ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十二話「大空へ羽ばたく、天使翼を持つゲッターロボ」⑧

「なんということだ……」

 

「まさに――」

 

救世主(メシア)の機体がここに現る――あれほどまでに苦戦していた自分達がたった一機のSMBによって一瞬で決着がついたのだから。リーゲン含むそこに居合わせた各隊員は希望の光を見る。

 

「君達の乗る機体は一体……っ」

 

“これはエクセレクター、ゲッターロボの真の姿にして全てを終わらせるために開発された最終兵器です”

 

「エクセレクター……か」

 

エクセレクターという名前から何か力強い、神秘的な雰囲気を感じて思わず十字を切るリーゲンや他の隊員。

 

「愛美、あとメカザウルスの数は?」

「レーダーを見る限りヨーロッパ全域のメカザウルスはもういないようだけど……」

 

しかしながらこれを操る三人はあまりの強力さに少し脅えているのか唇がひくついており、そして身震いしている。

 

「確かに天下無敵だけどね……」

 

「エクセレクターが……本気になったら……どうなるのこれ……」

 

出力値を見ると実はあれだけ猛威を揮ってもまだ最大値の五十パーセントにも満たない状態であり、さらには使用した武装も一部に過ぎない。もしもフルパワーではどうなってしまうのか猛烈な不安感に陥るエミリアと愛美。

 

「俺達一人一人が気をつけて扱えば大丈夫だよ」

「けど……っ」

 

「もし俺が暴走しそうになったらエミリア、愛美がフォローして止めてほしい。そして二人も暴走しそうになったら残りの二人でフォローに入る、それがチームだ」

 

と、竜斗は自信に溢れた顔で二人を安心づける。

 

「俺達は世界を破滅へ向かわせるようなことをするわけでもなければ、力に溺れて世界を手に入れる気もさらさらない。

ただ、この戦争を終わらすためだけにこの力を使うだけだし、そのためにエクセレクターが世界に光をもたらす力だと俺は信じている。

だからエクセレクターのを、そしてチームを信じてくれ!」

 

必ずその願いを叶えてくれると確信し、そしてそれを制御する自分達ゲッターチーム全員を信じると気合いの入った彼の言葉を聞いたエミリアと愛美は不思議と不安感が消えていく。

「リュウト、本当に強くなったね」

 

「うん。アンタにそう言われると信じるっきゃないじゃない?」

 

「二人とも……ありがとうっ」

 

二人も迷いが消えてエクセレクターの力を、そしてそれを操る自分達の力を信じることを決意し、三人の心が同調した瞬間、エクセレクターは更なる光を発し、まるで太陽のように輝きだした。

 

「おお、まさしくあれは神の姿だ……っ」

 

その光景に誰もが、光明を発するエクセレクターに対して天から舞い降りた『神』のような存在だと畏怖と尊敬の念が表れ、そしてこの劣勢な戦況を覆し、きっと世界を救ってくれるだろうという希望が強くもたらされた――。

 

「次はシベリアに行くよ!」

 

「「うんっ!」」

 

唯一自分達が完封なきまでに敗退したシベリア戦線へ、ある意味リベンジ戦をかけに赴く竜斗達はリーゲン達にその旨を伝える。

 

「分かった。後は私達がここを任せてくれ。と、いってももうメカザウルスが君達のおかげでもういないようだがな……」

 

「本当に助かった、君達にはもう言葉では著せられないほどに感謝している!その力を最大限に揮い、シベリアの部隊も救ってやってくれよなっ」

 

「気をつけてな。そして絶対に生きて帰ってくるんだぞ、三人とも!」

 

リーゲンと周りの隊員達から絶大な感謝と激励を貰った竜斗達の気合いが最高潮に達した。

「皆さんありがとうございます、愛美!」

 

「オープン・ゲットぉ!」

 

再びゲットマシンに分離してシベリアへ直行していく。リーゲン達は彼らの姿が見えなくなるまで手を振りながら見送っていた――。

 

「アメリカ、日本、オーストラリア、ヨーロッパのほとんどの隊が突如現れた謎の一機によって一瞬で壊滅……っ」

 

「なにい!!」

 

マシーン・ランド。ジャテーゴはその急な伝達に、何が何だか理解できず目が点となっている。

 

「オーストラリアの第一恐竜大隊を筆頭に――すでに十万機以上のメカザウルスが壊滅を受けたようでございます……それも、情報によればたった一機の機体によってでございます」

 

「何だと……」

 

当然の如く、耳を疑うジャテーゴはすでに余裕綽々と勝利に満ちた様子から一気に転落して苦汁を飲まされたような歪んだ表情だ。

 

「と、どんな機体だ!」

 

「詳しくはまだ分かりませんが、それが……ゲッターロボと非常によく似た機体だということでございますっ」

 

「ゲッターロボ……だと……」

 

シベリア戦線にてザンキ達ジュラシック・フォースによって破壊されたハズでは……と、誰もが信じられないような顔をするがただ一人はその情報に仰天しつつも活気に目覚めた者がいた。

 

(リュウト君……まさか君達か!)

 

後ろに控えていたラドラの心の中は少しずつ希望が芽生えて死んだように過ごしていた彼は、一気に精気のあるいい顔色となっていった――。

 

「直ちにヨーロッパ方向よりこちらへ接近する謎の機体に対し警戒態勢に入れ!」

 

――そしてシベリアではすでにその情報が第二恐竜大隊の各人に入り、ユーラシア連合を圧倒的に押し込んでいた全てのメカザウルスは突如停止し、厳重な警戒態勢に入っていた。

 

「おい、あのゲッターロボが復活したってホントかよ!」

 

「嘘だろ、ザンキ様達に破壊されたハズじゃなかったのか?」

 

疑心暗鬼に駆られる各恐竜兵士とキャプテン達。それはこの手で破壊したはずの本人達も同じであった。

「ザンキ……どういうことだよ……」

 

「俺だって分かるわけねえよ!」

 

「………………」

 

ザンキ、リューネス、ニャルムの三人もその慌ただしい状況、何よりも自分達の手で完封なきまでに打ちのめしたはずの天敵が復活したかもしれないという事実、しかもそれによって世界中に散らばっていた味方が全て壊滅したという事実に怪訝と疑心、そして緊迫に満ちた複雑な顔だ。

 

(あの子は生きていたのか……しかし――)

 

ゴーラ、そしてラドラと仲良くなった、ゲッターロボのパイロットの地上人類の子を少なからず心配していたクックにとって嬉しさもある反面、自分達の仲間も大勢失ったことに対する複雑な心境を抱いていた。

 

「ん?」

 

ランシェアラに乗るザンキへデビラ・ムーの司令部から通信が入り、すぐに繋ぐ。しかしその瞬間、彼は目を疑い、ガチガチに震える。

 

「ザンキ…………っ」

 

全視界モニターの一区切りに映るのは何と自分が暗殺したハズのバットの姿が……。

 

「オジキ………生きていたのか……っ!」

 

死んだとも言われてそして確定していたと言われたあのバットが確かにモニターに映り、目を開いて自分に会話をし、つまり生きていることを証明していることに当然の如く唖然となるザンキ。

 

「お前は長い間、武者修行に行っていて知らないだろうがワシには万が一に備えてもう一つの心臓を埋め込んでおいたのだ。

弱っている心臓が停止するとしばらくして動き出すようにしてな、そして部下にその事を話して回復するまでお前に察知されぬよう隠居していたのだ――」

 

「な………………っ」

 

バットの言うとおり、彼はその事を全く知らず「しくじった」と舌打ちした。

 

「自らの野心のために叔父であるこのワシを一度殺した裏切り者め、どうやって罪を償ってもらおうかっ?」

 

「………………」

 

容赦なく睨みつけるバットと、野心、そして過信から自ら身を滅ぼそうとしてガタガタに震えるザンキ。

 

「ザンキよ、お前がデビラ・ムーへ生きて帰ってくるために残された道は一つしかない。それは今こちらに接近する謎の機体を破壊することのみだ」

 

「オジキ…………っ」

 

その意味を察知したザンキは息を呑んで、特攻するごとく覚悟を決めた――。

 

「来たぞ!」

 

ヨーロッパ方向から突如姿を現すは真っ白に発光するマントに身を包む、白銀のゲッターロボ……竜斗の担当する空戦形態『エクセレクター1』の姿が。

 

「なんだあれは……あれもゲッターロボなのか……」

 

「信じられんが……」

 

その流星の如き現れた光輝くゲッターロボの姿に誰もが茫然となる。だが、ザンキの駆るランシェアラが先に飛び出して目の色を変えて立ち向かっていく。

 

「うおおーーっ!!」

 

後戻りができない、戦う以外に選択肢のない追いつめられた彼からは何が何でも倒す、この一点のみだ。

 

「ザンキ!!」

 

「お、俺達もザンキに続けえ!!」

 

それが発端となり地上、空中から怒涛の如くメカザウルスがエクセレクターへ進撃を開始。各火器による砲射撃、突撃……ありとあらゆる戦法を持ってエクセレクター一点で襲いかかってくる。竜斗達は直ちにゲッターフェザーで再び身にくるい、ミサイルや弾丸などの全ての衝撃、熱、そしてマグマ弾や熱線を全て遮断して一瞬で南側へ移動した。

 

「今から出力をあげるよ、二人とも!」

 

「うん!」

 

「オーケイ!」

出力値が五十パーセントを越えたその時、エクセレクター1に新たなる変化が――。

 

「はあああっ!!!」

 

マントが突然、二分割に割れてそれぞれ左右に展開。その布のような物質がモーフィングのような変形で一枚一枚が見事な白鳥の羽根で形成されていき、それを高らかに広げた。

 

「なんだと……っ」

 

「ゲッターロボが……天使の姿に……っ!」

 

白いマント状から、『フェザー』の名の通り巨大な白鳥の如き美しい翼へと変形を遂げ、手を広げて堂々と空中に浮くその姿はまさに天より遣わさせれた者、まさに『天使』のような神々しい出で立ちだ。

しかし、それでもを止めようとしないメカザウルスにエクセレクター1は身を隠すように羽根を前に出して盾のように全弾を防いだ。

 

 

「いくよ!」

 

すぐさまそこから瞬間移動でさらに後方へ下がると地上に降り立つ。

 

「あれは!」

 

待機していたユーラシア連合軍がエクセレクター1を発見して視線が集中する――しかし竜斗達は気にとめどなく、ただメカザウルスの来る北の方向へ機体を向ける。

エクセレクター1は背部左右に装備した二本の砲身と思わせる長い金属物を取り出して直列に連結。まるで指揮棒のように器用にクルクル回して、長い砲身の砲口をメカザウルスのいる北方へ向けた。

 

【リバエスターランチャー、セット。ディフューズモード、オン】

 

新兵装である『リバエスターランチャー』を両手で持ち、腰をぐっと固定し構えるエクセレクター1。出力の上がる機内の複合融合炉から腕へ、そしてランチャー内にある二つ増幅炉に複合エネルギーが流れ込みさらに増幅されていく――そして。

 

 

「はあ!!!」

 

リバエスターランチャーの砲内に溜まったエネルギーが波動となって前方へ拡散放射された。高密度のエネルギー波動がエクセレクターから扇状にシベリア全土、いやそのまま更に広がり大気圏を抜けて月軌道上、さらに宇宙の果てまで伸びていく――シベリアの地表は剥がれていきメカザウルス全てはその波動の直撃を受けて、もはやかけらすら残らないほどに消されていく。

 

「ぐわあああっ!!」

 

「ざ、ザンキ……っいやああああっ!!」

 

「結局、俺はこうなる運命だったってのか……!!」

 

ジュラシック・フォース全機もまともに直撃を受けてリュイルス・オーヴェが一瞬で破壊されてそして各機体、そして本人達も強力なエネルギーをマトモに受けて消されていった――。

 

「ラドラ、もし……お前が生きているなら……また……っ」

 

クックもまた、ラドラへ会いたい、そして後を託す思いを告げる前に消し飛ばされていった――。デビラ・ムーも何とかバリアを破壊されただけで済んだものの、

 

「メカザウルス隊全て……そしてデビラ・ムーのリュイルス・オーヴェも全て消滅……っ」

 

「何だと!?」

 

たった一機によって全員が消し飛んだ事実にバット達は完全に絶望した――。

 

「将軍、あの機体がデビラ・ムーのすぐそばに!」

 

中央モニターを見るとエクセレクター1が羽根を羽ばたかせてデビラ・ムーの前部付近に浮遊していた。

「もうあなた達には戦う力はありません、どうかこれ以上戦火を広げるのはやめてください!」

 

と、なんと竜斗から戦争をやめるように告げられるが、バット含め誰もそれに納得するはずなどなかった。

 

「ふ、ふざけるな!貴様らも沢山の同胞を殺したくせによくもそんなことを……!」

 

「僕らだって好きで戦いたくて、あなた達を殺したいわけじゃない、この地球上で普通に、平凡に暮らしたかっただけです!」

 

「な…………っ!」

 

「それに……出来ることならあなた達と仲良くなり、共に暮らしていきたかった……それなのに……それなのに……!!」

 

「何を甘いことを……!我々は所詮、生まれの違う異種族、上手くいくはずなどない!」

 

 

「それでも僕は、時間がかかろうとどんな苦難があろうと共存できると今でも信じてますし、もしそれが叶うのなら、話に応じてくれるのなら今すぐにだって戦いから降ります!」

 

互いの本音を言い分を次々にぶつけ合う両者――果たして。

 

「お願いです、これ以上僕らに攻撃をさせないで下さい!もう無駄な争いはしたくない!」

 

「このバット、恐竜帝国の将軍として、そして爬虫人類として最後までお前達地上人類と戦おうぞ!」

 

バットの宣言に歓声を上げる部下達。デビラ・ムーはその巨大な右腕を振り込んでエクセレクター1へ向けて強烈な拳が放たれた。直撃する寸前に翼で身を包み、衝撃を緩和するも後方へ飛ばされていく。

「リュウト……」

 

「どうするのアンタ?」

 

二人の問いに、彼は複雑な表情をしつつもすぐに目の色が変わり、すぐさま背部から二本の砲身を取り出して連結、リバエスターランチャーを再び展開した。

 

「なら……俺は迷わず全力で倒す!」

 

話し合い、説得が通じない以上は悲しいが戦う以外他はない――ならば少しでも彼らを苦しませないためにも全力で葬り去ることを決めた。

 

(俺達はゲッターロボという力を使い、これまで戦って爬虫人類の人達の命を沢山奪ってきたから自分達が正しいことだけをしているなんて絶対に思わない、だけど――)

 

結局最後まで戦うと決めたのは向こうの確かな意志だと、そして自分達に降りかかる火の粉は落とさねば、と竜斗は割り切った。

 

 

「死ね、我らが天敵ゲッターロボ!」

 

デビラ・ムーから滝のような大量のドロドロのマグマを吐き出してくる。さらにドラグーン・タートルやヴェガ・ゾーンのように大量のミサイルまでもが放たれてこの一帯全てを焦土へと変えていく。

 

「どうすんのよ!」

 

「任せといてっ!」

 

エクセレクター1は瞬間移動でデビラ・ムーの真下へ密着し、リバエスターランチャーを斜め上に押し付けた。

 

「二人とも、タイミングを合わせて!」

 

「わかったわ!」

 

「任せといて!」

 

三人は各コックピットの右足元にある出力ペダルに足をかけて、竜斗が「1、2、3」とタイミング取り、ペダルの同時押しに成功すると複合融合炉のリミッターが解除されて出力がフルとなる。

 

【リバエスターランチャー、セット。バスターガンモード、オン。複合エネルギー最大出力、チャンバー内、正常加圧中――】

 

膨大な複合エネルギーが機体、そして砲身内に満ちた時――。

 

「うああああああっ!!!」

 

竜斗が様々な思いを込めて叫んだ瞬間、砲口から放たれた光線がデビラ・ムーを一瞬で呑み込み、内部の人間全てはそのエネルギーに身体が消滅していく。

 

「恐竜帝国、そして爬虫人類に……栄光あれーーーー!!!」

 

バットがそう叫んだ瞬間、彼もまた消し飛ばされていきデビラ・ムー自体も原子分解されていく――光線はそのまま地球を抜け出していき、さらには太陽系をも突き抜けていき最終的には射線上にあった未開惑星に直撃した瞬間、その星は光線によって地表は削られてそのまま中核にまで到達。コアを粉砕されてその余波で大爆発、それは地球上からでも確認できるほどの巨大な爆発の白光に包まれたのであった――。

 

 

「…………」

 

何もなくなったこの一帯で竜斗達は光線が飛んでいった空を後味の悪い複雑な表情で眺めていた。

 

「複合融合炉がレッド・ゾーンに入った……しばらくはムチャできないわね」

 

「うん。しかしまあ、なんて凄い威力……」

 

あんな巨大なデビラ・ムーを一撃で消し飛んだことに唾を飲む二人。さすがに先ほどの攻撃で単一惑星一つまでも粉砕されたことまでは彼らは知らないが――その時、三人の元へ通信が入り、受信してモニターに移すと早乙女が映り込む。

 

“三人共、聞こえるか!”

 

「司令!」

 

“よくやった。君達の奮闘したおかげで世界中に蔓延っていたメカザウルスのほとんどは全て消えたぞ”

 

「…………はいっ」

 

これを開発した早乙女も彼らの力に心を奮わせているような雰囲気であった。

 

“これからだが、一旦アメリカのテキサス基地で合流だ。戻ってこい”

 

「えっ?」

 

“最終的な作戦会議を行う、恐らくは恐竜帝国の本拠地、北極圏に攻撃を仕掛けることになるだろう”

 

――三人の気がグッと引き締まる。ついに来るべき最終決戦が、恐竜帝国との雌雄を決する最後の戦いが今より始まろうとしていた。

 




次話より完結編に入ります、あと残りわずかですがどうか最後までよろしくお願いします(最後の各設定集は最終話を投稿し終わった後に出します)。

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