須。全ての諸悪の根源を私が全て討ち滅ぼす、このバグで!」

 

巨大なその物体はついに行動開始、その巨体では考えられぬほどの凄まじい速さで竜斗の機体、アルヴァインに襲いかかる。

 

「うわっ!」

 

とっさの反応で素早く後退するが向こうは追ってくる。

 

「三人共、どうやら向こうはゲッターロボを狙っているみたいだ。分散しろ」

早乙女の指示に三人は四方に展開した。

 

(メカザウルスとは違うけど…………)

 

竜斗は襲いかかってくる正体不明の敵に何か違和感を感じている。

 

「敵にゲッターロボへ近寄らせるな!」

 

マウラー、ステルヴァーがアクロバティックな軌道を描きながら攪乱し、そして八方から一斉に攻撃を開始する。

ミサイル、機関砲、プラズマ弾を浴びせるが全く傷がつかない。

 

「邪魔をするな!」

巨大な敵が右腕をかざして振り込んだ瞬間、凄まじい衝撃波が拡散して一面全てを吹き飛ばした。

 

アルヴァインも高速飛行で縦横無尽に動き回り、セプティミスαを構えて撃ち続ける。

 

しかしメカザウルスをも一撃で吹き飛ばす複合エネルギーの弾丸であるにも関わらず全く傷一つもつかないほど頑丈だった。

 

「ええいっ!ちょこまかと!」

 

その巨体さからかあまり動き回れないようである。

アルヴァインはビームブーメランを取り出して全力で投げ込むが当たった瞬間に弾かれてそのまま地上に落ちていく。

 

「く、なんて堅い相手なんだ!」

 

全く通用しないこの敵に竜斗は苦い顔だ。

その時、地上から甲高い音が鳴り響くと敵の胴体に大穴が開いて空が見える。

下を見ると愛美のアズレイがエリダヌスX―01を持ち構えていた。

 

「どんなもんよっ!」

 

誇らしげになる愛美。しかし、そんな彼女も唖然となる。

何故ならその敵の身体に開いた穴が一瞬で塞がれたのだから。

 

「ウソ…………」

 

こればかりの彼女も顔が一気に青ざめた。

敵もアズレイに狙いを付けて一気に降下し、その大きい足で踏みつけようとしてきているが愛美は唖然としたままで動こうとしない。

 

「ミズキ!」

 

その時、エミリアの乗るルイナスからアンカーを射出させてアズレイに巻きつけると一気に引き込んだ瞬間に敵の足が地面に直撃しアスファルトが大きくヘコむ。

 

「サンキューエミリア!」

踏み潰しを回避して我に返った愛美は気を取り直してそこから離れる。

 

「アタシだって負けないわよっ!」

 

ルイナスはガーランドGからシーカー全てを撃ち出し、向こうへ追跡させる。

各シーカーは敵にまとわりついて動き回り、ビーム、そしてドリルで飽和攻撃を始める。

 

「くっ!」

 

敵はダメージは全く無さそうだが気を取られている間にルイナスも主武器の巨大なドリルを高速回転させて突撃した。

 

「はああっ!」

 

全力でドリルを敵に穿つ。彼女は目一杯にレバーを押し込みガリガリという音が聞こえる。

 

「ほう、私が元々乗っていた形態のゲッターか。しかし、パワーは私の乗っていたゲッターの方が遥かに上だったぞ!」

敵はなんと高速回転するルイナスのドリルを無理やり掴んで 回転を止め再び空に飛び上がる。そのまま機体を持ち上げて振り回した。

 

「いやあっ!」

 

悲鳴を上げるエミリア、しかしすぐ敵の後ろに何かが直撃し爆発する。

振り向き目を据えた先には長く細い砲身を持つ兵器、リチャネイドを腰に据えて構えるジョージの乗るステルヴァーが。

 

「エミリア君を離せ!」

 

狙いをつけてルイナスを持つ右手へプラズマ化した劣化ウラン弾を撃ち込み、見事手離すことに成功する。

そのまま地上へ落ちるルイナスを追いついたアルヴァインが見事に持ち掴んだ。

 

“大丈夫っ?”

 

 

「うん、なんとか!」

 

ルイナスを地上にゆっくり降ろすとアルヴァインは再び上空へ戻っていく。

 

「これならどうだっ!」

 

アルヴァインは敵の真正面に立つと右肩のキャノン砲の角度を合わせて、出力を上げた。

 

「ゲッターエネルギー……ではないだと?」

 

出力が最大に達した時、竜斗がレバー横のボタンをグッと押し込み砲内から想像を絶するエネルギー量の光線が発射され敵に見事直撃した。

 

「ぐうっ!」

 

竜斗は負けずにレバーを押し込みさらに出力を限界以上に上げようとした。その時。

 

“お前はゲッターロボとはなんなのか知っているのか?”

と、突然向こうから通信を通して、若い男性の声が聞こえる。

 

「え……ゲッターロボを知っている……あなたは一体……」

 

彼は驚いた。ゲッターロボという名前を知っていることに。

 

“お前に見せてやろう、ゲッターというものがどれだけおぞましいものか!”

 

敵は手を伸ばしてアルヴァインを無理やり足を掴み自分の出てきた空間の歪みを自ら発生させてそのまま一緒に引きずり込んでいった――。

 

「アルヴァインと敵機の反応がレーダーからロストしました!」

 

「なんだと!?」

 

さっぱりと姿を消した二機にその場にいる全員は狼狽した。

「リュウト、リュウトーー!!」

 

必死に通信をかけるエミリアだが向こうからはノイズばかりでなんの返信もない。

 

「早乙女さん、石川は一体どこいったのよお!」

 

“分からん、私達でさえ今の現象について理解不明で困惑している”

 

「はあ!?」

 

早乙女でさえそう答えるということは今起きているのはただ事ではないということだ。

 

「司令、どちらの反応がどこにもないとなると……」

 

「完全に破壊されたか、もしく宇宙空間か電波妨害などで感知できない場所にいるとしか……」

 

この不可解な事態に周りはさらに緊迫化する。

 

そして、飲み込まれた竜斗は目の前に映る光景に絶句していた。

 

“これがお前達の乗るゲッターロボの行き着く果ての姿だ!”

 

敵のパイロットがそう叫んだその理由、それはまさに悪夢である。

 

「ゲッター……ロボ……」

 

そこには星々が広がる広大な外宇宙。しかしモニターに映るはゲッターの顔をかたどった戦艦のようなものが億を軽く超える数でまるで蜂の群れのように固まり、宇宙を我が物顔で進軍する光景が。

対峙する勢力の無数の宇宙戦艦は勇敢にも突撃するも報われることなく傷一つも負わせられなず次々に潰され、発せられる光線は跡形もなく消し飛ばしていく。しまいには体当たりしただけでまるで積み木崩しの如き、簡単に崩れて粉々にされる惑星――戦力が桁違いである。

 

“彼らは自分の住む母なる惑星をただ守ろうとしていた。だがゲッターは情け容赦なく命を消し飛ばし、そして根絶やしにする。

お前達人類の未来はゲッターという強大な力を手に入れ、そして溺れ、宇宙の全生命を潰しにかかる極悪の存在、あたかも自分達が神に選ばれた人種であるかのようにな!”

 

「そ、そんな……!」

 

目、耳を疑うような事実を知る竜斗は次第に呆然な表情だ。

 

“目の前に映る光景が現実だ。私はそんな残酷な未来を変えるために、この最終兵器『バグ』でありとあらゆる世界のゲッターという悪の根源を全て潰す!”

 

謎の兵器、バグはアルヴァインの胴体を掴み、じわじわ握りしめてつぶそうとする。

「ぐっ!」

 

コックピットがバチバチとスパークして小爆発――その時だった、その無数に群がったゲッターロボの艦隊の中央にいる、星よりも巨大で一際目立つゲッターの戦艦三隻が突然、前方に飛び出した。

 

“まさか、ここで合体(ゲッターチェンジ)する気か!?”

 

バグのパイロットが叫んだ瞬間、それは起こった。三隻がゆっくりと直列に並び、それぞれ丸くなるように変形した時、そして真ん中が前と激突して合体、その後に続くように最後の戦艦も合体するという驚愕のアクションを見せつける。

 

“ビッグバン以上の膨大なエネルギーが発生している……マズい、逃げねば!”

 

再び空間の歪みを作り、中に入り逃げ込むバグを離されたアルヴァインもすぐに追う。

 

「待て!」

 

歪みに入った瞬間だった。宇宙を誕生させたと言われる大爆発、ビッグバンと思わせるほどの膨大なゲッターエネルギーが解き放たれてありとあらゆる物体全てが吹き飛んだ。

 

『ゲッターエンペラー、チェンジだ!!』

 

惑星が小さく見えるほどに常識外れなサイズの人型と化したゲッターロボからは、謎の濛々しい男の雄叫びが宇宙全体に響かせて震撼させたのだった。

 

「あなたは一体誰なんですか!?」

 

移動した別宇宙で二人きりになるこの場で竜斗はバグに乗る謎のパイロットと会話を試みる。

 

「なぜあなたはゲッターロボのことをよく知っているんですか、教えて下さい!」

 

問い詰めようとするもその結果は。

 

“教えることなど何もない、何故ならここでお前は消滅するからだ”

 

再び襲いかかるバグ。やむえずアルヴァインはトマホークを二刀流に持ち、身構える。

 

「二振りのトマホーク……あいつを思い出すよ!」

 

その巨大な拳を振り上げて殴りかかるがアルヴァインは一瞬でバグの目の前から姿を消した。

 

「俺だってここでやられるわけにいかないんだ!」

 

アルヴァインはすでにバグの背後に移動しており、すかさず全力で高く上げた右腕を振り込み、ビーム刃をバグに直撃させる。

 

「き、効いてない……っ」

 

めり込んではいるものの、すぐに装甲を形成する金属分子が傷を塞いでいきトマホークは取り込まれたのだ。

何をしても相手に全く効果がないことに焦りに焦る竜斗に暇も与えずバグは右手をぐっと押し出した時、強烈な衝撃波がアルヴァインに襲い、後方を弾き飛ばされた。

 

しかしバグはすでにアルヴァインの吹き飛ばした先に待ち構えており、そして胴体を再び掴み握った。

 

「往生際が悪いな。これもゲッターロボに乗る者の性質か」

 

再び握りつぶそうと力を入れるバグ。

 

「今度こそお前を消して、残りの二機もすぐに消し去ってくれる!」

 

装甲が軋み、潰されていくアルヴァイン。このままでは成すすべなく破壊されようとしていた。

 

「俺は……俺は……こんなとこでワケも分からず死ぬわけいかない。生きるんだあああっ!!」

 

仲間達の元に無事に帰るために、そして自身の持つ目的を果たしたい想いが一気に爆発し、竜斗は高らかに叫んだその時、プラズマエネルギーとゲッターエネルギーの複合エネルギーの出力が突如急上昇して、炉心の許容量を遥かに超えて機体全体からエネルギーの粒子が一気に放出された。

 

「な、何……ゲッター線……いや、違う、なんだこのエネルギーは!!」

 

暗闇の宇宙に突然虹色の光で輝き、バグのパイロットは目が眩んでアルヴァインを手放してしまう。

「なんだこのゲッターロボは……」

 

目をこすりながらもかろうじて彼が見た、目の前で光り輝くゲッターロボは今までの姿をしていなかった。

 

「て、天使……だとっ?」

 

アルヴァインの背中からは鋭角的で無機質なゲッターウイングではなく、巨大で純白な羽が生えており、神々しく立っている。まるでそれは天使とも言える姿をしており、この暗黒に染まった宇宙全て照らすような七色の極光を放っている。

 

「なんだこの……ゲッターロボなのに嫌悪感が少しも感じないその姿は……何者なんだお前は……」

 

絶対に相容れることのない宿敵な筈なのに不快感などなく寧ろ心地よい気持ちであり、そしてしばらく魅入られていた。

(お願いです、僕を受け入れてください)

 

彼の意識の中に竜斗の声がそう伝える。

 

(お前は一体……)

 

(僕はこれ以上戦うつもりはありません、どうかこれ以上はもう……)

 

過剰なエネルギー放出が収まり、虹色の光が消えるとその神々しい姿はなくなりいつものアルヴァインに戻っている。

そしてバグも攻撃する様子はなく、そのまま呆然と立ち止まっている。

パイロットは目の前に映るアルヴァインの姿を見て、ヘルメット越しに穏やかな笑みを返す。

 

「どうやらこの世界のゲッターロボだけは破壊するわけにいかないようだな」

 

と、そう呟く。一方で竜斗もモニターと何の理由なくにらめっこしていると突然、向こうから通信が。

“悪かったな。今からお前を元の世界に返してやろう”

 

「えっ……?いいんですか?」

 

“お前の本意を全て読み取った。お前にはやるべき目的があるのだろう”

 

竜斗はポカーンとなっているがパイロットは話を続ける。

 

“お前のような人間がなぜゲッターロボのパイロットをしているのかは疑問だが、そこまでの意志があるのなら貫くがいい、そして叶えろ”

 

「は、はい……」

 

突然と和解したような雰囲気ぶりに困惑する竜斗。

 

“あと、お前が俺に何者かと言ったな。俺も元ゲッターロボのパイロットだ、お前達とは違う世界での話だが”

 

 

「そ、そうなんですか?だからあんなに詳しかったんですか……あなたの名前は?」

 

“話はこれまでにしてお前を元の世界に返す”

 

バグはその場に再び時空の歪みを発生させて竜斗に指で歪みの中に入るよう指示する。

 

“このゾーンに突っ込んでくぐり抜けろ。そうすれば先ほどお前のいた場所の上空にたどり着く”

 

「ありがとうございます。あの……あなたは……」

 

“私はまだやるべきことがある、悪の権化であるゲッターの殲滅をな”

 

「…………」

 

“だが、お前のようなゲッターロボ乗りがいる世界があることに私は嬉しいし余計な武力介入しなくて済む。

他もできれば同じような世界であれば……まあ気にしないでくれ。それよりも早く消えない内に行け!”

 

「また、あなたと会えますか?」

 

“さあな。けど二度と忘れないよ、お前のことも、ゲッターロボも――”

 

別れの挨拶を交わし竜斗はボロボロに近いアルヴァインを動かして歪みの中へ突入していった――。

 

「さらばだ、俺が見てきた世界の中で唯一の可能性を持つ「優しい」ゲッターロボとそのパイロットよ」

 

そう呟いた後、彼もまた新たなる世界へ旅立っていった。

 

「基地上空二百メートルでアルヴァインの反応がレーダーに現れました!」

 

「リュウトっ!!!」

 

「石川っ!!」

 

「よし、直ちにアルヴァインを格納庫へ収容する準備だ」

 

ゆっくりと空から降りてくるボロボロのアルヴァインを基地にいる全員は笑顔で出迎えると竜斗も笑顔で彼らの元へ向かっていった。

 

――その後、あの謎の機体とそのパイロットが僕らの前に現れることは二度となかった。

元ゲッターロボ乗りという彼は今、何をしているのだろうか、言った通りに本当に様々な世界に行き渡り、僕らの知らない様々なゲッターロボを殲滅しているのだろうか――。

それにしても、僕の見たゲッターロボの行き着くあのあのおぞましき果て……遠い未来の話とは思えずゾッとしたが、今まで自分達を助けてくれたゲッターロボを信用したい。

だからこそあんな非道な行いをさせないように阻止することは出来るハズだ、と心に決めた――。

 


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