ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第四十話「カウントダウン」④

――僕達は誓った。これから待ち受けるどんな苦難があろうと共に乗り越えていくと。

僕達は誓った。様々な苦しみ、悲しみ、笑い、そして幸せを共有していくと。

 

僕達は誓った。自分、エミリア、愛美、そして早乙女司令とマリアさんは深い絆で結ばれた家族だと。

 

あの地元の一件で深い闇を落としていた僕達は生まれ変わったような新鮮な気持ちで前に歩きだした頃、この物語は急展開を迎える――。

 

「おいちょっと待て、なんだよこれ!!」

 

「どういうことだよ!?」

 

朝霞駐屯地、日本、いや世界はとあるニュースの一面に震撼する。

それは竜斗達も同じく朝食中、ベルクラスの食堂に設置されたテレビを見ていて驚愕を受けた。

「爬虫人類が降伏を申し入れて……停戦協定、和平を結ぶ……!?」

 

「『我々恐竜帝国、そして爬虫人類はこれ以上戦火を拡大して自分達と、そしてあなた達地上人類の犠牲を拡大をなくすために、破滅を食い止めるために――同じ地球に存在する二種の人類として互いの繁栄を祈って――』ですってえ……」

 

その一大ニュースに竜斗とエミリアは目玉が飛び出るほどの衝撃と驚愕を受ける。しかし、

 

「ハア?!何よいきなり、今まで散々沢山の人達を殺してきたくせに突然になってこんなふざけたこと許されると思ってのっ!?」

 

納得いかず、憤怒してじたんだ踏む愛美。

 

「落ち着けよ愛美っ!」

「こんなの落ち着いていられないわよ、ホント信じらんないっ!」

 

納得しきれない愛美はそこから走り去っていく。

 

「マナミ……っ」

 

「……しょうがないよ。だけど突然過ぎてもう……」

 

ニュースの話題が全部これとなっており、どこを変えても同じ内容ばかりだ。

チャンネルを元に戻して見ていると、アメリカのワシントンD.C.にある世界連本部内の映像が映され、中には沢山のマスコミに囲まれてた各国の首脳達と何人かの爬虫人類の代表陣、そして……。

 

「あれ……もしかしてこの小さい女の子って……」

 

「ゴーラちゃんじゃない!?」

代表陣に紛れて一緒に立ち会うゴーラ。おめかしし、おそらく正装と思われる、銀色の紋章の縫い目が入った黒色の全身ローブを着こなし、屈託のない笑顔で互いに握手を交わす姿に驚愕を受ける二人だった。

 

「なんでゴーラちゃんが……?」

 

と、エミリアが不思議がっていると竜斗は何か思い出したかのようにこう言う。

 

「……そういえば前にラドラさんから聞いたんだけど、ゴーラちゃんは恐竜帝国の王女、つまりお姫様らしいんだ」

 

「え?お、お姫様だったんだ……あの子」

 

「それにあの子は頭もいいし、僕達と和平を凄く望んでいたからもしかしたら――」

 

そんな彼女が爬虫人類からの代表の一人に選ばれてもおかしくないだろう、と二人は納得する。

続けて見ていると、外部にある盛大に用意された広場の式典会場に移り、沢山の参列者が集まり席に座るっており、その前で彼女が演説台に立ち、マイク越しで和平宣言をする姿が映された。

 

「『わたし達はあなた方地上人類の方々に大変申し訳ないことをしたのは疑いのない事実ですし、当然ながら免罪できるはずなどございません――それでも私はあなた方地上人類と和平を結び、共存を信じ、実現できるように全うし、そして今日のような素晴らしい日が迎えることができたことに、誠に感無量でございます』」

 

と、気品溢れ、そして胸を張って高らかな声で演説する彼女に二人は釘付けだ。

 

「立派だね、ゴーラちゃん」

 

「うん、初めて会った時から感じたけど、いい意味で普通の女の子とは思えない雰囲気と、人を惹きつけるような魅力を持ってたからね……」

 

これを見て、彼女はやはり優秀な子なんだと再認識する竜斗だった。

 

「『この世界戦争を引き起こした私達に対して不満や遺憾、そして異種族同士ゆえに、これからも互いの価値観や倫理観、そして宗教的や習慣に対することから様々な不都合なことが起こりうるは確かです。

しかしそれを乗り越えて私達が、この地球に住む者同士が永遠に友好、そして繁栄が出来ますよう私達は心から願い、精一杯努力を行います。

この素晴らしい日を、そして悲願の第一歩を祝おうではありませんか!』」

 

 

周りの全員から拍手の嵐が巻き起こる。

 

「未だに信じられないけど、リュウトの願いがついに実現した瞬間だね!」

 

「う、うん……」

 

彼にとってこの上ない最上の喜びのハズであるが、緊張からか顔が強張っている。

 

「……どうしたの、嬉しくないのリュウト?」

 

「い、いやあ……死ぬほど嬉しいんだけどどう表現すればいいか分からなくて……」

 

「確かにアタシもリュウトと同じでホントに信じられないよ。けど……マナミはどう受け止めるんだろ、やっぱり最後まで反対なのかなあ」

 

愛美は元々、爬虫人類自体に生理的嫌悪感ばかり抱いており、それに加えてこれまで彼らが犯してきた数々の罪を考えれば……恐らく死ぬまで許しはしないのかもしれない。

 

 

「……多分、いっぱい時間がかかるけど多分、愛美も受け入れてくれるよ。

ゴーラちゃんのような心の綺麗な子もいるんだし、きっと仲良くなれそうじゃないかな?」

 

「アタシもそう願う。あのコだけのけ者にしたくないもの……」

 

二人は愛美がいつか分かってくれることを心から願った。

 

「向こうで司令はこれ見てどう思ってるのかなあ……」

 

早乙女は今、ニールセン達、そして各国エンジニアと共に、あの三機の戦闘機をベルクラスに積んで、再びアメリカのネバダにあるエリア51に飛んでいた。

そして一緒にいたマリアに日本とゲッターチームを任せてベルクラスで帰ってきた。それからすぐに今の大ニュースである。

「博士達や駐屯地に来た色んな国の人達を連れてアメリカにいっちゃったけど行ったり来たりで忙しいわよね、一体何しにいったのかしら?」

 

「さあ……だけど、このニュースには流石に面食らっているだろうなあ」

 

「けど、これでもう向こうと戦わなくてよくなるなんてこれ以上の喜びなんてないよ、サイコーじゃない!」

 

「そうだな――」

 

この念願の今日を迎えられた彼はこれまでの記憶に遡る。

メカザウルスの襲来を受けて街中を逃げ回っていた時に早乙女に出会い、そしてゲッターロボという巨大ロボットに出会い、そして乗り始めてから一年が過ぎた。

様々な出来事、そして苦難や悲しみが立ちはだかったがそれでもゲッターチームと周りの人達のおかげで乗り越え、そして自分が望む、爬虫人類との事実上の戦争終結、そして互いの和平の扉がついに開かれた……彼にとって、これほど嬉しいことがあるだろうか。

ただ、ちょっと呆気ないとも感じたが流石にこれは失礼だなと、反省する。

 

両親や友達、そして知り合いやゲッターロボに出会ってから巡り会ったお世話になった人達はもうこの世にはいない。だが、これ以上無駄に血の流し合いを見なくて済むのなら……と。彼は思った。

しかし、話の収束はこれで終わりではなかった。

ベルクラスの司令室で同じくそのニュースを見ていたマリアの元に入江から通信が入った。

 

「幕僚長、おはようごさいます」

 

“おや、マリア君一人か?一佐はどうした?”

 

「司令は今、とある新型機の開発でニールセン博士、その他大勢のエンジニア達と共にネバダのエリア51に飛びましたが……」

“そうか、しかし君はニュースを見たかね?”

 

「ええ……っ、私もあまりの唐突さに信じられないんです……恐らくその内司令から連絡が来そうですが」

 

“うむ、私も正直半信半疑だよ。なぜこんな突然に……”

 

やはり二人もこのニュースに動揺を隠せなかった。

 

「ところでご用件は?」

 

“ああ、そうだった。それがな――”

 

数分後、マリアは慌てて食堂にいる竜斗達の元に駆けつけてきた。息を切らし焦っているマリアのその異常さは尋常でない様子だ。

 

「ま、マリアさん?」

 

「竜斗君、あなたに重要な話があるの……」

 

「え、僕にですか……?」

 

「リュウトに……何かあるんですか?」

 

エミリアも一緒に三人はすぐさま司令室に向かう。そして彼らはモニター越しの入江と対面した。

 

“私は現統合幕僚長の入江という。君達が例のゲッターロボに乗り数々の活躍をしてきたパイロットだね?”

 

「「は、はいっ!!」」

 

全自衛隊の頂点に立つ人物の前には二人は緊張から身震いしていた。

“緊張しなくていいよ、幕僚長と言っても日本政府内としては端の人間に過ぎないからね。

君達については早乙女一佐から話を聞いている、今日初めて見たが君達を思った以上に若々しくて羨ましいよ、ワハハハ”

 

と、 二人の緊張を解くかのようにくだけて話す入江の人柄に次第に強張っていた顔が軟化していく二人。

 

“しかし聞いた話によると、もう一人の子がいたと聞くが?”

 

「も、もう一人のパイロットの子はあのニュースにショックを受けてどこかへ……」

 

“……そうだろうな。世界を揺るがすニュースだから様々な人間が見て、受け入れられるのは一体どれほどいるかどうかだろうからな”

「幕僚長、雑談はこれまでにしませんか?」

 

と、マリアが横入りして彼は「コホン」と咳をして気を取り直す。

 

“では本題に入ろうか、失礼だが名前を確認する。君は、石川竜斗だな?”

 

「は、はい、そうですがそれがなにか……」

 

すると入江は深く息を吸い、吐いて間を置いてこう告げる。

 

“先ほど世界連の本部から日本政府に連絡が入ってな。

 

「リュウト=イシカワという日本人男性を探している」とな”

 

「え……?」

 

“「アラスカ戦線で、特に活躍した日本のゲッターチームのメンバーの一人、リュウト=イシカワと言う人物をこちらにご招待したい」と言う話があったのだが……”

 

 

 

 

竜斗、そしてエミリアはカチンコチンに固まった。

確かにゲッターチーム、ゲッターロボに乗り込みアラスカ戦線を戦い抜いたが、正直ただの、一介の日本人の高校生の自分がなぜ世界のお偉いが集まる場所に呼ばられねばならないのか……と。

“君の活躍がどうやら向こうにまで轟かせていたようでな、すぐに身元が分かったよ。

あんな独特なフォルムでさらに圧倒的な戦闘力でメカザウルスの大群を単機で大量殲滅すればそうなるだろうな”

 

「あ、あの……っ」

 

竜斗は目が点になって、口が回らなくなっている。すると代わりにエミリアが、

 

「な、なぜリュウトが……どうしてこんなことになったのですか……?」

 

“なんでも「停戦、和平協定を結ぶために赴いた恐竜帝国からの代表者の一人がどうしても君、竜斗君に会いたいと、そして心からお礼をしたい」という理由だそうだが、君に心辺りがあるかね?”

 

「会いたい……お礼……あっ」

 

「まさか……っ」

 

竜斗とエミリアの心辺りは見事一致した。

 


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