ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十一話「ジュラシック・フォース」①

――あの事件から、消えかけていた戦いの火が再び燃え上がってしまい、勢いがさらに増している。

互いのどちらかが滅びるまで戦いが続く……二種の地球人類同士は掴みかけていた友好は消え失せ全面戦争へと突入、どこにも平和な場所などなくなってしまった――。

 

「キサマァ、よくもゴール様を!!」

 

マシーン・ランドの玉座の間にて真の女帝として君臨したジャテーゴの前に現れ、怒りを顕わにするは第一恐竜大隊総司令官のリョド。

ゴールに絶対の忠誠を誓っていたリョドは彼の突然の訃報、そして王位継承に不審、そして真実を知り我慢ならなくなり早速彼女と対峙した。

 

「これはリョド将軍、どうなされたか」

 

 

「とぼけるな!自身は妹であるにも関わらず権力を握りたいためにゴール様を殺害、この恐竜帝国を乗っ取った狂人め!」

「乗っ取ったとは人聞きの悪い、王位継承したと言ってほしい」

 

「黙れ、この性悪女がっ!」

 

リョドは脇差しの剣を引き抜きなりふり構まわずジャテーゴへ襲いかかった。

 

「ゴール様の仇は私が取る!」

 

しかし、周りから彼女の親衛隊に取り押さえられてしまい、床に叩き伏せられてしまう。

 

「今日をもってリョドを大隊長の任を解くとする。後任については……私が一目置く地竜族のクゲイク=ペネを着任させるとする。彼は私に忠実でさらに優秀な頭脳を持つからな」

 

「ぐうっ……!」

 

「リョド、そなたを期待していたのに失望したよ。直ちにこの者を牢へ連れていけ!」

 

 

「お、おのれえ…………っ」

 

「これまでの功績を讃えてお前には数日間考えさせる時間をやる、私に従うと改めなければその時お前は処刑台に立つことになるぞ」

 

拘束されて連行されていく無念のリョドだった。その後すぐに地竜族のクゲイクを呼び寄せるジャテーゴ。

 

「クゲイク、そなたを今日より第一恐竜大隊の総司令官に任命する」

 

「はっ、ありがたき幸せです。ジャテーゴ様のために、そして爬虫人類の名誉と誇りにかけて尽力いたします」

 

「うむ、期待しているぞ」

 

クゲイクを下がらせるとジャテーゴは「フフ」と不敵な笑みを浮かばせる。

「地竜族はいいものだな。これまで兄上がなぜ彼らの有用性を利用しなかったか理解に苦しむ……実に愚かだ、なあラドラよ」

 

玉座の後ろから、無表情のラドラが現れて彼女の横に立つ。

 

「彼らの秘められた超常の力はまさしく驚異の力だ、さすがはレヴィアラトの母体のことはある」

 

彼の顔はもはや生気を失っており、まるで生ける屍のような、まるで彼女の人形のような雰囲気であった。

 

「なあラドラ、私はお前を側に置くのは大変嬉しく思うぞ。あの兄上でもお前を見込んでいたことだけは感心する。

それほどお前は優秀で安心できるのだ、さすがはリージの息子か」

 

「…………」

 

一向に喋らないラドラにジャテーゴは、

 

「フン、まあいい。お前が私に従うのならゴーラを生かしておいてやる、だが裏切れば……どうなるか分かるだろうな」

 

「………………っ!」

 

ギリッと歯ぎしりを立てるラドラを嘲笑うようにジャテーゴは上機嫌に笑い声を響かせた。

 

(優秀なリョドが私に反逆したのは非常に惜しいが……あやつは前からの私の誘いに全く乗らなかったから恐らく対立するのは分かっていた。

その点バット達は私に忠誠を誓ったからよしとするか……さて、シベリアの地の活躍を拝ませてもらおうか――)

 

一方、囚人牢に連行されたリョドは牢屋に投げ入れられて倒れ込んだ。

「あなたは……もしやリョド様では?」

 

聞き覚えのある女の子の声に彼は横を見るとそこにはゴーラもいた。

 

「ゴーラ様……っ!」

 

「やはりリョド様ですね、なぜこんな所に……!」

 

リョドは彼女に全てを話すと彼女は暗い表情を落とす。

 

「申し訳ございません……私が無力なばかりにあなたのお父上のために一矢報いることはできませんでした……」

 

リョドは涙を流しながら彼女に土下座した

 

「……いえ、あなたがジャテーゴ様に刃向かったにも関わらず無事で本当によかった……」

 

リョドは悔しさのあまり、床に握り込んだ右拳を叩きつけた。

「リョド様、どうかお心を鎮めてくださいっ」

 

「……あんなヤツに帝国を乗っ取られたことに……私はもう無念で、悔しくてたまりません……っ」

「リョド様……」

 

「あんな権力の塊のような狂人に乗っ取られたこの帝国はこれからどうなっていくのか……私はもう絶望しかありません」

 

「リョド様、まだ希望を捨ててはいけません。信じましょう、必ず私達以外にも立ち上がってくれる方が他にもいるはずですっ」

 

常に冷静で人望のある将軍であった彼、リョドが悲しみに暮れている状態を見て心が痛むゴーラ。

 

(ラドラ……あなたは今、何をしていますか……ひどい目に遭わされていませんか、私は凄く心配です……。

そしてリュウトさん……もう……あなた達とは二度と会えないかもしれません……今の私達ではもうどうすることも出来ません……本当にごめんなさい……)

 

静かに目を瞑る彼女からも涙が流れ落ちて、無念さを感じられた――。

 

「バット将軍、この一連の関係をどう思いですか?」

 

――シベリアに居座る第二恐竜大隊の本拠地であるブラキオ級地上攻撃要塞『デビラ・ムー』のあちこちに突き出た突起物から高温のガスを吹き出している。その要塞内の司令部兼用の艦橋では大隊長であるバットと部下が先日の一連の事件に対する疑問、不審について話し合っていた。

 

「突然のゴール様の訃報、そしてジャテーゴ様に王位継承されたと伝えられましたが……色々と疑問があり、そして恐らくジャテーゴ様がクーデターを起こした、と私達は思うのです」

「………………」

 

「最近帝国の情勢はおかしいと思います、突然の地上人類と停戦協定、和平を結ぶなどと我々の混乱を招くようなことをしたと思えば決裂、ゴール様の訃報、そして本来のゴーラ様ではなくジャテーゴ様の王位継承……将軍、あなたはこれらについてどうお考えでしょうか?」

 

その質問にバットは、

 

「……もう終わったことだ、私はジャテーゴ様に忠誠を誓った身。自分達がどうこう言おうが何も変わることはない」

 

「しかし将軍、あなたはゴール様に忠誠を誓っていたのでは?」

 

「……正直、私も停戦協定は心外だった。地上人類と和平を結ぶのは反対という個人的な意志もあるが何よりも、これまで同胞達が一体なんのために戦い死んでいったのか……私は全くゴール様の考えに理解、納得できなかった。ジャテーゴ様はそんな私の疑問や不満を打ち破ってくれたのだと認識している」

「つまり……今ではゴール様への忠誠は捨てきったと」

 

「ああ、完全に――」

 

そのはっきりと言い切った発言、そして忽然とした態度は完全にゴールと袂を分かったようである。

 

「リョド様は……っ」

「あいつは心底ゴール様に心酔しておったから断固反対だろうな――」

 

今、リョドが大隊長の座を剥奪されて牢屋に入れられていることはいざ知らず。しかし、彼なら何かしらジャテーゴに反抗的を行動を起こすに違いないと予想しているバットであった。

 

「……話はこれぐらいにして作戦に集中するぞ。ザンキ達、ジュラシック・フォースが敵基地から無事帰還するのを待つのだ」

 

……デビラ・ムーから南側一二〇キロ離れた場所にある、ロシア軍、中国連合軍の司令部のトーチカ。内部では各隊長達による会議が開かれていた。

 

「暗号名『ムー』周辺のメカザウルスが余りにも多すぎて我々の現戦力では不利だ」

 

 

「最近では新型機が約四機確認されており、これらだけで次々と各部隊が壊滅に瀕しており、戦闘能力が著しく低下している」

 

「停戦、和平友好を結ばれて終わったと思いきや、まさかのヤツらの罠だったとはな……しかもそれからメカザウルスの攻撃に激しさを増してきている、これでは埒があかないぞ」

 

やはりあの事件後の影響、そして今まで以上に戦況に苛烈が増して難色を極めている。

 

「うむ……このまま長期戦になれば間違いなくこちらの戦線における敗北は必須……」

 

「よし、こうなったらアラスカ戦線にて猛威を揮ったと言われる日本のゲッターチームに救援に来てもらおう」

 

「そうだな、今彼らは日本で待機しているとの話。直ちに連絡を……」

 

だがその時、このトーチカ周辺が大爆発して内部が激震した。

 

「メカザウルスが攻めてきたのか!?」

 

すぐさま地上モニターを確認する。しかしメカザウルスの姿などどこにもない。だが、また爆発音と共に内部が揺れてモニター画面がザーザーとノイズと嵐まみれになる。どうやらカメラを破壊されたようだ。

「敵襲か!」

 

「しかし敵の姿などなかったぞ!」

 

「護衛隊は何をやっておる!」

 

すぐさま内部にいる隊員に連絡を取ろうとするが全く繋がらない。その時だった――。

 

「ぐは……っ!」

 

隊長の一人の首から鮮血が吹き出してドサッと倒れ込んで動かなくなった。

 

「なっ!?」

 

次の一人は強烈な力で首をへし折られてしまい力無く倒れ込む。

 

「この部屋に何かいるぞ!」

 

しかし周りを見ても、目を凝らしても敵の姿がいない。だがそうしている内に次々が刃物のような物で切り刻まれて、強烈な力で首をへし折られていきそして気がつけば――この場は誰一人とも動かぬ血塗れの惨劇の場と化していたのだ……。

 

「ひい……っ」

 

かろうじて生き残った、血塗れの一人が慌てて味方に連絡を取ろうと近くの通信機にしがみつき、連絡を取ろうとした。

「こちら連合軍第一〇大隊司令部、こちら第一〇大隊司令部、突然正体不明の攻撃を受けている!直ちに救援を――!」

 

しかし、彼の動きはここで止まった。なぜなら首が胴体と離れていき床に叩き落ちた。血が噴水のように吹き出した胴体はそのまま床にゴロンと転がる。

 

「へっ、救援を呼んでも無駄だがな!」

 

その場に突然と姿を現す二人の黒い全身タイツと通信機具を装着した爬虫人類の男女……ザンキとニャルムが立っている。

「……任務完了。早く二人の元へ……」

 

「ああっ、あいつら待ちくたびれているだろうからな。その前に――」

 

ザンキは背中のナップサックから薄紙に包まれた粘土質の不定状物体を取り出してテーブルにペタっと張り、そこに付属の信管のようなものを突き刺した。

 

「よし、脱出しようニャルム」

 

二人は急いでその場から離れていく。

 

「リューネス、クック、たった今、敵基地を制圧した。これより内部を爆破して合流、デビラ・ムーへ帰還する」

 

“了解、二人ともうっかりして爆発に巻き込まれるなよな、ワハハッ!”

 

「分かってるよっ」

 

通信を切ると外部まで一気に通路を駆けていく。その途中、恐らく彼らの所業であろう地上人類の連合軍隊員の無残な死体ばかり広がっていた。

 

「死してもなお醜いね……地上人類のヤツら……」

 

「ああ、こんなヤツらと友好を結ぼうとしたゴール様の気がしれんぜ。まあ、もうそんなことはどうでもいいけどな」

 

ザンキの笑う声が響いた後すぐ、内部にある物全ては閃光と熱、衝撃波と共にこの世から消え去った――。

 


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