ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十話「カウントダウン」⑧

しかし次はゴーラ達が無事、ラドラの機体であるリューンシヴまで護衛しなければならない。

 

「水樹、彼らを自分達の機体に戻るまで援護してくれ!」

 

「…………」

 

しかしアルヴァインは動かない。愛美は竜斗達と一緒にいるゴーラとラドラの姿を見て、身震いして憎しみかそれとも嫌悪感ともいえる感情と、反発しているやり切れないような気持ちが混ざり合った複雑な表情をしていた。

 

「水樹、何してる!早くしないか!」

 

しかし動かそうとしない彼女の事情が分かる竜斗は、

 

「愛美、お前にもゴーラちゃんと仲良くしたい気持ちがあるのならどうか二人を助けるためにどうか協力して!」

 

必死にそう訴える竜斗に愛美はブルブルと更に震える。

 

「愛美、ゴーラちゃんは前にあった出来事を気にしてないと、それにお前と是非打ち解けたいと、仲良くなりたいと言っていた!ゴーラちゃんのその思いがもし通じているなら、応えてあげたい気持ちがあるならどうか助けてあげて!」

 

「………………」

 

すると、

 

『マナミさん、私はあの時のことは全然気にしてません、私はあなたと是非和解して一生の友達でいたいんです!』

 

と、ゴーラからもそう告げられた愛美は「うあああっ!」と悲鳴とも言える金切り声を上げたがその後、

 

「……マナが、マナが盾になるから今の内に早くしなさいよ!」

 

「愛美っ!」

と、協力する気になった愛美に四人は大変喜んだ。

 

『マナミさん、どうもありがとう!』

 

彼女からお礼を言われた愛美は涙を流しているも、『険』が取れたような清々しい表情だった。

 

「水樹、私達をアルヴァインの手に乗せて、彼の機体のある公園の中心部へ向かってくれ!」

 

四人をアルヴァインの手に載せると、背を向けてリューンシヴのある中央へとゆっくりと歩いていく。その時、建物から爬虫人類の刺客が次々に現れてライフルによる集中砲撃を繰り出すがアルヴァインが盾になってくれているおかげで何ともないが、こちらへ向かいながら攻撃してきている。

「急げ水樹!」

 

そして中央部のザ・エリプスと呼ばれる場所に到着する。辺りを見渡すとその端に複数のメカザウルス、そしてリューンシヴが右膝を地面について待機している。ラドラが自身の機体を教えるとアルヴァインはすぐさまそこに向かい、リューンシヴの前に立った。

 

『リュウトさん、サオトメさん、マナミさん、すいませんがここでお別れです。今から私とラドラで真相を掴み、陰謀を食い止めてきます』

 

「ゴーラちゃん…………っ」

 

『リュウト君、そしてサオトメさん……いや地上人類の方々を裏切り、踏みにじってしまったことに対し、同じ爬虫人類である私達が解決しに、そして報いに行きます、二人はどうかお元気で!』

 

二人から並みならぬ覚悟と決意を聞かされ絶句する。

 

「また……二人に会えますか!?」

 

『ええっ、次に会うときは今度こそ真の友好を結べた時に――!』

 

四人はお互いの無事とこの先を祈って握手した。

 

「早くしなさい、追っ手が来てるのよ!」

 

愛美に促され、すぐさまリューンシヴのコックピットを開けて乗り込む二人。ハッチを閉めた途端、リューンシヴは立ち上がりそのまま大空に上昇、翼を広げて北極圏へ猛スピードで飛翔していった……。

 

――その後、アメリカ軍の介入、そして僕達ゲッターチームが協力して惨劇と化したこの神聖なるホワイトハウスに蔓延るテロリストを排除、一気に鎮圧して全て幕を閉じた。

大統領含めた多数の重要人物達、そして招かれた罪なき人々もろとも、爬虫人類によるテロの犠牲になり、当然の如く停戦協定、和平は全て決裂……今日以降、戦争は今まで以上に激しさを増しどちらかが滅ぶまでだと、泥沼化の一途を辿っていった――。

 

「これが二人から聞いた向こうの現状、事情だ」

 

「そんなあ……っ」

 

無事にベルクラスに帰還した早乙女はマリアにそれを話すとやはり彼女も絶句する。

 

「竜斗は大丈夫なのか?帰還した瞬間に気絶したが」

 

「……部屋のベッドに運んでエミリアちゃん達が付き添っています」

 

「そうか……竜斗にしたらこれほど辛いことはないだろうな……」

「ええっ、彼についてはこれから心配です、無気力状態となることもありえますし……」

 

「全て……彼女達次第か、どうかあの二人には無事でいてもらいたいものだ、竜斗が『死なない』ためには二人の存在が必要不可欠なのだからな――」

 

一方、ゴーラとラドラはリューンシヴで急いでマシーン・ランド一直線で向かっていた。

 

「ラドラ、到着次第ジャテーゴ様を捕らえて尋問、真相を知るのが先です、そしてお父様からも聞き出しましょう」

 

「はいっ!」

 

「……そしてもしもこの一件の事件がジャテーゴ様の企みであるなら……私は刺しちがえる覚悟でいます」

 

「何をおっしゃいますか!親族殺しはいくら王女のあなたでも重罪で極刑ですよ!」

 

ラドラは彼女の覚悟を聞いて慌てるも、本人の表情は非常に険しかった。

 

 

「今度ばかりは流石の私の堪忍袋の緒が切れそうなんです……私達を裏切り、そして地上人類の皆さんの命、思い、そして、そして、リュウトさん達をここまで踏みにじったこの行為はもはや万死に値します!」

 

「…………」

 

「ジャテーゴ様だけは……あの方だけはもう許さない、絶対に!」

 

と、彼女は今まで見せたことのない憤怒の表情を顕わにした。

 

「ジャテーゴ、お前というヤツは……っ」

玉座の間で対峙するゴールとジャテーゴ。しかしこの二人から出ているのは並々ならぬ殺気、緊迫したこの間は間違いなく出て行きたくなるような息の詰まるような重い空気にまみれている。

 

「私はただ、爬虫人類として正しき行いをしたまででございます。ヤツら地上人類とは絶対に相容れぬ存在ですから――」

 

「……お前は破滅の道へと進むつもりかっ」

 

と、不敵な笑みをしながらそう言いのけるジャテーゴへもの凄い怒に満ちた形相で睨みつけるゴール。

 

「兄上、あなたも地上人類を心底嫌っていたはずでしょうになぜこのような血迷ったことを?」

 

「わしも今でもそうじゃ。しかし前にも述べたようにこれ以上爬虫人類の犠牲を防ぐために、そして多数の民からの意見を検討した結果だと――」

するとジャテーゴは突如、高笑いし声を響かせた。

 

「兄上も真実を言ってくれませんか?ゴーラの説得が一番絡んでるでしょう?」

 

「…………」

 

「全く、親バカとは困ったものだ。他人の話を聞く耳は持たないくせに自分の愛娘には耳を傾けるなどと……だからあのメスガキに消えてもらうことにしました」

 

「ジャテーゴ……っ」

 

「その愛娘と、味方のラドラはもはやこの世から消え去り最大の邪魔者はいない、そしてあなたの味方などもういない」

 

「なっ!?」

 

すると王の間から沢山の側近、家来、そして兵士がこの二人を囲むように飛び出して携行しているライフルを全てゴールに向けられた。

 

「お前たち……っ」

 

「彼らは地上人類と和平を結ぶと告げたあなたに心底失望して忠誠を捨てた者達です、そしてその他にもあなたから離れた者も大勢います。

そんな彼らは今や私に忠誠を誓う……これを見てどちらが人望に溢れているか、どちらが王位に相応しいかお分かり頂けたでしょうか」

 

「ジャテーゴ……っキサマ!」

 

「本音を言いますと兄上、あなたには王という席に相応しくありません。降りてもらいましょうか!」

 

クーデター……王位の無理やり奪いにかかるジャテーゴ。

 

「抵抗しないのなら命だけは助けましょう、そして一生私が老後の面倒を見てあげてさしあげましょう」

 

裏切りられた者の無数のライフルの銃口を向けられたゴールは。

 

「前からお前の性分を分かっていたが……やはりお前には王座などに座る資格などないわあ!」

 

ゴールはその場から飛び上がりジャテーゴ目掛けて襲いかかった――しかしどこからか放たれた一発の弾丸がゴールの頭を貫いた。

地上に着地してそのままうつむきで倒れ込んだゴールに周りから無数の弾丸が次々と撃ち込まれて、もはや見るも無残な肉塊へと変えられてしまった。

 

「お、お父様!!?」

 

「ゴーラ!?」

 

運悪く、ちょうどそこに駆けつけたゴーラ達はその最悪の光景になりふり構わず駆け出し、周りの者を掻き分けてもはや少しも動かぬ無残な姿となったゴール「だった物」に駆け寄る。

 

「あ……ああっ!!」

 

「ゴール様……そんな……っ」

 

最悪のシナリオとなってしまい、絶望で身を染める二人、そして彼女達が生きていたことに眉をひそめるジャテーゴ。

 

「……キサマ、生きてたのかっ!」

 

するとゴーラは懐から小振りのナイフを取り出しで両手で握りしめてジャテーゴに刃を向けた。

 

「私は……相討ちになろうともあなたを殺す!」

 

突撃するゴーラ。しかしジャテーゴは軽くいなして倒れ込んだ彼女の頭をすかさず踏みつけた。

 

「ゴーラ!!」

 

「お前のような小娘に私が倒せるかっ!」

 

「このお!」

 

ラドラは剣を取り出してジャテーゴに襲いかかろうとするが、銃口は全てゴーラに向けられた。

 

「ラドラ、ゴーラがどうなってもいいのか?それに周りの状況を見ろ、お前らの方が絶望的だぞ。もう少し考えろ」

 

卑しい笑みで見下すジャテーゴの足でグリグリ踏まれるゴーラから無念の涙が。

 

「……ラドラ、私はどうなろうと構いません。だから迷わずジャテーゴ様を、お父様の仇を討ってください!」

 

「ご、ゴーラ……っ」

 

「早く……っラドラ!!」

 

と、彼女から嘆願されるが彼は身震いしたまま動こうとしなかった。

 

「ラドラ、お前の力なら私を殺すのは簡単だ。お前の忠誠を誓う王女がただの醜い肉塊になる姿が見たいのならやればいい」

 

「ラドラ……討たなければ間違いなくこの世界は破滅へと向かうでしょう……そうならないためにも非情となり早く……!」

 

彼の究極の選択を突きつけられるラドラ。果たしてその選んだ答えは……剣を落として泣き崩れて伏せてしまった。

 

「私は……あなたを見捨てることはできません……っ」

 

「ラドラ……っ!」

涙声でそう告げるラドラ……彼は非情になることはできなかった。

 

「哀れよのうラドラ、ゴーラを犠牲にすればお前の勝ちだったのになあ」

 

「く…………っ」

 

「ラドラ、お前のその忠誠心を評して生かしておこう。お前は色々役立つ男だ」

 

足をゴーラから離すと周りの仲間に命令して彼女を拘束する。

 

「ゴーラ、癪にさわるが仕方なくお前も生かしておこう。ラドラを操るためにも、そして後にも色々役立つことがあるかもしれんしな――」

 

ついに帝国の実権は自分に渡ったことに下品に嘲笑うジャテーゴ。

 

「今より恐竜帝国はゴールに代わり私の支配に置かれる。抵抗する者、反対する者は誰であろうと容赦ない制裁を与え、徹底的に私に忠誠を誓わせるのだ!」

 

周りは「オォー!!」と新女王を告げる彼女へ歓喜の雄叫びを上げた。

 

「そして、我々爬虫人類は地上人類を徹底的に滅ぼし、遥か太古のように我々だけが繁栄する永遠の楽園を築き上げるのだ。『お前達爬虫人類はいずれ宇宙の覇者となるべく、大いなる創造主たる我に選ばれた唯一無二の種族だ。

民を愛し、脅かす敵と戦い殺し、そして進化しろ』」

 

《ロジェグリエンヌヴ、ナミュルシ、シュオノレゥル!(我ら死にゆく者、爬虫人類の繁栄のために!)》

 

……マシーン・ランド内に響き渡るジャテーゴ達の祈りと宣言はこれから始まる史上最悪のシナリオに足を踏み入れた瞬間でもあった。

 


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