ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十一話「ジュラシック・フォース」⑧

その時、二機の真横から二発の大型ミサイル、プラズマの光弾が飛び込み、すかさずそこから後転して回避するランシェアラ。

 

「エミリアっ!」

 

予備のエリダヌスX―01を持ち戻ってきたアズレイは、無残な姿のルイナスと合流した。

 

「来てくれて助かったよマナミっ!」

 

「ありがとう、よく頑張って耐えてくれたけど、こんな状態じゃアンタはもう戦えないわね……」

 

「…………」

 

両腕を失い、そしてライジング・サンのシーカー全てを撃ち落とされて武装が何一つもなくなったルイナスはもはや戦闘は不可能である。愛美は早乙女に「竜斗は元に戻った」と言われて、それを信じすぐさま竜斗に通信をかけてみると今度はちゃんと繋がった。

 

“あ、愛美……ごめん、俺……っ”

 

「それは後にして。それよりもエミリアがもう戦えない状態にされたの、だから今すぐベルクラスにエミリアを運んで!」

 

“えっ、エミリアがどうしたのっ!”

 

凄く慌てている表情の竜斗に愛美はすかさず「落ち着けっ」と喝を入れた。

 

「ルイナスがもう戦えない状態ってこと、本人に至っては大丈夫だからエミリアがこのままヤツらの餌食にならないために早く迎えにきて!」

 

“……分かった、今すぐそこに向かう!”

 

「マナも流石に今の状況で持ちこたえるのはスゴくキツいから早くきてね!」

 

通信を切ると、約十秒前後でもうアルヴァインが迅速に駆けつけて着地した。

 

 

 

そのルイナスの両腕のない状態に竜斗は唖然となる。

 

「エミリア!」

 

「やっと元に戻ったんだねリュウト!」

 

「ほら、こんなヤバい状況で喜び合ってないで早く行って!」

 

アルヴァインはすぐさまルイナスを持ち抱えると空中を飛ぶ。

 

「愛美、すぐ戻ってくるから待ってて!」

 

「ええっ、頑張ってみる!」

 

アルヴァインはすぐさま飛び上がり、早乙女にルイナスの収容してくれるよう伝えてベルクラスへすぐさま向かって上昇していく。

だがクックとニャルムの二人組が空中からアルヴァインを追いかける。

 

「逃がさない、絶対に逃がさない!」

 

グリューセル、マーダインから雨のような火線が竜斗達に降り注がれる。

一機分の重量が増えた影響で早く飛び上がれないアルヴァインはすぐさま背を向けてルイナスを当たらないに盾になるが、その間に何発も当たり、シールドのエネルギー残量が削られていく。

 

「このままじゃリュウトまで落とされるよ!」

 

「心配しないで、俺がエミリアを何としても守るから!」

 

しかしその間に次々と熱線やマグマ弾がシールドに当たり続け、光の膜が一気に薄くなっていく。

 

「竜斗が危ない、ベルクラスも直ちにこちらからも援護攻撃を行うぞ」

 

「了解」

 

ベルクラスからも各砲門を開き、機関砲、ミサイル、プラズマビームで前方に弾幕を張り二機の接近を許さない。

 

「ユーラシア連合軍の総司令から、戦況的がこちらが不利とだということで撤退命令が出ています」

 

「分かった!」

 

竜斗達に撤退すると伝えるとそれぞれが複雑な表情だ。

大雪山でも同じことがあったが今回は完全な退却であり、それは三人にとって初の、完封なきまでの敗北を意味していた。

 

「撤退することも戦略のうちだ、気を落とさずまた次に力を養えて頑張ればいい」

 

エミリアがやむえず戦線離脱し、竜斗と愛美だけで四機全員と相手にするとなれば間違いなく、あの四機によってゲッターチームは危険に晒されてしまう……それ以外に方法はなかった。

生き残った各SMBは後退していきメカザウルスに追われる形で退却していく。やっとの思いでルイナスを格納庫に戻した竜斗はすぐさま愛美の元に向かおうとする。

 

「今から愛美を助けにいってくるっ」

 

「気をつけてリュウト!」

 

すぐさま飛び出していき地上へ降下していく。だがクック達も直ちに急降下をして追いかけていく。

「逃がさん」

 

再び二機は各火器で追撃開始、すでにシールドが機能しなくなったアルヴァインも、もはやルイナスと同じく鎧の取れた表皮一枚の状態であり、竜斗は直撃した時の緊張感と当たらないように神経を一気に集中させてモニターとレーダーをにらめっこして、二機からの攻撃を避けながら降下する。

 

(愛美、今いくから待ってろっ!!)

 

その時の彼の顔は血管が今にも破裂しそうなくらいに浮き出ていた――。

 

「待ちやがれゲッターロボ!」

 

地上では他のSMBと同じく後退する愛美に、ザンキ達がしつこく攻撃しながら追いかけてくるが脚の車輪と杭を駆使して蛇行しながら退いていくアズレイ。

 

「しつこい、もう追ってくんなメカザウルス!!」

 

二人のあまりのしつこさとそして、退却なのに苛烈を極める逃亡に愛美も泣き顔となっている。その時やっと竜斗が彼女の元へ降りていく。

 

「竜斗!」

 

「愛美、司令の命令で機体を捨ててアルヴァインに乗り込め!」

 

 

「えっ……」

 

「このままだと逃げ切れないから愛美や他の人たちまでが危ないから、愛美を載せてアルヴァインで一気にベルクラスに戻れって」

 

彼女はそれに渋り、踏みとどまっている。

 

「……愛美っ?」

 

「またこの機体を捨てることになるの……」

 

大雪山戦役でもそうだった、自分の乗り馴染んだ機体をまた捨てることになるなんて……彼女はそれによる悲しみと抵抗感があった。

 

「……捨てたくない気持ちは凄く分かるけど今はお前の命がなによりも大事だ、だから早く乗り込め!

愛美にもしものことがあって、もっとみんなを悲しませたいのか!」

 

「…………」

 

「愛美!!」

 

竜斗の叫びに、彼女もタカをくくり、コクっと頷く。

 

「よし、じゃあ早く乗り込もう」

 

まだシールドの残量が残っているアズレイを敵の背に向け、少しでも攻撃を当たらないように二機を対面すると互いのコックピットが開き、アルヴァインの指に飛び乗る愛美。

だがその頃、ついにジュラシック・フォースの四人全員が合流してしまい、四人がかりで彼らに迫り来ていた。

 

「もう逃がさないよ」

 

マーダインが真っ先に飛び出して、アルヴァインとアズレイの真上に滞空すると底部から再び円いレンズがせり出す。

先ほど地上にて沢山のSMBのパイロットに燃え尽きるほどの灼熱地獄を与えたマーダイン専用の特殊兵器『エミル・エヅダ』を二人めがけて発動させようとした。

 

「二人揃って真っ赤に燃やしてやるよ、フフ」

 

ニャルムの目に恐ろしい殺気がこもり、全力でエミル・エヅダの発動ボタンを指を置いた時、ちょうど愛美はアルヴァインのコックピットに乗り込みすぐにハッチを締めた。

 

「しっかり掴まってて!」

 

愛美を後部席へ回してそこから離れようと、飛び上がりかけた時、ニャルムの指がぐっと発動ボタンを押し込みエミル・エズダが発動。

ちょうど空中に飛び上がったアルヴァインの内部に膨大な熱量が通り抜けたが間一髪で二人は黒こげになるのを免れたが、その場に取り残されたアズレイはその熱によりコックピットから爆発を起こり、そしてついに機体ごと爆散してしまった。

「マナのアズレイが……」

 

またも自分の機体を乗り捨ててしまったことに悔やんでいる愛美。

だが、そんなことをしている暇はなく、ザンキ、リューネスがアルヴァインへ各砲を向けて仕掛けてきていた。

 

「絶対に逃がすな!」

 

「ああっ!!」

 

熱線、ミサイルによる休むことのない、隙間のない追撃を加える。アルヴァインはベルクラス一直線で上昇していくがその途中で右腕や左脚に直撃してしまい、吹き飛ばされていく。

 

「いやあああっ!!」

 

「くそ、どうかベルクラスまででも持ちこたえてくれ!」

 

ダメージを受けすぎて動きと飛行速度が鈍っていくがそれでも助かるのならと諦めず、ジグザグに飛び上がっていくアルヴァインだがニャルムのマーダインも獲物を逃がさないと言わんばかりに追いかけてくる。

すぐそこまでベルクラスに迫り、最後まで気を張り詰める二人の後ろをまるで狩りを楽しむかように意気揚々と追いかけてくるニャルム。

照準のピントをアルヴァインに合わせてロックして左右主翼下部に装備した機銃から小さいマグマ弾連射。あちこちに当たり穴だらけとなっていくが最後の最後まで諦めず上がっていく。

ベルクラスからも竜斗達を守ろうと各火器で応戦、マーダインはバーニアスラスターを駆使して高度な機動を描きながら避けていく。

 

「あとわずかだ!」

 

「アルヴァイン、お願いだから格納庫までもって!」

 

ついにベルクラスに到着したアルヴァインはすぐさま後方部にある格納庫のハッチへ後ろに追手がいないことを確認しながら向かい、そしてついに格納庫部に到着、後はすでに開かれた格納庫のハッチの中に入ろうとした。

 

「残念っ」

 

「「なっ!?」

 

ボロボロのアルヴァインの真横にあのマーダインが待っていたと言わんばかりに突然現れ、愕然となる竜斗と愛美。

 

「これで、おしまいよ」

 

胴体右下部から砲弾型のミサイルが射出され、そのままアルヴァインに直撃し、大爆発と共についに機体がバラバラにされてしまう。

 

「「わああああああっ!」」

 

悲鳴を上げる二人がいる頭部は奇跡か、爆散と共に胴体から離れて爆風によってそのまま押し込まれるように格納庫の中に入っていき、それ以外の残骸は地上へ墜落していった――。

 

“ニャルム、バット将軍から帰還命令が出された。これ以上追跡せずデビラ・ムーへ帰るぞ”

 

「……分かったっ」

 

いつの間にか気が静まり、凶暴の性格から一変して普段のように冷めた表情をしているニャルム。

 

「……楽しかった、フフンフン♪」

 

満足げな表情でベルクラスに攻撃を仕掛けず、ザンキに言われた通りにそこから去っていった――。

「竜斗達は!」

 

「分かりません、ただ格納庫にはアルヴァインの頭部らしきモノがあるみたいなんですが……」

 

「マリアは格納庫に向かってくれ。もし二人が無事ならいいがケガしてるようなら直ちに救助して医務室へ」

 

――ハッチが固く閉まったと同時に頭部は格納庫を叩きつけられて転がり、そして壁に激突しやっと静止した。

生首と化したアルヴァインの頭部から白い煙がもくもくと上がっている。

 

「竜斗……大丈夫……?」

 

グシャグシャになったアルヴァインのコックピット内では愛美は打ち身だらけで痛む身体を無理やり起こして彼を呼ぶ。

 

「竜斗……竜斗!」

 

だがいくら呼んでも返事が返ってこない。すぐさまこの斜めに歪んでいるこの狭く気持ちの悪いコックピットの座席部に目をやるとそこには竜斗がうつむせになりグッタリしている。

 

「だ、大丈夫竜斗!!?」

 

彼女は竜斗へ寄りつき身体を抱きかかえて強く揺らしてみるも意識は全くない。ヘルメットをゆっくり取るとの顔には生気が全くなく、そして首が重力に従ってダランと落ち、勿論両腕にも全く同じであった。

 

「まさか……死……」

 

彼女は慌てて彼の胸に耳を当ててみると微かに鼓動はある。しかし本当に微かでまるで消えかかった火のように感じられた。

 

「誰か、誰か助けてーー!!」

 

愛美が悲痛の声を上げると外から、

 

「無事なのねマナミ!!」

 

「今すぐこじ開けるから待ってて!!」

 

エミリアとマリアの声が耳に入った。だがそれで安心している暇などなかった。

 

「マナよりも竜斗が、竜斗が今にも死にそうなの!早く助けてあげて!」

 

「リュウトが、リュウトがどうかしたの!?」

 

「い、意識が全くなくて死んでるみたいになってるの、心臓は動いているけど凄く弱まってる!」

 

それを聞いた二人は血の気が引いて、直ちにコックピットをあける作業にかかった。

 

 

――この戦いで連合軍は再び敗北を喫し、そして何より僕達ゲッターチームにとって初の敗北、撤退を味わった。

悔しさ、無力感、何とも言えないモヤモヤもあるがそれよりも今、僕自身は生死をさまよう窮地に陥っていた――。

 


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