ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十三話「栄光のキャプテン・ラドラ」②

――ついに来る運命の時。地上人類か爬虫人類か、この蒼き星、地球に生ける二種の地球人類の間での最終戦争(アルマゲドン)が勃発しようとしている。

それぞれが存亡、思い、信念、誇り、そして明日という未来を信じて戦場へ赴いていく。

僕達も同じだ、全てを終わらせて『生きていく』ために三人の心を一つにして――若い命を真っ赤に燃やす時が来たのだ――。

 

北極圏。世界中から集結した、本隊直属の部隊含め、約二万近くの夥しい数のメカザウルスが広範囲に渡って散開、来る敵軍の襲来に備えており、そして士気を上げるために凶暴な雄叫びが極寒地でこだまする。海底直下にあるマシーン・ランドでは各員もすでに戦闘準備に入っており、ジャテーゴも玉座に堂々と座り、こつ然とした態度で待ち構えている。

「敵部隊、来ます!」

 

玉座の間の中心に新しく設置された巨大モニターには、遙か上空にて旗艦を担う早乙女のヴェクサリアス率いる、各機が展開しながら選抜隊がこちらへ向かってくる様子が映される。

 

「各機へ奴らが接近次第直ちに迎撃開始せよ。各人一歩も退かず、この領域に敵を一機たりとも入れさせるな!」

 

「了解!」

 

「あと、牢屋からゴーラを出してこちらへ連行してこい」

 

側近達も速やかに行動開始し、ばたばたと慌ただしくなっていく。

 

「さて、楽しませてもらおうか。果たしてこちらまで来れるのか――」

 

一方、選抜隊も北極圏に近づくにつれて、広範囲に蔓延しているメカザウルスの数に驚く。

「奴ら、竜斗達がほとんど殲滅したってのにまだこんな数を残していたのか……っ」

 

「恐らく、恐竜帝国本隊の戦力あるのだろうな」

 

まさに天下分け目の、史上最大の作戦だろう、と誰もがそう思ったことだろう。

 

「だが俺達にはエクセレクターとゲッターチームがいる、絶対に勝てるさ!」

 

「ああっ!」

 

やっとまわってきたこの最大の好機を逃すつもりない、目前の勝利を控えて気を引き締めていく各人。

そしてヴェクサリアスの、ゲットマシン用として改造された新格納庫内。すでに竜斗達はゲットマシンに乗り込み発進態勢に入っている。

 

「二人共、準備はいいっ?」

 

「ええ、いつでも――!」

 

「オーケイよ!」

 

三人の表情からはもはや迷いや雑念などない、曇りない清々しい顔である。

 

“三人共、準備はいいか?”

 

「はいっ!」

 

早乙女は彼らの表情を確認して、「よし」と頷く。

 

“私とマリアからもう君達には何も言うことはない、やるべきことが分かるだろうからな。

これで恐らく恐竜帝国との最後の戦いだ、君達の手で奴らに引導を渡してこい!”

 

と、きっぱりとそう告げる早乙女に三人は頷く。

 

「司令っ」

 

“どうした、竜斗?”

 

「ラドラさんやゴーラちゃんは無事だと思いますか?」

その質問に沈黙する早乙女。

 

「僕は少し不安なんです。もし仮にラドラさんが生きていて、何かあってまた僕らの前に立ちふさがってきたなら――」

 

の、やはり昨日言っていた不安を漏らす竜斗に早乙女は、

 

“その時は、願わない形になれば、君ならどうするかもうすでに分かっているはずだろう――”

 

「……はいっ」

 

 

“大丈夫、君がどんな選択をしようとみんなが、仲間が君についていくし支える。なあエミリアと愛美?”

 

「もちろん!」

 

「だって竜斗は頼れるチームリーダーだもん、ついていくに決まってんじゃないっ」

 

「二人とも……」

 

そう言い切ってくれたエミリア達に竜斗の不安な気持ちは随分なくなり、軽くなる。

 

“だから君は心配せず、胸を張って自分の思った通りに行動すればいいっ、きっと仲間が、エクセレクターが、そして君の意思によって必ず勝利へと、いい方向へ導いてくれるはずだ”

 

「……はいっ!」

 

彼らの励ましを受けてついにキッと凛々しい顔に戻る竜斗。

“よし、では各ゲットマシン発進せよ”

――各ゲットの乗るカタパルトの先にある外部へのハッチが開き、光が差し込んだ。

 

「ゲッターチーム、各ゲットマシン、発進します!」

 

前進レバーを押し込み、バミーロから順に発進、ランチャーから射出されて雲の多い空に飛び出すゲットマシンはすぐさま高速で前進しながら隊列を組んでいく。

 

「二人共、合体するよ!」

 

ゲットマシン・バミーロ、メリオス、アーバンダーの順に直列に並ぶ。

 

「チェェェェンジ!エクセレクタァァァァァァッ、ワン!」

竜斗担当の空戦形態であるエクセレクター1へと素早く合体、ゲッターフェザーを展開。マントをはためかせて大空へ飛翔していく――ジャテーゴ達も、自分達にとって恐るべき敵であるエクセレクターの出現に目の色を変えた。

 

「ゲッターロボも出現し、敵部隊、こちらの領域に突入します」

 

「直ちに迎撃開始せよ!」

 

北極圏全域に群がっていた無数のメカザウルスも動き出し、こちらへ向かってくる。

「メカザウルス、来ます!」

 

「よし、攻撃開始だ!」

 

ついに両軍は接触し、激突。最終決戦のゴングが鳴り響き、幕が上がった――。

 

「行くぞ!」

 

「おう!!」

 

ジョナサン達ブラック・インパルス隊制式採用の新型機であるステルヴァー・インパルス、ジャック、メリーのテキサスマック、そしてアレンのアーサーはそれぞれ展開してメカザウルスとぶつかった。

 

「うおぉーー!!」

 

「押し込めえ!!」

 

誰も彼もが鬼気迫る勢いで戦っていく。

 

「ヴァリアブルモード!」

 

ジョナサンの駆るステルヴァー・インパルスはすぐさま戦闘機型から人型に変形し、右手に持つライフルを構えて、放たれる複合エネルギー弾で的確にメカザウルスに直撃させて粉砕させる。

 

「オラア!」

 

戦闘機時の主翼になる、黒色の両肩の大型バインダー内に搭載した小型ミサイルで弾幕を張り、背部から折りたたみ式の長いランチャーを展開して腰を深く構える。

 

「消し飛べ!」

 

砲口から高出力の複合エネルギーの光線が発射されて射線上全てのメカザウルスを貫通、消し飛ばしていく。

 

「メリー、一気に行くぞ!」

 

「いいわよ兄さん!」

 

ケツアルコアトルを装備したテキサスマックは、相変わらずの各重砲によるキャノンパーティーを開始して、前方一面を鮮やかな火線で埋め尽くしていく。

 

「遅い!」

 

アレンの駆るアーサーも機体中に取り付けた各推進器を駆使した超機動、急加速度を乗せた斬撃で無数のメカザウルスをかっさばいていく――。

「はあっ!!」

 

そして選抜隊の要であるエクセレクター1も、トマホークを二刀流に構えて瞬間移動じみた機動力でメカザウルス達をことごとく翻弄し、そして容易く一刀両断していく。

 

【リバエスターランチャー、セット。シングルショットモード、オン】

 

トマホークをしまい、背中からリバエスターランチャーを取り出して連結させると片手持ちし、縦横無尽に動きながら複合エネルギー弾を高速に連射する。

着弾した瞬間、核爆発にも似た巨大な球状の爆発が広範囲に渡っていきメカザウルスを飲み込んでいく。

「オープン・ゲット!」

 

エクセレクター1へマグマ弾とミサイルが一直線で向かい、直撃しかけた時、合体を解除してゲットマシン三機に分離した。

「愛美!」

 

「うん!」

 

今度はアーバンダー、バミーロ、メリオスの順に縦に並んだ。

 

「チェンジ、エクセレクタースリィ!」

 

高速で合体して、折り込まれるように変形し、前部が人型の上半身、それ以外は戦車のような車体という独特のディテールと化す、愛美の操る空、海戦闘用のエクセレクター3。

 

「みんな、すぐにマナ達より後ろに下がって!」

 

そう叫ぶ愛美に応えて、すぐさまエクセレクター3の後方へ下がる各機。確認した後、人型部分の両肩後部にある二対の、フォールディング式の長方形型の砲身を展開した。

 

 

「メガ・ドーヴァー砲、いくわよお!!」

 

両肩から水平に展開された二門のメガ・ドーヴァー砲から発射された弾頭の通過による衝撃波は前方広範囲へ広がり、メカザウルスはおろか、北極の氷までもが粉々に粉砕されて、撃った後はもう何も残っていなかった――。

 

「第一、第二防衛ライン、突破されました」

 

「…………」

 

やはり精鋭機ばかりが集まった選抜隊、特にエクセレクターの前には並のメカザウルスでは手も足もでなく、どんどん北極へ押し込まれていくメカザウルス達――。

 

「各砲、一斉射撃!攻撃を休めるな!」

 

「了解!」

 

ベルクラスをベースにテキサス艦の予備パーツを使い大改造を施されたヴェクサリアスからは複合エネルギーによる高出力のビーム、空対空ミサイル、ゲッターミサイルによる援護砲撃が撃ち込まれてエクセレクター以外のSMBの突破口を開いていく。

 

 

 

「各機、このまま一気に追い込むぞ!」

 

早乙女の号令に各人はさらに気合いを込めて戦う。

 

「オープン・ゲット!」

 

再びエクセレクターは分離し、三機は北極圏に突入していく。

 

「エミリア、頼むよ!」

 

「わかったわ!」

 

メリオス、アーバンダー、バミーロの順に縦に並び合体態勢に入った。その途中、メカザウルスから執拗に追尾、そして四方からの飽和砲撃を受けるがそれを物怖じせず、竜斗達ゲットマシンは急降下しながら地上へ向かっていく。

 

「チェインジ、エクセレクタートゥッ!!」

 

合体成功し、そのスマートな体格と背中に羽根のように展開する六本の突起物、そして左腕のドリルと右腕のシーカーボックスを持つ、エミリアの担当する陸戦用エクセレクター2が姿を現した。

フロートユニットで地上から少し浮遊するその神秘的な姿はまさに妖精、または精霊のようだ。

 

「全シーカー、シュートゥ!」

 

右腕のシーカーボックス、背部の突起物の計十六機の無人攻撃機『ドリル・ビームシーカー』が一斉に飛び出して、まるで従者のようにエクセレクター2の周り近くに展開して先端をドリル状から砲口へ変形、さらに本機も左腕のドリルを真天井に突き上げて高速回転させた。

 

「フルバースト!」

 

エミリアのかけ声と同時に全シーカー、ドリルから光線、無数の光弾の一斉射撃が行われ、全方位にいる大量のメカザウルスに襲いかかる。貫通、穴だらけ、そして粉砕していった。

 

「………………」

 

その様子を無表情で見ているジャテーゴの前に側近に連行されてきたゴーラと対面する。

 

「連行してまいりました」

 

「よし、私の元に連れてこい」

 

「はっ!」

 

だが最後まで暴れるように抵抗するゴーラだが連れてこられと明け渡した瞬間、すかさずジャテーゴは彼女の首元で右腕にぐっと絞めるように取り押さえ、左手で懐から大振りのナイフを取り出して突きつけたのだ。

 

「ラドラ!」

 

すぐさま大声で呼びつけると玉座の後ろに控えていた飛び出してくる彼は、その光景に愕然となる。

 

「ゴ、ゴーラ!!」

 

「ラドラ……」

 

思いがけない状況の対面に緊迫化するこの場。ジャテーゴにニィとラドラに不気味に微笑みかけた。

 

「ラドラよ、お前に出撃してもらう時が来た。お前のためにガレリー率いる優秀な開発陣が総力を上げて造りあげた最新鋭機が用意されている。直ちに出撃しろ」

 

画面を見ると、そこには猛威を揮うエクセレクターの姿が映し出される。

 

「あれは……まさかリュウト君達では……」

 

「え……リュウトさん……まさかっ!」

二人はジャテーゴが何をしたいのかをすぐに理解した、それは。

 

「ラドラよ。ゴーラの命が惜しくば、ゲッターロボを破壊し、そして地上人類を滅ぼしてこい!」

「なっ…………」

 

「お前が見事それを成功した暁にはゴーラを解放し、お前に更なる絶対的な名誉と栄光を授けよう。だがお前がそれに応じなかったり、最低限ゲッターロボの破壊に失敗した場合にはどうなるか……分かるだろうな?」

 

ゴーラの命を賭けてラドラにエクセレクターを、竜斗達の抹殺を命じるジャテーゴ。

 

「絶対にい、いけません!!私の命などどうなろうと構いません、しかしリュウトさん達にだけは手をかけては絶対にいけません……!!」

必死に訴えるゴーラの声を被せるようにジャテーゴは声を張り上げた。

 

「ラドラよ、恐竜帝国の、爬虫人類の名誉にかけてゲッターロボを破壊するのだ!」

「…………」

 

「お前は何を戸惑っている、あやつらはお前の親友であるクックまでも情け無用に殺したんだぞ?

そんな野蛮で残酷な地上人類を許せるのかお前はっ!」

 

「…………!」

 

「どの道、お前に残された選択肢は栄光か、死か、選べるのは二つに一つ。成功の暁に得られるのは栄えある栄光。しかし失敗すれば死かまたは処刑かだ」

 

心が揺れ動き、ブルブルと身震いしているラドラ。果たして彼は選んだのは……。

 

「……わかりましたジャテーゴ様。このラドラ、名誉にかけて必ずや栄光を選んでご覧に入れましょう……!」

 

「ラドラ!!」

 

ドスの利く低く、そして震え声でそう告げたラドラ。

 

「では行け!名誉ある聖戦に挑んでこい!」

 

彼は頭を下げて新型機のある格納庫へと向かうためにここから去っていった。

 

「そ、そんな……ラドラ、なぜです……っ」

 

ゴーラは完全に絶望してしまっている。

もうないと思っていた、自分の良き理解者であったラドラ、そして竜斗達がまた互いに戦うことになることを、そして……この戦いでどちらかが死ぬしかないということに。

 

それに関わらず無力な自分は何も出来ず、そして仲がいいと分かっていてあえてその両者の殺し合いの促し、そして観戦するジャテーゴと共に、その行く末を見る以外にないことを……。

 


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