「いくよ二人共!」
「うん!」
「思いっきりやりなさいよ!」
エミリアの操縦に連動してエクセレクター2は、フロートユニットからの反重力によるホバリングしながら地上を無音で、それも左右にジグザグで高速移動を開始する。
(ワオ……アタシが今まで乗ってきたのとは別物だわ……でもこれならっ!)
次々に迫りくる地上のメカザウルスを反重力を生かした低空でのその華麗な空中移動と滞空を見せつけてアクロバティックな軌道を見せるエクセレクター2。
滞空しながら地上へ左腕のドリルを突き出すと時計回りに高速回転させると先端付近に開けられた多数の孔からおびただしい数の小さな光弾が円を描くように、そして雨のように降り注がれて無数のメカザウルスの身体を貫通、穴だらけにして一瞬で肉塊に変える。
「来るよエミリア!」
「大丈夫っ!」
四方八方からメカザウルスからの集中砲火を受けるもエクセレクター2は超高速低空飛行でかいくぐり、この大陸中を怒涛の勢いで駆け巡った。
「一気に終わらせるわよ!」
エミリアはキーボードに素早く何らかのパスワードを打ち込む。
【『MFS(ミラージュ・フォーミュラ・システム)発動。複合融合炉フルブースト、タイムリミットは一分間――】
瞬間、複合融合炉が「ギュウウウ!」という音と共に活性化、機体全体が真っ白に発光した。
「大型、小型ドリル・ビームシーカー、シュート!」
彼女の甲高い掛け声と共に右腕のシーカー収納ボックスから十基、そして左腕のドリル、そして背部から針のような突起物六基、計十七基のシーカーが射出され、それらも真っ白に発光している。
「はあああっ!!!」
――瞬間、エクセレクターとシーカー達による、このオーストラリア全土へビームとドリルで埋め尽くされたスコールにも似た逃げ込む隙間もない飽和攻撃が始まりメカザウルスは呑み込まれていき、一瞬の内にバリアを展開していたヴェガ・ゾーン以外の、大陸に蔓延っていたメカザウルス三万機全てが消滅した。
「メカザウルス、エイビス部隊、ゲッターロボによって全て壊滅……っ」
「何だと!!?」
クゲイク達は、この短い期間で一体何が起こったのが、何の攻撃が行われたのが脳が理解できておらず茫然自失している。
「ゲッターロボらしき敵機、ヴェガ・ゾーンに急接近してきます!」
モニターにはエクセレクターがこちらに迫ってきていることが分かり、慌ててクゲイクはヴェガ・ゾーンからの攻撃指示を出す。
「何としてもヤツを破壊しろ!」
ヴェガ・ゾーンに張り巡らせたマグマ砲、大型ミサイル砲台、機関砲台が起動しエクセレクター一機に目掛けて怒涛の勢いで一斉砲撃を繰り出した。地形が破壊するような大火力攻撃を加えて有効打を与えようとするもエクセレクターは同じく低空飛行を超高速で移動、まるで飛燕のように。
「美しい自然に囲まれたオーストラリアを汚して、動物や地上人類を皆殺しにして乗っ取った罪は重いんだからっ!」
彼女の怒りに呼応するようにドリルを何故か取り外して、そのまま何もない左腕を真上に突き上げたのだ。
「なにい!!?」
空洞の筒状と化した左腕のドリルの連結部から金色に光る極太の光線が発射され、何と遥か成層圏にまで伸びていく。
「オーストラリアの皆の恨み!」
途方にもない光線の長さを維持したまま、ヴェガ・ゾーンへ真っ二つに叩き斬ろうと全力で振り落とした。
「敵機より、攻撃きます!」
絶大な全長を持つ光の剣がヴェガ・ゾーンを覆うように張られたバリアと衝突した。エネルギー同士の激しいぶつかり合いで「バチバチ」とスパークを放出している。
「うあああっ!!!」
しかしエミリアはさらに力、気合いを入れて、さらに左レバーを押し込んだ。
「クゲイク司令、バリアが!」
ついにバリアが方が押し負けてしまい、破られてしまう。だがエクセレクター2の一刀両断は終わらずそのままヴェガ・ゾーンに縦一直線に斬り込み、金属製の城壁を溶かしながら真っ二つにしていく。あちこちで小規模の爆発が始まり、次第それが大きくなっていく――。
「ヴェガ・ゾーン、もう持ちません!」
「と、突然現れた……破壊されたはずのゲッターロボによってここまで……っ」
「司令、ゲッターロボがこちら一直線で突撃してきます!」
モニターを見ると、高速回転するドリルを突き出しながらロケットのように突っ込んでくるエクセレクター2が映る。
「これで終わりよ!!」
ついに勢いのままヴェガ・ゾーンに大穴を開けて内部に吶喊、内を掻き回し、穴だらけにしていく――。
「ぐあ!」
「うわあ!」
内部の人間はエクセレクター2の攻撃に吹き飛ばされて、そして爆発に巻き込まれていく――それは司令部に広がり、クゲイクの部下も大爆発によって呑み込まれ、吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
「くっ!」
彼は直ちに退避しようとその場から離れたが上から落ちてきた瓦礫が不運にも直撃して下敷きにされた……。
「エミリア、早くここから離れよう。爆発するよ!」
すぐさまエクセレクター2はドリルで無理やり逃げ道を開きながら一直線へ進み、外へ出て素早くそこから一気に離れていく。
「基地が爆発するよ、衝撃に備えて!」
ドラグーン・タートルのような強烈な閃光を放ったと同時に、水爆のような巨大な球状な爆発と衝撃波がこのオーストラリア全土に拡散した。
数百キロ離れた場所でその光景を眺めるエミリア達はこれで、オーストラリアがまた昔のような自然に溢れた姿に戻ってくれることを祈っていた。
「次はどうするリュウトっ?」
「次は……ヨーロッパだ!」
「もう観光しているような気分ね、これは――」
エクセレクター2はすぐに次の目的地の欧州地方へ進路を向ける。
「オープン・ゲットゥ!」
エクセレクターは再び合体解除して三機のゲットマシンに分離し発進、凄まじい推進力とスピードで三角状にフォーメーションを組みながら前進していった――。
「なんてメカザウルスの数だ!」
――ドイツ。エミリアの生まれ故郷であるこの国、いや欧州全てはメカザウルスによって制圧寸前であり、各国の軍も最後の最後まで応戦する。
「押し込まれる、もうダメだ!」
「最後まで諦めるな、あのアラスカ戦線の時のように神が我々に味方してくれる!」
古き良き時代の街並みも今や見る影もない瓦礫の山ばかりのミュンヘン、砂と硝煙まみれた地上から空のメカザウルスに砲撃を繰り出す、連合軍にいたはずのリーゲンの駆るシヴァアレス。
(ちっ、ドイツをこんな無惨な姿にしやがって……!)
自身の祖国、そして生まれ育った街を汚したメカザウルス達にこれまで感じたことのない程の怒りを露わにしていた。
その時、空中のメカザウルス達による地上へ空爆が始まり、地面が穴だらけにされていく。
建物の瓦礫に埋もれ、爆発によって惨い姿となった無数の死体、メカザウルスやSMBの残骸……炎に包まれていくこの街はまさに地獄である。
「くあっ!」
メカザウルスから放たれた対地爆弾がシヴァアレスの真横に落ちて大爆発、吹き飛ばされて、裏返しのまま地面に叩きつけられた。
「しまったっ!」
そして空中からメカザウルスがシヴァアレスに狙いをつけて突撃してくるのがモニターで確認した。頭をぶつけて血を流すリーゲンは「かくなる上は」と自爆スイッチに指を置いたその時、メカザウルスは真っ二つに縦に切れ目が入り、そのまま左右に別れて地上に落ちていき激突した。
「おお……っ」
リーゲンが見たその先には空中に浮遊する真っ白に光るマントを羽織り、白銀の手斧を持つ聖者の姿……そう、ゲッターチームのエクセレクター1の姿が。
「大丈夫ですか!」
竜斗の声を聞いた彼は「ハッ」と驚く声を上げた。
“ま、まさかゲッターチームかっ!!”
「た、大尉!?」
「もしかしてリーゲン大尉ですか!?」
互いに声を聞いた彼らは思わぬ再開に驚き、そして喜び合った。地上に降りてすぐにシヴァアレスを起こし上げた。
「大尉、あなたは連合軍にいたはずでは?」
「あれからしばらくして、入れ替わる形で本国に配属になったんで戻ってきたんだよ。それにして君達がシベリア戦線で敗退したという悲報を聞いて心配していたが……無事で本当に安心したよ」
「大尉……っ」
「とりあえず、今は今の現状を何とかしよう。手伝ってくれないか」
「了解!」
エクセレクターは空に飛び上がり、煙塗れで真っ黒いと茶色の混じった醜い空とまるでメカザウルスが虫のように沸いているその光景を見渡す。
「アタシのお父さんの生まれ故郷がこんなにヒドく……っ」
エミリアもまたリーゲンと同じように激しく憤怒する。
「竜斗、次はマナにやらせて!」
「分かったっ」
「頼むよマナミ!」
ちょうどその時、周りのメカザウルスがエクセレクターへ攻撃を仕掛けてくるが、合体を解除する機能『オープン・ゲット』で再びゲットマシンへ分離、すぐさまそこから離れた。
「今度はこのマナちゃんがメカザウルスを成敗する時間よ~っ!」
空を飛び交うゲットマシンにメカザウルスは雄叫びを上げながら目を追っている。
「いくわよ二人共!」
「ああっ!」
「うん!」
今度は愛美のアーバンダーが先頭になり、続いて竜斗のバミーロ、そしてエミリアのメリオスと、合体するために直列に並んだ。
《チェンジ!エクセレクタースリィ、いくわよっ!!》
合体成功した三機は1、2のような人型形態にはならず、折り込まれるように変形していく。
それは人型の頭部と両腕の生えた上半身と、戦車に近い車体を合体させた、何とも奇妙なフォルムへと変形し、底部や後部に多数内蔵した小型バーニアスラスターとアポジモーターで空中浮遊している。
「ジーザス……あれがゲッターチームの新たなる力……か」
その未だかつてない未曾有の変形をする過程、完成した姿を目撃した敵味方の者はやはり仰天し、そして魅入られてしまった。
「あれを使うわよ!」
空、海戦型形態である『エクセレクター3』は車体後部にあるウェポンラックから折り畳まれた巨大な重火器を取り出して展開、すぐさま持ち構える。
「ニールセンのおじいちゃんのとっておき、『エリダヌスX―02』をおみまいしてあげるわよ、有り難く受け取りなさいよね!」
前の改良モデルであり、一応小型化したエリダヌスX―02の銃口を何故かメカザウルスに向けようとしない。
コックピットでは愛美の巧みな操作によってXスキャンモードへ移行、モニターには地図、それも欧州全域が映し出されて、そこに浮かび上がるアリの大軍ように無数の赤い点が蠢いている。
「ヨーロッパ全域のメカザウルスを全て消し飛ばす!」
しかし黙っているわけでもなく次々に来るメカザウルスの猛攻を各推進器を駆使したアクロバティックな空中移動で避けている内にエリダヌスX―02のエネルギーチャージが終わり、モニターに映る地図全てに緑色の照準が入り固定するとトリガーに指をかけるエクセレクター3。
「いっけえ!!!」
トリガーを全力で押し込んだ瞬間、特有の高音の発射音と共にドイツ、いやヨーロッパ全域に蔓延る空中、地上、そして水中にいる、約六万近くのメカザウルスが同時に一撃のもとに粉砕され、モニターの赤い点滅は全て消え失せていた――。