ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十四話「創造主」①

「あいつらどこに消えたんだ!」

 

姿を消したエクセレクターとレイグォーシヴを探しながら北極圏のメカザウルスの掃討に行っているジョナサン達。

だがその時、世界一周が終わり再び北極圏に姿を現した二機にハッと驚く。

 

「はあっ!」

 

ランシェアラと同じ、ラドラ自身の動きとトレースする操縦法のレイグォーシヴは瞬間移動を繰り出しながら、二丁のティエンシィ・ライフルを各敵機へ狙いを定めて高温の熱線を振りまく。エクセレクターはまだマント状のゲッターフェザーで身をくるい、熱線を防ぐが他の味方機は直撃した瞬間、熱によりドロドロに溶けてしまった。

 

“竜斗、ラドラ君はっ?”

 

「…………」

 

沈黙して答えようとしない彼の様子を察した早乙女――。

 

「覚悟しろ地上人類、貴様らを北極圏から生きて帰さん!」

 

ライフルを左右の腰に掛けて、背中から金色の長剣『エミュール・ブレード』を取り出して天に掲げると剣刃から強烈な大熱波が発生し全方位に拡散し機体へ浴びせた。

 

「ぎゃあああっ、身体が燃える!!」

 

「助けてくれえ!!」

 

マーダインに装備されていた兵装、エミル・エヅダと同様の効果を発揮して、直撃を受けた機体内のパイロットを人体発火させて次々に機体を地上へ墜落させていく――。

 

「このレイグォーシヴを今までのメカザウルスと思ったら大間違いだ!」

 

 

『シェイノム・メリュンカー』と呼ばれる美しく神々しい天使翼を持ちながら、その強大な力で猛威を振るうレイグォーシヴは天使と言うより鬼神そのものだ――。

 

「リュウト、ラドラさんはもう……っ!」

 

「……っ!」

 

あれがラドラの本心なのかやはり疑問を持たれるも、攻撃を止めない彼にさすがに竜斗も覚悟を決めたのか、エクセレクター1はレイグォーシヴへ向かっていく。

 

「ラドラさんの分からず屋!僕はあなたを信じてたのに!」

 

エクセレクター1は両腕手首からハンディ・ビームシューターを展開してレイグォーシヴへ向けて複合エネルギーの弾丸を連射するがやはりまとわりつくリュイルス・オーヴェによってバリアが張られて塞がれてしまう。

「これでも食らえ!」

 

金色鎧のスリットから何やら牙のような形をした物体が八つほど飛び出して、それが広範囲に展開し、長方形の陣形を組成すと赤い結界が張られる。

 

「これはまさかっ?」

 

竜斗達ゲッターチームはそれら何かを思い出す。対馬沖の戦いにて第十三海竜中隊の母艦ジュラ・ノービスが黒田含め、沢山のBEETを葬ったあの牙型自立支援兵器セクペンセル・オーヴェと酷似していることに。

 

「いかん、直ちにあの結界内に入らないようにするんだ!」

 

だが、言うのが遅れて中にはテキサスマック、アーサーが囲まれてしまった。

 

「オゥ、何だこのスクエア!?」

 

「兄さん、早くここから逃げましょう!」

 

「くそ、障壁のようなものが張られて出られない!」

 

逃げ遅れたジャック達は脱出しようとするもバリアのようなモノが張られてどうやっても抜け出せない。

 

「燃え尽きろ!」

 

だがレイグォーシヴは容赦なくライフルの銃口を結界へ向けた――。

 

「や、やめろおおおーー!!」

 

竜斗は慌てて叫んだが時すでに遅し、ティエンシィ・ライフルから強烈な熱線が撃ち込まれ、結界に直撃した瞬間、結界内は真っ赤に染まった。

 

「メリー……っ」

 

「に、兄さん……!」

 

 

「ルネ……やっと今、お前の元に……」

 

その言葉を最後に通信が途絶える三人――牙達が結界を解いた時にはもはやすでにテキサスマックとケツアルコアトル、そしてアーサーの姿がなくなっていた。

 

「アレン中尉……嘘だ……」

「ジャックさん……メリーさんも……」

 

通信をかけてもノイズだけが聞こえ、そして三人の生体反応がなくなっている。その事実に誰もが絶望、そして悲しみに打ちひしがれた……。だが、それでも猛攻を止める気はなく襲いかかるラドラに竜斗はついにブチ切れた。

 

「うああああああっ!!!」

 

激怒した竜斗に呼応するかのようにエクセレクターの出力値が五十パーセントを超えて、マント状から純白の羽根を持つ天使の翼へと変形した。

「ラドラさんがその気なら……俺はもう容赦はしない!」

 

ついに本気の戦闘態勢に入った竜斗、腰からトマホークを取り出して瞬間移動で急接近、レイグォーシヴへ休ませる暇のない神速の斬撃を繰り出す。

 

「やっと本気になったかリュウト!」

 

ラドラも彼に応えようと背中からエミュール・ブレードを取り出して応戦。

姿を消しては別の場所に出現して、互いの剣刃がぶつかり合い火花を散らす一瞬の気も抜けない、他機に到底真似できない超速の白兵戦を繰り広げる。

 

「はああっ!!」

 

「うああっ!!」

 

互いに気のこもった声が飛び交う。エクセレクター1はすぐさまそこから離れてすぐさま腹を抱えこむと腹部中央からレンズが出現。だが瞬間レイグォーシヴも姿を消した。

「エクセレクタァァァァァ、ビィィィィム!」

 

しかし竜斗はとっさにレバーを素早く動かして真後ろへ向くとそこにはレイグォーシヴが姿を現し、腹部から金色の光線が放たれた。

 

「うおォ!?」

 

至近距離でビームの直撃、かと思いきやリュイルス・オーヴェのすかさずバリアを張り遮断する。

 

「はああああっ!」

 

だが竜斗はさらにペダルとレバーを押し込むとビームの出力が上がり、次第にバリアの方が押し負けていき亀裂が生じる。そしてリュイルス・オーヴェ自体もさらに強力なバリアを張るために負担がどっとかかりスパークが生じて『ボン』と爆発し、全てはじけ飛んだ。

 

「ちぃ!」

 

すぐさまそこから姿を消したレイグォーシヴは前方数百メートル先で姿を現す。

 

「ラドラさん……」

 

「………………」

 

もはや和解など有り得ないとでも言わんばかりに睨み合う二人――。

 

(レイグォーシヴを持ってしても……あのゲッターロボより劣るのか……っ)

 

ラドラは戦いそして理解した、この最強のメカザウルスでも総合的性能がエクセレクターに全く追いついていない、間違いなく自分が不利だということを――。

 

「ラドラ……っ」

 

……玉座の間のモニターで二機が攻防を繰り広げる光景を見ているジャテーゴとゴーラ。

互角と思われたラドラの駆るレイグォーシヴが、エクセレクターを駆る竜斗達によって段々と劣勢を強いられていくその光景に、ゴーラはこの勝負の行方に対する不安から瞳を震わせており、だがジャテーゴはまるで分かっていたかのように軽いため息を吐く。

 

「やはりメカザウルス如きではゲッターロボに太刀打ちできぬか……まあいい、ラドラには時間を稼いでもらおうか」

 

「えっ……それはどういう……」

 

「実は私はこうなることを分かっていた。ラドラはただの捨て駒に過ぎんのだよ」

 

「なっ!?」

 

「では、そろそろ我々も切り札を出す準備に取りかかろうか。ついてこいゴーラ!」

 

「ああっ!!ラドラ、リュウトさん!!」

 

彼女を無理やり引っ張り出して玉座から去っていくジャテーゴは果たしてどこにいくのだろうか……。

 

「くう!!」

 

「はあああっ!!」

再び成層圏に移動してハンディ・ビームシューター、そしてティエンシィ・ライフルによる、音速を遥かに超えた超高速移動による射撃戦を繰り広げる二人。

レイグォーシヴは二丁のライフルを左右平行に連結させて、さらに中央の隙間のような差込口へエミュール・ブレードを増幅炉として差し込んだ。

 

「このペルゼン・ペゲルゼンを食らえ!」

 

レイグォーシヴはそこから急降下していきながら上にいるエクセレクターへ合体火器『ペルゼン・ペゲルゼン』の砲口を向けた。

 

「地獄の業火を味わえ!!」

 

トリガーを引いた瞬間、砲口からまるで血のような、気持ち悪いほどの黒赤色をした熱波が扇上に放散されていく。

「逃げて竜斗!」

 

「分かってる!」

 

すぐさまエクセレクターは姿を消したすぐに熱波が通り過ぎて宇宙へ出て行く。

 

「これでどうだ!」

「!?」

 

エクセレクター1が急接近してトマホークを横に振り切り、金色鎧に熔断していく……が、レイグォーシヴはすぐさま後退し、危うく真っ二つになるのを防いだ。

 

「お、おのれえ!」

 

斬られた部分を右手押さえ、左手のライフルで撃ち抜くがすぐさまエクセレクター1は姿を消した。

レイグォーシヴもすぐさま各武器に分解してエクセレクターを追って地上へ降りていく――。

 

「ジャック君、メリー君……そしてアレン中尉……」

ラドラによってあの三人を消され、苦い顔をしている各人の元に戻ってきたエクセレクター。すぐさまジョナサン機、そしてヴェクサリアスが駆けつける。

 

「大丈夫か竜斗?」

 

「はい。しかし……ジャックさんやメリーさん……中尉が……」

 

 

「…………」

 

今、基地で待機しているキングに何と伝えればいいか分からなくなる。そんな時、レイグォーシヴも彼らの前に姿を現した。

 

「ジャック達の弔い合戦だ、行くぜ!」

 

何としても彼らの仇を討とうと決意を決めるジョナサン。竜斗達も険しい表情でレイグォーシヴを見つめる。

 

「……どうやら私が操縦する最強のメカザウルスを持ってしても分が悪いようだな。さすがだと誉めてやろうゲッターロボ、そしてゲッターチーム――だがな!」

 

天使翼状の飛行パーツであるシェイノム・メリュンカーの周りに展開したオベリスク状の角柱六本が射出されて一気に広がっていく――。

 

「気をつけろ、何か仕掛けてくる気だ!」

 

その六本がレイグォーシヴを囲むように陣形を組み、配置された。

 

「エスカ・アズィーラを発動する!」

 

すると柱に緑の結界が張られて、セクペンセル・オーヴェのようにレイグォーシヴが閉じこめられてしまうが次の瞬間、

 

「な、何あれ……メカザウルスが……」

 

何と、レイグォーシヴの生身の筋肉全てに一気に血管の筋が浮き出て、雄叫びを上げる。

 

「し、司令!あのメカザウルスのエネルギーが急激に増大しています!」

 

すぐに異変を感じ取り用心する全員、内部のラドラも今にも体の血管が破れそうな程に浮き上がっており瞳もまるで狂人のような危ない目つきだった。

 

「私はこれを使おうが使わないだろうがどの道、死は確実。だがゲッターロボを倒すためならこの命を捨てる!」

 

瞬間、レイグォーシヴは姿を消してエクセレクター1へ体当たりして吹き飛ばした。

 

「うわあっ!!」

 

態勢を整えようとするがすでにレイグォーシヴがエミュール・ブレードを構えて迫っており一瞬の隙間もない斬撃の猛攻撃を浴びせてくる。

 

「がああああああっ!!」

 

レイグォーシヴ、そしてラドラから感じるのは感情や信念、誇りではなく、殺意、これしか感じられない。

(なんだ……ラドラさんの気迫がさっきよりも遥かに……)

 

彼は完全な戦闘狂と化していることを悟る竜斗。翼を身を包むように前を出して防御するエクセレクター1だがそれを打ち破ろうと休みなく攻撃を繰り出してくる。

 

「貴様さえ倒せば……ゴーラは死なずに済むんだああああ!!!」

 

「!?」

 

それを耳にした竜斗はハッとなる、まさか彼女はちゃんと生きているのか、無事なのか……。

 

「ご、ゴーラちゃんは今どこに!!」

 

そう呼びかけるも、すでに本人の耳には言葉を受け付けることはなかった――。

 


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