ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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最終話「アダムとイヴ」②

するとゼオ・ランディーグから再びテレパシーが入り込んでくる。

 

『ここで戦い続けては地球が汚れる。貴様らにとっておきの決着場所へ招待してやろう』

 

「なっ!?』

 

瞬間、二機は瞬間移動をしたのかそこから姿を消してしまう。

 

「エクセレクターが北極圏からロストしました。同時に巨大な反応も同じく――」

 

「なに、彼らは一体どこ行ったんじゃ!」

 

――神隠しのように突然竜斗達の反応が消えて狼狽し出す司令部。果たしてどこに消えたのであろうか。

 

「こ、ここは?」

 

「ち、地球が見えるけど……まさかっ」

 

「宇宙空間……っ」

 

真下に自分達の住む青き星、地球が見える。

 

「き、キレイ……」

 

こんな状況にも関わらず三人はそれぞれ宇宙から見るのが初であり、その光景に目を奪われている。

 

「もしかして月じゃない……?」

 

横を見ると遥か先に灰色の衛星、月があるのが分かる。どうやら月軌道上の宇宙空間のようである。

 

『ここなら思う存分戦えようぞ。では始めようか、器に宿るゲッター線の化身と対抗する者の最後の決着を――』

 

このためにご親切にも自身の力でここまで運んでくれたのか。

 

「粋なことしてくれるじゃない、しかし絶対にお礼なんか言わないから!」

 

 

――真っ暗で真空状態のこの空間で対面する、この地球において最強で対極同士の二機は、互いの持つ信念をかけた一騎打ちの時を訪れるのだった。

 

「いくよ二人、これが俺達の最後の戦いだ!」

「ええっ、地球のみんなのために!」

 

「それぞれ全力を尽くすのよ、そうすれば必ず勝てるから!」

 

「いや、何が何でも勝たなければいけないんだ!」

 

――僕達は持てる力を振り絞り戦った。相手はこの地球を造り上げた創造主であり、人工的とは言えいわば神のような存在、僕達のような『人間』とそれで造り出した兵器で勝てる見込みも確実ではない、いや五十パーセントあるかどうかというレベルだと思う。しかしエクセレクターと僕達の力以外に対抗できる手段はないし、それにより未来は僕達がかかっているのだ。そしてある意味では――神を相手に僕達の力が通用するのか、超えられるのかという問いに対する『挑戦』でもあったのだ――。

「竜斗、先にやらせて!」

 

「分かった!」

 

「頼むわマナミ!」

 

ついに戦いのゴングが鳴り、先に動き出したのはエクセレクターだ。オープン・ゲットでゲットマシンに分離して宇宙をかけながらアーバンダー、バミーロ、メリオスの順に並び、高速航行しながらそのまま直列合体、エクセレクター3へと変形した。

 

「マナからいくわよ!」

 

推進部を駆使し、ジグザグに移動し、ゼオ・ランディーグを翻弄しながら後部のウェポンラックからエリダヌスX―02を取り出して、すぐさま構えてエネルギーチャージを開始。

 

「これでも喰らいなさい!」

 

エネルギーチャージが最大まで完了した瞬間に、サーチモードで自動的にロックオンしてトリガーを引いた瞬間、ゼオ・ランディーグの腹部に大穴が開いた。

 

「いけたの!?」

 

期待する愛美だったが、なんとゼオ・ランディーグの大穴がエクセレクターの変形時のように、ミクロ単位で表皮が造られていき見る見る内に塞がっていく――。

 

「マナミ、次はアタシにやらせて。リュウト、いい?」

 

「いいよ!」

 

「じゃあ任せたわよエミリア!」

 

再び分離して三機のゲットマシンは広大な宇宙を駆けていく。今度はメリオス、アーバンダー、バミーロの順に直列に並んだ。

 

「いくわよ!」

 

合体に成功してエクセレクター2に変形した。

 

「ドリル・ビームシーカー、シュートゥ!」

 

シーカー・ラックボックス、背部の各シーカー、そして左腕のドリルが一斉に飛び出して幾科学的な変則移動でゼオ・ランディーグに一気に近づいて包囲網を組む。

 

「フルバースト!」

各シーカーによるビーム、ドリルによる休ませる暇もない飽和攻撃が始まった。ゼオ・ランディーグは触手を振り、追い払おうとしている。

 

「はああああっ!」

 

その時、エクセレクター2はドリルのない左の腕から百メートルあるかどうかの巨大な複合エネルギーによる光の剣刃を発振し、串刺しにしようと突撃してきている。ゼオ・ランディーグは全ての触手をエクセレクター2に向けて、ヴェクサリアスを集中攻撃した光の針を高速連射して迎撃をしてくるがエミリアは臆せず、超高速スピードに乗りながらジグザグ移動で避けて飛んでいく。

「これで!」

 

複合エネルギーの剣先がついに捉えて、ゼオ・ランディーグを串刺しにして押し込んだ。

 

「アタシ達はアンタを絶対に許さない、必ず倒してみせるんだからあ!」

 

怒りと恨み、そして地球上の全員の希望を乗せて、気合いを入れて更に押し込んでいく。

 

『――甘いな』

 

「!?」

 

右側の一つの触手が前に向けてピクっと動かした時、突然エクセレクター2は突発的に生じた凄まじい衝撃波により遥か後方に吹き飛ばされていった。真空状態なので絶えず縦回転するエクセレクター2だが、エミリアのレバー操作ですぐに体勢を整える。

 

「全く効いてないみたいに見える……っ」

 

「やせ我慢……いや、ちゃんとダメージ入ってんのっ?」

 

傷一つもなければ痛がる様子も全くなければゼオ・ランディーグに不死身なのかと疑問になるエミリアと愛美に竜斗はすかさず喝を入れる。

 

「諦めないで、とにかく相手を休ませないように攻撃を続けるんだ!」

 

「けど……っ」

 

「攻撃をしていれば何かしら変化はあると思う」

 

「その根拠はどこから出てくんのよ!」

 

「確かに何も効いてないように見える、けどアイツは結局、惑星規模で創造できるような強大な力を持っていたとしても本物の神でもなんでもない、人工的に造られたものだっ」

 

つまりいくら文明の進んだ異星人が造った超科学の産物だとしても、結局は『人』が造った代物に過ぎないだと言うことだという彼の見解に二人はなるほどと納得する。

 

「次は俺がいくよ!」

 

「分かったわ、頼んだわよリュウト!」

 

「チームリーダー、期待してるわよ!」

 

すかさずオープン・ゲットで再び合体を解いてゲットマシンに分離、すぐさまバミーロ、メリオス、アーバンダーの順でエクセレクター1への合体変形態勢に入った。

 

「二人共、アイツの真後ろで合体するんだ!」

 

竜斗の指示を仰ぎ、ゲットマシンはゼオ・ランディーグの真上を通過したすぐに降下して高速で合体、エクセレクター1へと変形した。

「これでどうだ!」

 

ゼオ・ランディーグの背後をとったエクセレクター1がすぐさま腹部を抱えこみ、高出力のエクセレクタービームを放射して押しとばしていった。

黄金色の光線が流星のような綺麗な一筋を描きながら真っ直ぐ照射していく。

 

「!?」

 

しかし、エクセレクター1の真横に吹き飛ばされたはずのゼオ・ランディーグが現れて触手で捕縛し、そのまま一直線で押し込んでいく。

音速域を遥かに超えた速度でゼオ・ランディーグはエクセレクター1を月にまで押し込んでいき、月面に到達して灰色の巨大クレーターの中心に激突させた。

 

 

「うわああっ!」

 

「きゃあああっ!」

クレーターに叩きつけられた衝撃で悲鳴を上げる三人にゼオ・ランディーグは情け容赦なく押し付ける。

 

『――弱い、あまりにも弱すぎる。ゲッターとはこの程度だったか、弱体化したのか。それとも我々が修復期間の間に強くなったのか――どちらにしろ肩透かしを食らったような気持ちだ』

 

何故か触手を離したゼオ・ランディーグは上から見下すようにエクセレクター1を見つめる。

 

『それが全力か、冗談はやめてくれないか?』

 

テレパシーを通してナメた態度で挑発するゼオ・ランディーグに我慢がならない竜斗達。

 

「うるさい……まだまだ俺達はやれる、行くぞ!」

エクセレクター1はすぐさま背中から二本の砲身を取り出して、リバエスターランチャーを展開した。

 

「二人共、最大出力だ!」

 

三人は右足元の出力ペダルを同時押しして複合融合炉のリミッターを解除、出力値が最大に上昇、過剰なエネルギーが機体を構成するゲッター合金と科学反応を起こし、機体が真っ白に光輝きだした。

 

【リバエスターランチャー、セット。バスターガンモード、オン――】

 

エクセレクター1は飛び上がり、ゼオ・ランディーグにランチャーの砲口をくっつけた。

 

「これならどうだ!」

 

リバエスターランチャーから膨大な複合エネルギーの塊が噴き出して瞬く間にゼオ・ランディーグは呑み込まれた。

『なにっ!?』

 

エクセレクター1からの最大出力、更にリバエスターランチャーに搭載した小型増幅器二基によって生み出された、恐らくは超新星爆発並のエネルギーの光線は怒涛の勢いで遥か彼方の宇宙にまで延びていった――。

 

「ど、どうだっ」

 

ランチャーからエネルギーの放出が収まり、息を呑む三人は前を見据えるとそこにはゼオ・ランディーグがあれだけのエネルギーを受けたにも関わらずデビラ・ムーと違い、消し飛ばされておらず身を抱え込むように耐え抜いていた。しかし、

 

「あれ、き、効いてる?」

 

ゼオ・ランディーグの身体中が酷く焼け焦げたような冗談、触手が左右合わせて三本、そして右足などの身体の一部が欠損しており、先ほどと違い自己修復をしていない。流石のゼオ・ランディーグもあの想像を絶するエネルギーの塊では余裕とはいかなかったようである。

 

『くっ、自己再生機能が壊れたか……おのれ……っ』

 

そう言い捨てるとゼオ・ランディーグは何故か、背を向けて去っていく。どこに行くのか三人は不思議がって目で追うと、去っていくゼオ・ランディーグの先にあるのは地球。宇宙空間で決着をつけると言っておきながら疑問になるが、段々と嫌な予感に駆られる三人……。

 

「まさかアイツ……っ」

 

「地球に戻ってみんな滅ぼす気……っ?」

 

「竜斗、早くアイツを追うのよ!」

 

感づいた三人は想像して猛烈な寒気と共に顔が真っ青になる。

もしそうならこうしてはいられまい、複合融合炉がレッド・ゾーンに入っているにも関わらず無視してエクセレクター1は直ちにゼオ・ランディーグの後を追っていく。

「逃がすか!」

 

「早く、リュウト!」

 

「あいつを先に地球に降下させてはダメよ!」

 

切羽詰まった三人とエクセレクター1はフルスピードで飛ぶが一時的とは言え、エネルギーが切れかかっているため思うようにスピードが出ない。

 

「こ、これじゃあ追いつけない!」

 

このままではゼオ・ランディーグと距離が縮まらず、間に合わないと思う中、エミリアはこう切り出す。

 

「リュウト、すぐにオープン・ゲットしてエクセレクター2に合体するの!」

 

「な、なんでだよ!」

 

「エネルギーがない状態のエクセレクター1じゃスピードが出せない、エクセレクター2ならエネルギーを最小限で直線的なスピードならきっと一番速いと思うから!」

 

「エミリア……っ」

 

エミリアのその意外な発想に二人は拍子抜けするが、確かにこれならと二人は納得し頷く。

 

「けどこのままじゃ大気圏突入しながらの合体になる、絶対に危ないよ」

 

「けどやるしかないでしょ、もしアイツがこのまま地球を滅ぼす気なら絶対に間に合わないわ。だからアタシに賭けてみて、お願い!」

 

「…………」

 

これで失敗すれば間違いなくゲットマシンは空中分解を起こして三人共お陀仏となるだろう、それを想定すると竜斗は戸惑う。

 

「竜斗、やりましょう。これしかないわ」

 

「だけど……」

 

「アンタはエミリアのカレシでしょ!だったらカノジョのやることを端っから信じてみなさいよ!」

 

「愛美……」

 

彼女から説得を受けた竜斗は少し間を開けた後にコクっと頷く。

 

「分かった、エミリア、頼むよ!」

 

「ありがとうリュウト、任せといて!」

 

「フルスロットルでキメるわよ!」

 

ゼオ・ランディーグは大気圏突入していき地表へ降下していく。その後ろからエクセレクター1がすぐさまゲットマシンに分離して大気圏突入していく――。

 

「ぐっ!」

 

突入時の猛烈な降下速度で膨大な熱で機体が真っ赤になり、更に空気圧で機体がキジギシといつ壊れるか分からないほどに激しく揺れるゲットマシンはすぐさまメリオス、アーバンダー、バミーロの順に並ぶ。

「地獄への急降下みたいだ……っ」

 

「いや、天国かもね」

 

「どれも違うわ、地球への、そして未来へのエレベーターよ!」

 

三人は気を集中して、そして成功を信じて互いを信頼し、そして同調した。

 

《チェインジ!エクセレクタァァァァァ、トゥ!》

 

彼女の渾身の叫び声が響き、それに応えるより次々に合体していき成功、エクセレクター2へ変形してドリルを前に突き出して隕石のように遥か下へ降りていった――。

 

「エクセレクター、そして敵の反応をキャッチ。この基地の上空にいます!」

 

アメリカ大陸、しかもちょうどテキサス基地の真上に到着したゼオ・ランディーグのすぐ後に、やっとエクセレクター2が到着する。

 

「追いつけた……」

「うん……」

 

「ちょっと死ぬかと思ったけどね……」

 

息を切らす竜斗達。エクセレクターに気づいたゼオ・ランディーグは踵を返してこちらをじっと見てくる。

 

『ほう、あれだけ距離があったにも関わらず我々に追いついたか。その努力に対して褒めてやろうぞ』

 

「な、なに……!?」

 

『敬意を評して、今からお前達に素晴らしい光景を見せてやる』

 

ゼオ・ランディーグは今まで使わなかった右手を今になって天にかざし上げたのだ。

 

『もうこの際いちいち殲滅せず、また一からやり直しと新たな生命を造り直すとするか。また途方もない時間がかかるがな――』

 

「え……っ!?」

 

振り上げた右手が下へ向けて全力で振り込まれた瞬間、地上全ては真っ白な光に包まれた――。

 


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