ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十話「カウントダウン」⑦

「な、何があったの……!?」

 

マリアは突如、もくもくと煙が上がるホワイトハウスの光景に顔が真っ青となっていた。その時、ちょうどエミリアと愛美も駆けつけその現状に唖然となった。

 

「な、なにが起きたんですか……リュウトは!?」

 

「な、なんで火災が起こってるの!?どうして!!?」

 

「静かにして!」

 

喚くように騒ぐ二人を抑え、マリアは慌てて早乙女に連絡をかけるが一向に出ない。

 

「今からホワイトハウスへ向かうわ!二人は直ちに着替えてゲッターロボに乗り込み待機してっ」

 

「「はいっ!」」

 

エミリア達はすぐさま格納庫へ、この場を後にしていく。

「司令……竜斗君……っ」

 

マリアはその異常な光景に苦虫を噛み潰したような苦渋を浮かべていた。

 

「なんで!何が起こったの一体!?」

 

格納庫へ向かう二人は、そのワケの分からない事態に完全に混乱している。

 

「今は何よりも竜斗や早乙女さんの無事を祈ることよ、いいっ?」

 

「う、うん……」

 

彼らにもしものことがあれば……もはや半べそをかいているエミリアに愛美は気を持つよう指示する。が、実のところ本人も心の内では二人の無事の安否に不安でしょうがなかった――。

 

「くっ、大丈夫か竜斗!」

 

「ゴーラ、お怪我は!?」

突然、爆発音と同時にドアごと前に吹き飛び壁に叩きつけられかけた竜斗とゴーラだったが早乙女とラドラが二人のクッションとなってくれたおかげで事なきを得たが、本人達は「え、えっ」と言うばかりで状況を把握出来ていない。

早乙女とラドラはすぐさまドアの残骸をどかし、恐る恐る中を覗いた――だがその瞬間、ゴーラからのけたたましい悲痛な声が辺りにこだました。

 

『二人ともこれ以上見るな!』

 

青ざめた顔の竜斗達に、内部の惨状をこれ以上見させないように身体で覆い隠す早乙女とラドラ。

 

『な、なぜ、こんな……っ』

 

「とりあえず、今すぐここから脱出だっ」

彼らは命の危険を感じて、直ちにその場から離れていく。

 

――先ほどまで愉快で優雅、そして活気で溢れていたパーティー会場が一瞬でるも背けたくなる、誰一人とも生きていない凄惨な光景、この緊迫した状況の空気、恐怖、なにより何故こんなことになったのかという疑問で頭の中がいっぱいになり本当に気が狂いそうになる。

ゴーラちゃんも僕と同じだろう――なぜこんなことになったのか。

僕と司令、そしてゴーラちゃんやラドラさんまでもが極秘で進められていた爬虫人類の陰謀に気づくはずなど全くなかった――。

 

「マリア、聞こえるか!」

 

“司令、突然ホワイトハウスから爆発と煙が……何があったんですか!”

「恐らく何者かのテロ行為と思われ、パーティー会場の人間全員がやられた」

 

“そんなっ……竜斗君達は大丈夫なんですか!”

 

「大丈夫、ゴーラとラドラ君共々私達は奇跡的に無事だ。これより脱出する、助けにきてくれ!」

 

“今、急速で向かっています。ゲッターロボも発進準備が出来てますがどうしますかっ?”

 

「よし、ベルクラスでホワイトハウス上空に到着次第……アルヴァインを降ろして私達を保護してくれ」

 

“了解です、司令どうかご無事で――”

 

通信を切るとすぐさま三人に伝える。

 

「これより待機していたベルクラスとゲッターロボがこちらに駆けつける。外へ行くぞ!」

 

四人は内部におそらくテロリストがいるだろうと隠密行動をしながら脱出経路を辿っていく。

その途中、大統領のSPやホワイトハウスで働く役員……地上人類の人達ばかりがいたるところに血まみれで倒れておりもはや動くことはなかった。

 

(だ、誰が……こんなことを……っ)

 

少しずつだが、やっと状況を理解してきた竜斗達はその惨劇の光景に言葉を失った。

自分達は和平を結んだのではなかったのか……確かにそれを望まない者、納得いかない者もいるのは理解できるがこんな酷いまでするのか……彼の頭の中はそればかり駆け巡っていた。

 

「いたぞ!」

 

途中でどうやらテロリストと思わしき覆面をした者三人に発見されてライフルを向けられる四人だったが、

『私が行く!』

 

ラドラが携行していた長剣に構えて目に見えぬ速さで駆けていき、一瞬でテロリスト達の間合いに入り込むと横一線で二人同時に切り裂き、断末魔と共に血が吹き出しドサッと倒れ込む。

 

『死ねえ!』

 

もう一人がライフルをラドラに向けた瞬間、早乙女は素早くホルスターから拳銃を取り出し、早撃ちでもう一人の者の頭部を一発で撃ち抜いきそのまま仰向けに倒れて動かなくなった。

ラドラはすぐさま覆面を脱ぎ取ると、一瞬で唖然となり硬直した。

 

『な……っ』

 

三人もすぐさま駆けつけて覆面の者達を見る否や、愕然となった。

 

『お前は……リグリじゃないか……』

 

そう……彼は、共に自分達と来た代表のボディガードである、爬虫人類のリグリであった。

 

『おい、なぜこんなことを!!』

 

『くっ…………』

 

命が尽きかけている彼に、ゴーラは駆け寄った。

 

『よ、よくもこんなことを……なぜ……なぜ裏切ったのですか!!』

 

『…………』

 

『お父様が……お父様がなぜこんなことを……協定、和平を結ぶとは全て嘘だったのですか!!』

 

喚くようなゴーラの問い詰めにリグリは息の途切れ途切れにこう言った。

 

『全ては、ジャ、ジャテーゴ様の命令です、ゴーラ様……』

 

ジャテーゴと言う名を聞いたゴーラとラドラは信じられないような表情をした。

 

『ちょ、ちょっと待ってください、ジャテーゴ様ですって……あの人は関わってないはずですよ!』

 

『協定、和平の……総責任者は……ジャテーゴ様……っ』

 

そのまま事切れてしまったリグリに二人は、初耳だと言わんばかりに完全に真っ青だ。

 

『これら一連の総責任者はゴール様だと私は聞いた……なのにジャテーゴ様とはどういうことだ……っ』

 

『私もお父様だと聞いていたはずですが……』

 

リグリとの話が全く噛み合わず混乱している二人。

 

「どういうことだ?」

 

 

『わ、私達はこの停戦、和平協定はお父様のゴールが総責任者と知り、そして思っていたのに彼から総責任者がジャテーゴ様だと……』

 

「ジャテーゴ……?」

 

『お父様の妹君です。野心を持った策略家でもありますが……この一連には関わってないと思ってました』

 

『彼女の父君であるゴール様が総責任者だとしか教えられていない……妹君のジャテーゴ様は和平などは望んでおらず、酷く嫌って絶対に関わらないとおっしゃっていたはず……』

 

二人から事情を聞いて素早く理解した早乙女は、

 

「君達はそのジャテーゴとやらにペテンをかけられたのでは……?」

 

二人はその事に否定どころか思い当たっていると沈黙してしまう。

 

「そして君達だけは真実を、そしてパーティー会場を爆破されるとも知らなかった、というより知らされていなかった……まさか!」

 

早乙女は二人も抹殺対象に入っていたのでは、とそう告げられるとゴーラの顔は一気に真っ青だ。

 

「そして恐らく……竜斗、君も奴らの抹殺対象に入っているかもしれん、君はゲッターロボで沢山のメカザウルスを撃墜したのだから目をつけられていてもおかしくない」

 

「え…………それじゃあ……っ」

 

『私達はジャテーゴ様によってハメられた……?』

 

ゴール自身は本気かどうかは分からないが、ジャテーゴは停戦協定、和平を結ぶことを利用したのだとしたら……邪魔者である自分達と、アラスカ戦線にて恐竜大隊を壊滅に追い込んだ要因の一つであるゲッターロボのパイロットである竜斗共々殺すためにそう仕組まれて、進められてきたのだとしたら……四人はそう考察し沈黙した。

 

 

『確かにあの方ならやりかねません……恐らく和平を確実に決裂させるために……』

 

「だがジャテーゴという人物は同胞であるはずの君達までなぜ殺すつもりで?」

 

 

『ジャテーゴ様は典型的な爬虫人類の思想の持ち主で、そして野心家で権力の塊のような方です……だから私達みたいにあなた達地上人類と共存を願う者は邪魔者だと――恐らく現帝王であるお父様も……』

するとラドラは何かにハッと気づき深刻な顔となった。

 

『ゴーラ、今頃ゴール様はまさか……』

 

ゴーラも「ハッ!」と気づき心臓に矢を撃たれるような衝撃と痛みが走った。

 

『大変、お父様が!!』

 

ゴーラは竜斗達にこう告げる。

 

『サオトメさん、リュウトさん、私達は直ちに恐竜帝国に帰ります。今、お父様の守りが手薄な状態では――』

 

『いたぞ!!』

 

その時、爬虫人類からの刺客二人に見つかりライフルの銃口をこちらへ向けて、容赦なく発砲した。四人は直ちにすぐそこの左右の曲がり角にそれぞれ入り隠れた。

 

「君達はこれからどうする?」

 

『ここの中央広場に私の機体があるのでそれで恐竜帝国に帰還します』

 

「私達の向かう場所とほぼ同じか……よし、私も援護しよう」

 

「けどラドラさん、今二人が恐竜帝国に帰ったらそのジャテーゴって人に……」

 

『いえ、私達は帰らなければいけません。お父様にもしものことがあれば間違いなくジャテーゴ様の思うつぼ、そうなればもはやあなた達との和平、共存は永久に不可能となるかもしれません、そうならないよう食い止めなければいけません!』

 

「ゴーラちゃん……」

 

『リュウトさん、サオトメさん、こんな酷い目に合わせて本当にごめんなさい……もし次に会えたら……必ず本当の友好を結んだ時に――』

 

と、彼女は涙混じりにそう告げた。

 

『サオトメさん、私が先陣を切り込みます、あなたは援護を頼みます!』

 

「分かったっ!」

 

ラドラはゴーラをその場に待機させて、飛び出し先ほどのように瞬足で駆け出していく。向こうはライフルを連射してくるがラドラはすかさず壁蹴り、三角跳びしながら弾道を避けていき、早乙女も角から拳銃で的確な援護射撃で攻撃し、一人を撃ち抜いた。

 

『ジャテーゴ様の飼い犬どもめ!』

 

ラドラは残りの一人に情けか峰打ちで床に全力でたたきつけた。ラドラが周りの状況を確認し、安全だと分かると早乙女にコンタクトを取ると彼は二人を連れて走り出してラドラと合流した。

「よし、もう少しの辛抱だ」

 

四人はすぐそこまでの出口に向かって走り出した。だが、

 

『逃がさんぞ!』

 

残りの刺客が入り口を塞ぐように一気に現れて立ちはだかり各火器を向けられて万事休す。しかし突然、ドアの外から赤い巨大な手が飛び出し、刺客もろとも潰された。そのドアが破壊された穴の先をよく見ればアルヴァインが顔を覗かせた。

 

「竜斗、早乙女さん!」

 

どうやら愛美がアルヴァインを動かしているようだ。

 

「愛美!」

 

「よし、全員直ちにアルヴァインの元へ!」

 

四人は全力で走り出し、そしてついに外への脱出に成功した。

 


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