ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十二話「大空へ羽ばたく、天使翼を持つゲッターロボ」⑤

――僕達はついに明日を掴むために前へ歩き出す。

こんな醜い戦争を終わらせるために、生ける者全てを救うために、そして……全てを終わらせるために、僕達だけしか扱えられないと言われる最終兵器『エクセレクター』を完全に操れるための最終的な特訓と調整を毎日死に物狂いで頑張った。

僕達は今、運命の火の中にいる、そして――来るべき最終決戦の幕が開けようとしていた――。

 

 

「恐竜帝国、そして爬虫人類に告ぐ。我々はこれより地上に蔓延る汚いサルどもの徹底的に殲滅を図り、容赦なく皆殺しにして根絶やしにせよ。

我々の害になるもの全ては一切排除せよ、この地上を我々爬虫人類の永遠の楽園として築く時がついに訪れたのだァ!」

 

ジャテーゴの発令は全ての隊に伝えられて、ついに圧倒的戦力を持ってついに全面戦争が勃発、メカザウルスによる全世界の侵略が開始された。

 

「敵の数が多すぎて埒があかない!!」

 

「なんでよりによってこんな時に!」

 

地上人類の各軍も必死で応戦するが立ちはだかるメカザウルスの異常な数にいとも簡単に押されていき、どこにも活路、逃げ場がない状態でまさに地上人類の滅亡が時間の問題であった――。

 

「オラア!!」

 

シベリア地区。ジュラシック・フォース達も勢いに乗り、次々とSMB部隊を壊滅に追い込み、そして東西南北に位置する地上人類の戦線拠点基地を潰しにかかっていた。

「てめえらサルの最期の時が来たぞ!せいぜい祈ってろ!」

 

バットがいなくなり、この戦争が終わり次第、ジャテーゴから功績次第では将軍の位につかせると言われたザンキは意気揚々と、そして嬉々と蹴散らしている。

 

「お前ら、俺が将軍になることを祝ってくれよなア!」

 

ゲッターロボを撃ち破った彼らの実力はやはり凄まじく、従来の機体では全く歯が立たない。

 

「ぐ、機体が動かない!」

 

「なぜだ!」

 

リューネスの駆るオルドレスの周辺約一キロ以内のSMBがその場で突然急停止。その間にランシェアラ、グリューセル、マーダインがその場に介入、それぞれの一撃の元に全て破壊していった。

 

「どんどんいくぜ!」

 

「ああっ!」

 

「……どんどん、いくよ~っ」」

 

「…………」

 

マシーン・ランドのような基地の前部から生えた、悪魔か何かの異様な生物の艦首を持つデビラ・ムーの口からドロドロのマグマをシベリア全土に撒き散らされ地形、そして環境まで破壊する姿はまさに邪神の様であった。

 

「第五十一BEET小隊の戦闘能力が著しく低下!」

 

「アメリカ空軍第八編隊は敵の包囲下にあり!」

 

「イギリス海軍第十艦隊壊滅!」

 

「中、露連合軍、各第三、二十六、四十、九十一――壊滅!」

 

シベリアだけではない欧州、アフリカ、オーストラリア、日本、そしてアメリカ全土にメカザウルスの大軍が押し寄せてその人海戦術の元に次々に追いやられていき、制圧されていく。

『地上人類に逃げ場なし』

 

ジャテーゴが放ったその言葉が現実となりつつあった。

 

「各恐竜隊が次々に戦果を上げている模様ですっ!」

 

「北欧地方、東南アジア、カナダ、南アメリカ、アフリカ、日本地区――もはや我々の制圧化にあり!」

 

「このまま行けば我々爬虫人類が地上を制圧するのに時間はかからないでしょう」

 

吉報ばかりを受けて胸が高まり興奮を隠せないジャテーゴであった。

 

「長かった……我々爬虫人類があの憎きゲッター線によって地上から追いやられて気が遠くなるほどの年月が経ち……過酷なマントル層近くでの生活は数々の同胞が死に絶えていったが、この夢が実現の前にはその犠牲すら容易いもの。

ゲッターロボという強敵がいない今、もはや我々に負ける要素など有り得ない!」

 

と、自信満々に、高らかにそう言い放った。

しかし彼女は知らない、まだ地上人類の希望となりえる切り札、最終兵器がエリア51に眠っていることを――。

 

「準備はいいか?」

 

「「「はいっ!」」」

 

ついに来るべき時がやってきた――エクセレクターのノウハウを身につけ、新調したパイロットスーツを着用した凛々しい顔の竜斗達ゲッターチームがゲットマシンの格納庫へ集まっていた。

 

「ついにこの時が来たか。拝見させてもらうぞいっ」

 

「これまで培った三人の力を最大限に発揮するこの時を、そしてそれから繋がるこのエクセレクターの力をな!」

 

 

早乙女、マリア、ニールセン、キング、そして世界中のエンジニア達、メリオ含むエリア51の所員達も初発進の場に立ち会い、三人に期待を込めている。

 

「前みたいに全員で円陣を組みませんか!」

 

「ああっ、やろうか!」

 

その場にいるまるでラグビー選手のような人数で円陣を組んで身体を低くスクラッチをする。

 

「おそらくこの戦いは雌雄を決する最終決戦となるだろう!

我々は全力で立ち向かうぞ!」

 

「皆さん!地球の、皆の未来のために最後の最後まで頑張りましょう。ゲッターチーム、いくぞォーー!!」

 

《オォーーーー!!!!》

その後すぐ三人はゲットマシンへ向かう時、早乙女から「この世界戦争を君達の手で終わらせてこい」と激励を受けて、竜斗達は希望に溢れる力強い声で返事をした。

 

「エミリア、愛美、ついに俺達はここまで来たな。エクセレクターがどれほどの力を持つか分からないけど司令達の言うことを信じて戦おうっ」

 

「ええっ!また皆が笑顔で、希望を持って地球で暮らしていけるように!」

 

「マナ達の手で未来を切り開くわよ!」

 

そしていつものようにまた三人で円陣を組む。

 

「もう何も言うことないけど、俺達の力を出し切って最後の最後まで諦めずに頑張っていくよ、ゲッターチーム行くぞ!!!」

 

「「オオーーっっ!!!」」

 

世界を救うと断固な誓いを打ち立てた三人は、すぐさま各ゲットマシンの座席に乗り込む。

 

「石川竜斗、ゲットマシン一号機『バミーロ』、発進準備完了!」

 

「エミリア=シュナイダー、ゲットマシン二号機『メリオス』、オーケーです!」

 

「マナ、ゲットマシン三号機『アーバンダー』、いつでもいいわよ!」

 

それぞれのゲットマシンを載せたテーブルが、エリア51の外部ハッチへと繋ぐカタパルトランチャーへと連結した。

 

“よし。ではこれから竜斗から順に発進せよ。そこからは君達の腕に任せるぞ”

 

「「「はいっ!!」」」

 

“この世界の結末は君達の力で全てが決まる、全力を出し切れるよう健闘を祈る、そして――”

 

早乙女は一旦、間を置いて三人にこう告げた。

 

“絶対に生きて帰ってこい、誇りある我が子達ゲッターチームよ!”

 

「司令……っ、はい!」

 

「ええっ、必ず!」

 

「マナ達の活躍を高みの見物で見ててね、もう一人の『パパ』、そして『ママ』!」

 

そして一新されたコックピット内では各人はシステムチェックし、操縦桿をぐっと握りしめ、そしてこれからについてそれぞれ違う思いを抱いたが、

 

『絶対にエクセレクターと、自分達の力でこの戦争を終わらせてくる』

 

 

この信念だけは三人とも揺れ動くことはなかった――。

 

“発進せよ、ゲッターチーム!”

 

そして、

 

「ゲッターチーム、ゲットマシン全機発進します!!」

 

竜斗の駆る『ゲットマシン・バミーロ』、

エミリアの『ゲットマシン・メリオス』、

愛美の『ゲットマシン・アーバンダー』、

それぞれが順に射出されて外部まで繋がったトンネルを駆け抜けていき、数秒もしない間に各ゲットマシンは外に飛び出して遥か大空へ飛翔していった。

期待と不安、それ以上に希望を込めて遥か先に飛んでいくゲットマシンを見送る早乙女とマリアはまるで彼らの親そのものだ。

「行ったか、あの子達はっ」

 

「楽しみじゃのう、我々人類至上最高の開発陣が総力を上げて完成させた最終兵器エクセレクターの活躍ぶりが」

 

「ええっ。それでは私達も発進準備と行くか」

 

「了解!」

 

早乙女とマリアも、自身の艦に乗り込むためそこから立ち去っていく。

 

「マリア、私、いや艦に万が一のことがあり得る。君はここに残る気はないか?」

 

彼の心配に彼女はハッキリと首を横に振る。

 

「私もあなたばかりに負担をかける気はありません、あなたと全てを共有するつもりで、尽力する気でいるのでどうか最後までお供させてください」

「マリア……ありがとう、君は私の人生の中で最高のパートナーだ」

 

二人もまた最後の最後まで竜斗達と共に戦い抜くと誓い合い、外の専用ポートに重鎮する大改造、いやほとんど新造である新艦に乗り込んでいった。

 

「『ヴェクサリアス』、発進スタンバイ」

 

「了解!」

 

二人の新たなる力である浮遊艦『ヴェクサリアス』の複合エネルギーから生る強大な出力を発生し、その産声のようなエンジン音と共に力強く大空へ垂直に浮上していった――。

 

「くそお、なんて数だ!!」

 

このアメリカ大陸の空、陸、そして海沿い……約五万近くというメカザウルスが蔓延っており、連合軍のSMBが持てる力を最大限に、必死で侵攻を食い止めようとするがやはりメカザウルス側が圧倒的な戦力で徐々に押され、袋小路に追い詰められていく。

 

 

「シットゥ、ゲッターチームはもうこないのか!!」

 

「諦めたらダメよ兄さん、最後の最後まで信じましょう!」

 

ジャック、メリーの駆るテキサスマックも上空で持てる力を振り絞って必死で戦い抜くがメカザウルスの余りの数に押され気味となっている。

 

「竜斗達はこねえのかよ!」

 

「シベリアでゲッターロボが全て破壊されたと聞いたぞ!」

 

「なんてこった……じゃあもうゲッターチームはこないのか……」

 

ステルヴァーの新型モデルである『ステルヴァー・インパルス』を駆る新生ブラック・インパルス隊も必死に上空で戦う。その中には、すでに心身ともに回復したジョナサンも混じっていた。

「必ず俺らに勝機は訪れる、決して諦めるな!」

 

「だがジョナサン、今回はあまりにも敵の数が!」

 

「うるせえ!俺らが諦めたら人類は終わりだろうがァ!

俺達は誇りあるブラック・インパルス隊だろうが、ジェイド達に笑われるぜ!!」

 

どうやらジョナサンが隊のリーダー格の努めているようであり、士気が下がりつつある隊全員を叱咤激励していきながら自身も全力を尽くしていく。

 

(竜斗、エミリア、そしてマナミ、お前らにまた会いたかったがもう無理かもしれない……っ)

 

いくらこちらも新型機が増えたとはいえ、総力戦と思えるような異常なまでの今回の恐竜帝国のメカザウルスの戦力、そして主力、なによりゲッターチームがいないこともあり、これまでの戦闘、そしてアラスカ戦線ですら生ぬるく感じるほどで今戦闘はあまりにも過酷であり、そして地獄絵図である――。

「く……っ!」

 

そしてイギリス軍のアーサーを乗るアレンも必死で戦い抜くも、雪崩のように押し寄せるメカザウルスの無限地獄に呑み込まれてしまい、自身の操縦技術をもってしても追いつかなくなっていく。

 

(こんな時にゲッターチームがいれば……!)

 

ただでさえ複数戦で手こずるのに、いくら撃破してもその先に、その先に湧き出てくるメカザウルスに押し込まれて次々に落とされていく各SMB、戦闘機、誰もが希望と人類の未来を失いかけたその時である――。

 

「なんだっ?ネバダ方向からもの凄いスピードでこちらに接近する三つの反応があるぞ!」

 

「なに!」

彼らがその方向を見た時、遥か先から三つの粒が三角を形成するように組みながらこちらへ近づいてきている。

 

“皆さん、僕達はゲッターチームです!たった今救援に来ました!”

 

「まさか竜斗達かっ!!」

 

「遅せえぞお前らァ!だがこれで!!」

 

竜斗達の声を聞き入れた連合軍の隊員はその瞬間に絶望から一変して歓喜の声が湧き上がったのであった。

 

「おお奇跡か、ゲッターチームが我々のピンチに駆けつけてくれたぞ!!」

 

「しかし、あれらは一体……変わった形の戦闘機にしか見えないが……」

 

彼らの見るは自分達の知っているゲッターロボの姿ではなく、三機の変わった戦闘機……これでどう戦うのか不思議でならなかった。

 

“マナミ!”

 

「ジョナサンっ!あれから治ったのね!!」

 

また再開できたことに喜ぶ二人。

 

「大尉、今から僕らゲッターチームも参戦します。そしてこの状況を直ちに打開しましょう!」

 

“打開するってお前、アリのように沸いてくるこのメカザウルス達をどうやって!”

 

「大丈夫です、このエクセレクターがあれば僕達は必ず――エミリア、愛美、今から『合体』へ移行するよ!」

 

「うん!」

 

「ええっ!」

 

強気にそう竜斗の乗るバミーロが先頭に出て、その次にエミリアのメリオス、愛美のアーバンダーと、三機は高速飛行しながら直列に並ぶ。それは敵味方含めて戦いを止めて魅入られていた――。

 

「行くよ、チェェェェンジっ!!」

 

「エミリア、先にマナと合体よ!」

 

「うん、おいでマナミ!」

 

竜斗の掛け声と共に愛美がコンソール画面にてメリオスの真後ろ中心に照準を合わせるとそのまま前進して……なんとアーバンダーがメリオスの後ろからガツンと突き刺さり合体したのだ。

 

「何だと……戦闘機同士が……」

 

「合体しやがった……っ」

 

その非現実的な光景に目を疑う両勢のパイロット達……さらに今度は先に合体した二機が、今度は竜斗のバミーロの後部へ前進した。

 

「行くわよリュウト!」

 

「初合体で事故らないでね!」

「任せといて二人共!」

 

そして竜斗は勢いと気合いを入れて合体用レバーを全力で押し出した。

 

《チェェェェンジ、エクセレクタァァァァァァッ、ワン!!》

 

――このような摩訶不思議な現象は誰が予想しただろうか。三機全てが直列合体に成功した瞬間に、目を疑うようなことが起きたのだ。

 

「嘘だろ……」

 

「クレイジーすぎるぞあれは……」

 

なんと合体した三機の左右側面から何やら骨組みが飛び出し、その周りにナノレベルの金属板によって張り巡らされていき腕、手首、そして手が次々に形成され、さらにアーバンダーの樽のようなブースター二基から先ほどと同じ仕組みで両足まで造りあげていき、今度は先頭のバミーロの機首がステルヴァーのように人型の顔……今まで竜斗の乗っていたゲッターロボと同じ、二本の角を持った頭部へと変わる。

 

 

【各ゲットマシン、エクセレクター1へ合体成功。これより各機動力炉『グラストラ核反応炉』、『プラズマ反応炉』、『ゲッター炉心』は『複合融合炉』へ切り替わります――】

 

さらに背部から極細化した特殊合金『ゲッター合金』の糸が大量に飛び出して網目状へ形成、複合融合炉から想像を絶するほどの超出力を持った複合エネルギーが金属糸に伝って流れ込み、強烈な化学反応を起こして発光。

純白の光の膜が張られていき、まるでマントのような布状の物体が形成され、風になびくように揺れ動いている――。

 

「三機の戦闘機が……」

 

「合体してゲッターロボになっただと……っ」

白銀と薄紫を基調としたカラーリング、これまでのSMB、ゲッターロボとは一線を画す姿、そして背中には新型フライトユニットである純白のマント『ゲッターフェザー』でその身に纏う、輝く光を発する聖者と如き出で立ちで空中に立ち構える新型ゲッターロボの姿が今ここに――。

 

「ワオ……これが……」

 

「ゲッターロボの最終系にして……」

 

「最終兵器……」

 

――その名はエクセレクター。全てを終わらせるために開発された、未知なる力を秘めた光明のゲッターロボである。

 


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