ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十一話「ジュラシック・フォース」⑥

そして愛美とエミリアはメカザウルスと必死に戦いながら竜斗から少しも目を離さなかった。

 

「こうなったのもマナのせいかもね……」

 

「マナミ……?」

 

「今まであいつに本当に酷いこと、キツいことばかりしてきて、無神経なことばかりしてきたから……こうなったのかも」

 

罪悪感に駆られてついには愛美も目頭を熱くさせて涙目になっている。するとエミリアは、

 

「マナミはリュウトのために尽くそうとしてきたんでしょ、だから全然悪くないよ!

寧ろリュウトに、いやみんなに弱音や駄々をこねてきたアタシの方が一番迷惑かけてきてるんだから」

 

「エミリア……」

 

「アタシは誓うよ。これまで自分に甘やかしてきたけどもう絶対に泣き声や弱音を吐かないって、みんなのために今度はワタシが役立つんだって!」

 

決意に満ちた、その言葉と太陽のようにキリッと輝くような顔の彼女。

 

「だからマナミももう泣かないで、頑張って今を乗り切ろうっ!」

 

「エミリア……うん!」

 

愛美は涙を腕で拭い、晴れた表情で頷いた。

 

「行くわよマナミ!」

 

「ええっ!全力で竜斗を守りながらメカザウルスを蹴散らすわよ!」

 

二人は先ほど以上に活性化、ゲッターロボの力も相まって次々に迫ってくるメカザウルスをことごとくなぎ倒していく。

 

「ゲッターチーム……凄いな……っ」

 

「ああ……っ、子供だと思ってナメていたがまさかこれほどとは……」

 

その凄まじい光景は中国、ロシア軍の隊員達にも知れ渡り、彼らを認めざるえなかった――。

 

「司令、ゲッターロボへ一直線で向かってくるメカザウルスの反応を確認、数は四機で二機が地上、もう二機が空中からです」

 

モニターに映る先にはザンキ達ジュラシック・フォースの専用メカザウルスが。

 

「あれがゲッターロボか。俺とリューネスは地上の二機を、クックとニャルムは空中のヤツを任せるぜ!」

 

「「「了解!」」」

 

それぞれがコンビを組んで行動を開始を始める。

 

「何あのメカザウルス!」

 

「こっちに向かって直進してくるよ!気をつけて!」

 

エミリア達もモニター先に映るザンキとリューネスの駆るランシェアラ、オルドレスが猛スピードで向かってくる姿を捉えて身を構える。

 

「いくぜリューネス、ぶっ潰すぞ!」

 

「ああっ!」

 

ランシェアラが先に先陣で突撃、オルドレスはそこで停止して間合いを取り始めて潜める。

 

「ゲッターロボの力、楽しませてもらうぜ!」

 

ランシェアラは腰の左右のホルスターから二丁の拳銃を取り出して二機に向け、細い熱線を連射しながら走り込んでいく。

ルイナスとアズレイはすぐさま脚部の車輪を出して急発進、散開する。

 

「あのメカザウルス……見たことある……確かエリア51の……」

 

エミリアはランシェアラの姿を見て思い出す。エリア51滞在中の夜間戦闘にて手も足も出なかったあの強敵、ルイエノに酷似していることに。

 

「けど、アタシだってちゃんとあれから成長したんだからっ!」

 

あの時の自分ではないと、負けじとエミリアは強気でランシェアラに立ち向かっていく。

 

「シーカー、シュートゥ!」

 

ガーランドG、ライジング・サンから各シーカーを射出、そしてルイナスからもミサイル、プラズマ弾を一斉発射しながらランシェアラへ突撃していく。

 

「あらよっとお」

 

内部でのザンキの腕、足の動きにトレースし、ランシェアラは反復跳び、側転、後転、変則な且つ高速に、そして小刻みに動きながらミサイルなどの飛び道具を次々に避けていく。

各シーカーがランシェアラの周辺を飛び回り、高速回転するドリルで突撃、小型ゲッタービーム弾で飽和攻撃を繰り出すがランシェアラはすかさず二丁拳銃を使い、クルクルと華麗に回転、舞いながら熱線を連射。

つまり『ガン=カタ』と呼ばれる戦法でシーカー全てを撃ち落としていった。

 

「なにあのメカザウルス……っ」

 

まるでアクション映画かアニメのような有り得ないシーンを再現するその動きに呆気を取られるエミリアだったが気を取り直してすぐさま左側の巨大ドリルをフル回転させて突撃していく。

「はあっ!!」

 

引き上げた左腕を間合いに入ったランシェアラへ一気に押し出すが、その尋常ではない機敏さを駆使していとも容易く翻えされ、いなされてしまう。

 

「そんな隙の大きい動きじゃあ、到底俺に指一本触れられないぜ!」

 

ランシェアラはすかさず四肢に収納された刃を展開、マグマで真っ赤に発熱させると得意の回転攻撃を仕掛けるもルイナスのシールドが作動、プラズマの膜が張られて高熱の刃が機体に触れるのを遮断し、弾かれる。

 

「うおっ!」

 

一瞬たじろぎ動きが止まったランシェアラへ、隙ありとエミリアは休まず突撃。

 

「これで――!」

 

 

回転するドリルがランシェアラをついに捉えて押し出した――が、

 

「残念、お前らだけがバリアを持っていると思ったら大間違いだ」

 

突然、ランシェアラに球状の淡い光の膜が張られてドリルが膜と摂取した瞬間、反発を起こしてルイナスは吹き飛ばされた。

 

「きゃああっ!!」

 

地面に倒れ込むルイナス、コックピットでもしやとエミリアはモニターを見た先にはランシェアラを周りをクルクル飛び回る三つの金属球、あのバリア発生装置であるリュイルス・オーヴェを発見した。

 

「何ですって……っ」

 

唖然となるエミリア、しかしそれは愛美も同じことを口走っていた。

「もしかしてこいつらあのバリア持ちなの……!」

 

彼女は今、リューネスの駆るトリケラトプス型専用メカザウルス、オルドレスと対峙、互いの重火器による派手なミサイルパーティーをしているのだが、やはりこの機体の周りに三機の金属球、リュイルス・オーヴェが飛び交っており攻撃すればたちまちバリアを展開されていとも容易く塞がれてしまった。

 

「だったらっ!」

 

アズレイは背部からエリダヌスX―01を取り出して展開、エネルギーチャージ中は攻撃を受けないように動き回る。

 

「知ってるぜ、何でもリュイルス・オーヴェのバリアを無視するとんでもない兵器があるとな」

どうやらリューネスはエリダヌスX―01を知っているようだが焦る素振りを見せず、なぜかニヤりと不敵な笑みを見せている。四足歩行でジリジリと詰め、アズレイの動きを警戒するオルドレス。

 

「これでもくらいなさい!」

 

チャージ完了したエリダヌスX―01の照準をオルドレスに合わせ、後は愛美が発射用ボタンを押すだけだ――が、

 

「させるかあ!」

 

突然、アズレイのガチガチに固まり、引き金にかけた指さえも動かなくなった。

 

「えっ、えっ、なんで!!?」

 

愛美がいくらボタンを押してもさらにはレバーをガチャガチャ動かしても全く連動せず、少しも動かない。

 

「やっちまえザンキ!」

 

「おうよ!」

 

ランシェアラが突如アズレイへ向かって駆け出し、一瞬で到着する否やエリダヌスX―01を右肘の高熱刃で振り切り、真っ二つにされてしまった。

 

「ああ…………っ」

唯一あの強力のバリアを無視できるエリダヌスX―01を使い物にならなくされた唖然となる愛美の目の前にはその鋭く殺気の籠もったトカゲの眼、ランシェアラのカメラアイをのぞかせた。

 

「切り刻んでやる!」

 

再び回転しようと身体をぐっと捻るランシェアラに対し、愛美は未だに唖然となったままで回避行動を取らず。

 

「マナミィ!」

その時、ルイナスが間一髪でアズレイの元に到着するとすかさず体当たりで機体ごと押し飛ばしてランシェアラの刃のエジキになるすんでで難を逃れるアズレイ。

 

「リューネス、なんでこいつが動けるんだ?」

 

「……ガレリー様の話だと『エルオス・メルライユ』の効能時間は約十秒程度と少ないようだ」

 

「短かすぎだろ、それじゃあ全然役に立たねえじゃねうか」

 

「それでも敵の動きを問答無用で封じれるんだ、文句いうな」

 

ザンキ達が会話している間にエミリアは、機体を揺らして茫然している愛美を我に返している。

 

「しっかりしてマナミ!」

 

「エミリア……あっ」

 

我に帰った彼女は深刻そうな表情で唇を噛む。

 

「どうしよう……エリダヌスX―01をアイツに壊されちゃった……」

 

「えっ?」

 

「どうしよう、あれがないと……」

 

あの強固なバリア発生装置であるリュイルス・オーヴェを攻略できる唯一の兵器をザンキによって真っ二つにされてしまい、対抗手段を失ったと途方にくれる愛美達――。

 

「司令、あの子達が今対峙しているメカザウルス達にあのバリア発生装置が……」

 

モニターで確認すると確かに地上にて、エミリア達と戦っているメカザウルス、ランシェアラとオルドレスの周りにそれぞれ三機の金属球が従えているように飛び交っているのが分かる。ちょうどその時、愛美から通信を受信すると本人は大慌てしている。

 

“早乙女さん、マリアさん、エリダヌスX―01があのメカザウルスに真っ二つにされちゃった、どうすればいいですか!!”

 

「なんだとっ?」

 

“攻撃しようとしたらいきなり機体が動かなくなって、その隙に……これじゃああのバリアに対抗できません!”

 

ただでさえあのリュイルス・オーヴェのバリアを破るのは至難の業であるのに、それを装備する機体が複数でしかも頼みの綱が破壊された事実に頭を痛める早乙女とマリア。

 

「司令、もうひとつの予備は?」

 

「あるにはある、だが今竜斗へ愛美に届けるよう通信できないとなると艦を着陸させて直接受領させる意外に方法はない。

だがそうすると着陸中は艦は無防備となるし、彼女達が戻ってくるとおそらくあのメカザウルス達もゲッターロボを追跡してくるだろう」

 

「それじゃあ……っ」

 

「手はないわけではないがその場合は――」

 

早速彼は二人に通信でその方法を伝える。

 

“愛美、ベルクラスにアルヴァイン用の予備のエリダヌスX―01がある。艦を着陸させるから直接取りにこい”

 

「はい。けどそうすると向こうも追ってくるんじゃあ」

 

“そこでエミリア、君がその間あのメカザウルスの注意を引きつけてくれっ”

 

「え……っ、てことはアタシに囮となれってことですか?」

“ああ。だが君も一緒に戻ってこい、アズレイが格納庫に戻っている間、ベルクラスも盾となることで君の負担も減らせるし守れることになる。外周を周ってたりなんでもして何とか奴らの注意を引いてくれ”

 

「りょ、了解です!」

 

“一刻の余裕時間はない。速やかに行うぞ”

 

「「はいっ!」」

 

着陸できる場所へ移動するベルクラスに連動して二機もそこから離れていくが同時にザンキ達も直ちに追跡を図る。

 

「逃げる気か!」

 

「怖じ気づいたかゲッターロボ!」

 

オルドレスとランシェアラは地上を高速で走り込みながらミサイル、二丁拳銃からの熱線で追撃を仕掛けてくる。

 

「アタシ達が固まってちゃ危ない、散開するよマナミ!」

 

「うん、気をつけてエミリア!」

 

二機は急旋回用杭を地面に打ちつけて後退しながらジグザグに後ろ移動しながらさらに各火器で弾幕を張り、攪乱していく。

 

「もしかしたら、さっきみたいにマナの機体が途中で動かなくなるかもしれないから、あのトリケラトプスみたいなメカザウルスの前に立たないほうがいいかも!」

 

「分かった!」

 

互いに警戒し、注意いし合い、そして励まし合いながら、何とか切り抜けようとエミリアと愛美は必死になっているその一方で竜斗は突如現れたもう二機と対峙していたのだが……。

 

(……ラドラさんと同じ機体が……何故ここに……っ)

 

彼の震える眼に映るはニャルムのマーダインをそっちのけでもう一つの機体、クックの乗るメカザウルス、グリューセル。

細部は異なるがラドラの機体であったリューンシヴと全くの瓜二つの姿であり、もしかして彼が乗っているのかと、竜斗をさらに混乱させる要因であった。

 


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