ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十一話「ジュラシック・フォース」⑦

「……クック、行くよっ……」

 

「ああっ」

 

二機は混乱している竜斗へ容赦なく突撃、それぞれ搭載されたブースター付属の翼竜型の巨大な翼、多数のバーニアスラスターを駆使し、その凄まじい空中機動を見せつけながらアルヴァインを翻弄し始めるクックとニャルムの駆るグリューセルと唯一のメカエイビスであるマーダイン。

 

「……楽しませてもらうよ、ゲッターロボ」

 

「…………」

 

大空をビュンビュン飛び回りながらそれぞれライフル、マグマ砲の各火線でアルヴァインへ集中攻撃を開始。

 

「あっ……!」

 

竜斗もハッと我に返り、すぐさまそこから離れて飛び交う多数の火線を回避。

 

(まさかあの中にラドラさんが……いや、そんなハズはないっ)

 

中で操縦するのが、ラドラの親友であるクックだとは竜斗は知るはずもない、だがゲッターロボだとわかって攻撃を仕掛けてくるとなると……。

 

「もしかして乗っているのはラドラさんですか!!」

 

と、通信の周波数を変えながらクックへ対話を始める。

 

「…………」

 

クックの方も竜斗からの通信を受信しており、飲み込んだ翻訳機のおかげで何を喋っているのかすぐに分かる。

 

(しきりにラドラと呼ぶこのパイロット……やはり例の地上人類の子か)

 

彼は分かる否や、すぐに竜斗の通信を遮断した。

(悪いな。君と会話することは私やラドラにとって非常に都合が悪くなるんでね、あえて知らなかったことにするよ――)

 

この方が互いのためだと――クックはすぐに気持ちを切り替えて攻撃に徹する。

 

(ラドラさんじゃない……ということは誰が……)

 

それでも、ラドラの機体にそっくりなグリューセルのパイロットが気になってしょうがない竜斗。

 

「……いくよ、ゲッターロボっ」

 

その時、先陣で切り込んでくるのはニャルムの駆るメカエイビス、マーダイン。三叉の形をした、これまでの生物的な外見と違うフォルム、そして機体のいたるところに搭載した高性能のバーニアスラスターを駆使して、SMBの二、三倍近くの全長でありながらその空中における機動性能はこれまでのメカエイビスとは比べものにならないほどに高く、アルヴァインに勝るとも劣らないアクロバティックな空中機動を披露。

「……死ねっ」

 

その超スピードで空中移動しながらアルヴァインに各砲を向けてマグマ弾、ドロドロのマグマを立て続けに放ち浴びせてくる。

 

「くっ、なんだあの機体はっ」

 

アルヴァインも同じく超高速移動で対抗、目まぐるしいスピードで上空を動きながらセプティミスαを構えて狙いを定め、複合エネルギー弾を二、三発連続で発射。

突き抜けていく強力なエネルギーの弾丸は一瞬でマーダインに急接近した。が、機体の周りに飛び交う金属球リュイルス・オーヴェ三機が出現しマーダインを覆うようにバリアを展開、接触した複合エネルギー弾がいとも簡単に弾かれてしまう。

 

「あの機体にもあの装置が……」

 

竜斗はグリューセルにも目をやると、この機体の周りにもリュイルス・オーヴェが飛び交っていることを知ると竜斗は直ちに再び早乙女に通信をかける。

 

「司令、あの……っ!」

 

“……竜斗?お前大丈夫か?”

 

「は、はい。今交戦してる二機のメカザウルスにあのバリア装置が。エリダヌスX―01の用意を!」

 

“いや、もうない!”

 

期待と予想を裏切られたように、彼は愕然となった。

 

「予備が……予備があるはずでは!」

 

“予備は今、愛美に渡す予定だ。アズレイのは同じバリア発生装置を持つメカザウルス二機によって破壊されてしまってな”

「え……っ?」

 

“どうやら君達の戦っているメカザウルスは今までのとは違い、非常に実力のあるヤツらだと思われ、地上の二人も厳しい状況を強いられている”

 

「………………」

 

“竜斗、もし君の目が覚めたのならそれでよかった。今は頑張って空中の二機の注意を惹きつけてくれ”

 

「けど、それじゃあエミリア達が!僕もすぐに二人の援護を!」

 

“君が来たら今交戦しているヤツらも追ってくることを計算しろ。

あの強力なバリア発生装置を装備しているメカザウルス四機がもし合流してしまえばそれこそ今の君達に勝ち目はないぞ。

地上のメカザウルス二機については彼女達に頑張って先に倒してもらう、その後愛美から予備のエリダヌスX―01を渡してもらえ、彼女にそう言っておくから”

「司令……」

 

“竜斗はアルヴァインの力を最大限に引き出せる唯一のパイロットだからできると、私達は君の実力を信じているし頼りにしている。

だから今は少しでも空中の残り二機をベルクラスから引き離せ、もしその上で現装備で装置を破壊できそうなら試してみてくれ、頼む”

 

早乙女からのその頼みと希望に満ちたその表情から並ならぬ自分への期待を込めてられているのが分かる。それを感じ取った竜斗はコクっと頷いた。

 

「はいっ!」

 

“よしっ、やっといい顔に戻ったな。今、我々は窮地だが何としても今を切り抜けるぞ、では頼んだぞ”

 

通信を切ると竜斗は頭を振り、気持ちを入れ替える。

(……そうだ、僕にはまだ――!)

 

まだ自分を頼りにしてくれる人がいる、そしてかけがえのない『家族』がいる、その希望を胸に、竜斗はやっと暴走と混乱を抜けていつも通りの真剣そのものと化した。

 

アルヴァインはすぐさまベルクラスの位置を確認し、それから離れるように移動を開始、当然クック達もつかさず追跡してくる。

グリューセルは左手を突き出すと手甲から小口径の銃口が二門が飛び出し、そこから小さなマグマ弾を機銃のように高速に連射。だが竜斗はすぐにレバーを巧みに動かし、それに連動してアルヴァインは左右交互に移動して避ける。

 

「俺は……俺はァ!」

 

後退しながら右脛からビーム・ブーメランを二本取り出して、追ってくる二機に向かって投擲。高速回転するブーメランにさらにセプティミスαを突き出し、複合エネルギー弾を撃ち続けてブーメランに当てて軌道を変える。

「まだまだ!」

 

次々に弾を当てて、ジグザグに動くブーメランにクック達は翻弄される。

 

「つあっ!」

 

右肩のキャノン砲を水平に保ち、飛び回るブーメランへビームを当てるとリフレクタービーム機能が作動、全方位に隙間のないビームが降り注がれた。

 

「……面白いコトをしてくれるじゃない……」

 

攻撃を感知した各リュイルス・オーヴェは二機を球体状のバリアで包みこみ、リフレクタービームをシャットアウト。

 

「今だ!」

 

「なに!」

 

気を取られている内に、アルヴァインがグリューセルの真上に接近、左手首に固定されたキャノン砲を近くのリュイルス・オーヴェの一つへ素早く向けて発射。動力炉直結からの複合エネルギー弾が見事それに命中し一撃で吹き飛ばした。

「や、やった!」

 

竜斗はエリダヌスX―01でなくても破壊できることを知り、さらに希望を見いだしてすかさずまた狙い撃ちをしようとするが流石のクックも無抵抗ではなく背中から、オリジナルと同じく長剣を取り出すと剣刃が真っ赤に発熱、全力で横凪に振り込むがアルヴァインは急後退して回避。

 

(あの剣といい、やっぱりラドラさんの機体にそっくりだ……けど、やらないと俺がやられるんだ!)

 

右手にライフル、左手に長剣を持ったグリューセルが追いかけてくる。

ルゥベルジュ・ライフルの銃口をアルヴァインへ向けて青白い熱線は放射、空気が熱で揺らいでいる。

 

「……逃がさない……」

一方、大空を駆けるマーダインは急旋回してアルヴァインの背中目掛けて突撃、目の前にはクック、その後ろにはニャルムと完全に挟み撃ち状態となり急接近。

 

「今だ!」

 

竜斗はとっさにライフルの弾を散弾に変えて、素早く前後の二機の真正面に弾をばらまくと急発進して真横に移動、挟み撃ちを逃れる。

 

「「!?」」

 

気を取られて高速度に乗ったグリューセルとマーダインは対面したまま突っ込んでいき制止できず、そのまま勢いに乗って互いに体当たり……と思いきやリュイルス・オーヴェ達も慌てて二機にバリアを張り、互いの衝突を防いだがバリア同士の反発により強く弾き飛ばされた。

「きゃあっ」

 

「ぐっ!」

 

地上へ墜落し始めるが、二人はすぐさま機体の右操縦レバーを引き込み、体勢を元に戻して事なきをえた。

 

「……他のキャプテン、そしてラドラと対等で戦えるだけのことはある、流石だ」

 

「……ムッカつくっ…………」

 

一方で竜斗は、このバリア持ち意外といけるのでは、と興奮に満ちており息を切らしている。

 

(あの二機の動きを掴んできた、あのメカザウルスもラドラさんのと比べて弱い気がするからあの人が乗ってないのは確かだ――よし、このまま気を抜かずに頑張って――)

 

だがその時、マーダインはグリューセルをさしおいて先に発進。

しかしアルヴァインへ攻撃を行わず、何故か地上で必死に戦っているSMB部隊の真上へ移動した。

 

「……すごくムカムカしてきたから先にたくさんの地上人類をぶっ殺して発散しよっ……」

 

ニャルムが物騒にそう言い捨てると、マーダインの底部中央から半球状レンズがせり出し、機体をその高さを維持したまま滞空する。

 

「……『エミル・エヅダ』発動……」

 

真下のレンズが紅く光ったと同時に地上には突然起こる。

 

「あ、熱い、身体が焦げる!!」

 

「た、助けてくれえ!!」

 

SMBのパイロット達はコックピットの内部温度が急激に跳ね上がり内部は爆発。まるで火炙りにされているような苦しみに悲鳴を上げた後、ついに身体がマッチのように燃え上がった――マーダインの真下にいるSMB全て同時に内部爆発を起こして破壊されていった。

「アハハハハハ、灼熱地獄を味わって、苦しんで死ねよ、キャハハハハハ!!」

 

前と同じく気に触れたような、性格が一変して激しく高く、そして嘲笑うニャルム。

 

「な、なんてことを……」

 

竜斗、そして仲間であるクックでさえもその光景を見て唖然となっていた。

 

(あのバカ……っ)

 

一方でザンキ達も囮となっているエミリアと対峙している最中にその光景を見ていた。

 

「おいザンキ、またニャルムのヤツ――」

 

「ああ、今頃あいつコックピットで気ぃ狂ったように大笑いしていることだろうぜっ。

まあ俺らはとりあえず、目の前のことに集中しようぜ」

今、愛美がベルクラスに予備のエリダヌスX―01を取りに行っている間、エミリアはただ一人、追いかけてくるザンキ達の囮で必死だった。

 

(バリアがある以上、あのメカザウルス達にゲッターロボの攻撃が通用しないし、どっちもアタシより遥かに強いからどれだけ持ちこたえられるか……)

 

息を切らすエミリアは全神経を集中させて再び脚部の車輪を駆使して地上をジグザグに高速滑走する。

 

「また鬼ごっこ遊びか!」

 

ランシェアラは元機であるルイエノ以上に素早く走り込み、ルイナスの動きに追従し、急接近しながら二丁拳銃から熱線を次々に撃ち込んでくる。

その後方からオルドレスは胴体後部左右に装備したポットを展開してミサイルを多数打ち上げてルイナスへ一気に押し寄せてくる。

すぐさま撃ち落とそうとガーランドGをミサイル群に向けて同じくミサイルで迎撃しようとする。が

 

「ウソ、弾切れ!?」

 

すでにガーランドGのミサイル全てを使い切ってしまい、そのままルイナスへオルドレスからのミサイルが直撃して大爆発を起こし、吹き飛ばされた。

 

「きゃあああっ!」

 

このミサイル攻撃で今まで保っていたプラズマシールドもついに切れてしまい、完全な無防備となってしまう。

 

「おっと、お楽しみはこれからだ」

 

「!!」

 

目の前にはすでにランシェアラが高熱刃で切り刻もうとしていた。

 

「これでもくらいなさい!」

ルイナスは奥の手としてガーランドGそのものをミサイルとしてランシェアラへ射出するが、その異常な反応速度でいとも容易く避けられてしまった。

 

「残念。だがもうおしまいだ!」

 

ランシェアラに左腕のドリル連結部を一瞬で切り落とされてしまい、武器が何一つも失うルイナス。

 

「ああっ!!」

 

ザンキは今度こそバラバラにしてやると、身体に捻りを入れるとそれに連動して機体も捻り入れて、トドメを刺そうとした。


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