――連合軍、恐竜帝国軍共々、突然とまるでサーカスショーの如き芸当を見せつけて姿を現したゲッターチームの駆るエクセレクターに目を奪われ、呆気に取られている。
“竜斗、なんだよこれは……っ”
「早乙女司令達がエリア51で極秘裏で開発していた本当のゲッターロボ、エクセレクター。僕達の新たなる力です」
“エクセレクター……”
「話は後にして、メカザウルスがこっちに押し寄せて来るよ!」
突然現れた謎の機体にメカザウルスは直ちに倒さんと、四方八方から怒涛の勢いで一気に押し寄せてくる。
「リュウト!」
「任せてっ」
エクセレクターは両腰にマウントされた二振りのゲッタートマホークを持つ――。
「!?」
瞬間、エクセレクターの姿が消えた――が、その二秒後に周辺にいる約五千機というメカザウルスが細切りにされて同時に爆散したのだ。
「なにい!!」
そこから遥か数十キロ先にトマホークを振り切っているエクセレクターの姿があった――。
「な、なんだこのスピードは……っ」
「は、速すぎて何がなんだか分からなかったわ……」
「……うぶ、鼻血が……」
竜斗達も何が起こったか分からずポカーンと呆然しているがだが休むことなく次々とメカザウルスが押し寄せてくる。
「竜斗!次来るわよっ」
「あ、うん!」
トマホークをしまい、両手首からキャノン砲『ハンディ・ビームシューター』がせり出され、それはまるでUFOのような慣性の法則を無視した、常軌を脱した機動で飛び回り複合エネルギー弾を全方位に避ける隙間のない雨のようにばらまくとメカザウルスはかすっただけでも消し飛び、直撃はもはや塵一つも残らず、この攻撃ですでに一万以上のメカザウルスが消滅――。
「くそお、あの謎の機体に一斉攻撃を開始だ!」
メカザウルスからマグマ弾、ミサイル、機関砲……各跳び道具で隙間ない射撃を加えるが、エクセレクターの背部にあるマントの形をした新型フライトユニット『ゲッターフェザー』で身をくるい、シールドの役目を果たして全ての弾を掻き消して遮断したままそこから再び姿を消した。
「また消えた!」
瞬間、空中にいる三万というメカザウルスが約十秒の間に全て粉々に粉砕された――。
「なんなんだよあのゲッターロボは……」
「強い……強すぎる……」
一分にも満たない内に空中のメカザウルス全てが消え去っていることに唖然、呆然、騒然となるジョナサン達の前にエクセレクターが姿を現した。
「竜斗……いったい何が起こったんだよ……」
『ぼ、僕もこのエクセレクターの凄まじさにもう何がなんだか……』
確かに早乙女は劣勢から全て覆せるだけの力はあると聞かれていたし、信じていたが話と体験は全く。
これまでの自分の乗っていたゲッターロボとは色々な意味で『別物』であった――。
「リュウト、まだ残っているメカザウルスが来るよ!」
後方から確かに先ほどより遥かに数が減ったが、それでも残ったメカザウルス達が、突如現れた自分達にとっての恐るべき脅威を今すぐ破壊せんと目の色を変えて向かってきていた。
「皆さん、今すぐエクセレクターから後退してください!」
言われた通りにエクセレクター後ろへ下がっていく各機。襲いかかってくるおびただしい数のメカザウルスの方へ向き、腹を抱え込む仕草を取ると腹部中央に円い紅いレンズが出現した。
「二人共、出力を上げて!」
「うん!」
「派手にぶちかましちゃいなさい!」
グラストラ核エネルギー、プラズマエネルギー、ゲッターエネルギー、三種のエネルギーの共鳴反応による、出力が計測不能レベルの複合エネルギーで稼働する複合融合炉。
溜まりに溜まったエネルギーがエクセレクターの腹部直結へ伝わっていく。
「あなた達も容赦なく戦う気なら、僕はもう迷わない!」
竜斗は躊躇なくレバー横の攻撃ボタンを全力で押し込んだ――。
「エクセレクタァァァァァァッ、ビィィィィィィム!!」
少し斜め上へ腹を突き出して放たれた黄金色の光線が一直線上に駆け抜けていきその射線上にいた全てのメカザウルスは全て塵もかけらもなくなり、さらに光線はそのまま地球圏を抜けていき宇宙へ飛び出していった……。
「これが……エクセレクターの力か……」
「信じられねえ性能だ……っ、だが――」
その絶大な威力を目にしたジョナサン達は目が点になっていた。だが、次第に驚愕が人類最大の希望へ変わり、徐々に歓喜の声を上げた。
「エクセレクター、そしてゲッターチームがいれば俺達人類はまだ希望はあるっ!」
「寧ろこの戦力差を覆して勝てるかもしれん!!」
最低であった士気が彼らの出現で一気に最高潮に達し、周りでは意気揚々と雄叫びをあげている。
“ヘイ、ゲッターチーム!待ちわびてたネ!”
“おかえりなさい三人とも!”
“助かったぞゲッターチーム、礼を言う”
「皆さんっ!」
ジャックとメリー、そしてアレンも駆けつけて三人と合流、再開に喜びあった。
「皆さん、今が正念場です。この戦いでこの戦争を全て終わらせるつもりで全力で行きましょう!!」
《ウオオーーーーッッ!!!》
声を張り上げる竜斗、そして聖人の姿を思わせる神々しいエクセレクターの姿と相まって、各隊員達は「必ず勝てる」と希望が最高に達し、勝利の雄叫びがアメリカ全土に響きわたった。
「竜斗、次はどうするっ?」
「次は……よし、僕らの日本へ行こう!」
ジョナサン達にこれから日本を救いに行くと告げると「後は俺達でここの残りをやる、遠慮せず日本へ行ってこい」と笑顔で応えられた。
“お前ら、絶対に生きて帰ってこいよ、特にマナミ、お前は俺の未来の嫁さんなんだからな!”
「ジョナサン……うん!」
ジョナサンからの激励とさり気ないプロポーズを受けた竜斗、エミリア、そして愛美のやる気は最高点に達した。
「行くぞ、エクセレクター――」
「「発進!!」」
ゲッターフェザーで身を包み、再び姿が消した彼らへ全員が『頼んだぞ』と後押しの言葉が出るのだった。
――朝霞駐屯地。日本はメカザウルスによって日本全土を侵略されて、もはや壊滅に瀕しておりそれは竜斗達が遊んでいたあの街はもはや廃虚と化しており、見る影もなくなっている。
日本各地ではBEET部隊が展開し決死の覚悟で応戦するも空しくも圧倒されていく――。
「このままでは日本は終わりだぞ!」
「日本だけじゃなく全世界も今同じ状況だ。人類滅亡は時間の問題だ――!」
四方八方からメカザウルスに追い詰められていくBEET部隊の前に突然、エクセレクターに駆る竜斗達が出現した。
「朝霞駐屯地の皆さん、ゲッターチームがたった今到着しました!」
竜斗の声を聞き入れ、歓喜を上げる隊員達。
“おおっ、竜斗君達か!君達がシベリアで敗退したと聞いて心配していたが安心したぞ!”
“その機体は、まさかゲッターロボか……?”
「はいっ、司令達が造り上げた僕らの新たな力です。直ちに援護に入ります!」
エクセレクターはすぐさま左右腰から各トマホークを取り出して展開するとそれをビーム・ブーメランのように全力投擲、トマホークがブーメランのように高速回転して全方位のメカザウルス達を次々と切り刻んで破壊していく。
「はあっ!」
さらに回転するトマホークへ腹部のエクセレクタービームを発射して当てるとリフレクタービーム機能が作動し、エネルギーを全方位に拡散放射してさらに殲滅していく――。
「おおっ、なんて強さだ……っ!」
駐屯地の隊員もジョナサン達のように、エクセレクターの圧倒的な戦闘力で赤子が相手のように易々と捻りつぶしていく彼らに驚き、そして希望を見いだした。
「大丈夫二人ともっ?」
「アタシ達は全然大丈夫だから思う存分やってリュウト!」
「だからどんどん倒して世界のみんなを救うのよ!」
周辺のメカザウルスの掃討が一瞬で終わると竜斗君は更なる日本の激戦地へ向かい、一撃必殺級の威力を持つ各武装を以て、全てのメカザウルスを瞬く間に殲滅――。
「竜斗、次はっ!?」
「オーストラリアだ!」
再びマントで身を包み今度は南半球のオーストラリアへ瞬間移動した。
――オーストラリア。第一恐竜大隊が駐屯しており、巨大な髑髏から成り立つ城の姿をした固定基地『ヴェガ・ゾーン』と約三万という数のメカザウルスがはびこっている。
沢山のコンピューターに囲まれた内部の司令部ではリョドに変わって任命された大隊長であり地竜族であるクゲイクと部下達は『突然、アメリカに現れた謎の機体によって瞬く間にメカザウルス隊が全滅した』という情報にこの場は切羽詰まる状況と化していた。そんな中、
「大陸に突然、計測不能レベルのエネルギーを持った反応を確認、モニターに映します!」
中心部の3Dモニターで外部を映すとそこにはマントをたなびかせて空中に堂々と立ち構えるエクセレクターの姿が。
「あれは……例のゲッターロボという機体ではないかっ?」
「し、しかし、ゲッターロボはシベリアでザンキ様達ジュラシック・フォースに撃破されたハズでは……」
彼らは撃破されたと、そしてもう天敵はいないと聞かされていた。しかしゲッターロボらしき機体がモニターに映っているという事実に動揺を隠せない。
「ともかく、各機は突然現れたあの機体に対し、集中攻撃を仕掛けなんとしてでも破壊せよ!」
クゲイクから命令を下されて、外部に蔓延る全メカザウルスはエクセレクターへ視線を向けた。三人も攻撃してくると分かり、気を引き締める。
「エミリア、次いってみる?」
「うん、アタシもこのままだと腕がなまっちゃうからやらせてっ」
「よっしゃあ、期待してるわよ!」
メカザウルスからマグマ砲、ミサイル、機関砲からの集中放火がこちらへ飛んでくる。しかしエクセレクターはその場でピンと背筋を伸ばすように直立不動の姿勢をとった。
「オープン・ゲット!」
彼がそう叫んだ時、なんとエクセレクターは合体を解除して三機の戦闘機へ分離したのだ。
「な、なんだあれは!?」
「三機の戦闘機に分離しただとっ?」
メカザウルスに乗る恐竜兵士、キャプテンはその摩訶不思議な光景に愕然となる。
しかしそれでも敵を撃ち落とさんと各火器で猛攻撃を加える。
「くっ、これはヤバいかも!」
「上昇してエミリア!」
「いや、無理に機体の軌道を変えない方がいい。流れに乗るんだ!」
四方八方から降り注ぐ弾の雨をアクロバティックにかいくぐりながら飛翔するゲットマシンは軌道修正しながら今度はエミリアの乗るメリオスが先頭、その次に愛美の乗るアーバンダー、そして先頭だった竜斗のバミーロが最後列にまわり、直列に並んだ。
「行くわよエミリア!」
「焦らず落ち着いて!」
「うん、任せといて!」
エミリアも竜斗と同じように気合いを入れて合体用ボタンを勢いに乗せて押し込んだ。
《チェインジ、エクセレクタァァァッ、トゥッ!!》
再び三機は直列合体に成功すると竜斗の時と同じように骨組みが飛び出してミクロサイズの金属板が湧き出て細くスマートな両脚が形成。
同じく右腕にはガーランドGにも似たボックス、左腕には巨大なドリルが形成され、さらに頭部は彼女の前機と同じようにイカを思わせる先の尖った細い頭部の陸戦型ゲッターロボを更に洗練されたような鋭角的なデザイン。
背部には六本の長い針のような物体が六角形を描くように伸びて展開された――。
「ヤツの姿がさっきと変わった……何だってんだ一体……」
彼女の操る陸戦用形態である『エクセレクター2』は地上へ降りていき、着地せず内蔵されたフロートユニットで浮遊している。
足が地につかず、地上約三メートル上フワフワと浮く姿は陸戦型ゲッターロボから受け継いだスマートさと背中から生えた、まるで羽根と言わんばかりに展開された六本の針のような物体は、まるで妖精か精霊のような出で立ちであった。