ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十一話「ジュラシック・フォース」②

トーチカの爆発を見届けた二人はすぐさま、それぞれ地形を利用して隠蔽しておいた自分達の機体へ戻り、コックピットに乗り込みシステム起動させる。

ザンキの専用機である『ランシェアラ』はかなりコックピットの内装が特殊であり、操縦桿やパネルキー、そしてコンソール画面などは一切なく、さらには座席すらないので立つしかない。

その代わりに両腕、足に何やら触手のようなものが伸びて絡まり、ザンキが身体を動かすとそれに連動して機体が起動、自分の動きに連動して機体も同じ動きをしている。

 

「……マーダイン、直ちに起動する……っ」

 

ニャルムの専用機であるメカエイビス『マーダイン』はまるで三叉槍の穂先のような形をしており、すぐさま垂直に空中へ浮遊していく。

二人が動き始めた時にちょうどそこにリューネス、クックの駆るメカザウルス『オルドレス』、『グリューセル』が現れて二人と合流する。

 

「お帰り二人ともっ、潜入は楽しかったか?」

 

「へ、まあまあかな」

 

「おい、話は後だ。今ここに敵影の大軍がこちらに近づいている」

 

と、雑談をしているザンキとリューネスの間にクックが割り込みそう伝える。

 

「先ほどの生き残りのヤツが救援要請を入れたせいだろうな」

 

「どうする、強行突破するか?」

 

「いや、寄り道として全滅させてから帰ろうぜ。敵数をさらに減らしてオジキになお喜ばれるかもな」

「そりゃあいいっ、暇つぶしにやってやるか!」

 

「……あたしも、付き合うよ……」

 

ザンキの意見にリューネス、ニャルムは進んで同意する中、クックだけはあまりいい表情をしていない。

 

「ザンキ、余計なことをせずに帰ったほうがいい。向こうの作戦予定が狂うぞ」

 

「け、このマジメ君が。もう敵基地のトーチカ破壊は予定より早く完了してるし時間はたっぷりある、その時間を使ってアイツらをついでに倒せれば敵戦力も減らせて良い事だらけじゃねえか」

 

「………………」

 

「嫌ならお前だけ先に帰ってな、俺らだけでやる」

 

と、彼にそう言い捨てるザンキ。四人は北側に振り返るとそこにはロシア、中国軍のSMB、戦車がこちらへ津波のように押し寄せている。

 

「早速パーティーをおっ始めようぜ!」

 

「おう!」

 

「……楽しみ……」

 

ザンキ達仲良し三人組は意気揚々と敵部隊に突撃していく。

「…………」

 

ただ一人取り残されたクックも「付き合いきれん」とため息をついながらも、なんだかんだで後を追いかける。

 

「行くぜぇ!」

 

ザンキの動きに連動してランシェアラの左右腰の取り付けられたホルスターから二丁の拳銃を取り出し、さらに両肘、太ももから収納された小刃を展開、マグマによって真っ赤に発熱した。

 

「オラァ!!」

 

走り込み、そして高く飛び上がったランシェアラ。落下しながら地上の機体へ二丁拳銃から熱線を連射して撃ち抜き、溶かして爆発させる。地上に降り立つとそこから急発進。

ルイエノのように素早くSMBへ接近し、ザンキ自身の得意である機体をコマのように回転、超高温に発熱した刃が回転の勢いに乗った結果、密集したSMB、戦車はたちまち細切れに熔断していった。

 

「まだまだあ!」

 

次は二丁拳銃を振り回して熱線を連射、まるでダンスをするようにクルクル華麗に踊りながら周辺の敵機全てを蜂の巣にして撃破していく。

「お前らが止まって見えるぜ!」

 

跳び蹴り、回し蹴りなど体術で吹き飛ばしすかさず拳銃の熱線で撃ち抜いていく、その動きはまさに『ガン=カタ』ともいえる戦闘術であった。

 

「調子に乗るなメカザウルスめ!」

 

中国製SMBである『骸鵡』が頭部の機関砲二門を撃ちながら、手持ちの巨大青竜刀を振り回してランシェアラに両断しようとするが後転、側転、反復ステップなどを軽いフットワークを繰り出して全く当たらず。

 

 

「隙だらけだな、ハハ!」

 

急接近されて間合いを取られた骸鵡は二丁の銃口を胴体に押し当てられて撃ち抜かれて、さらに高熱刃でバッサリ切り刻まれてしまった。

 

「俺に少しでも触れることができたら誉めてやんよおっ」

 

ランシェアラ……レイグォールの一人である、風を司る神の名を冠しているのは伊達でないほどに物凄い機動力だ――。

 

「ザンキに負けてられねえぜ!」

 

 

リューネスの駆るオルドレスはトリケラトプス型の、身体の至るところに重火器を内蔵した砲撃重視のメカザウルスで間合いを取りながら敵の密集地帯に腰部左右の多連装ポットから大量のミサイルの雨を降らし、さらに背中からの四連砲からドロドロのマグマを水のように放出して溶岩の中に飲み込んでいく。

「蒸発させてやる!」

 

頭部が横真っ二つに開き、中から大口径の砲門、ルゥベルジュ砲が出現、そこから極太の熱線を放射。

射線上の機体全てを呑み込み、リクシーバ合金製のSMBを一瞬で氷のように溶けて蒸発していく。

 

「死ぬ苦しみがない分、優しく思えよ薄汚いサルどもっ!」

 

その放射状態のまま左へ向きを変えて左側の機体も蒸発させていった。

 

「……………」

 

そしてクックのグリューセルはフォルム、武装、戦法何から何までラドラのゼクゥシヴと酷似しており、翼竜タイプの巨大な羽翼とブースターを駆使し、高速で空中移動しながら右手に携行するルゥベルジュ・ライフルで地上に熱線を降り注ぎ次々とSMBを撃破していく。

だが、地上からヒート弾やプラズマ弾、小型、大型ミサイルなどの無数の反撃がグリューセルめがけて向かってくるが彼の機体にまとわりつくあの小型の金属球体、リュイルス・オーヴェがすかさず機体にバリアを張り全弾をシャットアウトした。

「すまないな地上人類達、こいつらの遊び相手の犠牲になって……だが、こいつらが帰らないかぎり俺もただでは帰れないんでな」

 

と、謝りながらも右肩の折り畳まれたマグマ砲を水平展開にしてマグマ弾を速射して地上に撃ち込んでいく。

 

「……目標捕捉……」

 

そしてジュラシック・フォースの紅一点であるニャルムの機体で唯一のメカエイビスであるマーダイン。

他三機と違い二、三倍近くの巨大なサイズであるにも関わらず至るところに搭載したバーニアスラスターを駆使して空中を超高速で飛び回り華麗なマニューバを見せながら地上からの攻撃を次々に避けていく。

ランシェアラと同じく、レイグォールの一人、空や自然を司る神の名の通り、空自体がまるで自分の身体の一部であるかのようだ。

 

「……マグマ砲、全弾発射……」

 

機体全体に搭載したマグマ砲でピンポイントに地上の機体に撃ち込んでいく。

左右主翼部の突き出た計二つの突起物が地上へ飛び出した。有線ワイヤーが伸びていき戦車に突き刺された時、内部から大量の赤くドロドロの高温の液体、マグマが吹き出した。

 

「……フフフ、キャハハハハハっ!!!」

 

ドロドロに溶かされるその様を見て、普段と思えないほどに、まるで人が変わったように上機嫌に高笑いするニャルム――。

 

「おい、まァたあいつの癖が始まったぞ」

 

「ああ、それほどヒートアップしていて興奮してんだよ。マグマだけに身体が熱くなってんだ。好きにやらせておけばいいさ」

 

約五千機というSMBと戦車の混成部隊をたった四機で一気に殲滅されてこの周辺一帯は残骸とパイロット達の無残な死体、冷えて固まったマグマばかりで目に毒なほどに悲惨な光景と成り下がっていた。

 

「これでもう反応はなくなったな」

 

「さて、デビラ・ムーに帰って報告しようぜ」

 

「……すごく楽しかった……っ」

 

仲良し三人組は全滅したのを見届けてデビラ・ムーへ帰っていく。

ただ一人楽しんだ様子はない無表情のクックも黙って帰ろうとした時、地上を映すモニターに、とある大破したSMBから何か動くモノを微かに感じた。拡大して見ると、どうやら辛うじて生き残った地上人類のパイロットだった。

 

 

「………………」

 

クックはそのパイロットに向かってライフルを向けて、照準を合わせて――なぜか撃ち込まず、そのまま射撃態勢を解除して去っていき、三人と直ちに合流する。

 

「どうしたクック?」

「いや、あの付近で何か動いてたようにから探ってみたんだが、俺の気のせいだった」

 

「そうか――」

 

だがザンキは即座に振り向くと二丁拳銃を取り出してあの付近へ細い熱線を連射し、あの場に全弾雨のように降り注がれた――。

 

「クック、だからお前は甘いんだよ、あのクソラドラにそっくりだ」

 

「………………」

 

モニター越しで嘲笑うかのようなザンキと睨むような目つきのクック。

 

「おい、ケンカは後にして早く帰ろうぜ。将軍達が首を長くして待ってるぞ」

 

「へいへいっ」

 

「…………」

 

やっとデビラ・ムーに到着した四人はすぐさまバットに跪き、報告した。

「ジュラシック・フォース。任務を終えて無事帰還しました」

 

「よくやったぞ四人の勇士よ。しかし、作戦上にない寄り道まで行ったことに関しては如何なものかな?」

 

やはりバットに、帰還するために強行突破ならまだしも勝手に敵殲滅をしたことがバレていたことにクック以外の三人はドキッとなった。が、

 

「まあよい、むしろかえって敵殲滅が一気に激減したことに感謝する。ジュラシック・フォースの勇猛な戦いぶり、見事だったぞ」

 

「は、有り難き賞賛でございます」

 

「このままの調子でユーラシア大陸を制圧した際には必ず四人には更なる栄光と褒美がジャテーゴが授かるだろう。もしや四人の誰かは参謀、または将軍になれるかもしれん、敵ばかりでなく互いを競い合って精進せよ」

「「「「はっ」」」」

 

その場で解散した四人。するとクックは振り返り、バット将軍の前に立った。

 

「どうしたクック?」

 

「質問がございます。ゴーラ様と、そしてラドラの行方は……」

 

その問いにバットも言葉を濁らせた。

 

「将軍、何か知っているのなら教えてくださいっ」

 

「……ゴーラ様は反逆者として捕らえられたとのことだ。ラドラまでは分からないが……」

 

「………………」

 

そう伝えられて言葉を失うクック。

 

「……そなたらは親友同士だったな。心配する気持ちは大変分かる、私もリージの息子であるラドラには無事でいてほしいものだ……」

 

「……分かりました。質問に応えていただき感謝します」

 

頭を下げて去っていくクック。三人と合流すると変な目で見られている。

 

「まあたラドラか。お前ら飽きないねえ」

 

「もしかして友達を越えて恋人同士かあ?ワハハハっ!」

 

「……うわあ……っ」

三人にからかわれるもそれを無視してただ一人去っていった。

 

「けっ、あいつだけはよく分からんし、ノリにもついてこん、本当にやりづれえ」

 

「まあ仕事上では上手くやってるからいいじゃねえか。それよりも次の作戦指示あるまで酒飲もうぜ」

 

「……サンセーっ」

三人は去っていく中、クックはただ一人その場に残り、外部モニターをずっと見上げていた。

 

(……ラドラ、ゴーラ様と共にお前が望んでいた地上人類との協定が破綻したことにどれだけ心を痛めてるだろうか……そしてお前は無事なのか……ゴーラ様も……)

 

クックは二人の安否の心配と、あの事件から全てが変わってしまったことを儚んでいた。

 

「俺は頃合いを見て二人に話したあの計画を実行するぜ……」

 

ザンキの部屋に集まった三人はテーブル上で酒を飲みながらとある計画の話をしていた。

 

「ザンキ、本気でやるつもりか……?」

 

「……絶対に危険、やめたほうがいい……」

 

二人から複雑そうに咎められるが、一体なんの計画なのか。

 

「大丈夫だって。俺がやれば上手くいくっての」

 

「…………」

 

「考えてみろよ、お前ら一生キャプテン止まりのつもりかよ。

オジキがあんなこと言ってたが、実際は将軍の下の参謀クラスが関の山、将軍なんか夢のまた夢だぜ、キャプテンなんか貴族ならほとんど誰でもなれるようなそんなカスみたいな階級で満足するのか、お前ら?」

 

 

「………………」

 

「リューネス、お前だって言いたかないがラドラのように優先順位の低い平民出のキャプテンで、さらに苦労に苦労を重ねてジュラシック・フォースとここまで成り上がってまで来たんだろうが。ならもう少し危険を侵してでもさらなる栄光を手に入れてみるもんだぜ、男ならよ」

「ザンキ……」

 

「俺がほとんどやるから安心しろ。お前らは後片付けだけしてくれればいいからよお」

 

「……まあ、わかった。だが無理すんなよ」

 

「うん……失敗すれば間違いなくザンキが消されるんだからね……」

 

「分かってるよ。ほらもっと酒飲もう、時間は過ぎていくだけだぞ」

 

話を変えて楽しく雑談しながら酒を飲み明かしていくザンキ達。果たして彼のその危険、消されると言われるほどの計画とは一体なんなのか。

 


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