ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十三話「栄光のキャプテン・ラドラ」③

(もう止められない……もはや共存など求められぬ、逃げ道もない、破滅の道への歯車はもう元に戻れぬ方向に廻り始めたんだ……!)

 

鬼のような形相をしたラドラは格納庫に辿り着くとガレリー達、自分専用の新型機の開発陣が待ちわびていた。

 

「ラドラ……」

 

「ガレリー様……」

 

見つめ合う二人の間に近寄り難い雰囲気が醸し出している。一体彼らの間にどんな思いが飛び交っているのか。

 

「……新型機の概要について説明する、今までお前が乗ってきたのとは違い、あまりにも特殊だからな――」

 

ガレリー達から彼が今から乗り込み、操縦する機体の全貌について説明を十分に受け、理解する。

「……では、行ってまいります」

 

「うむ……ラドラよっ」

 

「なんでしょうか……?」

 

「……いや、なんでもない。わしらから言えるのは頑張ってこい、これだけじゃ」

 

「ありがとうございます」

 

ラドラは記された専用ドッグへと歩いていく。その後ろ姿を見つめるガレリーはどことなく悲しげだ。

 

「ラドラ……あやつにはどれほどの重荷が、そして業が架せられているのか……恐らくわしらには想像がつかん。

……リージの息子であるラドラにわしらはただ機体を与えて、慰めにもならない陳腐な励まししかかけられんとは……」

 

最も救われるべきである彼、ラドラに対し、少しも安らぎや救いを与えられなかったガレリーは自分の無力を知り、そして彼の父、リージへ合わせる顔がないと恥じたのであった――。

 

(間違いなくこの戦いで俺かリュウト君達ゲッターチームのどちらかが負け、必ずこの世から去ることになるだろう。

それだけでなく俺が勝てば地上人類は滅亡、そして俺が負ければ……)

 

考えるだけで頭が重く、気が狂いそうになるほどの重圧がラドラにのしかかる。しかし彼はもはややるしかないと決め、新型機に乗り込む。システム起動すると密閉された格納庫の外部ハッチが開き、海水が流れ込み、内部は満たされる――。

 

「キャプテン・ラドラ、『メカエイビス・エルトラゴン』発艦する!」

 

暗闇の海中からとてつもなく巨大な何かが海面へ浮上していく――。

 

「全機、海中から熱源反応確認。膨大なエネルギー量を関知した、直ちに警戒態勢に入れ!」

 

 

早乙女の注意に各機は北極圏から退避していく。

 

「あれは……なんだ!!」

 

海中から飛び出したとてつもなく巨大な生物、首長竜のような、いや蛇のような物体が計八頭が一塊となっている……それはまるで日本神話に登場する怪物『ヤマタノオロチ』のイメージがピッタリと合う。竜斗達もその謎の怪物を目にして唖然、畏怖、嫌悪を抱いている。

 

「なんだこれは……っ」

 

その時、竜斗達の元に通信が入り、すぐに受信すると……。

 

“……ゲッターチーム、いや、地上人類の部隊よ、ここから先は一歩足りとも通さん!”

 

ゲッターチーム、特に竜斗はその声の主が誰なのかが分かり、仰天する。

 

「ら、ラドラさんっ!?」

 

“私はお前達を駆逐する、恐竜帝国の、爬虫人類の未来を賭けて!!”

 

最悪のシナリオが訪れる。ついに再び対峙しようとしている両者。

 

「ラドラ君……やはり君は……っ」

 

早乙女達も向こうの通信を受信し、悪い意味で想ってもない、そして願わない対面を前に息を呑む。

 

「ラドラさん、なぜあなたまで!!?」

 

『やめてください、あなたと戦いたくない!!』と必死に訴える竜斗だが、通信を一向に遮断されてしまう。

 

「はあっ!!」

 

ラドラの駆るヤマタノオロチを象った最強のメカエイビス『エルトラゴン』はついにそこから発進し、彼らへ襲いかかった。

「速い、なんだあのメカザウルスは!!」

 

全長百メートル以上ある巨大なメカエイビスにも関わらず、後部に搭載した大型、小型バーニアスラスターを駆使して恐ろしいスピードで空を駆け巡るエルトラゴン。

八頭の首の内、四つだけは頭部がなく、変わりに数十メートルの巨大な剣刃が取り付けられており、それらがマグマの熱で真っ赤に発熱、豪快に振り回しながら各機に急接近する。

 

「うわあ!」

 

「ぎゃあ!」

 

それによって次にバッサリ真っ二つにされていく味方機。残り四頭は恐竜の頭部を象り、口を大きく開けてドロドロのマグマを撒き散らす。

 

「この化け物め!」

ジョナサン達は固まり、各火器で一斉射撃を繰り出すがエルトラゴンの周りにまとわりつくあの金属球、リュイルス・オーヴェがすかさずバリアが張り、攻撃がかき消されて遮断されてしまい、エルトラゴン側面から百を超えるミサイルが撃ち尽くされて機体を中心に爆炎が広がり、巨大な剣を振り回し、マグマ砲による猛攻撃を仕掛けてくるために近づけない――。

 

「ラドラさん!ラドラさん!」

 

諦めずに通信をかけようとするも一向に繋がらない。

 

「諦めなさい竜斗、あっちがその気なら割り切らないと!」

 

そうけしかける愛美だが彼は最後の最後まで諦めずに通信をする。

 

「リュウト、じゃああのメカザウルスの動きを封じてみたらどお!?」

 

「う、うん!」

 

エミリアのアドバイスを受けて、エクセレクター1はすぐさまリバエスターランチャーを取り出した。

 

 

【リバエスターランチャー、セット。ビームモード、オン】

 

片手持ちでエルトラゴンの八つの頭に狙いを付ける竜斗。

 

(あなたは一体何を考えるんですか……っ、もうあなたは僕達と共存する願いを捨ててしまったのか……っ)

 

疑問と不安だらけで訳が分からないだが、今はとりあえず足止めすることに集中してリバエスターランチャーから金色の 光線を放射、空間をねじ曲げるくらいの膨大なエネルギー質量を持ったビームはなんとリュイルス・オーヴェのバリアをいとも簡単に貫通して、八つの頭を一発ずつ的確に撃ち抜き、消し飛ばしていく――。

 

「………………」

 

しかしラドラは全く焦ることなく寧ろこうなることが分かっていたのように忽然としている。

 

「ラドラさん、あなたは!」

 

エクセレクターから放たれたビームがエルトラゴンの胴体をかすり、平行バランスをなくして傾いていき落下していく――。

しかし、その時、エルトラゴンの中から突き破るように何かが飛び出して遥か上空に飛翔し、竜斗達もそれを捉えていた。

 

エルトラゴンはまるで蝉の抜け殻のように力無くしてそのまま地上へ落下していく、叩きつけられて強烈な閃光と共に大爆発を遂げた――しかし、竜斗達はそれに目もくれず、エルトラゴンから飛び出した何かを見据えていた。

「まだ私は終わらん、これからが本領だ。これで恐竜帝国の、爬虫人類の未来を切り開く。この『メカザウルス・レイグォーシヴ』で!!!」

 

それは――ラドラの愛機であったゼクゥシヴが彼の家系の象徴である黄金の、光り輝く全身鎧を身にまとい、二丁の新型ライフル『ティエンシィ・ライフル』を両手に持ち、更に背中からゲッターフェザーの如く、白鳥のを象った純白の巨大な翼とオベリスク状の角柱六本を展開している、まさに大天使を思わせる神々しい姿で浮遊する恐竜帝国製兵器の集大成である最強最後のメカザウルス『レイグォーシヴ』が。

 

「いくぞ、ゲッターロボ!」

 

「!?」

 

なんとレイグォーシヴはその場から姿を消した瞬間、エクセレクターの前に姿を現して強烈な回し蹴りを浴びせて吹き飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

エクセレクターは態勢を整えて姿を消したが、同時にレイグォーシヴも姿を消した。

 

――成層圏、地球上が見えるこの宇宙空間との境目でエクセレクターとレイグォーシヴが姿を現して超光速で移動しながら追いかけごっこを繰り広げる。

 

「エクセレクターと同じスピードで!?」

 

「逃がさんぞ!」

 

二機はなんとそれから中国、アメリカ、アフリカ、ヨーロッパ……世界各地に瞬間移動をしながら追う、追われるの常識を逸脱したチェイスを繰り広げた。

「ラドラさん!なぜあなたはそこまでして!!」

 

「爬虫人類だからだ!」

 

「なっ!」

 

ついに彼と通信が繋がり驚く竜斗は説得に力を尽くす。

 

「あなたは全てを諦めたんですか!?だからまた僕らと対峙を!」

 

「そうだ、私やゴーラが全て間違っていたのだ。お前達地上人類と共存するということがいかに甘く、そして泡沫の夢物語だということを悟ったのだ!

私達は業の深い、絶対に相容れない種族同士……もし互いに戦わない選択肢があったとすれば、それは――」

 

「それは……?」

 

「私達が同種族だった場合のみだ!」

 

「ラドラさん…………」

 

「私は全てを断ち切り、お前達を打ち倒す。この『断罪者(レイグォーシヴ)』でゲッター線と、その恩恵を受けて、力に溺れた地上人類に裁きの鉄槌を下す!」

 

「それが……ラドラさん、あなたの本当の意志なんですか!」

 

「それ以外にない!」

 

完全な地上人類殲滅の鬼と化したラドラに竜斗はもはや言葉では形容しがたい悲しみ、絶望を味わった……。

 


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